明日から真似したくなる!?「アプリ外決済」国内市場の先行事例をチェック!【マンガ・コミック編】

Repro Journal編集部
Repro Journal編集部
2025.10.21
明日から真似したくなる!?「アプリ外決済」国内市場の先行事例をチェック!【コミック編】

目次

「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(スマホ新法)」の施行(2025年12月18日)を前に、アプリ事業者の間でも「アプリ外決済」に向けた関心が高まっていることをひしひしと感じる今日この頃です。そんな中、Repro Journalではスマホ新法とアプリ外決済に関する情報を継続してご紹介しています。10月3日の記事では「明日から真似したくなる!?『アプリ外決済』国内市場の先行事例をチェック!【ゲーム編】」として、ゲームアプリの国内市場におけるアプリ外決済の工夫を見てみましたが、今回はマンガ・コミックを提供する4種類のアプリのユーザー課金(アプリ内/アプリ外における決済)について見ていきます。
※現在はアンチステアリング規定により原則禁止となっているアプリから外部決済手段への誘導の解禁

【少し重要な前書き】そもそもマンガアプリのマネタイズ手段はユーザー課金だけではないが……

日本の「マンガ/漫画」におけるマネタイズの手段はスマートフォンやアプリの登場以前から単純なものではなく、たとえばマンガ雑誌の大半は赤字でも、単行本販売やアニメ化・ドラマ化などのメディアミックス、IP(知的財産)としての展開等で黒字化するビジネスモデルがあることは広く知られていました。

マンガアプリ全盛の現在においても、そのビジネスモデルが単純に一つひとつの掲載コンテンツからの利益(アプリ内だけでの収益)にあるとは到底考えられません。単行本としての発売やアニメ、ドラマ、ゲームなどの多メディア展開、キャラクターグッズや版権などのIP収入、あるいはアプリに掲載する広告からの収益。特にメディアミックスやライツビジネスの重要性は、グローバルな市場の広がりとともに日々増していると言えるでしょう。

そのため、今回確認するマンガアプリにおけるユーザー課金(アプリ内決済/アプリ外決済)の役割や価値は、各社アプリの位置づけや将来的な展望の有無、赤字運営の許容度、広告収入の規模、あるいはオリジナル作品/非オリジナル作品の比率といった要素によって大きく異なることも容易に想像できます。

そういったマンガアプリのビジネスモデルや出版各社のライツビジネスへの移行、ひいては日本のコンテンツビジネスを取り巻く研究については、近年様々な分析があるのでそちらに譲り、この記事ではあくまでも、今アプリ事業者やマーケターが気になっている「スマホ新法施行前夜の各社アプリ内決済・アプリ外決済」の状況を見ていくものとします。

アプリとWebで通貨単位が異なり共通利用はできない「少年ジャンプ+」

タイトルを聞けば普段マンガを読まない人でもわかるほどの人気作を多数掲載している「少年ジャンプ+」(Web、アプリで展開)。アニメも大ヒット中のオリジナル連載作品をはじめ、様々な作品が「初回全話無料」という大盤振る舞いで、課金せずとも読める作品が多い同サービスですが、バックナンバーを読みたい場合などは課金によるレンタルが必要になることがあります。

その際、アプリでは「コイン」、Webでは「ポイント」を購入することになります。それぞれ共通ではないため、アプリで購入したコインをWebで使ったり、反対にWebで購入したポイントをアプリで使うことはできません。

251020-01(※画像引用:少年ジャンプ+

このように、アプリとWebで異なる通貨単位が導入され、共通での利用が不可とされている例は他のマンガアプリでもよく見られますが、今後のスマホ新法施行にあわせて変化していく可能性もあるため、注視しておきたいポイントのひとつと言えるでしょう。

アプリとWebでの販売額を見ると、共通の価格設定である2,000円、3,000円で買えるコイン/ポイントはどちらも2,150コイン/ポイント、3,250コイン/ポイントとなりほぼ同等の金額で販売されています(1,000円分購入の際はアプリが10円分お得)。

1話あたり必要になるポイント/コインはどちらも基本的に「40ポイント/コイン」となり価値基準は同等であるため、前回の記事で確認したゲームアプリのような「アプリ外決済によるお得感」というものはなく、むしろアプリ・Webどちらでもそれぞれのユーザーにとって利便性の高い方を思う存分に使えると考えることもできます。なお、アプリ・Webともに可能な「週刊少年ジャンプ」の定期購読を比較してみても、月額980円で設定されており、ここでもどちらがお得といった差はありません

※単品購入はアプリのみなど、仕様の差はあります。

「コイン購入はWebが断然お得!」と明言しているLINEマンガ

こちらも多くのユーザーに利用されているコミックアプリ「LINEマンガ」。無料で読める作品が豊富に存在するほか、広告を見るなどの条件達成でコインを獲得し、有料のコミックを読む際に使うことが可能です。それ以外にアプリまたはWebでコインを購入することもできます。

LINEマンガの場合には、「コイン購入はWebが断然お得!」「Appより多くのコインがもらえる」と明確に訴求し、具体的にそのコイン(購入ボーナス)の量を提示したLPも掲載されています。

251020-02(※画像引用:LINEマンガ

Webで購入したコインはアプリにチャージされ、アプリでの購入に使われることになります。Webでの有料コンテンツ購入は、クレジットカードまたはPayPayでの決済となり、コインはあくまでもアプリでのコンテンツ購入のためのものになっているようです。

LINEマンガの場合も、キャンペーンやセールによる差異を除き、一般的なコンテンツの価格差がWebとアプリの間で存在するわけではないようです。

決済はアプリのみ、Webはアプリへの誘導に特化した「マンガがうがう」「がうがうモンスター+」

異世界転生モノに全力で特化している双葉社のジャンル特化型マンガアプリ「マンガがうがう」は、毎日一定の時間に一定量回復する「がうポイント」を使って作品を読み進めることができます。それ以外にも、特定のミッション達成で獲得できる「ポーション」(ポイントを回復するアイテム)や広告(アプリダウンロードが中心)などで手に入るボーナスポイントといった多様なマネタイズの仕組みがアプリ内で設定されています。

特に、広告からゲームなどのアプリをインストールして一定以上まで進めることで数万~十数万の大量ボーナスポイントがもらえるリワードマーケティングが同サービスの根幹を支えていることが想定されますが、この記事は広告がテーマではないため、これ以上は踏み込みません

ではユーザーからの課金はというと、アプリ内決済で有料の「コイン」を購入してコンテンツ消費に使うことが可能。結果的にポイントやコインなど複数のアプリ内通貨を所持している場合は、がうポイント>ボーナスポイント>(有料の)コインの順に消費されていくようです。

一方、アプリ外(Web)での決済は今のところ用意されておらず、同社のWeb版サービス「がうがうモンスター+」での無料公開が終了した作品が読みたい場合は、アプリでの購読に誘導する方式になっているのも特徴的です。

251020-03(※画像引用:マンガがうがうがうがうモンスター+

このように、アプリや掲載作品の位置づけ、あるいは想定される対象読者によっては、アプリ外決済を現時点では導入せず、Webはアプリへの誘導手段と割り切り、アプリのみでのマネタイズ(ユーザー課金に限らない、広告などの手法を含む)を狙うという考え方もありそうです。とはいえ、この場合もスマホ新法の施行によりアプリ外決済への直接的な誘導の自由度が高まった際には、外部決済を導入する余地もあるかもしれません。

※ アプリ広告の基本について詳しく知りたい方は、「【デジマの悩みに答えます!】Web広告とアプリインストール広告は別物!アプリ集客の成功に欠かせない“3つの視点”とは(Repro Journal)」などもご参考ください。

「めちゃコミック」は、徹底的に安心して決済できるユーザー体験を目指している?

膨大な作品数や、画面上で1コマずつ拡大表示してスクロールしながら読むスタイル(ページ表示に変更も可能)で支持を集める老舗電子コミック配信サービス「めちゃコミック」。既存の作品からオリジナル作品まで幅広いジャンルを取りそろえる同サービスについては、印象的なTVCMを記憶している方も多いのではないでしょうか。

めちゃコミックでは、無料で読める作品の他に、ポイントを使ってコンテンツを購入することも可能。ポイントは様々なミッションにより稼ぐこともできますが、アプリ・Webそれぞれのストアで購入する選択肢もあります。アプリで購入したポイントはWebでは使えませんが、ID連携していれば、購入した作品をアプリとWebのどちらからでも読むことができるようです。

同サービスでは明確に「1ポイント=1.1円(税込)」と表記。このレートはアプリでもWebでも変わりませんが、付与されるボーナスポイントでアプリとWebに差が付くのは先述のLINEマンガと同様です。

Webでのポイント購入の際に「Webとアプリ版のポイントを比較する」と表示された案内をクリックすることで「Web版ならアプリ版よりお得にポイントを購入できます!」と謳うポップアップが出現。ボーナスポイントに明確な差があることが一目瞭然となります。Web版のみ、よりボーナスポイントが多く付与される月額コース(サブスク)が存在するのも特徴のひとつです。

251020-04(※画像引用:めちゃコミック

さらに印象的なのがWeb決済における支払い方法の多様性です。利用可能な決済手段がアイコンとともに一覧で表示され、支払いにおけるユーザーの利便性が高まるとともに、その選択肢もわかりやすくなっています。

金額の税込表記や差額の案内、様々な注意書きもアプリ・Webともにポイント購入画面内に詳細に記載されるなど、決済の際に生じ得るユーザーの不安や誤解を徹底的に取り除こうとするユーザー体験の設計には、コミック系に限らず多くのアプリが学ぶべきものがあると言えるかもしれません。

マンガアプリの収益はユーザー課金に限らないことをあらためてお伝えするまとめ

以上、今回は4種類のマンガアプリにおける、アプリ内決済/アプリ外決済の事例を見てみました。

冒頭でもお伝えした通り、マンガのマネタイズについてはスマートフォンやアプリの登場以前から複雑な背景があり、その収益の多様性・可能性は現代において、より広がっていると考えられます(一方で、死屍累々と言いたくなるようなサービス終了の歴史もあります)。

今回ご紹介した4つのアプリについても、より詳しく見てみるとそれぞれの掲載作品がオリジナル中心か非オリジナル中心か、あるいは広告の重要性、キャンペーンやセールの有無、折にふれて垣間見える試行錯誤など、シンプルに「マンガアプリ」と一括りにして考えることが憚られるほどの違いもあります。

アプリ外決済によるボーナスポイントの違いなどで明確に「お得」を謳っていたサービスにおいても、実は数値を計算してみると(ゲームアプリと比較して)大きなお得感がある印象のものは少なく、そもそもユーザー課金が大きな収入源ではない場合も多いのかもしれません。とはいえ、この点はスマホ新法の施行後に変化が見られる可能性があるとも考えられます。

次回もまた違うタイプのアプリの決済について確認していく予定です。

※本記事に掲載されている社名、ロゴマーク、サービス名、商品名等は各社の商標、または登録商標です。
※本記事に記載されている内容は2025年10月20日時点の情報に基づいており、価格や販売内容等のデータは変更されている可能性があります。
※本記事内のアプリ内/アプリ外決済に関する価格は、特に指定がない場合すべて税込みです。

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