2025年12月の「スマホ新法」施行に向け、日本国内でもアプリから外部の決済手段への直接誘導の解禁が現実味を帯びてきました。一方、直接誘導以外の手段であればアプリ外決済自体は可能ということもあり、すでに外部決済を導入しているアプリは日本国内でも増加しているようです。そこで今回は、日本国内のアプリマーケットにおけるアプリ外決済先行事例の中から、今後アプリ外決済の導入を考えている事業者にとっても明日から真似したくなるヒントになりそうな、3つのゲームアプリの試みについてご紹介します。
アプリ外決済の事例は日本国内のアプリ市場にも
「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(スマホ新法)の施行を前に、Repro Journalではこれまでにもスマホ新法とアプリ外決済に関する情報をご紹介してきました。
全体像や歴史をご紹介した「『スマホ新法』で収益モデルが変わる?アプリ外決済の歴史と、外部決済シフトのためのチェックポイント」に続き、9月17日掲載の「『アプリ外決済』を導入すると何が変わる? 3つの海外事例から、その影響と可能性をチェック」では、「Fortnite」をめぐるEpic Games対Appleの判決を受けて様々な試みを行った3つの海外アプリの事例をご紹介しました。
一方、日本国内のアプリマーケットを見てみると、すでにアプリ外の決済手段(Webストア、チャージセンターなど)を導入しているものも多く存在します。現時点ではアプリから直接外部の決済手段に誘導することこそ困難ではあるものの、何らかの方法でWeb上に販売チャネルを設け、購入内容をアプリと連携させることは不可能ではありません。
アプリ外決済の場合、アプリ内決済(IAP)で必要な最大30%にもなるプラットフォーム(Apple、Google)への手数料負担を回避できることから、ユーザーに向け「アプリで購入するより〇%お得」といった金額や割引率などのメリットを提示しているケースが多いようです。しかしシンプルに定量的なメリットの訴求だけではなく、アプリ外ならではの様々な工夫が見え隠れするケースも存在しています。
ダイヤ+20%とアイテム付与が選べる「キノコ伝説:勇者と魔法のランプ」
世界的にヒットした大人気放置系ゲーム「キノコ伝説:勇者と魔法のランプ」は、ゲーム内通貨として使える「ダイヤ」をアプリ内決済で購入可能です。この「ダイヤ」は公式サイトのチャージセンター(アプリ外決済)でも販売されていて、大変わかりやすいことに、アプリ内でもアプリ外でも「1ダイヤ=1円」のレートとなっています。
さらに公式サイトのチャージセンターで購入する場合、初回限定ですが「+20%」のダイヤ付与を受けることが可能です(例:1,000円分の購入でダイヤ1,200個付与)。
※画像引用:キノコ伝説:勇者と魔法のランプ(Joy Nice Games))
ダイヤ付与以外の選択肢として、アイテム類が提供されるオプションも提供されており、例えば158,800円分購入すると、158,800ダイヤに加え、宝石×20,000、加速券×90、仲間召喚券×240、技能召喚券×240の追加ギフトが付与されるなど、アプリ内決済にはない様々なメリットが享受できるように設定されていることがわかります。
冒頭でお伝えした通り、現在は日本国内のアプリ市場においてはアプリから外部決済のためのチャージセンターには直接リンクすることができません。しかし、公式SNSからの誘導や攻略サイトなどで繰り返し紹介されていることもあり、ゲームへの関心が高いユーザーほどアプリ外決済を利用し、その恩恵にあずかる傾向は高いようです。
チャージセンターの開設のお知らせ(左)やキャンペーンのおしらせ(右)など、公式SNSで案内が行われている(※画像引用:キノコ伝説公式X)
「杖と剣の伝説」は“金券”が特徴的
異世界冒険放置RPG「杖と剣の伝説」は特徴的な「金券」というシステムが、異世界であるアプリ内決済と、現実世界のアプリ外決済とをつなぐ役割を果たしています。
※画像引用:杖と剣の伝説(BOLTRY GAMES )
まずゲーム内のストアでは、アプリ内決済により、アイテムやゲーム内通貨の一種「きら星」を購入できます。
一方、公式サイトに設置されたアプリ外決済用のチャージセンターでは、アイテムパックの他に「金券」という商品が販売されています。この「金券」は文字通り日本円と等価(1枚=1円)に使える金券で、チャージセンターとID連携したゲーム側にチャージされると、ゲーム内ストアでの決済の際にプラットフォームのストア経由で使っている日本円のかわりに、アイテムやきら星を購入できるようになるのです。
それだけでは、「普通にアプリ内決済でいいんじゃない?」と思ってしまいそうですが、チャージセンターに「金券5%おまけに追加」と明示されているように、ユーザーにとっては日本円ではなく金券を経由することで、アプリ内決済よりもアプリ外決済が5%お得にアイテムが買えるというメリットがあることがわかります。
例えば480円分の金券480枚を買うと、5%分にあたる24枚のおまけがつくため、ゲーム内では504円分の買い物ができることになります。チャージストアの最大金額790,000円分ともなると、39,500円分のおまけがつくことになるため、課金額が大きなユーザーになるほど、大きなリターンがあるという考え方もできます(先ほどのキノコ伝説の例もそうでしたが、アプリ外決済では、アプリ内決済ではありえない高額の決済を行うことが可能なことも大きな特徴です)。
お金で、お金を買う。なんだか、人類にとって貨幣の役割や価値って何なんだろうと、いろいろなことを考えてしまいたくなる人もいらっしゃるかもしれません。
公式SNSでは「公式チャージセンターご利用案内」として丁寧にチャージセンターの使い方とメリットを伝えて案内している点も、これからアプリ外決済を考えているアプリにとっては学ぶところが大きそうです。
画像も使って丁寧に利用の流れを説明(左)、初回チャージに向けたキャンペーンの案内も(右)(※画像引用:杖と剣の伝説公式X)
「eFootball™」は共通IDとGamesストア連携が便利
日本を代表する大人気ゲームメーカーKONAMIは、スマートフォン向けにも様々なゲームを開発しています。そして、そのゲームアイテムを販売する自社ストア「KONAMI Gamesストア」(以下、Gamesストア)を開設し、様々なゲームに関連する、それぞれのゲーム内通貨などのアイテムを購入できるようになっていることが特徴的です。
サッカーゲーム「eFootball™」の場合を例に見ると、ゲーム内通貨としてアプリ内ストアで販売されている「eFootball™コイン」を、WebのGamesストアでも購入することができます。
※画像引用:eFootball™GAMESストア
たとえば6,000円分のコインを購入する場合、アプリ内では5,700枚(有償分4,860枚、無償分840枚)、Gamesストアでは5,985枚(有償分4,860枚、無償分1,125枚)と、無償分扱いのコインの付与枚数に差が付いています。この点について、Gamesストア側では「アプリ内より285eFootball™コインお得」と、具体的なお得枚数を明記。ちなみに、アプリ側の上限は12,800円分ですが、Gamesストアではそれ以上の額を購入可能。29,800円分のコインを購入する際はアプリ側に比較対象がないこともあり、「一括購入でさらにお得!」と表記されています。
「お得」以外にも、Gamesストアには特徴があります。そのひとつは、コナミグループが提供する様々なオンラインサービスで使われている「KONAMI ID」を使った連携を行っていること。ゲームアプリとKONAMI IDを一度連携させれば、アプリ外の決済はユーザーにとって容易な決済方法のひとつとなり得ます。今回例に挙げたサッカーゲームに限らずパワフルプロ野球、遊戯王、麻雀など幅広いジャンルのゲームにひとつのIDで対応できることは、これからアプリ外決済の導入を考えている事業者にとっても大きな可能性があると言えるかもしれません。
さらに、Gamesストアの決済ではPayPayやクレジットカード、一部のキャリア決済、Apple Payなど多様な決済手段が選べることも、ユーザーにとって大きなメリットと言えます。決済の選択肢が広がることはもちろんですが、アプリ外決済がPayPayポイントやVポイントなどのポイントをためること(ポイ活)にもつながるのであれば、それだけでアプリ内決済よりもアプリ外決済を選ぶ動機になるユーザーも少なくないはずです。
シンプルに「〇%お得」「〇枚増量」といったメリットを訴求するだけでも、もちろんユーザー体験をプラスに導くアプリ外決済のメリットとなりますが、決済に至るID連携などの回数や手間を簡略化し、さらに価格以外にも魅力を用意するというのは、2025年12月のスマホ新法施行後にアプリ外決済への動きが本格化すると予想される中で、覚えておきたいヒントのひとつです。
以上、今回はゲームアプリのアプリ外決済事例から、魅力的な工夫があるものをご紹介しました。次回は、ゲーム以外の事例をご紹介する予定です。
【おしらせ】アプリ外決済のホワイトペーパーを公開しました

スマホ新法の基本とアプリ外決済対応のために必要な情報をまとめたホワイトペーパー「どうなる?どうする!『スマホ新法』 アプリ外決済に乗り遅れないための教科書(全37ページ)」を公開しました。
今回ご紹介したような、国内アプリマーケットでの外部決済事例も掲載し、来るべきスマホ新法の施行や、アプリ外決済への誘導解禁に向けて何をすべきか悩んでいる方に、ぜひご一読いただきたい内容です。
詳細・ダウンロードはこちらからご確認ください。
⇒どうなる?どうする!「スマホ新法」 アプリ外決済に乗り遅れないための教科書(全37ページ)
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