コ・クリエーション(共創)とは?言葉の意味と重要性、実践事例

Repro Journal編集部
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2020.02.28
コ・クリエーション(共創)とは?言葉の意味と重要性、実践事例

目次

目まぐるしく変化するビジネス社会の中で、企業は常に新たな事業のチャンスを狙っています。事実、業界内だけでの競合優位性を図る既存の競争原理は、異業種企業の参入により破壊されつつあります。変化の少ない業界という枠組みに守られてきた企業の行く末は、ユーザーと企業が新たな価値を創生する「コ・クリエーション(共創)」に託されています。

今回は、新たなビジネスモデルとして注目されている「コ・クリエーション」の意味や定義、コ・クリエーションが誕生した社会的背景、SNSを用いたコ・クリエーション実例法についてご紹介します。

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コ・クリエーション(共創)とは

コ・クリエーション(Co-Creation)とは、「共創」を意味するマーケティング用語です。英語で直訳すると「Co=共同の、相互の」「Creation=創造」となります。多様な立場の人たちが、利害関係のあるステークホルダーと対話をしながら新しい価値を「共に」「創る」ことがコ・クリエーションの定義です

ポイントは、ユーザーを消費者ではなく新しい商品・サービスを生み出す「パートナー」として見ることでしょう。

2004年、アメリカのミシガン大学ビジネススクールの教授ベンカト・ラマスワミ、C・K・プラハラードは、書籍で「ユーザー参画を通じた新たな価値の創造による他社との差別化」を提唱しました。このことをきっかけに、コ・クリエーションという言葉が誕生しました。

広義の意味でのコ・クリエーションは、社会に「新しい価値」を提供する形のことを指します。

従来の企業は新商品の開発といった「モノ」を提供することで、市場でのシェアを確立してきました。しかし、多様化する人々・社会のニーズに応え、次々に商品を開発していくのは簡単ではありません。また、ひとつの産業には多数の企業がひしめき、その中から顧客に選ばれるのは非常に難しいことです。今や商品・サービスにプラスアルファで付加価値を提供していかなければ、他社との差別化を図ることはできないでしょう。

そんな中、顧客の価値体験を創出する取り組みとして「コ・クリエーション」が注目されるようになりました。企業がユーザーにモノを提供するだけではなく、消費する際の「経験」を含めたサービス設計をすることで、顧客に付加価値を与えます。

あらゆるジャンルにおいて実現可能なこの取り組みは、企業に大きな変化をもたらす戦略になり得るのです。

コ・クリエーション(共創)のタイプ

コ・クリエーション「共創」は、3つのタイプに分類することができます。

双方向の関係

従来の一方的な商品・サービスの提供ではなく、オープンかつフラットな立場で企業がユーザーとともに価値の創造に取り組むものです。企業がユーザーと対等な関係に立ち、議論を進め企業の課題を抽出するなど、新たなビジネスモデルを作る施策のひとつです。

共有の関係

企業・団体・政府など、さまざまなレベルの組織において同じ目的を持ったコンソーシアムやコミュニティのようなオープンな関係を築くものです。参加者一人ひとりがそれぞれに役割と責任を持ち、テーマを共有して知恵を出し合って価値を生み出す取り組みのことです。

提携の関係

自社に不足する要素を補おうと画策する企業が、企業規模の上下関係や業界の壁を排し、他社の協力を得てアイデアを創出する取り組みです。垂直統合型のビジネスでは、競争関係の激化、商品開発費の高騰などの課題があることから、社外連携でパートナーシップを意識し新たな価値を創出することが求められています。

共創の関係性は、ビジネス環境の激しい変化に対応するために必要不可欠な要素であり、企業がビジネスモデルを構築する際の指標にもなります。

コ・クリエーションの重要性

コ・クリエーションの意味や定義、3つのタイプがあることをご紹介しましたが、そもそも、コ・クリエーションで新たな価値を創出しなければならなくなった要因はどういったものなのでしょうか。

そこには、業界内の競争優位性を失った企業の「競争優位の終焉」が原因にありました。

ハイパーコンペティションによる市場縮小、顧客獲得の激化

ビジネスのグローバル化・業界の規制緩和による異業種参入など、あらゆる理由から企業が競争優位を保つことが難しい時代となってきました。このような状況下で、企業の持つ競争優位性が、競争を通じて凄まじいスピードで消えてしまうことを「ハイパーコンペティション」と呼びます。では、なぜこのような事態が起きているのでしょうか。

先ほど挙げた中でも、とりわけ異業種参入は業界内市場の様相を一変させました。これまでジェネリック戦略を用いて市場内での立ち位置を築き上げてきた企業であっても、異業種の参入が起こることで従来の方法では通用しなくなってきました。

同時に、ユーザーによる商品・サービスの選択肢の幅が広がり、ますますひとつの企業が選ばれることは困難になりました。ユーザーにとって選択肢が増えることは嬉しいことですが、市場での競合優位性を保っていた企業にとっては苦しい経営が強いられます。

また、人々の嗜好の多様化により、企業には積極的な競争行動が求められています。モノやサービスが溢れた市場内ではより新しいイノベーションを生み出し、競合優位性を高めていかなければ生き残ることは難しいでしょう。ハイパーコンペティションによる目まぐるしい市場の変化に対し、企業は新たな経営戦略を迅速に画策していかなければならないのです。

共創ビジネスの実践

商品・サービス自体の価値だけでは市場内での差別化が困難となりつつある現代社会で、「ユーザーの参画による経験に基づいた価値」という新たな源泉が掘り起こされました。目の肥えたユーザーは商品・サービスといった「モノ」よりも、その商品などを通じて得られる「体験」を重要視する傾向があります。

例えば、ユーザー一人ひとりの体験価値を創り上げたビジネスモデルとして代表的なのが「ディズニーリゾート」です。アトラクションやパレード、飲食店といった多彩なコンテンツが用意されており、ユーザーはコンテンツの楽しみ方を独自に生み出すことができます。コ・クリエーション戦略の側面から見ても、ディズニーリゾートのコンテンツは、ユーザーの体験価値を共に創り上げた先駆者と捉えられます。

しかし、共創ビジネスを実践し成功を収めることは簡単なことではありません。共創ビジネスの実行にあたり、企業はユーザーからの信頼を得る必要があります。そのため、事業を行うにあたっての最低限の知識やノウハウは持っておかなければなりません。

さらに、企業とユーザーとの価値観に相違があれば、共創ビジネスが成り立つことはないでしょう。

ユーザーと向き合う姿勢を示し、意欲を掻き立てることができればコ・クリエーション戦略の実現で他企業との差別化を図ることが期待できます。

コ・クリエーションの例

コ・クリエーションが活用されるようになった社会的背景から、さまざまな分野での活用が期待されています。企業とユーザーとが創り上げる取り組みは、近い将来、企業のマーケティング指標のひとつとして重要なファクターとなることでしょう。

ここからは、コ・クリエーションを用いた企業とユーザーが共創した実例を見ていきます。

SNS

SNSといえば代表的なものは、InstagramやFacebook、Twitterなどです。これらのSNSは、それ自体はプラットフォームと呼ばれる、いわば空っぽの箱です。この箱にユーザーが投稿したり「いいね」や「シェア」などのリアクションをしたりすることで初めて価値が生まれます。そしてユーザーが投稿した情報や経験を箱の中に蓄積することで、SNSの価値も高まります。

まさに、SNSはコ・クリエーションの「価値をユーザーと共に創造する」という概念にぴったり当てはまっているものなのです。SNSを活用してプロモーション活動を行った企業の例を見てみましょう。

2016年にドイツのテレビ局「RTL II」が、大人気ドラマ「ウォーキングデッド シーズン6」の放送開始にあたり、変わったプロモーションを実施しました。Facebookが提供するライブ配信サービス「Facebook Live」を活用した、ユーザーとインタラクティブなやりとりができるPR動画の配信です。

視聴者からのリアクションやコメントを確認できるFacebook Liveで、オランダ人ブロガーがゾンビが生息する地に迷い込んだという設定で、視聴者は彼らが次に起こすべきアクションを6つのボタンから選択することができます。ゲーム感覚で楽しめるユーザー参加型のライブ配信「Apocalypse Live」は、各種SNSで広く拡散され200万以上の視聴者数を記録し、1億以上のトータルリーチ数を獲得しました。

このように、SNSは企業による「一方向」の情報発信ではなく、ユーザーとの双方向のコミュニケーションを可能としました。SNSは、企業とユーザーが共に価値を創出できる重要なツールです。そのため、コ・クリエーションは、ソーシャルメディアと切っても切り離せない関係になっています。

地域活動におけるコ・クリエーション

地方創生のための戦略として、地域コミュニティでコ・クリエーション戦略を活用した実例もあります。

「イノベーション東北」は、東北での町づくりや新規事業など、新しいチャレンジに取り組む人々と、その挑戦を応援したい人々とを繋ぐクラウドマッチングプラットフォームです。グーグル合同会社が運営しています。

初めは、東日本大震災の復興プロジェクトの一環として450以上もの取り組みが成されていました。次第に、地域活性化の取り組みにも利用されるようになり、地域の人々とプロジェクトサポーターを繋ぐプラットフォームを構築することに成功しました。

イノベーション東北の取り組みのひとつ、福島のセンスとスタイルを伝えるために、福島市の洋服店やメガネ店などの情報を発信しているのが「LIFEKU(ライフク)」です。

LIFEKUが取り組みの中で開発したアプリ「CO-FUKU」は、「お店の人」と「お客さん」を深く繋ぐためのツールとして開発されました。エンジニア、ウェブディレクターなど、IT系の仕事で活躍する4人のプロボノサポーターとともに、「お店で対面して、目の前の人にぴったりの情報をプレゼントする」という、普段のLIFEKUの姿勢がそのまま落とし込まれました。

イノベーション東北は、プロジェクトをはじめるにあたってサポーターに対してナレッジを共有しました。「現場に通いニーズを把握」「トライアンドエラーによるフィードバックの重要性」「自治体やNPOとの協力体制を整える」など、プロジェクトで成果を出すためのノウハウを教授し、東北でのチャレンジを後押ししました。

また、徳島県・神山町では、1999年より芸術家を招へいして、減りゆく人口の中で健全な姿を探る「神山プロジェクト」をスタートしました。

神山アーティスト・イン・レジデンス「KAIR」は、毎年、国内外から3組のアーティストを募集し、国際文化交流の機会を生み出しました。子ども世代は異文化への知見を深め、プロジェクトを運用するNPO法人グリーンバレーは、その後、神山町とタッグを組み「まちを将来世代につなぐ」という地方創生戦略を施策し、実現に向けて動き出しています。

もうひとつ、「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」もご紹介します。

3年に一度開催される“障害者”と“多様な分野のプロフェッショナル”による現代アートの国際展であるヨコハマ・パラトリエンナーレは、2014年からはじまるアートプロジェクトです。

障害のあるなしに関わらず文化芸術活動への参加を願う人が集まり、出会い、そして共創によりまったく新しいアートやクリエイティブが多数創出されます。これらを通じて、誰もが居場所と役割を実感できる地域社会の実現を目指しています。

このように自治体や地域をベースとしたコ・クリエーションが次々に生まれており、それぞれが目標に向けて、新しいイノベーションを起こしています。

ナショナルジオグラフィックの「Your Shot」

ナショナルジオグラフィックは、自然・動物から人々の暮らし、科学など、地球で起きているすべてのことを伝える雑誌です。デジタル刊行物の発行やWebでのニュース配信など、世界中に情報発信しています。

この雑誌に関連して、ナショナルジオグラフィック協会は、運営する写真投稿プラットフォーム「Your Shot」を提供しました。比較的若い世代のエンゲージメント向上に向けてコ・クリエーションでのファン獲得を目的としています。

「Your Shot」に加入したユーザーは、自分が投稿した写真について同社に所属している写真家からアドバイスを受けたり、毎月開催されるイベントに参加できたりと、キャリアを形成していくことが可能です。プロの写真家を目指す若い読者たちの制作活動を支援することで、ユーザーとブランドの距離感と親密な関係性の構築を実現しています。

また、同社はストーリ共有プラットフォーム「WattPad」を活用する施策も進めているようです。海洋プラスチックごみの環境問題となっている中、使い捨てプラスチックに関するショートストーリーを募集したところ、2週間で1,000件もの記事が寄せられたとのことです。

同社が掲げる「プラスチック削減の約束」に対して、共感するユーザーのエンゲージメントを高め、WattPadにおけるフォロワー数を3万人まで増加させることに成功しました。

まとめ

規制緩和、ハイパーコンペティションで圧縮していく市場で生き残るには、もはや企業だけでは手に負えません。

そんな中、インターネットの発展により、若い世代からシニア世代まで、幅広い層と手軽にコミュニケーションを取ることができるようになりました。そして、ユーザーと企業とが一体となってビジネスを行う「コ・クリエーション」が生まれました。

コ・クリエーションは現代のビジネスモデルとは一線を画した戦略です。コ・クリエーションでこれまでにない体験をユーザーとともに創出していくことができるでしょう。

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