はじめに
「創造で挑戦できる世界へ」をビジョンに掲げ、ショートドラマアプリ「BUMP」を展開するemole株式会社。2022年のローンチ以降、SNS上にアップするドラマの切り抜き動画を起点にユーザーを獲得し、2026年1月時点で累計300万ダウンロード、SNS総再生数は50億回を突破するなど、急速な成長を続けています。
1話1〜3分の短尺ドラマをスキマ時間で楽しめる「BUMP」は、SNSで気になった作品をすぐに視聴できるのが大きな魅力です。一方で、特定の作品だけ見て離脱するユーザーも少なくなく、アプリ全体としての回遊や継続利用につながりにくいという課題も抱えていました。
そこで同社は「7day完走率」(1週間以内に1作品を完走=最終話まで視聴するユーザーの割合)の向上を目標にRepro Appを導入し、ユーザー行動データに基づく改善を開始しました。アプリ内メッセージ機能を活用したクイックな検証を積み重ね、ユーザーごとに最適化した導線や訴求を設計した結果、同社は目標としていた完走率の改善を実現。さらに、本格的な機能開発に入る前にRepro Appで検証を行い、手応えのある施策のみを実装するという独自の開発プロセスも確立しました。
本記事では、BUMPのPdMを務めるemole株式会社 Product Div.の佐々木佑樹様と、運用を担当する同Div.の伊達彩乃様に、導入前の課題と取り組み内容、Repro App活用によって得られた成果までを伺いました。
「BUMP」iOS/Android
不倫・復讐、女性同士のマウント合戦、下剋上や正体隠しといった勧善懲悪など、幅広いジャンルのショートドラマやアニメ作品を配信。マンガアプリのように「待つと無料」のほか、1話単位での課金や広告視聴、全話見放題のサブスクリプションで楽しむことができる。BUMP公式アカウントから発信する切り抜き動画の再生回数は50億回(※2026年1月現在)を超え、20代〜30代の女性を中心とする幅広いユーザーに支持されている。
SNS流入は好調も、定着に課題。作品完走後の離脱をどう防ぐか

——まずは、貴社が提供する「BUMP」について教えてください。
佐々木 BUMPは、1話1~3分程度のショートドラマを楽しめるアプリです。サービスの強みは大きく3つあると考えています。まずは、マンガアプリのように複数の視聴方法を用意しており、ユーザーが自分に合ったスタイルで作品を楽しめる設計になっている点です。具体的には、完全無料の作品だけでなく、一定時間待てば次の話が無料で見られる「待つと無料」や、広告視聴による無料視聴、コインによる個別決済、さらには定額制のサブスクリプションなど、多様な選択肢を提供することで、視聴のハードルを下げています。
ふたつ目はSNSとの親和性の高さです。ショートドラマは、SNSで流れてきた切り抜きを見て「面白い」と思ったその瞬間に、いかにストレスなく本編へ誘導できるかが勝負です。ユーザーの関心は一瞬で移り変わってしまうため、SNS上の熱量を維持したままアプリでの本編視聴へスムーズにつなげられる導線を意識しています。
さらに、自社制作・共同制作・外部制作の作品を組み合わせたラインナップの幅広さも挙げられます。特定のジャンルに偏らず、「次に視聴したくなる作品も見つかる」状態を作れていることが、多くのユーザーから支持されている理由だと考えています。
——Repro Appを導入する前、どのような課題を感じていましたか?
佐々木 SNSを起点とした集客は好調で、新規ユーザーを継続的に獲得できてはいたのですが、その後の定着につながりにくい点が大きな課題でした。お目当ての作品は最後まで視聴してもらえるものの、ほかの作品へ回遊せず、そのまま離脱してしまうケースも多かったんです。
本来であれば、1作品をきっかけに複数の作品を継続的に楽しんでもらうことで、プラットフォームとして継続的な利用につながる構造を作る必要があります。当時は、流入の勢いが強い一方で、リテンションの面ではさらに伸ばせる余地があると考えていました。
——運用面での課題についても教えてください。
伊達 以前使っていたツールでは、施策の結果をもとに素早く改善サイクルを回すような運用が難しい状態でした。
たとえば、当時はプッシュ通知を送ることはできても、その結果として視聴や継続利用にどれだけつながったのかを、運用画面上で詳細に追うことができなくて。分析のために社内のエンジニアやアナリストの協力が必要になる場面も少なくありませんでした。
非エンジニアの運用担当者だけでは配信・振り返り・改善のサイクルを回すことができず、検証スピードが上がりにくいことには歯がゆさを感じていましたね。
——Repro Appを導入するにあたって、決め手となったポイントを教えてください。
佐々木 必要な機能がそろっていたことはもちろんですが、導入後のサポート体制も大きな決め手でした。BUMPは少人数で運営していて、社内に潤沢なリソースがあるわけではありません。そのため、単にツールを導入して終わりではなく、施策の優先順位付けや具体的な設定方法について、定例ミーティングやSlackでカスタマーサクセスの方に相談できることにも大きな価値を感じました。
「7day完走率」を最優先指標に。視聴を妨げる離脱ポイントの解消をめざして

——今回のプロジェクトでは、どのような考え方で戦略を組み立てたのでしょうか。
佐々木 まずはユーザーに「ショートドラマを最後まで見切る体験」を届けることが最優先だと考えました。その体験の質を測る指標として設定したのが、アプリ利用開始から1週間以内に1作品を全話視聴したユーザーの割合を示す「7day完走率」です。
完走体験は、その作品への満足だけでなく、他作品への回遊や継続利用、そしてその先の有料ユーザーへの転換にもつながります。そのため、まずはこの完走体験を安定して生み出せる状態を作ることに注力しました。
——具体的には、どのように施策を展開していったのですか?
佐々木 大きくふたつの方向性がありました。ひとつは、1作品目を最後まで見切れるようにすること。もうひとつは、その先で2作品目、3作品目と視聴が続いていくサイクルを作ることです。
SNSで話題の作品は、ユーザーを呼び込むための強力なフックになります。しかし、その作品を見ることだけが目的で来訪したユーザーは、1作品を見終えた瞬間に満足してアプリを離れてしまいがちです。特定の作品のファンである状態から、いかに「BUMPというプラットフォーム」のファンになってもらうか。そこが定着の分かれ目になります。
たとえば、作品の後半が有料になるタイミングで、ユーザーが壁を感じて立ち止まってしまうケースもあります。そこで、完全無料の作品を拡充したり、完走しやすい作品へ自然に誘導したりと、BUMP全体の中で視聴が続いていく導線を設計しました。「最後まで見たい」と思えるか、「待つと無料」や広告視聴といった選択肢を適切なタイミングで提示できているか。Reproさんとも壁打ちしながら、ユーザーが立ち止まる段差を一つひとつ解消していくイメージで施策を組み立てていきました。
ポップアップを活用した訴求改善で、ユーザーの「見たい」を後押し

——Repro Appを導入し、日々の運用はどのように変化しましたか。
伊達 以前はエンジニアに依頼していたプロセスを自分たちだけで完結できるようになり、プッシュ通知の運用スピードは目に見えて向上しました。
最近では、SNSで反応が良かった切り抜き動画のシーンやフレーズをすぐに通知の文言に活用して、その反応を確かめるといった検証も行っています。「あ、SNSで見かけたあのシーンだ」とユーザーが直感的に気づきやすいフックを鮮度が高いうちに差し込み、反応が良かったセリフを分析しながら、自分たちの手で勝ちパターンを見つけられるようになったのは、運用担当者としては大きな変化だと感じています。
実際に送られたプッシュ通知の例。話題のシーンやフレーズを組み込むことで、「SNSで見たのはこのドラマだったんだ」とアプリ視聴へ効果的に誘導できている。
——プッシュ通知以外で、特に効果の大きかった取り組みはありますか。
伊達 アプリ内メッセージ(ポップアップ表示)機能を活用した検証も、現場主導で小さく仮説検証を回せるようになった好例だと考えています。
具体的な成功事例として、作品を最後まで無料で楽しめる状態にあるユーザーへの訴求を見直したことがありました。それまでも作品詳細ページでは「無料」であることを示していましたが、ユーザーがそのメリットを十分に認識できていない懸念があったんです。
そこで、対象のユーザーがアプリを開いたタイミングで、あえて「この作品は全話無料で楽しめます」とストレートに訴求するポップアップを表示しました。すでに提供している機能であっても、あらためて言葉にして伝えることで、ユーザーの視聴意欲を後押しでき、結果的にCTRが向上しただけでなく、実際の完走率にもポジティブな変化が見られました。
誰に・いつ・何を伝えるかを最適化することで、これまで埋もれていた作品の価値をユーザーに届け、行動の変化につなげられる手応えを得られた事例ですね。
アプリ内メッセージ(ポップアップ表示)を活用して「全話無料」を訴求。CTRが高く、「出すか出さないかで7day完走率が大きく変わった」(伊達様)とユーザーの行動を後押したことがわかっている。
——プロダクト開発の進め方や、意思決定のプロセスにも変化があったと伺いました。
佐々木 はい。Repro Appを導入したことで、開発の優先順位を決める際の確度が以前とは大きく変わりました。
エンジニアのリソースは有限なので、仮説が不十分なまま重い機能開発に踏み切り、リリースしてみるまで「当たるか外れるかわからない」というギャンブルのような状況は、プロダクトにとっては大きなリスクです。以前は、そうした不確実なものに貴重な工数を投下することに対して、PdMとして常にどこか不安や危機感のようなものがありました。
現在は、本格的な実装に入る前に、まずRepro Appのポップアップを「疑似的な機能」としてフロントに差し込み、ユーザーの反応をダイレクトに確かめるようにしています。そこで数字として手応えをつかめたものだけを、自信を持ってプロダクトロードマップに載せる。
いわば、本実装の前に勝率をあらかじめ高めておくための検証基盤としてRepro Appを活用しているんです。このフローが確立されたことで、不確実なものにリソースを割く不安がなくなり、チーム全体が「これは勝てる」と納得感を持って施策に全エネルギーを注げるようになりました。
CRMツールを検証基盤に。確信を持って本実装へ進むための、BUMP独自のプロダクト運営

——今後はどのような取り組みに注力していきたいと考えていますか。
伊達 自分に合った作品に出会えていない。あるいは視聴を続けるうえで何かしらの心理的なハードルがある。そうした視聴を止めてしまう要因を今後も一つひとつ丁寧に解消していきたいと考えています。
佐々木 現在は売上を主要KPIに置いているのですが、視聴のサイクルを止めないことが、結果として課金施策の最適化にもつながると考えています。単に課金を促すのではなく、どのユーザーにどのマネタイズ手段が合うのかを丁寧に見極めていきたいですね。
中長期では、視聴作品数や課金率、単価の全体を見ながらLTVを改善していくことが目標です。サブスクリプション機能もリリースしたばかりなので、従来の従量課金との役割分担も含めて整理しながら、より長く愛されるプラットフォームをめざしていきます。
——最後に、同じように継続利用や回遊に課題を感じている方へメッセージをお願いします。
佐々木 まずは「ユーザーが何を目的にアプリを訪れ、その体験のどこに障壁があるのか」を、できるだけ解像度高く見ていくこと、そして「その仮説が本当に正しいのか」を最小限のリソースで検証できるような仕組みを作ることが大切だと考えています。
私たちの場合は、Repro Appを単なる配信ツールではなく、検証基盤として活用することで、開発の打率を上げることができました。施策の良し悪しを小さく、かつスピーディーに判断できる環境を整えられれば、結果として施策の精度やプロダクト開発全体の体験向上にもつなげられるのではないでしょうか。
左から emole株式会社 佐々木様、伊達様、Repro株式会社 小谷勇輔
※本記事は2026年3月12日時点の情報です。Repro株式会社または掲載企業の都合により、紹介されている機能やサービスの提供が終了している場合があります。あらかじめご了承ください。

