アプリの収益化に欠かせないのがアプリ内課金です。アプリ内課金とは、アプリ内で直接コンテンツを追加販売できる仕組みのこと。アプリ内課金がなければ、広告収入かアプリ自体の利用料金(買い切り方の場合を含む)で収益を上げるしかありません。しかし、アプリ内課金にはプラットフォーマへの手数料支払いや不定期のポリシー変更などという、アプリ事業者がコントロールできないリスクを抱えています。
本記事では、アプリ内課金の意味と重要性に加え、販売できるコンテンツの種類、課金形式、最新の課題とプラットフォーマーの動向について解説しています。
アプリ内課金とは
アプリ内課金とは、ユーザーにアプリ内で直接コンテンツを販売できる仕組みのことです。アプリ内課金を利用することで、App StoreやGoogle Playの決済機能を使ったアプリ内コンテンツへの支払いが可能になります。
アプリ内課金はアイテム課金のあるゲームアプリ、スタンプを購入できるチャットアプリ、定額講読可能なメディアアプリなど数多くのアプリで導入されており、アプリをマネタイズするうえで不可欠な機能となっています。一般的にAppleが提供するアプリ内課金はIn-App Purchase(IAP)、Googleが提供するものはIn-App billingと呼ばれています。
なお、アプリ内課金はあくまで、「アプリをダウンロード・インストールしたあとに、アプリ内でコンテンツを販売する」ことです。ダウンロード自体を有料にした場合は、「有料アプリ」などと呼ばれ、明確に区別されています。
アプリ内課金で販売可能なもの
アプリ内課金では販売可能なものと不可能なものが存在します。基本的にはデジタルコンテンツのみ販売可能で、実物の商品やサービスを販売することはできません。
■販売可能なもの
●コンテンツ
雑誌、写真、アートワークなどのデジタルコンテンツを配信することができます。例えば、ゲーム内のキャラクターやアイテム、カメラアプリケーションのフィルタ、仮想通貨などがこれにあたります。
●アプリの追加機能
制限されている機能の解除や、有料機能の拡張が可能です。例えば、ゲームアプリの限定ステージで遊べる権利や、無料版だとアプリを起動するたびにでてくる広告の非表示機能などがあります。
●サービス
音声の転送など1回限りのサービス、またはデータのコレクションへのアクセスなどの継続するサービスに対して、ユーザーに支払いを求めます。
■販売不可能なもの
●実物の商品やサービス
デジタルコンテンツではない実物の商品やサービスの販売には利用できません。アプリ内でこれらの商品を購入してもらうには、クレジットカードなどの決済システムを使用する必要があります。
●不適切なコンテンツ
プラットフォームで販売が許可されていないコンテンツ、例えばポルノや誹謗中傷にあたるものなどを販売することはできません。
アプリタイプごとの課金型
アプリ内課金はアプリのタイプごとに課金型を選択して利用することができます。またiOSとAndroidで課金型の定義が異なり、iOSでは5つの、Androidでは2つの課金型に大別されます。
iOSの課金型
1. 消耗型
何度も購入できる消費コンテンツを提供する場合、その課金型を消耗型と言います。アプリで使える仮想通貨や消耗アイテムなど、消費されるコンテンツが挙げられます。例えばPokémon GOではアプリ内仮想通貨であるポケコインの購入がこれに当たります。
Pokémon GOの例。消耗アイテムのポケコインを購入できる。
2. 非消耗型
1度だけ課金できるタイプを非消耗型と言います。一度課金したら無制限に使える機能で、ゲームレベルの開放や、広告非表示機能、アプリの追加機能などに利用されています。例えば人狼ゲームでは、特殊キャラクターの制限解除に利用されています。
人狼ゲームの例。一度課金すれば特殊キャラクターを永続的に使用できる。
3. 自動更新購読
期限付きの使用権限を定額料金で購入し、かつ期限が近づいてくるとシステムにより購読が自動的に更新されるタイプを自動更新講読と言います。ニュース記事やビデオストリーミング、マッチングサービスの月額課金などに利用されています。例えば、経済ニュースメディアアプリのNewsPicksでは月額費用の支払いにこのタイプを利用しています。
NewsPicksの例。月額費用の支払いをすればプレミアム会員になれる。
4. 非更新購読
期限付きの使用権限を定額料金で購入し、かつ期限が近づいた時に自動的に更新されないタイプを非更新講読と言います。歴史的な写真のデータベースに対するアクセス権や、フライトマップのコレクションなど、静的なコンテンツへの一定期間アクセス権に利用されます。
5. 無料購読
Newsstandに無料購読のコンテンツを置くための手段として無料購読があります。購読にはNewsstand対応アプリに利用されます。
アプリ内課金が抱える課題
アプリ内課金は、コンテンツの購入がアプリ内(アプリストア内)のシステムを利用して行えるため、購入までの導線がシームレスで、ユーザーに取っての利便性が高い仕組みです。ただし、ひとつ大きな課題を抱えています。
それは、Apple、Googleというアプリストアプラットフォーマーのポリシー変更に大きな影響を受けてしまうということです。例えば、アプリ事業者はプラットフォーマーが提供する決済システムを使用するのが通常で、そのうえで大きな手数料を徴収されています。App Store経由でのアプリ内課金では通常、Appleに30%の手数料を支払わなければなりません。この手数料は、アプリを運営するうえで大きな負担であるといえるでしょう。
決済プラットフォームの選択が収益改善につながる可能性
しかし、デジタル巨大企業に対する規制強化の流れの一環として、アプリに関する決済手段にも流動性が生まれ始めています。その最たる例が、2021年8月にAppleが発表した「外部決済手段への誘導の容認」。
以降、VODや新聞を代表とする「リーダーアプリ」はアプリ内で外部決済への誘導が可能になり、他のアプリでもアプリ外のメールなどで外部決済へ誘導することができるようになっています。外部決済手段への移行をすることでこの手数料を大きく削減できる可能性があるのです。
とはいえ、自前の決済プラットフォームを開発するのは非常に困難なのも事実です。そこで重要になるのが連携パートナー。
この原稿執筆時に取材協力をいただいたSBペイメントサービス株式会社では
- App Storeよりも決済手数料が安い。カード決済なら3%前後で導入可能
- PayPayなどの人気のある決済手段もまとめて導入可能
- 国際的セキュリティ規格に準拠。App Storeと変わらず安心して決済可能
といった有用なサービスを提供しているとのこと。多様なEC(Webサービス)の決済プラットフォームとしても多くの実績を持っており、規模に合わせたサービスのカスタマイズも可能です。
アプリビジネスはMVP発想とスピーディな開発・改善が命です。決済プラットフォームには機動性の高いパートナーを探すことをおすすめします。