ABC分析とは?活用する目的と分析方法・注意点について解説

Repro Journal編集部
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2020.02.19
ABC分析とは?活用する目的と分析方法・注意点について解説

目次

商品を売り上げへの貢献度が高い順にグループ分けすることによって、コスト削減・効率的な在庫管理を図るABC分析。経営戦略の立案やマーケティング強化のための重要な手法です。この記事では、ABC分析の基本情報・目的・活用場面・分析方法、注意点について詳しく解説します。

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ABC分析とは

ABC分析とは、自社の製品・サービスを売り上げへの貢献度が高い順からA、B、Cにグループ分けして管理・分析する手法です。貢献度という度合いに着目した分析手法なので、「重点分析」と呼ばれることもあります。

例えば、売り上げに最も貢献するAグループの商品は常に在庫を用意しておく必要があるでしょう。在庫がなければ機会損失の危険性が高くなるからです。続いて、重要度が中程度のBグループの商品は現状維持にとどめ、在庫切れが近づいた段階で発注します。また、重要度が低いCグループの商品は在庫が切れたら発注、あるいは取り扱いをやめるという判断が可能です。

ベースにあるのは「パレートの法則」

パレートの法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した、経済において全体の数値の大部分は一部の要素が生み出している、という法則です。「80:20の法則」や「ばらつきの法則」と呼ばれることもあります。

この法則に基づくと、店舗の売り上げの8割は2割の商品から生み出されていると捉えることができるでしょう。例えば、月の売り上げが1,000万円、商品が100種類の場合、800万円分の売り上げを20種類の商品で生み出していることになります。

このように、商品の売り上げをマーケティングに当てはめると、品質向上すべきリストが10項目あれば、そのうちの上位2項目を改善すれば8割の効果を得られるという解釈が可能です。すべての商品の品質向上をしなくても、売り上げを支えている上位の2商品を改善すれば、コストを大幅に抑えられ、売り上げも向上させることができます。

売り上げに貢献している商品を明らかにし、重要度の高いものにより力を入れるABC分析は、このパレートの法則をベースにしています。

ABC分析の目的

ABC分析の目的は、商品やサービスの売り上げを効率化して企業の経営力を高めることにあります。

重要度が高いAグループの商品は、消費者の目に留まりやすい場所に置く、宣伝に力を入れるなどして売れ行きをさらに伸ばすための戦略を練ります。また、Aグループの商品で欠品が起きてしまうと企業の売り上げに大きく影響するため、絶対に欠品が起きないような在庫管理が必要となります。

次に重要度の高いBグループについては、在庫管理における重要度は中程度です。定期的な発注や在庫が切れそうな時に発注するといった対応で問題ないでしょう。商品の宣伝や売り場面積についても、現状から大きく変える必要はありません。

一方、最も重要度が低いCグループの商品については、積極的な在庫の確保はせず、仕入れ量の引き下げや陳列スペースの縮小なども視野に入れましょう。経営的に大きな利益をもたらさないものや、かえってマイナスに作用する商品に合理的な対応をすることによって総体的な売り上げの向上・効率化を図ることが目指されます。

このようにABC分析は、特定の商品の在庫管理精度を向上させたり、売り場面積拡大を検討したりする際の重要な指標となります。

ABC分析の活用シーン

ABC分析は現状を可視化して把握できるシンプルな手法のため、あらゆるシーンで活用することができます。ここでは、いくつかの活用シーンをご紹介します。

活用例1.文具店

  • Aグループ=(ボールペン、サインペン)
  • Bグループ=(鉛筆、シャープペン、消しゴム)
  • Cグループ=(筆箱、定規)

売り上げやコスト、不良品率といったさまざまなデータによる商品のグループ分けを行いました。Aグループの商品の在庫確保を優先することで欠品をなくすと同時に、Cグループの仕入れすぎを未然に防ぐことができました。

活用例2 居酒屋

売れ筋メニューを識別化するためにABC分析を実施。各メニューの売上高と販売数を基に重要度が高い順にグループ化をしました。分析結果は、AグループとBグループのメニューは商品のクオリティと在庫強化を、Cグループのメニューはクーポンの配布による売上改善を図る、などの今後の課題に活かされます。さらに、「メインメニュー」「サイドメニュー」「ドリンクメニュー」など種別ごとにも分析を実施したことによって、さらなる細分化を図りました。

売り上げに貢献している商品の把握と顧客の格付けができたことによって、以下のような対策を取ることができました。

  • CM強化、DM送付、店舗での配置の見直しといったマーケティング強化
  • 欠品防止などの在庫管理の注力
  • 人材と時間配分の増加
  • ボリュームディスカウントの持ち掛けや取引先の変更など、コストの見直し

その他にも、売り上げへの貢献度が際立つ顧客との関係強化を図ることや、商品ごとの在庫金額のグループ分けによって売上貢献度との比較が容易になりました。

ABC分析の方法

ABC分析はグループ分類後、パレート図を作成します。その際、Excelを用いるとより効率的に分析することができるのでおすすめです。ここでは、売上分析に活用できるABC分析の手法について解説します。

ABCのグループに分類

グループ分けは以下の手順で行います。

・構成比を計算する

商品全体の売上金額、粗利額、販売個数などのデータをまとめ、売上金額の多い順に並べます。次に、その商品が全体の売り上げに占める割合を示す「構成比」を以下の式で求めましょう。

売上構成=比対象商品の売上金額÷全体の売上金額

・累計構成比を算出する

次に、各構成比の合計である累計構成比を算出します。

売上金額の多い順に、構成比を合算していくことで累積構成比は算出されます。

商品 売り上げ 構成比 累積構成比
A 100 33% 33%
B 70 23% 56%
C 60 20% 76%
D 40 13% 89%
以下略      

・累積構成比を基に分類する

次に、累積構成比を基にA、B、Cのグループに分けます。Aグループが全体の売上金額の7割までを占めている、売り上げへの貢献度が高い商品です。

  • Aグループ:7割までの商品(重要度:高)
  • Bグループ:7割~9割の商品(重要度:中)
  • Cグループ:9割~10割の商品(重要度:低)

ABC分析は、このように貢献度の高い順にグループ分けをして重要度を可視化する手法です。ここでは「売り上げ」に焦点を当てていますが、事業によっては「販売個数」や「粗利額」などを指標にするべき場合もあるでしょう。事業内容に応じてABC分析の指標を定めてください。

パレート図の作成

ABC分析を行った後は、パレート図を作成します。パレート図は分類の内容をグラフであらわしたものです。商品の貢献度、影響度などが表現しやすく、原因や問題点の絞り込みに有効な方法です。

順序としては、まずABC分析の結果を一覧にまとめたABC分類表を作成します。利益の貢献度に応じてA、B、Cで分類し、色分けをすると良いでしょう。

その後にABC分類表を元にグラフ化します。パレート図は、売り上げと累計構成比を棒グラフと折れ線グラフで表します。パレート図を作成する時は、表計算ソフトを使えば比較的容易に作成が可能です。

例えばExcelでは、グラフ作成のテンプレートにパレート図が用意されているので、そちらを利用するとスムーズに作成することができます。abc-analysis_1参考:パレート図とは| エクセルによるパレート図作り方

ABC分析の注意点

商品管理・売上向上に高い効果を発揮するABC分析ですが、その反面注意すべき点もあります。以下で詳しくご紹介します。

Cグループの商品が他グループに貢献している場合がある

ABC分析を行った結果、Aグループ商品の売り上げをさらに伸ばすためにCグループ商品を淘汰する施策が必要となるかもしれません。しかしそうした施策は、時に全体の売り上げを下げてしまう結果になる恐れがあります。

何故かというと、Aグループが売れているのはCグループがあったから、という場合も存在するからです。

飲食店を例にご説明します。メニューのAグループにパスタが、Cグループにサラダがあったとします。パスタが売れているのはサラダがあるためだったとしましょう。この場合もしもサラダをなくしてしまうと、両方を求めていた人がお店に来なくなってしまう、ということが起こり得ます。

ABC分析によりサラダが「死に筋」として結論付けられたとしても、サラダはパスタと強く結びついていて、これがなくなるとパスタの売り上げに響くかもしれません。そうなると、この商品同士の関連性を無視することはできません。

このようにCグループにある商品に関して対応策を錬る際には、他商品との関連性も注視して検討する必要があるのです。

ロングテール戦略の場合はCグループも重要に

ABC分析ではAグループに分類される主力商品を「ヘッド」、売り上げが低いCグループの死に筋商品を「テール」と呼びます。

Cグループに入った商品の中には残しておくべきものもあり、長い目で見た売上構成比の大きさによって淘汰すべきか否かが判断されます。

このように短期間では貢献度が低くとも、長い期間で合計すると大きな売上構成比を占めることを「ロングテールの法則」といいます。

売り場面積に限りがある実店舗では、できれば「死に筋」の商品は置きたくありません。一方で実店舗を持たないネットショップでは、Cグループの商品を除外する施策が有効ではない場合があります。インターネットの普及により購買行動が変化している昨今、ネットショップでは取り扱う商品が多いほど検索にヒットしやすくなり、購入される可能性が高くなります。ニッチな商品は流行り廃りに左右されず一定の需要が常にあるため、売り上げは低くとも安定して商品を販売することができるのです。また、ネットショップならば在庫管理コストも抑えられるため、たとえCグループの商品の在庫を抱えていても大きな負担にはなりません。

このような「ロングテール戦略」の商品では、ABC分析のCグループについても慎重に施策を検討する必要があります。そのため実店舗におけるCグループの商品に対する施策も、ロングテールの法則を鑑みた施策を取るのが良いでしょう。

一過性の人気や季節性のある商品に注意

ABC分析を行う際頭に入れておくべきこととして、「一過性の人気によって売れた商品」や「季節性のある商品」の存在があります。これらは、一定の期間だけ売り上げが大きくなる商品です。例えば季節ものやメディアに取り上げられた流行りの商品などは、その時だけ売り上げが急増します。

こうした商品は、その期間以外では下位ランクでも一時的にAグループに入ることがあるため、在庫管理をしっかり行うことが必要です。また分析時点では一過性の人気と思われる売れ筋商品であっても、人気が継続すれば定番商品となる可能性も十分にあり得ます。

こうした点からABC分析を行う際には、「全体の分析」と「一過性の分析」の2通りの分析を行っておくことをおすすめします。

さまざまな指標を使って分析する ~「クロスABC分析」のすすめ

ABC分析を行うときには、「売上高」だけでなく「利益率」や「販売個数」などさまざまな指標を使って、複数の視点から分析を加えていくことが大切です。なぜなら、よく売れる商品なので売上高で見るとAグループに入れるべき場合であっても、原価率が高いため粗利を稼げず、利益率を指標に立てるとBグループにとどまるといったことが少なくないからです。売上高の大きいものが、必ずしも利益を稼いでいるとは限らないのです。

もしこれに気づかずにこの商品を看板商品として出し続けてしまうと、「売り上げが好調であるにもかかわらず、思ったほど利益が伸びていかない」ということになりかねません。こういった事態を防ぐためには、売り上げのみの分析で管理するのではなく、利益率の観点を分析に採り入れていく必要があります。

こうした異なる指標を用いて複数のABC分析を組み合わせる手法のことを「クロスABC分析」といいます。クロスABC分析の活用によって現状を多面的に捉えることができるので、より精度の高い分析と効果的な販売戦略の構築が可能になるでしょう。

ABC分析は万能薬ではない

クロスABC分析での複眼的視座を保ち続けることの大切さは、ABC分析自体にも当てはまります。

これまで見てきた通り、ABC分析は、在庫管理の適正化を通じて商品やサービスの売り上げなどを効率化し、企業や店舗の経営力を高めることを目指すうえで大きく貢献してくれることは間違いありません。ただ、ABC分析も数ある分析方法のうちのひとつに過ぎません。

これまでにも有効性が確立された多くの分析方法が出されてきました。そして、これからも優れた分析手法が生み出されていくことでしょう。ABC分析は万能ではありません。さまざまな分析方法を採り入れ、また組み合わせていくことで、どのやり方が自社にとって最適であるのかをよく検討することが肝要です。こうした柔軟な姿勢が分析の精度を高め、効率的な在庫管理・顧客管理を可能にしてくれるでしょう。

まとめ

ABC分析がいかに利益につながる施策かご理解いただけたでしょうか。ABC分析の結果はパレート図にすることで、一目で売れ筋・死に筋の商品がどれなのかがわかります。このパレート図は今後の戦略を練るための重要なデータです。

一方でABC分析は在庫管理・売り上げに貢献できる反面、一過性の商品についてはより細かな分析が必要となります。メリット・注意点を加味したうえでABC分析を行い、事業収益向上のための施策を検討されてみてはいかがでしょうか。

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