DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や目的を解説

Repro Journal編集部
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2020.02.14
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や目的を解説

目次

1990年代の末期から、企業や社会が生産性を向上させるために多くの分野でデジタル化が進められました。古くはパソコンの普及に始まり、現在ではスマートフォンなどが普及し、人々の生活に密接に関わるものとなっています。そんなIT時代である今、また新たに普及しつつある概念があります。それが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。

近年、DXの注目は急速に高まり、国内の企業でも導入が進められています。また、その動きは政府にまで及び、DXに関する調査レポートも発表されています。しかし、DXを導入するにあたり、多くの課題があることは意外と知られていません。デジタル化を目前にして、企業経営者が頭を悩ますものとは一体何なのでしょうか。この記事ではそんなDXについて事例を交えて詳しくご紹介します。

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、エリック・ストルターマン教授が2004年に唱えた、IT化による包括的な改革を指す概念です。

コンセプトは「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でサポートし、より良い方向に変えていく」というもので、DXの実現によってより優れた社会が実現できるとされています。

DXには社会の全体に関わるような広義の意味合いと、おもにビジネス領域において語られる狭義の意味合いがあります。一般的に、教授が提唱した説はDXの広義の意味として理解されており、広義の意味でのDXはさらに4つの領域に区分されます。

ひとつ目はビジネストランスフォーメーション領域です。簡単に説明すると会社全体の従業員も巻き込んだオペレーションモデルの改革と意識改革のことを指します。DXによって新規事業の創出やビジネスモデルに変革をもたらすほか、意識改革によってデジタルシフトを起こし社会にインパクトを与える思想です。

ふたつ目はカスタマーエンゲージメント領域です。商品やサービス以外にもITによって付加価値を高める取り組みをし、良好な顧客関係を築いていくことを指します。顧客との信頼関係を強化することで、安定的な売上拡大が見込めるため、近年は特に注目が集まっている領域でもあります。新規顧客の獲得に対して既存顧客の育成にかかるコストは低いため、現在は既存顧客への手厚いアプローチを行い、LTVの高いユーザーを確保する取り組みが盛んになっています。

3つ目はフューチャーオブワーク領域です。ITの浸透は未来に向かうほど従来の労働と仕事に対する見方を一変させていくことを指します。具体的な例としてはRPAの活用による業務効率化などが挙げられます。

4つ目はデジタルエコノミー領域です。ITによる情報処理技術によって生み出される経済現象のことです。非常に幅の広い分野を指す概念ですが、具体的には電子マネーや仮想通貨のような電子決済もデジタルエコノミーに該当します。また、IT産業における経済活動もデジタルエコノミーの領域です。SNSなどデジタルと日常生活の接点は次第に増えているものの、デジタルエコノミーが生み出す経済的な効果はまだ少ないとされています。近年ではGDPに計測しにくい「SNSがもたらす満足度」を数値化するGDP+iの指標を作るなどの取り組みも見られます。

このように、DXは複数の要素を含んだ複雑な概念です。では次に、狭義の意味合いであるビジネスにおけるDXの定義をご紹介します。

ビジネスにおけるDXの定義

2018年、経済産業省がビジネスにおけるDXの定義を行いました。端的にまとめると、「データやデジタルの技術を使って、ビジネスに関わるすべての物事に変革をもたらす」という内容です。広義でのDXと近しいですが、データやデジタル技術のようなIT技術の活用を基礎にビジネスの分野にフォーカスして良い影響を与えるというものです。

具体的には従来にないサービスや製品を生み出したり、プロセスを組みなおして生産性を向上させたりといったことが挙げられます。また、デジタル化を推し進める中で仕事そのものを見直す機会を生み出し、企業に変革のきっかけを根付かせる効果が期待されています。

「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」との違い

DXの話題において、ともに語られることの多い言葉に「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」があります。どちらも「デジタル化」という意味にあたりますが、微妙にニュアンスが違います。

デジタイゼーションは、ひとつの工程で効率化を実現するためにデジタルツールを導入する「部分的なデジタル化」を指します。

デジタライゼーションは、自社や外部の環境といった戦略面を含めて長期的な視点で考える「プロセス全体のデジタル化」を指します。

つまり、部分的なデジタイゼーションと、過程そのものをデジタル化する包括的なデジタライゼーションという違いがあります。ちなみに、この両者がDXと異なるのは社会的なインパクトをもたらすか否かということに集約されます。

DXを進める目的

今やデジタル技術はさまざまな業務に活用されています。同時に新しいビジネスモデルも次々と生まれ、サービスや製品が増え続けています。そうした時代の流れの中で、多くの企業が生き残りをかけて競争力の維持・向上に努めています。

そのため、多くの課題解決につながるDXは、激化した市場競争についていくために必須の要素となっているのです。

DXの推進は、おもに次のようなメリットを生み出します。

・生産性の向上や利益率の向上を生み出す
・新たなビジネスモデルの創出につながる
・顧客がサービスを利用する際の利便性が向上し、関係強化につながる

これらの重要なメリットがもたらされるものの、会社の組織の変革やビジネスを見直すことはなかなか難しく、本格的にDXを進められているのは一部の最先端企業に限られています。

この状況に危機感を抱いた経済産業省は、2018年9月にDXに関する調査レポートを発表しました。その中では、上記のようなDXのメリットだけでなく、DXが実現されなかった場合に日本経済が受ける巨額の損失についても指摘されています。

では、レポートの内容について次の章で確認してみましょう。

「2025年の崖」とは?

経済産業省が発表したレポートには、企業が生き残るためにはDXを実現して競走の優位性を確保する必要があるとし、DXの実現のためには2025年までに既存のシステムを刷新することが必要だという内容が記されていました。

現存する企業や団体のシステムは、すでに複雑化していて「老朽化」「ブラックボックス化」といった課題が指摘されています。そのような問題がある現状のシステムがこの先も改善されない場合、DXは実現できず2025年以降の経済損失は12兆円/年にも上ると想定されています。経済損失にはIT人材の引退やサポートの終了のリスクが高まるとの予想も含まれており、国際的な競争力の低下も懸念されています。このネガティブなシナリオ予想を「2025年の崖」として、既存のシステムに固執する危険性に警笛を鳴らしているのです。

一方DXをきちんと推し進めることで、GDPが130兆円も拡大することが予想されています。

2025年の崖への対応策はいくつかあり、現状と問題点の可視化やDX推進システムガイドラインの策定、DX実現のためのコスト・リスクの低減などが挙げられています。経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」によると、DX推進にまつわる経営面や仕組みに関する改善と、DXにまつわるITシステム構築の2軸で進める重要性が示されています。

例えば経営面では、DXを意識した経営戦略とビジョンを提示し、DXを推進するための社内体制を整えるなどの指針が挙げられます。未知なるデジタル領域に転換するためには、経営のトップ層が意識改革をして、スピーディーかつ柔軟な対応が必要です。加えて、投資などの意思決定に関しても経営層の積極的な介入が求められます。

また、ITシステムを構築する際には、単なるシステムの構築だけでなくガバナンスについても配慮する必要があります。規則に基づいた事業部門を創出し、その中でDX担当者の要件定義能力を育成していく必要があります。定期的に自社のIT資産の分析や評価も行い、時代の変化に対応しうる追従力を身につけることも求められています。

このように、やるべきことが非常に多いDXの推進ですが、上手くいけばGDPのさらなる飛躍が見込めるものです。官民一体となって課題を解決し、成功シナリオの実現を目指しましょう。

DXの事例

ここからは実際に行われたDXにまつわる事例をご紹介します。

Netflix

Netflixはアメリカ発のオンライン動画サービスを展開する企業です。日本でも知名度が高く、利用している方も多いのではないでしょうか。実はNetflixの創業当初はオンライン上で注文し、DVDを郵送でレンタルできるサービスを展開していましたが、インターネットの普及にともなってビジネスの軸を動画のストリーミング配信を展開する方向に舵を切りました。

元来のレンタルビデオ・DVDでは1作品ごとに料金が発生するのが一般的でした。しかし、ストリーミング配信にモデルを変更してからは、月々の定額料金でコンテンツを配信するというビジネスモデルに改定し、成功を収めました。NetflixにおけるDXはこの変更点に加え、どの作品を見たいか迷っている人へおすすめの作品を紹介する「レコメンデーション機能」を整えたことです。

ユーザーから取得した膨大なデータを分析して、閲覧履歴や行動履歴に応じた最適な作品を選定し紹介しています。レコメンデーションされた作品を再生するユーザーは多く、Netflixで再生されるおよそ80%を占めているといわれています。また、Netflixでは「ハウス・オブ・カード」というオリジナル作品を製作していますが、これもユーザーデータを分析したうえで、視聴されやすい作品となるように製作されています。

三井住友銀行

三井住友銀行ではDXによって顧客のニーズを可視化する取り組みが行われました。

元々、年間3万5,000件もの意見や要望が顧客から届いており、取りまとめや分析業務だけでも多くのコストがかかることに課題を感じていたそうです。そのため、業務効率化を主眼に置いてDXを導入し、テキスト含意認識技術によって顧客の意見・要望を仕分けしたり、特定の意味を含む文章を抽出したりすることが可能になりました。

結果、人の目で仕分けしていた時よりも分析が高度化され、業務効率化が実現。また、人力では気付かなかった新たな意見を得ることにもつながっているとしています。

日本国内におけるDXの現状と課題

電通デジタルが発表した「日本企業のデジタルトランスフォーメーション調査2019年版」によると、国内でDXに着手している企業は約70%に上るとされています。また、一定の成果が出ているのはその内の約6割という調査結果が出ています。

この調査結果からもわかるように、日本においてはすでにDXの推進が広まっていると仮定できます。さらに調査の結果から、成果を出している企業では経営者がDXに対して前向きだということもわかりました。DX推進のために専門組織と選任役職者を設置している点も重要なポイントといえるでしょう。

一方で「レガシーシステム」がデジタル化の阻害要因になっているとの声もあります。どのようにデジタル化を阻害しているか詳しく見ていくと、次のようなパターンに分類されます。

ひとつ目は過剰な最適化による問題です。各事業や部門ごとに個別に最適化しすぎたが故にシステムが複雑になり、企業全体として情報管理やデータ活用が困難になってしまうケースです。

ふたつ目は属人化による問題です。IT人材の少なさやノウハウの欠如も手伝って、退職や人材流出が起こると既存のシステムのブラックボックス化が頻繁に起こるようになります。そのため、新システムへの移行やカスタマイズが実施できず、老朽化するシステムを使い続けるという問題が発生しています。

これらレガシーシステムの存在が、DXとしてのデジタル対応の足枷になっていると感じている企業は少なくありません。現在このような課題を抱えている企業は早急にレガシーシステムから脱却してアップデートを目指す必要があるでしょう。

また、レガシーシステムの可視化や断捨離が必要なこともDX化への課題のひとつとされていますが、課題はそれだけではありません。刷新すべき業務をベンダーに丸投げする状況や、IT人材の確保・育成、日本の制度が米国に比べ遅れていることなど、DXにまつわる諸問題も解決しなければなりません。日本企業がDXを取り入れていくためには、それぞれ一つひとつの課題を官民一体となってクリアしていかなければならないでしょう。

まとめ

今回はDXの定義や目的、現状の問題点などをご紹介しました。

これから先、企業においてDXを進めていく必要性は増々高まるはずです。消費者側もデジタルが進んだ今、その変化に企業側も対応していかなくてはいけません。ご紹介した中でもNetflixのように一早くデジタル化に対応している企業では一定の成果が認められています。

DXを取り入れたくてもなかなか進められない企業もあるかもしれませんが、時代に取り残されないためにはDXを取り入れざるを得ない段階まできているのです。

幸い、技術の発達によって便利な業務支援ツールも多数展開されています。ぜひ、皆さんもITシステムを活用して、効率の良い収益拡大を目指しましょう。

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