アプリ事業における収益モデルの1つとして、課金があります。たとえばゲームアプリにおいては、ゲームを有利に進めることができるアイテムなどへの課金。動画、音楽系アプリにおいては、月額利用料としてサブスクリプション形式で課金など、様々な課金形態があります。
課金方法は、Apple IDなどプラットフォーマー側から指定された決済方法での課金が基本ですが、iOSでは、この決済方法における規制緩和の動きがあるようです。
Appleがアプリ外課金への制限を緩和
一部のアプリ事業者の間で、今、注目が集まっているのが2021年9月に配信されたApple社のプレスリリースです。その内容は、iOSにおいてリーダーアプリの提供事業者は、アプリ内に自社サイトへのリンクを含めることが可能になり、その適用が2022年初頭から開始される予定というものでした。
リーダーアプリとは、主に電子書籍や音楽などのコンテンツ配信系のアプリを指します。それらを提供しているアプリ事業者は、iOSアプリ内でのAppleが決めた決済方法だけでなく、ユーザーをアプリから自社のWebサイトなどに誘導し、様々な決済方法を使ってコンテンツを販売できるようになると想定されます。
この「iOSアプリ内でのAppleが決めた決済方法」が、事前にクレジットカード情報などをApple IDに紐づけて決済するいわゆるアプリ内課金。今回、可能になる「ユーザーをアプリから自社のWebサイトなどに誘導して行う、様々な決済方法」がアプリ外課金です。このアプリ内課金とアプリ外課金では、課金の利便性や収益性が異なります。
アプリ内で課金を行うアプリ内課金
アプリ内課金とは、ユーザーがアプリ内で課金を行う課金方式です。iOSでアプリ内課金をする場合、ユーザーは、Face IDやTouch IDによる認証を経て課金が可能になります。課金をするには、前述したように、クレジットカードを紐づけや、プラットフォームのギフトカードの登録が必要です。アプリ内で決済が完結するため、ユーザーにとっては利便性の高い課金方式といえるでしょう。
事業者の観点でもアプリ内課金は、「App StoreやGoogle Playなどのプラットフォームの仕組みを利用して課金を行うので、課金のための仕組みを自社でゼロから構築する必要がない」というメリットがあります。ただし、アプリ内課金にはプラットフォームへの比較的高額な手数料が発生するというデメリットも存在しています。
外部のWebサイトなどで課金を行うアプリ外課金
アプリ外課金は、アプリ内ではなくユーザーを外部のWebサイトなどへ誘導して課金を行う課金方式です。アプリ外課金を採用すると、アプリ内課金で発生するプラットフォームへの手数料軽減を期待できます。
しかし、自社で課金の仕組みを用意する必要があり、導入のハードルが高くなる点がデメリットといえるでしょう。また、ユーザー目線では、アプリから外部Webサイトへ画面に遷移するため、利便性が下がる懸念もあります。
■アプリ外課金の導線例
同じサービスをアプリ、Webサイトそれぞれで提供している場合、これまでアプリでの課金は同じアプリ内で決済すると制限されていたが、アプリで商品選択後、決済はWebサイトに誘導する、という流れも可能になりそうです。
アプリ外課金のユーザーのメリット
アプリ外課金は、手数料の観点で事業者メリットが大きい課金方式ですが、ユーザーメリットにつなげることも可能です。アプリ内課金より手数料が抑えられる分、割引キャンペーンやポイントアップのような特典をユーザーに提供できるようになるかもしれません。これらが実現すれば、お得さを重視するユーザーの課金率向上が期待できます。
また、アプリ内課金はプラットフォーム側の都合で、課金手段が限られていますが、アプリ外課金であれば、例えばPayPayや、楽天ペイ、メルペイネット決済なども導入できるので、ユーザーニーズが高く、利用者の多い課金手段を導入することも可能です。これにより、自分が使いたい決済手段がないという理由でユーザーが離脱するのを防止することもできるはずです。
アプリ内課金、アプリ外課金両方を準備することが重要
アプリ内課金、アプリ外課金、どちらにもそれぞれにメリットがあるので、「自社アプリを利用しているユーザーは何を一番重視しているか?」という観点で課金方式を選択することが重要です。
アプリの使い勝手を重視するユーザーが多いのであれば、手数料を抑えられても、アプリ外課金に注力するのは得策ではないでしょう。一方でお得さを重視するユーザーが一定数存在するのに、アプリ外課金を導入しないとなると、アプリのグロースを阻害しかねません。
iOSでリーダーアプリを展開する事業者は、ユーザーの利用傾向や、課金状況などを改めて調査し、最適な課金方法を模索することが重要だと考えられます。
アプリ外課金には決済代行会社の選択肢も
アプリ外課金の導入を希望しているが、どのように導入すればよいかわからない場合は決済代行会社を検討すると良いでしょう。
この原稿執筆時に取材協力をいただいたSBペイメントサービス株式会社では
- App Storeよりも決済手数料が安い。カード決済なら3%前後で導入可能
- PayPayなどの人気のある決済手段もまとめて導入可能
- 国際的セキュリティ規格に準拠。App Storeと変わらず安心して決済可能
といった有用なサービスを提供しているとのこと。多様なEC(Webサービス)の決済プラットフォームとしても多くの実績を持っており、規模に合わせたサービスのカスタマイズも可能です。
アプリビジネスはMVP発想とスピーディな開発・改善が命です。決済プラットフォームには機動性の高いパートナーを探すことをおすすめします。