なぜほとんどのプッシュ通知は読まれないのか ~その理由と対処法~

Repro Journal編集部
Repro Journal編集部
2025.08.28
なぜほとんどのプッシュ通知は読まれないのか ~その理由と対処法~

目次

アメリカのスマートフォンユーザーは、1日に平均46件ものプッシュ通知を受け取っています。そして、全体の60%が通知を許可しているにもかかわらず、通知に反応するユーザーはわずか4%しかいません。この数字をよく考えてみてください。

もしあなたの配信するプッシュ通知がユーザーに無視されたり、アプリをアンインストールされるきっかけになっているなら、それは努力が足りないせいではありません。本当の問題は、多くのプッシュ通知がユーザーとの「つながり」のためではなく、「配信」のために作られている点なのです。

今日のユーザーは「理解されている」と感じたいのです。そのような関係を築くためには、すべてのメッセージにおいて「意図」「タイミング」「共感」が最適化されていなければなりません。本記事では、あなたのプッシュ通知が無視されてしまう本当の理由と対策について見ていきます。

この記事は、OneSignalのブログ “Why Most Push Notifications Go Unread (and What to Do About It)” を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。

【1】「会話」ではなく「看板」になっている

プッシュ通知は、モバイルチャネルの中でも最も誤解されやすいコミュニケーション手段のひとつです。全ユーザーに直接リーチできる手段があると、「多人数にアプローチできる露出手段ができた」と短絡的に考えてしまいがちです。しかし、プッシュ通知を看板のように扱ってしまうと、ユーザーはハイウェイにある広告と同じように、それを完全に無視してしまいます。

ここに本質的な問題があります。多くのプッシュ通知の戦略は、「自分たちが伝えたいこと」を中心に組み立てられており、「その瞬間にユーザーが聞きたいこと、必要としていること」が抜け落ちているのです。

プッシュ通知は「個人的な小さな会話を生み出すきっかけ」であるべき。ユーザーがどんな状態にいるのかを理解したうえで、それに応じたタイミング、内容、文脈でメッセージを届ける必要があるわけです。例えば、行動に基づいてパーソナライズされた通知は、ユーザーのリアルに根差しているため、コンバージョン率は高くなります。

効果的なパーソナライズ、セグメントの基点となる行動の一部を紹介しましょう。

  • 初回アクション(アプリの初回起動、初回起動時の商品の閲覧・検索クエリなど)
  • 離脱ポイント(カート放棄、フォーム入力の中断、オンボーディングステップの離脱など)
  • 繰り返された行動(アプリの起動頻度、購入回数、チェックインの継続など)

【図】NG:看板・広告的なプッシュ通知の例

【図】OK:個人宛にパーソナライズされたプッシュ通知の例

【2】価値を証明せずにただ求めているだけ

あなたのアプリがインストール直後にデフォルトのポップアップでプッシュ通知の許可を求めているとしたら、すぐにでも改善すべきです。多くの新規ユーザーは、その時点ではまだアプリの本当の価値を理解していない可能性が高いからです。ドアが開く前から無理やり家に上がり込もうとするようなものです……マナーを守りましょう。

今の時代、ユーザーはプライバシーに敏感であらゆる選択肢に囲まれています。信頼は通貨のようなもの。そしてその信頼はシステムのポップアップだけでは得られません。最初の体験が「有用で」「丁寧で」「関連性が高い」と感じられてはじめて築かれていくものです。

プッシュ通知の許可がほしいなら、「それを許可する価値がある」ことをユーザーに示す必要があります。すぐに許可を求めるのではなく、ユーザーが「得られるメリット」をまずは示しましょう。アプリによってプッシュ通知にを許可するメリットは異なりますが、下のように自分に問いかけてみてください。

  • あなたのアプリは、スキー場でのリアルタイムの雪質情報を届けられますか?
  • あなたのアプリは、ユーザーの嗜好に合わせたフラッシュセール情報を届けられますか?
  • あなたのアプリは、ユーザーの賭け履歴に合わせた、試合当日のオッズ更新をリアルタイムで届けられますか?

ここで有効なのが、システムのポップアップが表示される前に、プッシュ通知を有効にする価値をユーザーに伝えるアプリ内メッセージを出すことです。これにより、ユーザーの期待値を適切に設定できるだけでなく、許可率を大幅に向上させられます。

重要なのは、「量」ではなく「価値」で導くことなのです。

【図】NG:システムポップアップでのプッシュ通知許諾

【図】OK:プッシュ通知許諾のポップアップを出す前にユーザーメリットを示す

【3】ユーザーの都合を考えずに配信している

残念ながら、どれほど精巧に作られたプッシュメッセージであっても、タイミングを誤れば意味がありません。送信が早すぎても遅すぎてもNG。ユーザーが求める文脈に合っていなければ、どれだけパーソナライズされた通知でも「ただの迷惑」に変わってしまいます。

ユーザーは、「あなたのチームやシステムの都合」ではなく、「自分が反応しやすいタイミング」でメッセージが届くことを期待しています。覚えておいてください。「良いタイミングは意識されないが、悪いタイミングは決して忘れられない」ということを。

「チームにとって都合が良いから」という理由で午前10時に一斉配信をするのではなく、次のような問いを立てるべきです。

  • このユーザーは普段いつアプリを開いているのか?
  • いまそのユーザーのタイムゾーンは午前3時ではないか?
  • 類似のキャンペーンにはどの時間帯に反応していたか?

こうした小さな判断の積み重ねが、通知の拒否を減らし、タップ率を上げ、コンバージョンの増大といった実際の成果に直結していきます。

【図】NG:ユーザーが寝ている時間帯にプッシュ通知を配信

【図】OK:ユーザーがアプリを利用している時間帯を狙ってプッシュ通知を配信

【4】メッセージが汎用的すぎて人間味がない

「新着メッセージがあります」や「お見逃しなく!」といったプッシュ通知は、あまりにも漠然としていて、もはやノイズに近い存在です。こうした通知は、ユーザーの好奇心や自分事感、関連性に訴えかけることもなく、ただ注意を引くためだけの通知になってしまっています。

しかし最近のユーザーは、どんなに小さなやり取りでもパーソナライズされていることを期待しています。そして、それはプッシュ通知にも当てはまります。

すべてのプッシュ通知は、「プラットフォーム」ではなく「人間」としてユーザーに語りかけるチャンスです。ユーザーはその違いを確実に感じ取っています。定型文に頼るのではなく、プッシュ通知の内容には以下を反映させるべきです。

  • ユーザーの好み、行動、購入履歴
  • ブランドの声とユーザーの文脈に合ったトーン
  • ただのリマインダーではなく、価値や興味を与えるメッセージ

【グラフ】パーソナライズがどのような軸で実施されているかの調査結果

送信ボタンを押す前に自問してください。「自分がこれを受け取ったらワクワクするか?」と。答えが「いいえ」なら、おそらく他のユーザーも同じです。

【図】NG:単純にカート内に商品があることを伝えるプッシュ通知

【図】OK:カート内に残っている商品の詳細を伝え行動を促すプッシュ通知

【5】プッシュ通知を送りすぎている(逆に少なすぎている)

メッセージが多すぎると、ユーザーは通知をミュートするか離脱します。プッシュ通知が少なすぎると、ユーザーはあなたの存在を忘れてしまいます。大切なのはユーザーが飽きず、負担にもならず、離脱もしないように、通知の頻度を調整することです。

適切なプッシュ通知の頻度は様々な要素に依存します。例えば、アプリの用途(毎日使うユーティリティか、週1回程度のチェックイン型か)、ユーザーのライフサイクル上のポジション、コンテンツの新しさ、関連性、魅力の高さなどが挙げられます。

重要なのは「適切な頻度」は一律ではなく、アプリのジャンルや送信するメッセージによって異なるという点です。だからこそ、テスト、セグメント、管理が重要なのです。

頻度をA/Bテストし、頻度制限(フリーケンシーキャップ)を導入し、セグメントごとに調整しましょう。また、「沈黙は金」と決めつけてもいけません。タイミングの良い再エンゲージメント通知が、ユーザー離脱を防ぐ最後の一手になることもあります。

【6】複数チャネルでのコミュニケーションを忘れている

プッシュ通知はそれ自体で強力なコミュニケーションチャネルですが万能ではありません。ユーザーはひとつのチャネルの中だけで生活しているわけではないのに、なぜあなたのメッセージはひとつのチャネルに閉じているのでしょうか。

エンゲージメント戦略のすべてをプッシュ通知だけに依存しているのなら、それはユーザー接触の可能性やコンバージョンのチャンスを最大限に活用できていないということです。プッシュ通知は「火花」にはなれても、それだけで「炎」にはなれません。

プッシュ通知は、次のような他のチャネルと組み合わせて活用しましょう。

  • アプリ内メッセージ:アプリ起動中にリアルタイムにユーザーを誘導できる
  • メール:詳細な情報提供や領収書、購入確認のメッセージ送付に最適
  • SMS(もしくはRCS):受信・開封タイミングが重要で注目度の高い通知に有効
  • Live Activities:継続的に確認できる簡易なアップデートを表示するのに適している

【図】メッセージングのチャネルを複数組み合わせることを重要性

複数チャネルで展開されるメッセージングは、その内容の記憶定着を強くし、ブランドへの親近感を醸成し、ユーザーとつながる機会をより多く創出します。

【7】本当に重要な指標を測定していない

正直にいいましょう。開封率は追跡しやすい指標ですが、それだけでは真実を把握することはできません。あなたが本当に目指すべき“北極星(True North)”は、ユーザー行動の変化、長期的な定着、持続可能な収益成長です。

もしかすると、True Northのほかに、「True Northwest」や「True Northeast」も必要かもしれません。しかし実際には、多くのチームが表面的な指標だけでプッシュ通知の成果を判断し、真のインパクトを見逃しています。

「開封されたか?」ではなく、自分にこう問いかけましょう。

  • プッシュ通知の配信によって、ユーザーはアプリを起動したか?
  • プッシュ通知の配信がコンバージョンにつながったか?
  • ユーザーの離脱を防げたか、LTV(顧客生涯価値)が向上したか?

無視される存在から、エンゲージされる存在へ

プッシュ通知の戦略が「成長の仕組み」ではなく「当てずっぽうのゲーム」のように感じられるなら、それは見直しのサインです。もうノイズを送るのはやめましょう。そしてこれからは、ユーザーが本当に求めるメッセージを届けていきましょう。

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