アンバサダーマーケティングとは?定義や実践方法、企業にもたらすメリットを解説

Repro Journal編集部
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2020.02.05
アンバサダーマーケティングとは?定義や実践方法、企業にもたらすメリットを解説

目次

「アンバサダー」という言葉を見聞きしたことがある方は多いでしょう。特にInstagramやTwitter、FacebookなどのSNSでは「アンバサダーマーケティング」という手法が近年注目されています。そこで今回は、アンバサダーとはどういった存在なのかという基礎知識から、アンバサダーマーケティングの定義や活用のメリット、実践する際の注意点を解説します。また、アンバサダーマーケティングを活用した実際の事例もご紹介しましょう。

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アンバサダーとは?

アンバサダー(Ambassador)は直訳すると「大使」という意味ですが、マーケティングにおいては「宣伝大使」、つまり「自社のブランドに対して強い興味・関心を持ち、口コミなどの情報配信を積極的に行ってくれる企業から任命されたユーザー」のことを指します。後ほど説明しますが、ここで重要なのは「企業から任命された人」であるという点で、その活用には何らかの報酬を伴う場合もあります。

アンバサダーとインフルエンサーの違い

「アンバサダー」と似ているものに「インフルエンサー」という言葉があります。インフルエンサーは日本語に直訳すると「影響者・影響を与える人」という意味です。

これから転じて、特にTwitter、Instagram、FacebookなどのSNSで多数のフォロワーを抱え、広範囲に影響力のある人のことを指すようになりました。インフルエンサーは、その影響力を宣伝活動に転換するため、イベントへの参加やSNSへの投稿などを、報酬を得て請け負います。

アンバサダーとインフルエンサーは双方ともに情報発信力を活用し、企業・ブランドの存在を人々へ伝える点では同じといって良いでしょう。ただし、インフルエンサーの場合は、どれだけ多くの人に情報を届けられたかという「数」が重視されやすい傾向にあります。

一方アンバサダーの場合は、届けた数よりも、共感を受けて購買行動に至るユーザーを生み出せたかという「質」の面を重視される傾向があります。アンバサダーは「そのブランドを愛しており、心から支援活動を行っている」という点が重要になるため、知名度を活かしてさまざまな宣伝活動を請け負うインフルエンサーとは異なる部分が多いのが特徴です。

アンバサダーとアドボケイツの違い

もうひとつ、アンバサダーに類似する存在として「アドボケイツ」も近年注目されています。アドボケイツは日本語に直訳すると「擁護者・支持者」という意味ですが、マーケティングの領域では「自社のブランド・商品を熱狂的に支持して使い、自ら口コミを行ってくれるユーザー」を指す言葉です。

それぞれの違いについて見ていきましょう。まずアンバサダーは、企業から任命され、公式に宣伝活動を行う約束をしているユーザーです。契約を取り交わし、何らかの報酬が提供されることも多くあります。

一方のアドボケイツは、上述のように「そのブランドを熱狂的に支持してくれるユーザー」で、無報酬であっても積極的に自ら企業のブランディングに関わってくれます。彼らの多くは「自分の好きなブランドを育てる」「ブランディングに直接関わることができる」ということ自体に意義を感じているため、活動そのものに対して非常に意欲的である点が特徴といえるでしょう。

アンバサダーマーケティングとは

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アンバサダーマーケティングとは、自社の製品やサービスを利用するファンやリピーターに、自社に関する情報を積極的に発信しPRしてもらうことで、新規顧客の獲得を狙うマーケティング手法です。

元来、「アンバサダー(ambassador)」は「大使」を意味する英語であることは前述した通りですが、例えば都道府県の観光大使や商品の宣伝大使では、知名度や影響力を持った著名人や芸能人が選出されることがほとんどです。対して、アンバサダーマーケティングでは、PRを行う人物の影響力は問わず、あくまでも商品やサービスに対する「熱量」を持ったユーザーであるかどうかといった基準で選出されるというのがポイントです。

そして、熱量を持ったユーザーにPRしてもらうことによって、ファンの間での口コミの拡散やユーザーの自発的な情報拡散効果が期待できるというのがアンバサダーマーケティングの特徴といえます。

アンバサダーマーケティングの必要性と重視される背景

では、どうして、アンバサダーマーケティングが重要視されるようになってきたのでしょうか。その背景には情報を受け取る側の「意識の変化」があります。

インターネットやスマートフォン、各種SNSの発達により、現代人は日常的に大量の情報に触れるようになりました。メールやブログ、情報メディア、友人の投稿など、スキマ時間は常にスマートフォンをチェックしているという方も少なくないはずです。

こうした生活が一般的になる中で、各種媒体に掲載される「広告」の影響力は減少しているとされています。Web広告に関していえば、ある調査によると62.4%が「意識的にWeb広告をクリックしたことがない」と答えています。つまり、「生活者の半数以上は広告だけでは実際の購買行動へリーチしない」という結果が見られるのです。

さらに、ニールセンの「広告信頼度グローバル調査」によると、消費者が信頼している情報ソースとしては「家族や友人の推薦」「インターネット上の口コミ」が上位に並んでおり、「テレビ広告」「SNS広告」などはそれらを下回る順位となっていました。

このような状況もあり、企業は消費者にメッセージを届けるにあたって、「広告」に取って代わる新しい手段を模索する必要が生まれ、アンバサダーマーケティングが注目されるようになったのです。

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アンバサダーマーケティングのメリット

ではアンバサダーマーケティングを活用する実際のメリットとはどういったものなのでしょうか。具体的に確認してみましょう。

メリット1.ポジティブなPRを行うユーザーが確保できる

アンバサダーマーケティングでは、熱量の高いユーザーを起用することで、中長期にわたる宣伝効果が期待できます。

興味関心の度合いが高いファンユーザーは日頃からSNS上で情報発信をしており、この情報発信がもととなり、コミュニティ内の他ユーザーに情報が届けられます。また、タグ付け投稿からは、さらに広範囲の情報拡散が期待できるでしょう。

アンバサダーマーケティングは、従来の方式では届きにくかったユーザーにリーチするとともに、質の高いポジティブなユーザーを育てることにも繋がります。

メリット2.ユーザーのリアルな意見を吸い上げることができる

商品やサービスに関する意見を集めやすいことも、アンバサダーマーケティングの特徴です。従来のマーケティングでは、集まったユーザーの熱量にバラつきがあり、収集したデータにバラつきが出るのが一般的でした。データにバラつきがあると、参考にしづらいケースも多く、改善アクションにもなかなか活かせません。

対して、アンバサダーマーケティングを活用して集めたユーザーは熱量が高いため、より本質的な意見を集められます。また、アンバサダーが投稿した内容に付くコメントを参考にすることで、その他のユーザーの意見を吸い出すこともできるでしょう。そのため、サービスのブラッシュアップに活かせる有用な意見を収集しやすいという点もアンバサダーマーケティングの強みのひとつです。

メリット3.広告感が出にくい

情報過多の現代では、広告を忌避するユーザーも多くいます。これは、広告から出る「押し売り感」を嫌うなどが大きな理由のひとつです。インフルエンサーのPRコンテンツについても、嫌悪感を示す人は少なからずいます。

一方、アンバサダーマーケティングであれば、一般の個人アカウントからの発信であり、かつ投稿者自身が商品のファンであるため、広告感・押し売り感を抑えながらの情報発信が可能です。

アンバサダーマーケティングの実践方法とポイント

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自社のブランド・商品を広めてくれる「アンバサダー」ですが、実際に起用を検討する際にはどのような点に注目すると良いのでしょうか。ここでは、「探す」「選定する」「熱量を高める」の3点に絞って、アンバサダーにより良い働きをしてもらうためのポイントを解説していきます。

実践ポイント1.アンバサダーを探す・集める

アンバサダーを探す際に重要になるのが、自社のブランドストーリーに対して深く共感してくれる人物であることです。さらに、そのブランド・商品を愛用している人物であれば、より理想的なアンバサダー候補となるでしょう。

アンバサダーは長期的に自社ブランドに関する好意的な意見・情報を継続して発信し続けてもらうことになる存在です。一過性のブームではなく心からブランドに対して好意を持ち、企業と協力してブランディングを行える人材であることは、アンバサダーを探すうえで大切な前提条件となります。

具体的な探し方としては、ブログやInstagramを見て、自社商品に対してポジティブな投稿をしているユーザーを見つけるという方法が一般的でしょう。また、一般公募を行う場合もあります。それ以外にも、すでに会員システムなどがある場合、その中からロイヤルカスタマーを見つけるという方法もあります。

実践ポイント2.アンバサダーを選別する

起用されたアンバサダーと企業は、ブランディングをともに行う「仲間」として長期間付き合っていくことになります。そのため、こうした活動に対する意欲が強く、熱心に質の高いフィードバックを行ってくれる人材を起用する必要があります。一般の顧客と企業の間の橋渡し役として、「顧客目線」の率直な意見をしっかりと自社へ届けることができる資質も大切となります。

顧客目線の有益なフィードバックは、自社ブランドの改善・品質向上へ繋がる貴重な情報源です。新規顧客の獲得・ブランドそのものの長期的な成長を目指すうえでも、しっかりとフィードバックが行える人材を選ぶことが重要なポイントとなります。

実践ポイント3.アンバサダーの熱量を高める

アンバサダーを集めてからも、継続的な情報発信を促すための工夫が欠かせません。ブランドに関するキャンペーンの実施、イベントの開催など、さまざまな施策を実施しアンバサダーによる情報発信の機会を提供していきましょう。ユーザーが楽しめる企画であれば、アンバサダーの熱量が高まり、積極的に情報発信をしてくれるでしょう。

さらに、情報発信してもらった内容をコンテンツとしてブランド内で活用すれば、アンバサダーのモチベーションをより高め、次の企画への期待も生まれるといった好循環を生み出すことができます。

アンバサダーマーケティングの肝は、既存の顧客を大切に考えられるかどうかに尽きます。まずはアンバサダーとの良好な関係性を築いていていくことを念頭に置きましょう。アンバサダーの熱量が上がれば上がるほど、濃度の高い意見が続々と出てきます。そのためには、アンバサダーが商品を応援したいと思えるような体験を企業が提供していくべきです。

アンバサダーマーケティングの注意点

次に、実際にアンバサダーを活用する際の注意点についてご紹介します。

アンバサダーマーケティングを行うにあたって注意が必要なのは、ユーザーの選出です。例えば、Instagramでアンバサダーを探すのであれば、ユーザーのフォロワー数・エンゲージメント率・コメントの質などを指標に選定を行うと良いでしょう。特に、投稿に対しての「いいね」やコメントなどの反応率は、口コミを利用したアンバサダーマーケティングにとってキーファクターとなるでしょう。

また、単に数字の大きさに飛びつかず、本質的な数値を大切にすることも重要です。例えば、10万人のフォロワーを保有していて、平均100の「いいね!」が付くユーザーは、反応率が0.1%です。対して、1万人のフォロワーを保有していて、平均1,000のいいね!が付くユーザーの反応率は10%です。フォロワー数だけを見ると、前者の方が良いように見えますが、質の高さで見ると後者のユーザーの方が相応しいといえます。

他にも、自社の商品と世界観やターゲット層が合ったアンバサダーを選ぶべきです。したがって、普段から自社商品と同じジャンルのものを投稿しているユーザーから選ぶのがベターでしょう。自社商品がターゲットとするセグメントとアンバサダー候補のセグメント、フォロワーの属性についても調べておきましょう。

アンバサダーマーケティングの事例

アンバサダーマーケティングの概要だけでは、実際のイメージが付きにくいという方も少なくないでしょう。そこで最後に、アンバサダーマーケティングを積極的に実施して成果を上げたふたつの事例をご紹介します。

ネスレ日本の活用事例:ブランドバリュー確立に効果

ネスレ日本は、2014年より「ネスカフェアンバサダー」の展開を開始しました。かねてより「ネスカフェゴールドブレンド」の活性化を狙っていたネスレ日本は、2009年に「ネスカフェ バリスタ」の市場投入、売上高上位を獲得していました。

発売5年で200万台を突破した「ネスカフェ バリスタ」ですが、全家庭へのバリスタ普及の目標を掲げていたマーケティング担当者は「このペースでは60年近くかかる」と予測。そのため、より効果の高い施策を示す必要がありました。

当時、日本でのコーヒーの消費割合は家庭内が6割、家庭外が4割の6:4の比率でした。家庭外の中でも6割が職場で飲まれていることから、ネスレ日本はアンバサダー制度を利用してバリスタマシンを職場へと提供する施策を展開しました。ネスカフェはアンバサダーマーケティングを採用し、結果として10万人ものファンの獲得に成功しています。

ネスカフェのアンバサダーになる条件は、「ネスレの会員登録」「30文字以上の希望理由の入力」「一次選考の通過」「電話による選考結果の授受」です。アンバサダーになれば人気のマシンを職場で無料で使えて、本格コーヒーを約20円で楽しむことができます。ネスレ側からは「商品アンケートへの協力」「職場の同僚や上司とコーヒーを楽しんでいる写真を投稿すること」、このふたつをアンバサダーにお願いしました。

ネスレでは、アンバサダー募集を大々的にテレビCMやホームページで展開したことで、キャンペーンの急速な情報拡散に成功しました。段々とメディアの影響から口コミや紹介に変化し、アンバサダーサービスの利用者数が増加しました。

一方、職場の上司がサービスに積極的でないケースも浮かび上がってきました。そこで、ネスレの担当者が「出張デモサービス」で実際のマシンを企業に持っていき、説明や試飲を行う施策を実施。出張デモでの成約率は8割と好調で、結果的にアンバサダーとなり得る人材の確保に成功しています。

ハニーベイクド・ハム:市場への認知向上を加速

米国でも最大級のハムブランドとして知られるハニーベイクド・ハムは、自社の公式アカウントでアンバサダーのことを「ホームシェフ」と呼び、「ハニーベイクド・ハム ホームシェフ」を募集するキャンペーンを展開。ブランドコンセプトとマッチした応募者を「ホームシェフ」と認定して月に2回無料で各種ハムを提供し、それらの商品を使用した料理の画像・レシピを 「#ハニーベイクドハム」のハッシュタグとともに随時Instagramへ投稿してもらうようにしました。

Instagramは元々画像投稿を主とするメディアで、特に「見映え」を重視するユーザーが多いSNSです。アンバサダーのアカウントでも自主的にさまざまな工夫が凝らされたおしゃれなハム料理の画像が公開され、その見映えの良さからInstagramでの認知度向上に貢献しています。

この流れで、原宿のギャラリーでは国内のインスタグラマーを招いた試食会を実施。実際に商品の味を紹介するだけではなく、「ハニーベイクド・ハム」のブランドストーリーや日本国内では知名度の低いハムを使ったレシピなど、自社ブランドやより美味しくハム料理を楽しむ方法を伝える場を用意したのです。

実際にこの試食会の後、出席者たちは持ち帰ったハムを自宅で調理し、その画像を自身のアカウントで公開。感想も併せて投稿され、日本での「ハニーベイクド・ハム」への認知度を大きく向上させる取り組みとなりました。

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