「やりきる力」がなければ、成長はない。変わりゆく世界における、マーケティング組織のあり方とは【オウンドみんなでがんばるんジャー!#FINAL(後編)】

Repro Journal編集部
Repro Journal編集部
2020.08.12
「やりきる力」がなければ、成長はない。変わりゆく世界における、マーケティング組織のあり方とは【オウンドみんなでがんばるんジャー!#FINAL(後編)】

目次

「変わりゆく世界の中で、マーケ界のリーダーたちとこれからのオウンド戦略を考える」をテーマに開催されたウェビナー、『オウンドみんなでがんばるんジャー!』シリーズ。

2020年7月8日に開催された最終回第二部後編のテーマは、「(コロナ禍で)変わりゆく世界における、マーケティングの組織・育成・外部パートナーのあり方」。本記事では、当時の様子をレポートします。

<登壇者>
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 執行役員CMO&CIO 志賀智之
パーソルホールディングス株式会社 CDO 友澤大輔
アクティブ合同会社 CEO 藤原尚也
株式会社LIFULL「LIFULL HOME’S」事業本部ユニット長 菅野勇太
※志賀氏・菅野氏はZoom上からのディスカッション参加となりました。

<司会進行>
Repro株式会社CMO 中澤伸也

マーケティングは統合され、ゼネラリストが求められるように

中澤:昨今、コロナやDXの流れによって消費者も企業も大きく変化していると思います。これからどんな変化が起こっていくのか。マーケティングのあり方はどう変化していくべきなのか。そのために組織はどうあるべきなのか。今日はこの3点についてみなさんにお伺いしたいと思います。

友澤:時代が変わっても、マーケティングの本質は変わらないと思います。第一部で「マーケティングとは何ですか」という質問がありましたけど、僕は「愛」だと思っていて。相手を知り、好かれるためにどうコミュニケーションしていくかだと思うんです。

ただ、昨今はデジタルへの接触が増え、ユーザーとコミュニケーションを取る方法が多様化しています。そこにどれだけ順応し、コミュニケーションの選択肢を広げられるか。そこがポイントになると思います。

では、マーケティング組織はどう変化すればいいか。ポイントは何をコアにして、何をノンコアにするか明確にすることだと思います。今はサービスが多様化しているので、プロデュース力がこれまで以上に求められている。「これは社員がやる」「これは外部パートナーにお願いする」と業務の切り分けたうえで、組織を編成することが重要になると思います。

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菅野:私はIMC(統合型マーケティング・コミュニケーション)の重要性が高まると思います。たとえば、「ハンコ文化やめよう」という流れからもわかるように、昨今のユーザーは目的志向。ユーザーの視座に合わせて、組織やマーケターにはスマートにソリューションを組み合わせたり、よりスピーディーに課題を解決したりすることが求められていると感じています。

志賀:私は新規と既存、両方のバランスがより重要になると思っています。私の部署ではこれまでも集客からリピートまで統合的に追い続けてきましたが、新規を獲得してもバケツに穴が開いていたら「顧客基盤」を盤石にすることはできず事業の成長はありません。

藤原:私は消費者の変化に合わせたマーケティングが、これからは求められると思います。最近は「なぜそれが作られているのか」「どう作られているのか」「その商品がどう処分されていくのか」を気にするお客様が多く、コロナによってその流れが加速したと思います。

その中で、組織をどう作っていくか。ポイントはゼネラリストの採用・育成だと思います。菅野さんや志賀さんがおっしゃったように、これからの組織は統合的になっていく。各部署を横串で動かせる環境を作らないと顧客の変化に有機的に連携して対応できないので、全体を見ながら複数のことができるスキルが必要になっていきます。

わかりやすい例でいうと、最近は一個人のTweetをきっかけに世論が動き、政府が考え方を改めることもあるじゃないですか。これまでのように「SEOができます」「メールマーケティングが得意です」という特定の分野のスペシャリストだけを採用・育成するのではなく、従来の施策に加えSNSも活用できる人材を育成するとか。そういったことが求められていると思います。

評価項目の見直しやジョブローテーションで、統合的視点を育む

中澤:これだけマーケティングが複雑化し、組織が細分化される中で、マーケターはどう成長していけば良いのか。ゼネラリストをどう育成していけば良いのか。みなさんの意見を伺いたいです。

友澤:スペシャリストを否定はしませんが、たしかにSEOのスペシャリストを目指している人が、10年後も生き残るかというと難しいかもしれない。そういう意味では、集客からCRMまでコミットできる仕事に挑戦したり、上司であれば部下にそういうチャンスを与えたりすることは大事だと思います。

中澤:実際の組織だと「SEO担当」「メールマーケティング担当」と、媒体や施策ごとに役割分担されていることが多いと思うのですが、その中で、統合的な能力を身につけるにはどうすればいいのでしょうか。

菅野:方法はふたつあると思っています。ひとつは、統合的な視点を評価項目に組み込むこと。当社でもこれまでマネージャーにしか求めてこなかった統合的視点を、徐々にミドルやジュニア層にも求めようとしていて。ミドルやジュニア層の評価項目に「統合的視点」を組み込もうと思っています。

もうひとつは、CMO候補を選抜してローテーションで集客からリピートまで担当してもらう育成コースを作ること。意図的に複数のポジションを経験してもらうことで、縦割りの組織の中でもゼネラリストの育成ができると思っています。

藤原:私は成功した理由を言語化し、みんなの前で発表することだと思います。外資系企業にいた頃、「なぜそれが成功したのかベストプラクティスを残せ」と上司から口酸っぱく言われていたのですが、今思うとまったくその通りだと思います。成功した理由を探っていくと、他の仕事でも応用できる本質にたどり着くので。今でも支援するプロジェクト先では必ず四半期に一度ベストプラクティスをまとめて、それを人前で発表してもらうようにしています。


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友澤:うちの場合、全員がゼネラリストである必要はありません。パーソルホールディンクスにも横串の組織はあるのですが、個人単位の役割を見ると、やっぱり分業されていることが多い。アプリのDMが得意な人やシステム開発が得意な人など、いろんなスペシャリストがいる。組織として横のつながりがあるので、顧客の変化にも対応できる受け皿があるんです。ただ、社内やグループ間でのジョブチェンジを促して、一人ひとりがスキルの幅を広げてほしいとは思います。

「やりきる力」がなければ、成長はない

中澤:では、これから統合的にものを見る立場になる方が、マーケターとして成長していくために一番必要な能力は何だと思いますか。

藤原「やり切る力」ですね。小さな仕事でも任された以上、自分なりに工夫してやり切ること。これが何より大切です。精一杯取り組んだ結果、失敗することもあるかもしれません。しかしその過程や挑戦する姿勢が、その人の成長につながると思っています。

友澤:まったくその通りだと思います。以前SNSで話題になった「賢さの階段」ってご存知ですか。よくメンバーに話すんですけど、賢さには「逃げ出す」→「否定する」→「行動しない」→「行動してみる」→「理解できる」→「実行できる」→「説明できる」→「伝えられる」→「影響を与える」という階段があって、どんなにいいアイデアを着想してもやりきれなかったら意味がない。間違ってもいいので、どうやってやり切るのか、やったことをどうやって言語化して次に活かすのか。そこが重要だと思います。

image0_engagemetee 賢さの階段
引用: https://iwata.nyny.co.jp/po上手くいかないと思いますsts/3871624/

志賀:私は怖がらずにやってみる勇気だと思います。失敗を恐れない人は、総じて自分を過信していないし、学習意欲が高い。自分なりの仮説をもって、スピード感をもってやれる人はやっぱり伸びると思います。

もうひとつは、点だけでなく、線と面で物事を考える力。自分の仕事がどういう文脈で、どう他の人とつながっているのか考えられる人はやっぱり伸びていますね。与えられた仕事やミッションだけではなく、自分のやっていることに意味や文脈を持たせてインプット/アウトプットしている人はやりきるし、自分の仕事を大事にしています。

菅野:私も志賀さんに同意です。目指すところに点を置いて、そこからどうやって線にしていくか考える人は伸びると思います。特にリモート環境を逆手にとっている人は成長が著しい。逆に指示待ちの人はリモート環境だと日々の行動が見え辛く、置き去りになりがちです。

貯めたデータを、現場が活用しやすいUXに落とし込む

中澤:一方で、これから求められるスキルについてはどうですか。

藤原:これからはデータの貯め方や活用方法を経営層やエンジニアだけではなく、店舗の売り場スタッフたちも考える必要がある。そこで必要なのが、データやテクノロジーの知識やスキルだと思います。結局データって過去のデータでしかないわけで、仮説にしかならない。過去のデータをもとにレコメンドを送るだけなら、昔と何も変わらないじゃないですか。

でもリアルタイムなデータは、本当に今起こっている事実。それをどう使うかがOMOの勝敗を分ける気がしていて。たとえば、自動販売機でもいいと思うんですけど、ネットの何倍にもなるリアルデータをどうリアルタイムでお客様に提供するか。そこが難しいところであり、DXの課題だと思っています。

友澤:うちの会社でもデータ集計はできるけど、それをどう現場に装着するかは難しい。アプリ化したほうがいいのか、もはや分析するのではなくてリマインドする方がいいのかとか。体験に落とし込まないとなかなか上手くいかないと思います。

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中澤:私も営業が長いのでわかります。現場がデータを自然に使うにはデータを見ている感覚すら与えてはダメで。UXまで考えないといけないんですよね。

藤原:たとえばゴルフをしているお客様のデータを取って、移動中に「あなたのスイングはこうだから、次はこのクラブを振ってみたら」とリアルタイムにアドバイスできたら、帰り際にそのゴルフクラブを買ってもらえると思うんですよ。キャディさんがいろんなデータを活用して、おすすめのゴルフクラブを提案する未来も遠くなさそうですよね。

志賀:そこでいうと、最近のゴルフクラブにはセンサーがついていて、飛距離がわかるんですよ。今まではキャディさんが「残り何ヤードだからこれで打てば」と教えてくれたところを、「そんなに飛ばないからこっちで打ちなよ」とAIが教えてくれるようになる。そんな未来がそこまできています。

あと、これは個人情報がかかわるので難しいと思うのですが、藤原さんのお店で取ったお客様の寸法データをうちのショップにも共有できたら、より良いUXが生まれると思うんです。アパレルやECをやっていると、サイズ違いや色違いでの返品が後を絶たない。ただ、法整備がされ、お客様の許可もいただけるなら、寸法データなどの交換はありだと思います。

マーケティング、それは「愛」

中澤:結局マーケターのミッションは変わったと思っていいのでしょうか。

藤原:変わったと思います。今マーケターに求められているのは、さっき友澤さんが言っていた「愛」だと思っていて。結局私たちはお客様を幸せにしたいわけじゃないですか。そのためには、お客様の気持ちを知って共感してもらう必要があるのですが、従来のテクニック重視のマーケティングでは難しいと思っています。

友澤:その通りですね。データが見えるようになったことで、それが高いか、低いか、キャップでどう、みたいな話をしてしまうんです。それこそ、統合マーケティングが必要だと思うのですが、販促に振り切ったものを戻すことは難しい。それに私たちは、リターゲティングに慣れすぎている。ユーザーは便利さや価格より、ストーリーや共感を求めているのに。追いかけられる広告は見たくないし、「さっき買ったじゃん」みたいな広告が出てくると、気分悪いじゃないですか。

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