「Amazon」は顧客の商品購入の44%を、パーソナライズされた商品レコメンドで獲得しています。もちろん、すべてがAmazonのようにうまくいくわけではありません。
しかし、各タッチポイントで収集された顧客データ(個人情報、行動インサイト、購入前後の振る舞いなど)を活用することで、高度にパーソナライズされたWebサイト体験を提供することは可能です。そしてそのためには、顧客の変化していく好みや嗜好を理解し、それに応じてWebサイトをパーソナライズするための新しい戦略に継続的な投資を行う必要があります。
本記事では、Webサイトのパーソナライゼーションについて説明し、それに関するブランドの実例をいくつか紹介します。
Webサイトのパーソナライゼーションとは
Webサイトのパーソナライゼーションとは、サイト訪問者の嗜好、行動、デモグラフィック情報、およびその他の関連データに基づいてカスタマイズされた体験を提供することです。
パーソナライズをすることで、サイト訪問者に合わせた製品やサービスを提供することができます。その結果、ユーザー体験が向上し、エンゲージメントやコンバージョン、および顧客満足度を高めることができるのです。
Webサイトのパーソナライゼーションには以下のような様々な形があります。
- コンテンツのパーソナライズ
ユーザーの興味、閲覧履歴、位置情報、その他の要素に基づいて、異なるメッセージ、コンテンツおよび製品を表示します。
- 商品のレコメンド
過去の購入履歴や閲覧履歴、または類似顧客の嗜好に基づいて商品をレコメンドすることで、ユーザーの商品購入の可能性を高めます。
- 動的なWebサイトの表現
ユーザーの行動や好みに基づいて、動的に変化する要素をWebサイトに追加します。例えば、見出し、画像、ロゴ、バナー、クーポンコード、CTAやギフトなどです。「ある地域からWebサイトを訪れたユーザーには、その地域の通貨で価格を表示する」といった手法で、認知的不協和を減らすことができます。
海外トップブランドのWebサイトのパーソナライゼーション事例
もしあなたが旅行好きなら、あなたの「Instagram」のフィードは旅行関連のコンテンツばかりになっているかもしれません。一方で熱心にジムに通う友人のフィードはフィットネス関連のリールや投稿で埋め尽くされているはずです。
これは、Instagramのアルゴリズムが、フォローしているユーザーのコンテンツ、他のアカウントが投稿した類似のコンテンツ、他のユーザーがシェアしたコンテンツ、そしてユーザーに合わせたスポンサー投稿を優先して表示するためです。
Instagramはユーザーそれぞれに独自のコンテンツ体験を提供することで、エンゲージメントと継続率を向上させているわけです。
こういったパーソナライゼーションはSNSだけのものではありません。様々な業界のブランドがWebサイトのパーソナライゼーションを利用して、顧客の好みに応じたユニークなユーザー体験を提供し、高いエンゲージメントとコンバージョンを促進しています。
Webサイトのパーソナライゼーションを活用して、高い価値提供をしているトップブランドの例を見てみましょう。
1.Walmartのパーソナライズレコメンド
ホリデーシーズン中にパーソナライズされたギフトのレコメンドを表示する。
出典:Simtech
「Walmart」は、過去の購入履歴や閲覧行動に基づいて顧客をセグメントすることで、商品のレコメンドをカスタマイズしています。
ブラウジングセッション中にユーザーが閲覧した商品、クリックした商品をモニタリングし、各ユーザーに合わせて商品のレコメンドを行います。さらに、デモグラフィックデータを分析することでサジェストや提案の精度を高める取り組みも実施されています。
また、Walmartはそれぞれの国の祝日やホリデーシーズンに合わせて、ECサイトに新たな機能を展開して、ショッピング体験に華やかさを添えています。
2. Myntraのパーソナライズバナー
女性ユーザーに向けた夏のトップスとTシャツのバナーを表示する。
出典:Myntra
ECブランドの「Myntra」は、シーズンに応じてWebサイトのバナーをパーソナライズしています。例えば、暑い季節には夏服、バレンタインウィークには赤い服、ディワリ(インドを中心に行われるヒンドゥー教の重要な祭りのひとつ)には民族衣装を掲載します。これにより、顧客はコレクションが最新のトレンドであることを確信できます。
また、Webサイトのバナーのパーソナライズは、性別、場所、購入履歴、好み、およびセグメントに応じて変化します。MyntraのWebサイトに定期的にアクセスし、女性として登録している場合、Webページにアクセスするたびにレディース商品のバナーが表示される形です。
さらにMyntraでは、顧客が最後に閲覧したアイテムを表示することで、商品購入の可能性を高めています。
3. Spotifyのパーソナライズ楽曲レコメンド
好きなミュージシャンとジャンルを選択し、パーソナライズされたプレイリストを作成する。
出典:Spotify
音楽ストリーミングプラットフォームの「Spotify」は、リスニング履歴、好きなジャンルやムードなど、ユーザーデータを活用することで、パーソナライズの精度を高めています。ユーザーに合わせてパーソナライズされたプレイリストをキュレーションするのです。
新規ユーザーがSpotifyにログインすると、まずは好きなアーティストやジャンルを選択します。これはパーソナライズされたプレイリストの作成や楽曲レコメンドの参考になっています。
さらに、Spotifyの「Discover Weekly」プレイリストは、ユーザーのリスニング習慣に基づいて新しい楽曲へと更新されていきます。このアプローチは、ユーザー体験を向上させ、ロイヤルティとエンゲージメントの促進に役立っています。
パーソナライズされたプレイリストは、ユーザーが好きな音楽を楽しむだけでなく、新しいトレンドの曲を発見する手助けをするのです。Spotifyは、AIと機械学習を活用して、パーソナライズ機能を大規模に採用しています。
4. HubSpotのパーソナライズドコンテンツ
レベルに適したおすすめのコースをレコメンドする。
出典:HubSpot Academy
人気CRMプラットフォームである「HubSpot」は、ユーザーの閲覧履歴やエンゲージメントを分析して、Webサイトのレイアウトや機能をカスタマイズしています。
HubSpotは、マーケティングキャンペーンだけでなく、通常のサイト訪問者に対してもWebサイトのパーソナライゼーションを取り入れています。例えば、「HubSpot Academy」にログインしているユーザーには、受講中のコースとともに、過去の検索履歴や完了したコースに基づいて、そのユーザーに適したコースのレコメンドを表示します。
各訪問者に表示されるコンテンツやメッセージはユニークで、広告に合わせて調整されており、コンバージョンや売り上げの増加を図っています。
5. Expediaのパーソナライズ旅行プランニング
旅行料金比較サイトを運営する「Expedia」は、ユーザーの過去の検索、予約や好みに基づいてランディングページをパーソナライズすることで、次回の旅行に関連するホテルのレコメンドを行います。ペット同伴可能な宿泊先やオーシャンビューのヴィラの予約など、Webサイト上のあらゆるオプションへとナビゲートします。
出典:Expedia
Expediaは、既存の顧客に対して過去のチケットやホテルの予約に基づいた特別割引も提供しています。顧客は特別割引、クーポン、およびメンバーシップレベルに応じた特典を受け取ることができるのです。ExpediaのWebサイトは、パーソナライズされたブランディングやメリットを提供することで、顧客に対して旅行の予約を促すような動機づけをしています。
出典:Expedia
さらにExpediaは、顧客が好みに応じて簡単に旅行の予定を立てることができる「Trip Planner」を開発しています。
ユーザーはお気に入りのホテルを保存することができるため、友人と一緒に予約先を決定するときに便利です。友人たちに、このリンクを送れば旅行の旅程を一括で確認できるため、ホテルやチケットなど複数のリンクを送信する手間も省くことができます。旅行の予定が確定したらTrip Plannerで予約を行い、情報をひとつにまとめて管理できます。
Webサイトの収益、エンゲージメントを高めるためにパーソナライズは不可欠
今日のデジタル環境においては、適切なタイミングと場面で顧客のニーズや好みを理解することが極めて重要です。そして、ユーザーの好みに合わせた体験を提供するためには、Webサイトのパーソナライズが欠かせません。これにより、顧客のエンゲージメント、ロイヤルティ、そして収益を向上させることが可能になります。
一方でGartnerによると、デジタルマーケターの63%が「効果的なパーソナライズ体験の提供に課題を感じている」とされています。顧客データの活用、Web接客、レコメンドツールの活用を推進し、パーソナライゼーションを次のレベルに引き上げていきましょう。