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はじめに
オリジナルマンガが強みである『GANMA!』を運営しているコミックスマート株式会社。多彩なジャンルのマンガが更新され、ここでしか読めないマンガタイトルを提供することで、多くの若者から支持を得ていらっしゃいます。
そんな『GANMA!』でも、『Repro』は導入・活用されており、マーケティング基盤として活用していただいております。また、機械学習を活用して、実施施策の最適化も進められていらっしゃいます。
そこで今回は『GANMA!』を運営するコミックスマート株式会社の取締役である福西さんとデータアナリストの 大藪さんに、「なぜ『Repro』を導入し、どのように活用しているのか?」について伺いました。
(聞き手:Repro カスタマーサクセスチーム 岩田)
オリジナルマンガにこだわる『GANMA!』
ー 改めてになりますが、『GANMA!』はどのようなサービスなのでしょうか?
福西:
『GANMA!』はオリジナルマンガにこだわったWebマンガサービスであり、コアターゲットが若者であることから、アプリを中心に事業を拡大してきたサービスとなります。他のマンガサービスとの大きな違いは、「作家を支援したい!」という気持ちが強く、マンガ家のリクルーティングから行っていることにあります。
もともと『GANMA!』が立ち上がる前から、『Route M』というマンガ家支援プログラムを提供しています。マンガ家のリクルーティングから、必要なアドバイスや資材・環境の提供をメインに支援しているのですが、「良いマンガをユーザーに提供するためには、そもそもマンガ家を支援することが必要」という想いから立ち上がっています。
また支援作家の作品は『GANMA!』による読者への拡散が可能であることから、会社全体を通してマンガ家支援プラットフォームのようなポジションをとっています。ちなみに『GANMA!』のリリース時には、12名の作家と契約して12作品の掲載からスタートしていますが、現在では180作品を公開するまでに成長しています!
ー 他にも、昨年末にはサブスクリプションサービスをリリースされていますよね
大藪:
そうですね。 サブスクリプションモデルとなる『GANMA!プレミアム』を、2018年末にリリースしています。この取り組みは「新しいマンガ体験」を目指すことから始まっているのですが、その背景には「マンガに対する総接触時間をどのようにして増やしていくか」という考えがあります。
今の世の中は、マンガ以外にも面白いエンターテインメント体験が溢れているので、その中でどのように差別化していくのかが大事になってきます。そのような状況を踏まえると、能動的にユーザーが自分からマンガを探して読むという体験だけでなく、例えば「今月はこのマンガをお届けします!」というレコメンドを通して、「新たなマンガに出会う」という体験があっても良いと考えています。
そこでサブスクリプションモデルとして提供することで、ユーザーに偶然の出会いを感じてもらい、ストレスのない体験をしてもらうことを目指しています。
ー なるほど、ストレスのない体験の提供は継続して利用してもらうためにも大切そうですね!
福西:
なので、他にもこだわっている部分は多いです。例えば、スマホ利用に最適化した「ページ数」「コマ割」「文字サイズ」にしていたり、マンガを読む機能については会員登録不要で提供したりしていますね。
とにかく、ストレスなくマンガを読めることを意識したプロダクト開発を進めています!
『Repro』導入の決め手は”知人の評判”と”アップデート頻度”
ー どのような背景で『Repro』を検討されたのでしょうか?
福西:
『Repro』の導入前は、別のアプリマーケティングツールを利用していました。月額定額制のサービスではなく、プッシュ通知配信1通で〇円というような従量課金型のサービスだったのですが、ユーザー増加に伴って「コストが割高になってきたな」と当時は感じたのを覚えています。
加えて、ツール自体に機能不足な面があり、やりたい施策を実施出来ないという悩みもありました。例えば、アプリ内メッセージの配信をやりたいという声があがっても、施策を打てない。これはジレンマがありましたね。
これらの背景もあり、リプレイスを検討し始めました。
ー 数あるツールの中で、なぜ『Repro』を選んでいただけたのでしょうか?
福西:
大きくは2つポイントがあったと思います。
ひとつは、知人からの評判が良かったことです。もともと『Repro』は知人から紹介いただいたのですが、別の知り合いからも『Repro』の評判が良かったのが印象的でした。
加えて、アップデートが頻繁に行われることも魅力的でしたね。アプリはまだまだ変更が多い領域であり、ユーザーの使い方も変化していきます。これに対応していくことが必要で、アップデートが頻繁に行われる『Repro』であれば、変化にも対応していけそうという期待がありました!
これらを加味して、最終的に『Repro』の導入を決めました。
素早く導入! Reproのノウハウを短期間で吸収することを目指した
ー ちなみに導入の際に、困ったことなどはありませんでしたか?
福西:
実は、エンジニアメンバーからも『Repro』の評判は高かったんです。笑 導入を担当したメンバーからは「ドキュメントが整備されており、サポートも充実していたので、手間なく導入出来た!」と聞いています!
ー そう言っていただけると嬉しいです!
大藪:
一般的に、新しいツールの導入ってエンジニアからしたら「差し込み業務なことに加えて、面倒なことも多くて可能な限りやりたくない」って思うはずなんですよ。そういう意味では、エンジニアと仕事がしやすいツールだなとも改めて感じました。
あと、一度導入してしまえば、ほとんどエンジニアに依頼することなく分析や施策を実施出来るのは良いですよね。貴重なエンジニアのリソースを、プロダクトの改善に割けるようになるので、その点でも助かっています!
ー 導入後は、どのようにPDCAを回されたのでしょうか?
福西:
導入を決めた際に、例えば「リテンション率を改善したい」という方針はあったのですが、そもそも自分たちのリテンション率が高いのか低いのかという判断軸に自信がありませんでした。また、他の事例を見たり『Growth Hack Journal』を見ながら、施策案だったりを考えていましたが、どのようにPDCAを回していくかについても不安がありました
なので、3か月だけReproさんに運用支援を依頼して、そこでPDCAをどのように回すのかを身に着けながらインハウス化を進めていくという方針でまずは動き始めました。今振り返ると、この選択は正解だったなと感じています!
ー なるほど! どのような施策からスタートされたのでしょうか?
福西:
大きな流れとしては、新規ユーザーに対してメリットを訴求する施策からスタートしていまして、途中から作品を推す方針に変化しました。ちなみに、この流れになった背景としては、『GANMA!』ならではのオリジナルマンガの面白い作品があることをユーザーに早期に伝えることが必要なことにあります。
また、施策を実施していく上で、平日と休日ではユーザーの行動に違いがあることが明確になり、例えば「休日に一気読みしませんか?」というようなプッシュ通知を送るようになりましたね。
また、これもサポート的な部分になるのですが、「『Repro』をどのように設定して活用するのか」という提案をキックオフくらいのタイミングでいただけたのも良かったです。
よくあるのは、例えば開封率を上げれば良いという表面的なコンバージョンだけで考えられたものではなく、ファネルを前提に考えられていたのでPDCAを回す際に助かりました。『GANMA!』をちゃんと使ってもらって考えてもらった内容だったので、今でも参考にすることもあります。
私たちがやりたいと考えていたことをヒアリングいただき、どのように実現するかを全て提案いただけたのは本当に助かりました!
更なるレコメンドの最適化を目指して、機械学習にチャレンジ!
ー 弊社の運用支援の後はどのように施策を進められたんですか?
福西:
インハウスで施策のPDCAを回せるようになってからは、「常にユーザーとのコミュニケーションを見直していくこと」を意識しています。今では、担当が1日1回は施策の設定や数字の確認を行うくらいにはツールの活用が定着していますね。ちなみに、少し前は「毎日、何かしらのプッシュ通知かアプリ内メッセージを配信している」という時もありましたね。笑
今は、そこから進んで「機械学習を活用したマーケティング施策」の実施も進めています。
大藪:
最近は、機械学習プラットフォームである『DataRobot』を活用しながら、データを溜めて施策実施に活用しています! メインで進めているのが、「どのようにして新規ユーザーに最適なレコメンド配信を実現するか」という取り組みです。
福西:
これは弊社の中で、「早期に最適なコンテンツを訴求すれば継続率が上がるのではないか?」という仮説があったことから「仮説検証をやってみよう!」ということで進めています。
ユーザーごとに読みたいコンテンツは違うはずで、とはいえ、最適化なコンテンツが何かを人力だけ分析していくのは難しいことです。このような課題感は以前からあったので、仮説検証という形でまずは取り組んでみようと動いています。
ちなみに、2018年末のアプリリニューアルの際にもこの点は意識していまして、人気作品をユーザーに訴求するように改善しており、ここで取得したデータを活用しています。
ー 機械学習の取り組み、もう少し詳しくお聞きしたいです!
大藪:
具体的には、訴求するコンテンツの判断軸は読了率を見ています。機械学習を使ってユーザーに対して最適なコンテンツをお届けできていれば、レコメンドした作品を読了し、次の更新を楽しみにアプリを継続的に利用してくれると考えているからです。
実際に行う施策は『Repro』を活用して実施しているのですが、初日のユーザーデータを機械学習に活用し、ユーザーが次に読みやすい作品を予測して、その作品を2日目以降に配信するということをやっています。
(実際の施策例)ちなみに試しに1か月くらい実施した時のデータですが、初週のユーザーの平均読話数が9.3%改善していて、翌週の再訪率が2.5%改善しています。
今後は、さらに最適化を進めていくことで、より良い成果に繋がるようにしていければと考えていきたいですね!
ー お話を聞きながら、成長の秘訣として施策の実行スピードが早いことにあるなと感じています!
福西:
マーケティングにおいては、やってみないと分からないことが多いので、それなら素早くやってみようという意識は強いですね。もちろんリスクコントロールはしていますが、施策は思いついたら試しにやってみる方が良い成果に繋がるので、これは今後も継続していきます。
”マンガのサブスクリプション=『GANMA!』”を目指して、共に成長していく
ー 最後に、今後の展望についてお聞かせください!
福西:
マンガサービスのサブスクリプションモデルの現状として、市場にすぐに想起されるサービスがないと感じており、このポジションを取りたいという想いが強いです。
加えて、さらなるマネタイズの強化も進めていきたいと考えています。例えば、マンガ作品を活用したタイアップ広告などですね。この領域は、まだまだ可能性があるなと感じています。また、このようなタイアップを進めていくためにも、マンガ作家の支援や作品の多メディア展開なども進めていきます。
大藪:
個人的には、やはり機械学習を通じた最適なレコメンドの実現を目指していきたいなと考えています。そういえば、『Repro AI Labs』で実証実験されてましたよね。今後も新しい機能が出てくると思うので、そちらも活用していきたいなと思います。
ー ありがとうございます! 現在も実証実験を継続しているので、期待していただけると嬉しいです!
福西:
私も『Repro』でAIを活用した機能が実装されるのを楽しみにしています。笑 今後も『Repro』を活用しながら、共に成長していければと考えているので、引き続きよろしくお願いしますね!
ー 福西さん、大藪さん、お忙しいところありがとうございました!
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講演者紹介
and factory株式会社 青木 倫治 (あおき・りんじ)氏 取締役
自己紹介と事業の紹介
and factory株式会社の青木です、よろしくお願いします。
弊社では現在2つのマンガアプリを手掛けています。1つは株式会社スクウェア・エニックスと共同事業で運営しているアプリ『マンガUP!』です。2017年1月のローンチから現在まででDL数は約280万。月20万DLというペースでユーザーが増えています。ユーザーには男性が約70%と女性より多く、10代20代の若年層が約80%占めております。
もう1つは株式会社白泉社と共同事業で運営している『マンガPark』。2017年8月にローンチしたこのアプリは、現在のDL数が約110万、こちらも『マンガUP!』と同じペースでユーザーを着実に増やしていますね。『マンガPark』は『マンガUP!』と男女比が反転しており、女性ユーザーが約70%を占めています。年齢層は10代20代が約80%いますのでほぼ同じ。白泉社は、男性向けだけでなく女性向けに数多くの雑誌や媒体を持っているため、女性ユーザーにもリーチできています。
アプリ成長の本質はKPI
弊社はこれまでにアプリを50本以上運営してきましたが、どのアプリに対してもしっかりとしたKPIの設計をしています。アプリのグロースの基本はMAUが増えること。もちろん、DAUが増えることも大事ですので、ユーザー数が日々、どれだけ増えているかもチェックしています。
設定したKPIの中でARPUも重視しています。アプリをDLしたユーザーにどれだけ課金してもらうか、広告を踏んでもらうかなど、1人当たりの収益を意識することはアプリを成長させるためにも重要なことだからです。
媒体やメディアからすると、アプリは着々とDAUが伸ばせることが魅力。そのため弊社ではDAUを伸ばすことに注力し、ユーザーが翌日以降どれだけ再訪されたかを『Repro』を利用しながら全て数字で追っています。オーガニックの流入も大事ですので、広告がなくても自然流入が多い媒体を作れるように意識しています。
次に、出版社と協力して実施した4つの成功事例を紹介しましょう。
新規獲得にYouTuberとコラボする
マンガアプリのバナーでよく見かけるのは、どこでも見かけるようなデザインやユーザーの目をひくエログロ系ではないでしょうか。 弊社では、他とは少し違った視点で10代20代を確保する出稿をしています。その1つとして、有名YouTuber事務所とのコラボ企画を実施しました。
YouTuberの広告って「この商品を買ってみた」系の企画が多かったりしますよね。マンガアプリの場合、「このマンガアプリは面白いよ」と単純にマンガを紹介するだけではユーザーには響きません。そこで3組のYouTuberに『マンガUP!』を宣伝してもらい、その宣伝動画を『マンガUP!』内で人気投票するという企画を実施。見事1位を獲得したYouTuberには、『マンガUP!』で配信している「地獄の教頭」という作品にも登場していただきました。
これは、出版社と共同でアプリを運営している弊社ならではの企画です。この企画のために、出版社側がマンガ家さんと調整したり、ストーリー構成を考えてくれたりしました。何百万もの視聴者を抱えるYouTuberとコラボしたこの企画はマンガとの連動性も良く、たくさんの人にウケました。
YouTuberの利用はお金がかかりますが、単なる宣伝だけで終わらせず彼らをしっかり活用することでユーザーの満足度向上にもつながります。
プッシュ通知で継続率を高める
弊社は『Repro』を使ってプッシュ通知を配信しています。プッシュ通知はユーザーにとって煩わしく思われるケースもありますが、アプリ側から唯一宣伝できる手段でもあるため積極的に活用すべきだと思っています。弊社では、プッシュ通知によって普段読まれない作品の読者数が前週対比で13倍に増えたケースもありました。使い方次第ではこのように大きな効果が得られるのです。
『Repro』ではABCDテストで同時に4つの効果検証ができるんです。弊社ではターゲティングするユーザー軸はぶらさずに、異なるクリエイティブ訴求を4つ配信してどのクリエイティブが一番効果的だったか、リテンションが高かったかなど検証しています。
また全配信やセグメント配信を使い分けて、1週間起動してないユーザーだけにプッシュ通知を送ったり、DLしてから3日間後のユーザーにだけおすすめ作品を送るなど、ちょっとした工夫でユーザーのリテンション率を上げることができます。
何よりも作品選定が重要
アプリのUIやデザイン、コンテンツへの導線を作ることも大事ですが、最も重要なのはコンテンツの選定です。私たちが作品選定するポイントは2つあります。
アプリの可処分時間を考える
1つ目はアプリの可処分時間を考えること。現在はマンガアプリを含め、多様なアプリがユーザーの時間を取り合っています。短いとたった5分でアプリを閉じられてしまう。最近はどのアプリでもそうした傾向が見られますので、いかに継続して読んでもらえるかが鍵になってきます。
また、ストーリー展開が早くて面白いという理由から、雑誌や単行本では受けなかったタイトルがアプリでは受けるというケースもあるため、起動時間や滞在時間を考えながら作品選定をすると良いでしょう。
いかに1話目を読んでもらうか
2つ目のポイントは、いかに1話目をユーザーに読んでもらうか。これはあくまでアプリ視点の考え方ですが、ユーザーは筋書き通りに1話目にたどり着く訳ではありません。バナーやキャッチのイラストを見て気になったり、文言に引かれたりして、大半が感覚的な流入をしています。
アプリストアのランキングを眺めながら、「このアプリいいかも」と思ってダウンロードするのと同じで、ユーザーが刹那的に行動を起こすことを想定し1話目の導き方を考えましょう。 この時、作品選定と1話への導き方の組み合わせて考えることが大切です。
オリジナルのサムネイルを作成する
他のアプリでは作品の表紙やキャラクターにフォーカスしたサムネイルを多く見かけますが、弊社では全作品においてオリジナルのサムネイルを作成しています。それぞれ作品のキーとなるイラストを出版社から頂き、コピーをつけて、1つのタイトルにつき何枚もサムネイルを作りながらどのサムネイルだと一番読者数が増えるかを試しています。
最も読者数が増えたのが、『マンガUP!』の「アラクニド」というタイトル。元々スクウェア・エニックス内でも人気がありましたが、『マンガUP!』内で配信した結果、「鋼の錬金術師」に次ぐほどの人気タイトルへと育ちました。これは作品選定とバナー作成の組み合わせが上手くいった事例の一つです。
下3つは青年マンガ誌「ヤングアニマル」のタイトルで、もともと男性人気が高い作品。それを『マンガPark』でも配信したところ、女性ユーザーからも多くの支持をいただくことができました。 男性作品であっても、作品選定や女性でも興味を持つようなバナーのキャッチーさがあれば、同じように支持されるのかもしれません。
オリジナル連載も既存のコンテンツと同じ熱量で取り組んでおり、『マンガUP!』『マンガPark』どちらにおいても読者の傾向を意識しながらオリジナルの本数を増やしています。
作品接触機会を工夫し、ユーザーに複数作品の読者になってもらう
作品との接触機会を増やすために工夫したのは、広告を利用して作った「チラ見せ」コーナーです。他のマンガアプリでも数コマ見せて作品への興味喚起を促す「チラ見せ」のコーナーがありますが、弊社は広告出稿をしてCPI効果の高かったバナーを直売しました。
このバナーをタップすると、作品の詳細ページではなく、1話目がそのまま読める設定になっています。この設定による広告の二次利用により読者数が増え、良い成功事例となりました。
4つ目の施策をまとめると、まずはバナーのクリエイティブを回すこと。そしてどのバナーに効果があったかを見て、そのバナーをアプリ内でも見せること。この施策でユーザーの離脱を防ぎリテンション率を向上させることができました。
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課題 新規ユーザー獲得には成功するも、リテンション率に課題
弊社が提供する『コミックエス』は全巻無料が一つのウリで、ユーザーからお金は一切いただかず広告でマネタイズしています。リリース当初から海外展開を視野に入れており、海外だと海賊版の流通も多いので有料モデルだと戦えないなと考えたのが広告モデルを採用している理由です。
無料であることの敷居の低さやASOに関しては工夫して取り組んでいたこともあり、新規ユーザー獲得は順調でした。今でも新規インストールは一日4,000~5,000件あり、うち90%以上がストア内検索からです。
その反面、アプリの利用継続率には課題がありました。新しい漫画を日々追加したり「グルメ漫画特集」などの特集を行っているにもかかわらずユーザーにうまく訴求できていなかったため、定期的にアプリを訪れてくれるユーザーが少なかったんです。
アプリの解析には『Firebase』、プッシュ通知は『LogPush』を使っていたのですがどちらとも無料で利用できるのでとりあえず入れていたという感じで、あまり使えてはいませんでした。アプリ内でどんなユーザー行動をトラッキングすべきかがわからなかったのでイベント設計もやっておらず、基本的な指標しか取得できてなかったんです。
解析ができていないのでマーケティング施策も大味にならざるを得ず、全ユーザーに対して週に何回かプッシュ通知を送るだけ、その効果検証も満足にできていないという状態でした。
導入 手厚いサポート体制と豊富なノウハウが決め手に
1導入のきっかけ
アプリを数か月運用してそういった課題が出てきたときに知り合いの会社から「すごい良いツールがあるよ」と『Repro』を紹介してもらいました。アナリティクスとマーケティングの両方とも他ツールより高機能で、相互に連動してるのが魅力的でしたね。
機能も魅力的だったのですが、最終的に決め手になったのは導入後の手厚いサポートと『Repro』の持つアプリマーケティングのノウハウです。
悩んでいたイベント実装はカスタマーサクセスの担当者が「貴社アプリの場合はこのKPIを重視すべきなので、ここにイベントトラッキングを仕込むべきです」とアドバイスをくれますし、マーケティング施策に関しても支援してくれます。これまでの経験からもツールは使いこなさなければ意味がないと考えていたので、導入後も安心して任せられる会社だなと思ったのが一番のポイントです。
漫画アプリとして後発であり、大手出版社のバックアップもない弊社が漫画アプリ市場で戦っていくにはコンテンツ面の勝負では分が悪いと考えていたので、マーケティング面では他社より優れた取り組みをしようということでマーケティング支援も含めて利用を決めました。
『Repro』のアプリ内マーケティング支援サービスの概要。施策の策定から実行、効果検証、改善までを実施するサービスを提供している
2プッシュ通知やアプリ内メッセージの有効的な活用法
『Repro』のイベントトラッキングの実装が一通り終わったあと、アプリ内マーケティング支援のキックオフミーティングを行いました。
参考になったのは、ユーザーがアプリを使う際の一連の行動を「アプリ起動 → 漫画を探す → 漫画を読む」という大きく3段階に分け、各段階ごとにプッシュ通知やアプリ内メッセージのコミュニケーションをとるという考え方です。
例えばアプリを起動しても漫画を探す前に離脱しているユーザーは、そもそもアプリの操作方法やウリを理解していないことが離脱要因と考えられるので「ランキング機能」の紹介や「どれだけ読んでも無料」といった特徴を訴求するプッシュ通知を送ります。
一方で、漫画を読み終わったあとに離脱してしまうユーザーに対してはアプリの使い方を教える必要はないので、よく読んでいるジャンルの新作をレコメンドしたり全巻一気読みを促したりなど、より長く使い続けてくれるためのコミュニケーションを取ります。
『Repro』は漫画アプリの改善実績も多く、漫画アプリの成長フレームワークや重視するKPIを心得ています。運用を代行してくれるのはもちろん、アドバイザーとしても大変貴重な存在ですね。
効果 課題だったリテンション率が5%以上増加
1プッシュ通知を使って、ユーザーが毎日アプリを利用するきっかけづくりを行う
具体的な施策についてですが、一番の課題だった新規ユーザーの継続率を上げるための取り組みで成果が出たのはプッシュ通知のA/Bテスト機能を使った施策です。
キックオフの際に新規ユーザーに対して訴求するべきアプリの特徴を話しあい、「ランキング上位の漫画訴求」「無料で読めることの訴求」「特定のジャンルの訴求」など様々な軸でプッシュ通知を送り何が一番ユーザーに刺さるか検証することにしたのですが、同時に各訴求軸で送るプッシュ通知の文言を2パターンずつテストし、隔週で訴求軸と訴求文言の両方に関してPDCAサイクルを回しました。
新規有料への訴求軸を洗い出し、各訴求軸の見出しと本文に関してA/Bテストを実施。効果を隔週で検証した(※資料は実際のものと異なる)
「ランキング上位の漫画訴求」と「無料の訴求」どちらが開封率が高かったか、「無料の訴求」のほうが高かったのであればAとBどっちの文言が良かったのか。かなり緻密な作業になるのですが、『Repro』の担当者はこれを全て検証して定例MTGで報告と次の提案を持ってきてくれます。悪かった施策も「なぜうまくいかなかったか」をきちんと分析したうえで話してくれるので失敗も無駄にはならず、MTGのたびに気づきをもらえます。
結果的に2ヵ月弱で継続率は5%以上改善しました。アプリ内マーケティングの重要性を実感しましたね。
『Repro』導入前と導入後のリテンションレートを比較した図。アプリ内マーケティングを始めてから2ヵ月弱で5%以上の改善が見られた
2ターゲティングしたアプリ内メッセージで機能の利用率アップ
他に行った施策としては、アプリ内メッセージによるアプリの機能紹介です。編集部でキュレーションしている「イチオシ漫画特集」や読んだ漫画を振り返ることができる「マイボックス機能」などをまだ利用したことのないユーザーにアプリ内メッセージを表示し、利用の促進を図りました。
まだその機能を使ったことのないユーザーだけをターゲティングしてアプリ内メッセージを送信し、各機能の利用を促進
弊社は開発体制がそんなに強くないので、アプリのUIを改修して使ってほしい機能の利用度を上げるというのは難しい面があります。その点アプリ内メッセージは改修なしで簡単にユーザーに訴求できるのですごく重宝しています。
今はユーザーごとによく読んでいるジャンルを分析し、同じジャンルのオススメ作品をアプリ内メッセージでレコメンドするという施策を試してもらっています。やりたい施策がスピーディーに実行できるところが『Repro』の良いところですね。
あるジャンルをよく読んでいるユーザーに対してそのジャンルのオススメ作品をアプリ内メッセージで訴求。表示するユーザセグメント、アプリ内メッセージの表示タイミングを自由に変更できるのは『Repro』ならでは
3機能拡充や収益面の強化で、今後も漫画アプリで独自の地位を狙う
アプリの継続率が安定してきたので、今後は連載機能など機能面でも継続率を高めるための改修に投資したり、新しい広告フォーマットを試して収益面の強化も図っていきたいと思います。新機能の利用促進にもアプリ内メッセージを使う予定です。
これからマーケティング活動を本格化させる上で、業界最先端の手法を学べたアドバンテージは小さくないと思っています。これからも弊社アプリだからこそ読める漫画を提供し、読者を楽しませるだけではなくクリエイターも支援できるようなアプリであり続けたいですね。