Apple Search Adsにおけるアカウント構築の科学

Repro Journal編集部
Repro Journal編集部
2023.12.15
Apple Search Adsの効果的な活用方法とは

目次

基礎が弱ければ、Apple Search Ads(ASA)で優れたキャンペーンを作成することはできません。「もっと結果は良くなるはずだった。そう思いながらも、結局は何が原因なのかがわからない」。そんな課題に直面しているユーザー獲得担当者が少なくありません。このようなトラブルの多くは、実はアカウントの構築が疎かになっていることが原因です。

ASAのアカウントを存分に活用したいなら、アカウント構築の「科学」を身につける必要があります。パフォーマンスや広告とユーザーの関連性に重要な影響を与える可能性があるからです。

この記事では、「セマンティックベース」のアプローチと「バリューベース」のアプローチという、ASAのアカウント構築に関するふたつの基本的なアプローチをご紹介します。

この記事は、Revenue Catのブログ ”The science of account structure in Apple Search Ads: How to do it right” を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on Revenue Wire in English under the permission from the company.

Apple Search Adsのアカウントを構築する前に考慮すべきこと

優れたApple Search Adsアカウントはユーザー獲得担当者の最高の味方です。適切なアカウント構造は一石三鳥の効果を発揮するからです。

  • 適切なアカウント構造は、ユーザーがバナー広告と遭遇した際の体験を向上させ、それに伴って、広告とユーザーの関連性も向上させます。
  • 広告のパフォーマンスをより明確に把握することで透明性が向上し、最適化が必要な部分をより理解することができます。
  • 上記すべてが規模の拡大と利益創出に寄与します。

ASAアカウントの適切な構築が大きな恩恵をもたらすのは明らかです。ただし、いくつかの重要な要素を考慮に入れなければいけません。

  • キャンペーンの目標
  • 国と地域
  • 広告とユーザーの関連性
  • 過去のパフォーマンス
  • 予算
  • オーディエンスのセグメンテーション

これらはASAのアカウントを構築する際に考慮しなければならない6つの重要な要素です。それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。

キャンペーンの目標

ASAにおいて、キーワードを分類する際の前提となる基本的なキャンペーン目標は4種類あり、その目標に基づいてアカウント構築をする必要があります。

  • Brand protection(ブランド保護):競合他社からブランドを守る
  • Competitor(競合):競合他社が利用しているキーワードにアプローチする
  • Prospecting(予想):ブランド認知およびエンゲージメントを向上させる
  • Discovery(発見):新規キーワードに対策する
キャンペーン目標 Brand protection Competitor Prospecting Discovery
キャンペーンの定義 競合他社からブランドを守る 競合他社が利用しているキーワードにアプローチする ブランド認知およびエンゲージメントを向上させる 新規キーワードに対策する
キャンペーン名 ブランドキャンペーン 競合キャンペーン カテゴリキャンペーン 調査キャンペーン

この考え方は、確かに効果的で構築も簡単ですが、すべてのアカウントにそれが当てはまるわけではありません。

広告予算が少ないシンプルなアカウントであれば、間違いなくメリットを享受することができるでしょう。しかし、高度な構造のアカウントや複雑な目標に対しては別のフレームワークが必要になるかもしれないのです。

国と地域

ASAの運用を開始する際にもうひとつ考えなければならないことは、どの市場をターゲットにするのかです。あなたのターゲットはひとつの地域だけでしょうか。それとももっと大きな市場を夢見ているでしょうか。

もし後者であるならば、それぞれの国や地域に対して異なるキャンペーンを用意する必要があることを覚えておきましょう。国・地域別にキャンペーンを作成する際のチェックポイントをまとめたので参考にしてください。

  1. ターゲットとなる地域の言語を十分に理解したうえで、それに応じてキーワードを調整してください。
  2. 同じキーワードを使用しても、文化が異なればユーザーの反応は異なります。アジアで人気のキーワードであっても、ヨーロッパで人気が出るとは限りません。逆もまた然りです。
  3. アプリのメタデータを見直して、それぞれの国や地域にローカライズしましょう。

上記のようなポイントを考慮することで、効果的なキャンペーンを作成することができるようになります。それが各国・地域のユーザー獲得につながり、アプリをグローバルな存在にするのです。

広告とユーザーの関連性

広告とユーザーの関連性は、入札に勝つための重要な役割を担っています。ポイントはふたつ。テクニカルな関連性(広告とキーワードの一致、キャンペーンのターゲティング設定、広告ランディングページの品質など)と、キーワード自体とユーザーとの関連性(広告が検索ユーザーに対してどれだけ適しているか)です。

テクニカルな関連性は、広告がどれだけキーワードに対して親和性があるかを意味しています。ASAアカウント外部の影響を受けるもので、アプリカテゴリとメタデータが決定的な影響を与えるとされています。カスタムプロダクトページの活用はこの関連性を引き上げる絶好の機会になるでしょう。

キーワード自体とユーザーの関連性に関しては、キーワードと広告バナーの結びつきの強さに依存します。ASAアカウント内で最適なキーワード、クリエイティブ、および対象ユーザーの組み合わせを見つけ、広告グループを用いて管理することが重要です。

過去のパフォーマンス

パフォーマンスが異なるキーワードをひとつの広告キャンペーンにまとめてしまうアプリマーケターがいますが、それは大きな間違いです。目的の異なる不要なデータが混在してしまい、正確なパフォーマンス計測ができなくなってしまうのです。

キーワードは過去のパフォーマンス、例えば過去の広告キャンペーンで獲得したユーザーのLTVとキーワードの関係性などを分析し、それを基に分類するのが賢明な手法です。

予算

ASAのアカウント構築において、予算管理はとても重要なものです。ASAではキャンペーンレベルで予算を設定できます。ここでの賢明な選択は、最も成果の良いキーワードに優先して投資し、残りの予算をそうでないキーワードに分配することです。

この段落で予算に言及したのは、広告予算がアカウント構築におけるアプローチの一部であることを覚えておいてほしいからです。月間$1,000も投資しないのであれば、複雑な構成にする必要はありません。予算が大きくなったときにこそ、アカウント構築の最適化は効果を発揮します。キャンペーンを作成・管理するときに、柔軟性が生まれるからです。

オーディエンスのセグメンテーション

最後はオーディエンスのセグメンテーションです。ASAでは主に新規ユーザーと復帰ユーザーのふたつをターゲットに設定することができます。

ASAアカウントを構築する際、まずはコアオーディエンスが誰であるかを念頭に置くのが基本です。ただし、コアオーディエンス以外の一般ユーザーを切り捨ててしまうのは得策ではありません。アプリが特定の領域やテーマに焦点を絞っているのならなおさらです。一般ユーザーを追い求めることで、インプレッション数が向上し、App Storeでの順位上昇を期待できます。新規CTA

セマンティックベースのアプローチとは

ここまで紹介してきたシンプルなアカウント構築の手法とは別に、試してみる価値のあるアプローチがふたつあります。それが、「セマンティックベース」と「バリューベース」のアカウント構築です。まずは、セマンティックベースのアプローチから解説していきましょう。

セマンティックベースのアプローチは、パフォーマンスの良いキーワードの抽出・利用に向いているため、インプレッション数の増加に役立ちます。基本的には、ASAアカウントを5つの要素、またはキャンペーンに分類して運用していきます。

  1. ブランドキャンペーン:ブランドキーワードを主体とした、最も関心の高いユーザーを獲得するためのキャンペーン。同時に、競合他社からブランドを保護する役割も担っています。
  2. カテゴリキャンペーン:ブランドキーワードではなく、説明的なキーワードを主体とするキャンペーン。問題に対する解決策を探しているユーザーをターゲットとしています。
  3. 競合キャンペーン: 競合アプリで課題の解決をしようとしているユーザーの関心を惹きつけるためのキーワードを基に構築します。
  4. 調査キャンペーン:部分一致キーワードや検索マッチを使って新たなキーワードを発掘します。
  5. プロキシキャンペーン:プロキシキャンペーンは、調査キャンペーンで取得したキーワードを評価し、MMP(Mobile Measurement Partners)でそのパフォーマンスを明確に把握するためのものです。

セマンティックベースでアカウントを構築する方法

セマンティックベースのアカウントを構築するためには、ブランド、一般、競合の各キャンペーンのキーワードをすべて調査キャンペーンに入れ、完全一致除外のキーワードとして設定する必要があります。これによってデータの希薄化を防ぐことができます。

次に、ブランド、一般、競合キャンペーンに対応するキーワード(完全一致)を調査キャンペーン(部分一致)に追加しましょう。

その作業が終わったら、調査キャンペーンでは十分にパフォーマンスデータを得られないキーワードを抽出します。そして、それらを完全一致キーワードとしてプロキシキャンペーンに追加してください。

続いてプロキシキャンペーンに追加したキーワードのパフォーマンスを計測しましょう。パフォーマンスの高いキーワードはブランド、一般、競合キャンペーンのいずれかに追加します。パフォーマンスの低いキーワードについては停止するのがよいでしょう。

■セマンティックベースのアカウント構築の概略図

セマンティックベースのアカウント構築の概略図

下の図はセマンティックベースのアカウント構造をユーザータイプ(新規ユーザー、復帰ユーザー、全ユーザー)別に細分化したものです。ブランド、一般、競合の各キャンペーンに別々の広告グループを設定することを提案しています。なお、調査キャンペーンとプロキシーキャンペーンには手をつけないでおきましょう。

■セマンティックベースのアカウント構築の概略図(ユーザータイプ別)

セマンティックベースのアカウント構築の概略図(ユーザータイプ別)

また、テーマ別の広告グループ(ユーザーの検索意図に基づく広告グループ)を作成したいときは、テーマごとにユーザーを分類することが重要です。

予算管理の観点でいうと、セマンティックベースのアカウントに最適な戦略はブランドキーワード重視です。最も関心の高いユーザーの注意を引きくために予算を投下し、残った予算を他のキーワードに分配しましょう。

セマンティックベースのアカウント構築についてのまとめ

ASAにおけるセマンティックベースのアカウント構築は、アカウントを整理してインプレッション数を増大させるためのシンプルで効果的な方法といえます。設定は簡単で、結果もついてきます。上記で説明したような、キーワードの移動・調整を週次で行えば、パフォーマンスは最適化されていくでしょう。

この方法論は、業界ではよく知られたアカウント構築の手法です。例えば、Phitureもセマンティックベースのアプローチについて、数多くポジティブな発信をしています。試してみる価値はあるはずです。

バリューベースのアプローチとは

セマンティックベースのアカウント構造も優れていますが、選択肢はひとつだけではありません。SplitMetricsはバリューベースのアプローチも推奨しています。このアプローチは、キーワードの価値に応じてキャンペーンを分類する手法です。この文脈において価値はユーザーと密接に結びついています。これらのキーワードを検索するユーザーがもたらす価値に応じてキーワードをグループ化するのです。

アカウント構造の話に戻りましょう。ベストプラクティスは以下のようにアカウントを構築することです。

  1. ブランドキャンペーン
    できるだけ多くの予算をこのキャンペーンの入札に充て、価値の高いユーザーの獲得に注力します。
  2. 調査キャンペーン
    検索マッチおよび部分一致を通じて、Tier1にない新たな検索キーワードを掘り起こし、特定することを目指します(この構造における「Tier」の意味は後述しています)。
  3. Tiers
    バリューベースのアカウント構築における特徴的な設計です。LTVとキーワードを結びつけて、キーワードの価値を階層化するのです。Tierを定義するためには各キーワードのLTVを計算しなくてはいけませんが、最終的に予算をさらに上手に管理できるようになります。新規CTA

バリューベースでアカウントを構築する方法

ここからは、ASAにおけるバリューベースのアカウントをセットアップするためのガイドです。まずはブランドキャンペーンに目を向けてみましょう。自社で投資し得る最高の入札額を設定してください。価値の高い顧客になる可能性の高いユーザーを獲得することは絶対条件です。

続いてTierの分類に目を向けます。第一にキーワードをどのような考え方でグループ化するのかを理解する必要があります。IncipiaのGabe Kwakyiが作成した、ユーザーとキーワードの分布ピラミッドを見てみましょう。

バリューベースのアカウント構造

Tier1キャンペーンには、LTVの高いユーザーを取り込むような完全一致キーワードを設定します。できるだけ多くのトラフィックを得るために、競争力のある(かなり高い)入札を行うとよいでしょう。

Tier2はいわゆる中程度のキャンペーンです。平均的な価値のキーワードで平均的な入札額を設定しましょう。

Tier3キャンペーンは最も価値の低いキーワードであり、入札額も低く設定するべきです。より多くの階層があったほうが便利なのであればTier4やTier5も追加で作成しましょう。

これらのキャンペーンを効果的に管理するためには、キーワードをLTVごとに整理・分類し、それぞれに入札額を設定する必要があります。この手法はキーワードの価値に応じて入札をコントロールするための一助になるでしょう。整理・分類の例を用意したのでご覧ください。

Tier広告グループ分け

なお、調査キャンペーンにはTier1やTier2のキャンペーンと同程度の入札額を設定してください。新たな検索キーワードを発見するために、競争力を維持する必要があるからです。新規キーワードを開拓するためには、それなりの投資をしなければいけないことを意味しています。

新規キーワードが集まり始めたら、そのバリューに応じて、Tierキャンペーンに分けましょう。完全一致で追加され、調査キャンペーンにおける除外キーワードとして設定されていることを確認してください。

■バリューベースのアカウント構築の概略図

バリューベースのアカウント構築の概略図

予算管理はセマンティックベースで説明したようなウォーターフォール型の投資分配がよいでしょう。ピラミッド全体に予算を配分しますが、最も価値をもたらすキーワードの優先度を高める形です。

バリューベースのアカウント構築についてのまとめ

バリューベースのアカウント構造は、適切に戦略を立てれば、より高いROI(投資利益率)と効果的な規模の拡大をもたらす可能性があります。ただし、様々な理由から、バリューベースのアカウントの構築・維持は困難であるとされています。

第一にピラミッドの下方へとウォーターフォール型で予算を分配することは非常に困難です。例えば最も価値の大きなキーワードが最もスケールしない場合があり、逆のケースも往々にしてあるからです。

ふたつ目の理由は、キーワードの価値が絶えず変化してしまうからです。キーワードの価値とTierが正しく構成されているかを確認・維持し続ける努力が求められます。

3つ目の理由として挙げられるのは、予算が限られている場合、広告から得られるリターンに対して、アカウント構築・維持の負担が大きくなりすぎてしまいがちであることです。

とはいえ、バリューベースアカウントの構築は、大きな可能性を秘め、メリットも多いので、上記のような障害にくじけずチャレンジしてみてもよいでしょう。

まとめ

ASAアカウントを、自分たちが使いやすい構造に整えることは賢い選択だといえます。

ふたつのアプローチを比較すると、構築の容易さでは、セマンティックベースに軍配が上がります。また、セマンティックベースのアカウント構築は、最も実績のあるアカウント構造のひとつでもあります。

バリューベースのアプローチは、セマンティックベースに比べると構築が困難です。最良の結果につながるように、キーワードの価値を常にモニターする必要があるからです。

これらふたつのアプローチ、どちらかを選択する場合には、それぞれのメリット・デメリットを見極め、自社にとって最適なほうを選択することが重要です。新規CTA

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