アドボカシー・マーケティングとは?意味と重要性、実施方法を徹底解説

Repro Journal編集部
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2020.02.20
アドボカシー・マーケティングとは?意味と重要性、実施方法を徹底解説

目次

近年注目を集めているマーケティング用語のひとつに「アドボカシー・マーケティング」というものがあります。名前は聞いたことがあるものの、アドボカシーという語の正確な定義や、この概念が成立し、注目されるに至った背景については詳しく知らない人もいるのではないでしょうか。

この記事では、アドボカシー・マーケティングがどういったマーケティング手法なのかをその定義から詳しく解説し、実施する際に押さえておくべきポイントについても紹介いたします。

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アドボカシー・マーケティングとは

アドボカシー・マーケティングとは、企業の支持者・擁護者になってくれるような顧客との信頼関係を構築することを目指して、徹底的に顧客本位のサービスを提供するマーケティング手法です

「アドボカシー(Advocacy)」とは、「支持」「擁護」「唱道(率先して主張すること)」などを意味します。関連する語の「アドボケイツ(Advocate)」は、「支持者」「擁護者」あるいは「擁護する」といった意味合いを持ちます。

企業の支持者となった顧客は、お気に入り企業の商品をよく買ってくれるだけではなく、自発的にその商品やサービスのいいところを身の周りの人に勧めてくれるでしょう。その企業のことを心から信頼してくれている顧客であれば、業績の不振や、商品の値上げといったネガティブな事態に直面したとしても、その企業から離れるどころか、むしろ商品を積極的に買って企業をサポートしてくれることもあり得ます。

このような支持者となってくれる顧客との信頼関係は、単に同業他社よりも安く商品を提供することや、サービスの良さを全面的にアピールする広告を大量に流すことでは獲得できません。単に商品の安さだけに惹かれている顧客は、ほかにもっと安いものがあればそちらに移ってしまうでしょう。

アドボカシー・マーケティングが重要視されるようになった背景

アドボカシー・マーケティングが重要視されるようになった背景には、インターネットの普及などによるマーケティング環境の大きな変化という要因があります。

従来型のマスマーケティングが主流の時代では、企業と消費者との接点は限定されており、基本的に企業は広範囲の見込み顧客に向けてテレビやラジオのコマーシャル、新聞や雑誌の広告・レビュー記事などの画一的かつ大規模なマーケティング施策を行っていました。必然的に消費者がアクセスできる情報は限られており、消費者は上記の受動的なメディアを通して商品について知り、その中から商品を選んでいました。

このようなマスマーケティングが主流の時代は、「企業主導のマーケティング」の時代であったといえます。

一方、現代の消費者は、爆発的に普及したPCやスマホからインターネットを閲覧することで、自分の欲する情報に簡単にアクセスできるようになりました。また、SNSや誰でもレビューを投稿できる大手ECサイト・比較サイトなどが充実していることから、今ではほとんどの人が商品やサービスを選ぶ際には企業や商品の公式告知を見るだけではなく、実際に使った人のリアルな口コミやレビューをチェックするのが一般的になっています。

つまり企業が広告で商品の良いところばかりをプッシュしたところで、その裏側にある問題点なども消費者間でまたたく間に拡散・共有されてしまうのです。

現代の企業と消費者間の情報格差は縮まったどころか、企業のマーケティング担当者以上に商社会のニーズを把握している消費者や、ネット上の発言や投稿によって商品の売り上げを大きく変化させるほどの影響力のある消費者さえ存在します。このように消費者の力が強くなったことで両者の関係は逆転し、現代のマーケティングは「消費者主導のマーケティング」に変わったとみなされつつあります。

こうした環境の変化により、大量の広告などの物量にものをいわせたマーケティング施策では、簡単には顧客になってもらえないという状況が発生しました。自分に必要な商品だけを選別し、求めることができるようになった消費者は、自分には関係ない広範囲をターゲットにした広告によるプッシュをうとましく感じることも多く、逆効果になってしまうおそれさえあります。

そこで重要視されるようになったのがアドボカシー・マーケティングです。現代の企業にとっては目先の利益を追及することよりも、顧客の欲求や意向を最優先したサービスを提供することで満足度を高め、顧客からの強力で長期的な信頼を獲得することが必要となっているのです。

アドボカシー・マーケティングが追求するもの

顧客との信頼関係を築くためのアドボカシー・マーケティングでは、徹底した顧客第一主義を貫いた取り組みにより、顧客の「ロイヤルティ」(Loyalty:企業やブランドに対する愛着や信頼)を最大限に高めることが目指されます。ロイヤルティというのは顧客満足度から派生した概念で、より感情的な結びつきをあらわしています。

たとえば、企業が便利な商品を安価で提供していれば顧客満足度は高くなりますが、そのような物質的なつながりだけでは、他社からもっと安い商品が売り出された際に顧客はそちらに流れてしまうことでしょう。

一方、アドボカシー・マーケティングで獲得しようとしているのは、ロイヤルティが極限まで高まった顧客であるといえます。

では、顧客のロイヤルティはどのように高めていくのでしょうか。

マーケティングには「ロイヤルティのはしご」という考え方があります。これは、顧客の企業へのロイヤルティの高まり方を段階的に分析したものです。アドボカシー・マーケティングでは、顧客に「ロイヤルティのはしご」を上まで登ってもらうことを目的としています。

通常、企業と消費者との関係は、企業がターゲットとなる見込み顧客に向けて広告や営業などによってアプローチをすることから始まります。次にそのターゲットの中から商品を気に入り、選び取ってくれた人が顧客になり、中でも商品を特に気に入ってくれた顧客は、継続して商品やサービスを利用するリピーターとなります。

それから企業のさまざまな商品を買ったり、手厚いサービスを受けたりすることを通して長期的な信頼関係が構築されていくことで、顧客は「サポーター」へと変わっていきます。サポーターとは、お気に入りの企業の商品を周囲の消費者に推薦するなどの企業への支援の感情を持った状態です。

そしてそこからさらにロイヤルティが高まった、最高の状態がアドボケイツと呼ばれる状態です。

ロイヤリティの高まった顧客は、まるで企業のマーケティング担当者のように自発的に企業の魅力を発信してくれるため、アドボケイツ・マーケティングによってこのような良好な関係が築ければ長期的に大きなメリットを生むことができます。

アドボカシー・マーケティング実施のポイント

アドボカシー・マーケティングで目指しているのは、顧客との長期的な関係を構築することです。すぐに目立った成果が挙げられなくても、じっくりと継続的な取り組みを行うことが大切です。

そういった観点で考えると、アドボカシー・マーケティングの参考事例は実は街中にたくさん溢れています。例えば地域に根ざした食料品店をイメージしてみてください。何か商品を手に取ったとき「それは炒めると美味しいよ」とアドバイスをくれたり、「それは新鮮ではないから、すこし割引しておくよ」と正直に伝えてくれたり、まさに顧客第一主義ともいえるシーンを経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。コミュニケーションを通じて信頼を獲得し、良好な関係構築につなげているという点では、アドボカシー・マーケティングの好例といえます。

では、一般企業がアドボカシー・マーケティングを実践していくためには、どのような取り組みを行っていくべきなのでしょうか。いくつか例をご紹介します。

SNSでの積極的な情報発信や接客力の向上

SNSでの積極的な情報発信は、有効なアドボカシー・マーケティング施策のひとつです。

たとえば、家具や化粧品などの一般消費者向けの商品を扱っている場合は、使用例などリアリティのある情報を発信することや、寄せられた質問に答えるといった双方向コミュニケーションを行うなど、SNSを利用することで消費者から親近感を抱いてもらいやすくなります。

また、SNSはユーザー側が関心のある情報を選んで受け取ることができるという特徴もあるので、継続的に運用することで、企業・ブランドに好意を持っている人たちに集中して効率的に情報を届けられるようになります。

ネット上では、誰もが商品に対するどんなネガティブな意見でも発信し、閲覧することができます。こうしたネット上の顧客の意見や発言を、企業がコントロールすることはほぼ不可能です。そのため、自社の商品に関するネガティブな情報をひた隠しにしたり、批判を無視したりするよりもむしろ、ネガティブな情報でも正直に公開してマーケティングに利用するほうが有効な場合もあります。

たとえば、顧客からの改善要望などをWebサイト上で公開し、どのように対応したのか、あるいは対応が難しい理由をきちんと説明するなどすれば、顧客に対して一定の誠意を見せることができるでしょう。

反対に、ネガティブな情報がまったく公開されていないようだと、現代の消費者はかえって不信感を持つばかりか、批判に対する誠実な対応を示さない企業であると非難されてしまうおそれもあります。

アドボカシー・マーケティングでは、自社の不利益になるような情報でもすべての顧客に対して偽りなく届けるべきです。ときには他社の商品や店舗を紹介することも選択肢として考えられます。一時的に自社の不利益になる対応であったとしても、顧客に「本当に顧客のためになる情報を提供してくれる企業だ」と認識してもらえれば、これから先の良好な関係を築くことができ、長期的な利益につながる可能性があります。

顧客のニーズを把握し改善する

顧客の満足度を高めるためには、顧客のニーズを把握し、それに応え続ける必要があります。幸いインターネットが広く普及したおかげで、顧客の商品への感想やクレームといったフィードバックは集めやすくなっています。収集した情報をもとに改善を施し、より良い商品を顧客に届けることができれば、繰り返し自社の商品を選び取ってもらえるようになり、次第に企業やブランドへの愛着をもってもらうことにもつながるでしょう。

現代の消費者のニーズは、マスマーケティングの時代と比較して非常に多様化・細分化されているのが特徴です。個々の顧客のリアルな声をもとに、ニーズを満たせる商品を送り出していくことで、一部の顧客に「企業とともに新しい商品を生み出した」という体験を与えることもできます。そうなればより顧客により強い連帯意識を感じてもらえるようになるでしょう。

アドボケイツを特定する

効果的なアドボカシー・マーケティングを行うためには、アドボケイツとなってくれる顧客を特定する必要があります。そのためには「ネット・プロモーター・スコア(Net Promoter Score、NPS)」という顧客ロイヤルティを測る指標を算出するためのアンケート調査が役立ちます。

NPSの調査では、まず顧客に対して「あなたは周囲の人にこの商品やサービスをどの程度すすめたいと思いますか?0~10点で回答してください」というアンケートを実施します。

得られた回答結果のうち、9・10点と評価した顧客を「推奨者」、7~8点と評価した顧客を「中立者」、0~6点と評価した顧客を「批判者」の3グループに分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引くことで算出されるスコアがNPSです。中立者の割合は計算に関与しません。

顧客満足度は顧客がすでに得た満足の度合いをたずねて数値化するのに対して、NPSは「人に勧める」という未来の行動を数値化するため、今後の収益性により強い相関関係があると考えられています。

NPSの計測をすることで、商品が顧客から総合的にポジティブな感情を持って受けとめられているかどうかが数値化できるだけでなく、アンケートを通じて商品に対して3様の感情を抱いている顧客を特定することができます。9・10点の評価をつけた顧客は商品や企業に対して強いロイヤルティを持っている可能性が高いですから、このような顧客に対して感謝の姿勢を示すことでアドボカシー・マーケティングを効率的に進めていくことができるでしょう。

また、3通りの顧客分布のデータが把握できれば、顧客ロイヤルティを高める施策の優先順位も決めやすくなります。中立者を批判者に落としてしまわないようにフォローを手厚くしたほうが良いのか、今いる推奨者のロイヤルティをより高めることを目指したほうがいいのか、NPSを向上させるために優先すべき対処は顧客分布により異なるのです。

NPSを計測することで、収益向上につながるマーケティング施策の費用対効果を数字で確認することができるようになるのです。

顧客による発信を促す仕組みづくり

自社の商品やサービスを気に入ってくれた顧客が、SNSや口コミサイトなどでポジティブな情報を発信することで新規顧客獲得につながる可能性があるのが、アドボカシー・マーケティングの大きな強みです。

その強みを活かすためには、顧客のニーズを継続的に満たして良好な関係を保っておくのと同じくらいに、顧客にレビューや口コミの投稿を促す導線を設けることが重要になります。

たとえば、企業の社員以外にほかの顧客とも意見を交わすことができるコミュニティフォーラムがあると、顧客は口コミへの関心をより強く持ってくれるようになるといわれています。実際に大手ECサイトやレビューサイトには、購入を検討している人が購入者に商品の使い勝手や疑問点などを質問できる仕組みが用意されていて、企業が発表している情報よりも購入者によるリアルな回答を重視している人もいます。こうした場に、ロイヤルティの高まった顧客によるポジティブな情報が増えていけば、利益も伸びていくでしょう。

また、レビューを書いた顧客を対象にポイントを付与するプログラムや、無料のサービスを積極的に提供するなどして、顧客に対しレビューを書くことで得られる明確なメリットを提示するのも有効です。

まとめ

アドボカシー・マーケティングの戦略で重要なポイントは、顧客の利益を最優先した取り組みを継続することにより顧客ロイヤリティを高め、長期的に良好な関係を築くことです。アドボカシー・マーケティングがかつての単なる「顧客第一主義」と異なるのは、顧客一人ひとりの細分化・高度化したニーズを把握し、それに応える必要があるという点にあります。

企業に「自分だけのニーズ」を満たされた顧客は、強力な支持者として企業を支えてくれます。アドボカシー・マーケティングによる自社や商品のブランディングは、これからの企業が成長していくためにますます重要なものになっていくでしょう。

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