はじめに
2010年から日本将棋連盟が運営する『将棋連盟ライブ中継』は、プロ棋士の棋譜を毎日リアルタイムで配信するだけでなく、棋士による解説もあり、多くの将棋ファンに愛されているアプリ。
対象となる将棋業界は、近日の藤井七段のテレビ露出によって、「将棋人口は2017年だけでも570万人から700万人に増加した* 」と言われており、『将棋連盟ライブ中継』も、この新しい層を取り込んでいく施策を進めていらっしゃいます。
* 出展:『レジャー白書2018』
そんな日本将棋連盟ですが、実は2019年3月までは現役の棋士を主体にアプリの運営をしていたとのこと。そこで、今回は現役の棋士でもある遠山さんと将棋連盟 メディア部の高橋さんに『Repro』導入のきっかけや、どんな成果が出ているのか? について伺っていきました。
(聞き手:Repro カスタマーサクセスチーム 駒谷 (アマ3段))
「これからはモバイルだ!」2010年からアプリの立ち上げをスタートをした背景とは
―― 改めて、 将棋連盟で運営されているアプリについて教えてください!
高橋 将棋連盟は、将棋ファンの方々のために3つのアプリを運営しています。具体的には、アプリの役割は「知る」「見る」「指す」の3つでして、「将棋界の情報を知ることの出来るポータルアプリ」、「将棋の対局をリアルタイムで見れるアプリ」、「実際に将棋を指すことの出来るアプリ」の3つになっています。
――どのような背景でアプリを立ち上げられたのでしょうか?
遠山 2010年に話はさかのぼるのですが、将棋連盟の会長をされていた米長会長から「これからの時代はモバイルだ!」とお話があり、私が将棋連盟が運営するメディアの編集長をしていたこともあり、アプリの立ち上げに関わることになりました。
当時は、今ほどスマートフォンは浸透していなかったこともあったので、ガラケー版とスマホ版のサービスを両方やっていましたね。未経験の私としては、とてもバタバタした記憶があります。笑
――2010年からスマートフォンのアプリを作られていたんですね!
遠山 そうですね。当時はスマートフォンが世に出始めたくらいのタイミングだったので、珍しかったと思います!ちなみに、米長会長が本当にすごい人で、「インターネットの普及をきっかけに対局をどのように発信していくか」を検討する委員会をいち早く発足されたりもしています。そこから、ドワンゴ主催の叡王戦を立ち上げたりと、将棋界のインパクトのある出来事にはあらかた関わっていると思います。
――アプリ開発はどのように進められたのでしょうか?
遠山 実は、全て社内で開発しています。将棋業界では、コンピューター将棋が盛んでして、昔からの将棋ファンだったら誰もが知っている『柿木将棋』というソフトが人気だったりします。その制作者である柿木さんという方がいらっしゃるのですが、「将棋業界の発展に貢献したい!」ということでアプリ開発に全面的に協力してもらっています。多くの方に「外注ですか?」とよく聞かれるのですが、まさか社内で開発しているとは思わないですよね。笑
一度使えば便利さが体感できる『将棋連盟ライブ中継』
(インタビュー中に『将棋連盟ライブ中継』で対局を見始める皆さん)
――『将棋連盟ライブ中継』は、どんな体験がユーザーの心を捉えているのだと思いますか?
遠山 『将棋連盟ライブ中継』は、映像ではなく棋譜をライブで見れるところが特徴的なサービスになっています。将棋ファンは、Youtubeなどの動画サービスを使って新しい対局の様子を見て勉強しているという人が多いです。ですが、平日の時間や忙しい時に映像で対局はなかなか見れないですよね。その時に、『将棋連盟ライブ中継』であれば棋譜をサクッと見ることができるので、お昼休憩やトイレ休憩などの空いた時間にアプリを開いて対局の様子を見ることができるんです。
「動画があるから自分はいらないや」と思っていた人たちにも、一度アプリを使い始めてもらうとこの便利さに気づいていただけることが多いですね。
そういえば、ちょうど対局をやっているので見てみましょうか!
(数分間、夢中で『将棋連盟ライブ中継』を見続けていました)
高橋 この対局はなかなか面白いですね。
遠山 そこ、角で桂取りか!なかなか奇抜な手使うな〜。
――そろそろ本題に戻りましょうか。笑
新たなファンの獲得。そのためにはアプリ動線の改善が必要だった。
――『Repro』に興味をいただけたきっかけは何だったのでしょうか?
遠山 すみません。面白い手だったので見入ってしまいました。笑 『将棋連盟ライブ中継』は、サービスの開始当初から、ずっと社内の人間だけでアプリの運営をしてきました。社内にアプリのマーケティングに詳しい者がいなかったこともあり、口コミや、リアルのイベント等での告知だけで会員数を伸ばしていました。
そんな状況から、最近になって会員の伸び悩みを感じまして、代理店さんにお願いして広告の運用を始めたんです。しかし、広告で入ってくるユーザーには口コミでの経路ほど熱量がないことが多く、「アプリの動線の改善が必要だ!」と感じました。これを代理店さんに相談した時に、ご紹介いただいたのが『Repro』だったんです。
――『Repro』についてはどんな印象を持たれましたか?
遠山 ユーザー動線の分析や、プッシュ通知のターゲティングの部分で、うまく活用できるイメージが沸きました。また、サポートも厚くて伴走していけるイメージも持てました。それが導入を決めた理由ですね。
将棋ファンが喜ぶチュートリアルメッセージで新規ユーザーの課金率を30%改善。
――『Repro』を導入した後はどんな施策が印象的でしたか?
遠山 印象に残っている施策はいくつかあるのですが、一番記憶に残っている施策は、「会員登録から課金までの動線の中で、人気棋士が語りかけるフォーマットでチュートリアルメッセージを配信」したことです。棋士の写真を変えるといったA/Bテストを行いながら、新規ユーザーの課金到達率を30%も改善出来たのは嬉しかったですね!
具体的には、写真を「女流棋士」や「イケメン棋士」などのいくつかの軸で試しています。 女子高生などに聞いても「羽生九段」「加藤九段」「藤井聡太七段」この3名は知っているという人が多かったのですが、将棋ファンの反応が良い棋士が「トップ棋士」だったのは意外でした。
――それは意外ですね! 他にはどのような施策を行われましたか?
遠山 上記の施策に加えて、プッシュ通知の配信も実施しています。プッシュ通知はユーザーの7割に配信をして、残りの3割には配信をしないという形で効果を比較したのですが、プッシュ通知を配信した層の4ヵ月後リテンション率が約5%改善しており、より長期的にアプリを使い続けてくれるユーザーが増えています。
――プッシュ配信はどのような内容を配信されたのでしょうか?
遠山 配信内容は、「これから始まる注目の集まりそうな対局の話題」や「話題になっている戦法の話題」など将棋ファンが棋譜を見たくなるようなシーンを想像して、コンテンツを工夫するように心がけています。特に、話題になっている戦法を配信すると「過去の同じ棋士の同じ戦法の棋譜をまとめて見たい」というユーザーが再訪してくれているみたいですね。
情報収集はTwitterから。ユーザーの生の声を意識したプロダクト改善を
――注目の集まっている戦法や対局の話題は現役の棋士だからこそ知っている情報なのでしょうか?
遠山 もちろんそれもあるのですが、実はTwitterを使って情報収集をすることが多いです。最近ですと、数年ぶりに「雁木(がんぎ)*」という戦法が注目を集めているのですが、試しにプッシュ通知を配信したらユーザーの反応がよかったですね。
* 雁木 ・・・ 将棋の囲い戦法の1つ。鳥の雁の群れがジグザグに飛ぶ様子に例えてあらわす。
――そこまで活用されているんですね! なぜTwitterを活用しようと思われたのでしょうか?
遠山 将棋ファンは意外とTwitterを使っていることが多いんです。やはり、将棋の戦法や人気の棋士にも流行はあるので、可能な限りTwitterを見てキャッチアップしています!
全てはユーザーのために。短期的なKPIではなく長期的なユーザーへの投資を
――今後、担当が遠山さんから高橋さんに代わりますが、伝えておきたいことなどはありますか?
遠山 そうですね。数年、アプリの運用をしてきまして、手前味噌ではありますが思ったことがあります。アプリマーケティングは、数字を見るのは大事です。ですが、私たちには「将棋ファンを増やし、将棋ファンには将棋をもっと好きになってもらう」というテーマが根底にあります。
このテーマ対して出来ることはまだまだあるはずで、ユーザーのための施策を実施できていれば、たとえ短期的に数字が落ちていても、長期的に見れば意味はあるはずです。なので、ひとりの将棋ファンである高橋さんが「”ユーザーのためになると信じる”アプリマーケティング」を愚直にやっていけば良いと信じています!
高橋 まだまだ不安はありますが、ひとりの将棋ファンとして将棋界に貢献できるようにアプリを運営していきたいと思っています。また、『Repro』をもっと使いこなせるようになり、より将棋ファンのためになるアプリマーケティングを実施していきたいです!
※本記事は2019年9月13日時点の情報です。Repro株式会社または掲載企業の都合により、紹介されている機能やサービスの提供が終了している場合があります。あらかじめご了承ください。