IDFAオプトイン後のアプリマーケティングを語る【App Marketing Conference 2021】

山﨑 信潔
山﨑 信潔
2021.03.26
IDFAオプトイン後のアプリマーケティングを語る【App Marketing Conference 2021】

目次

2021年春、アプリマーケティングにおいて最も注目されているのがIDFAオプトインの必須化。対策に不安を抱いている方も多いでしょう。

本記事では、アプリマーケティングカンファレンス 2021において実施された「IDFAオプトイン後のアプリマーケティングを語る」というセッションについてレポートしています。UNICORN株式会社の山田翔氏、株式会社アカツキの窪田真太郎氏、AppsFlyer Japan株式会社の早川俊太郎氏、Repro株式会社の稲田宙人が、アプリマーケティングの未来について語り尽くします。

※本記事は、2021年3月16日、17日の2日間にわたって開催された「アプリマーケティングカンファレンス 2021」のセッションをダイジェストでレポートするものです。無料アプリストア診断

iOS14.5のリリースでIDFA取得率はどう変化するのか?

モデレーターを務める山田氏が最初に取り上げたテーマは、「iOS 14.5がリリースされるとどういう変化が起こる?」というもの。目下の注目ポイントである、「IDFA取得率の低下」からディスカッションが始まりました。

Repro株式会社の稲田は「悲観的な数字である」としながら、IDFA取得に対する許諾意向は14%程度となったという海外の調査結果を紹介。IDFA取得率が大幅に減少する可能性については一定の覚悟が必要であることを示しました。これには出席者全員が苦笑いを浮かべます。

一方で、AppsFlyer Japanの早川氏からは、ATT(AppTrackingTransparency)の本格実装前から対策に取り組んでいるある企業を例に、下記のような指摘も。

「僕たちのお客様の中には、取得率50%程度を実現している会社もあります。そのアプリはカジュアルゲームに属するもの。アプリの性質によっては、親切に案内をすればそのくらいの数値になる可能性もありそうです」

従来のようにほぼ100%取得できる環境は望めないものの、アプリのジャンルや企業の努力によって、低下率を抑えることができる可能性はありそうです。

IDFAが取得できなくなる今後、計測はどうなる?

IDFA取得率の低下がほぼ確実になるなかで、その対策として注目されているのが、Apple社が提供するSKAdnetworkです。モデレーターの山田氏はこの点に話を進めます。

「基本的にはMMP(Mobile Measurement Partner)と媒体社さんが、どのような仕様になるかに従うしかない」という、アプリディベロッパー側の見解を示すのは窪田氏。「変化に対してどのようにアジャストするかが論点になる」と語ります。

また、山田氏は、「DSPとSSPの両方がSKAdnetworkに対応しなければ計測ができないというなかで、SSP側の対応がまだまだ進んでいない。現状、10~15%でしか、SKAdNetworkの計測ができていない」と現時点での状況を報告しました。

結論、SKAdNetowrkだけでなんとかなるという環境にはまだ至っていないのが現実のようです。いったんは、MMPによる効果計測とSKAdNetowrkによる効果計測が並行運用される形になるのでしょう。

なお、AppsFlyerが進めている「Probabilistic Matching(確率論的モデリング)」については、「ユーザー個人や端末を個別に特定しない計測技術なので、iOS 14.5リリース以降も問題なく提供できる」と、早川氏は説明しています。

Apple Search AdsとASOの重要度が増していく可能性

それでは、この現状を踏まえて、アプリマーケターはどのような行動をとっていけば良いのでしょうか。山田氏が論点として挙げたのは以下の3つでした。

  • 新規ユーザー獲得
  • アクティブ度の維持/向上
  • マーケティング全体

新規獲得の側面においては、稲田が「Apple Search AdsとASO(App Store Optimization・アプリストア最適化)の重要性が増す可能性がある」という意見を提示。

「Apple Search AdsはIDFAの影響を受けない」「IDFA取得率の低下に伴うターゲティング精度の低下によって、広告効果を読めなくなる」という背景をベースに、現時点でもApple Search AdsとASOの併用についての問い合わせが増えてきているといいます。

窪田氏も、「今までは、リソース観点からASOへの取り組みが十分ではなかった側面があったが、今後の動きによっては、しっかりと向き合わなければならない」と賛同しています。

休眠させない努力がより重要に

広告効率の低下が想定されるなか、アクティブ度の維持/向上の観点においては、「休眠をさせない努力が重要なのではないか?」という問いが、山田氏から発せられます。

これに対する窪田氏の回答は以下のようなものでした。

「休眠させない努力はとても重要。ゲームのUI/UXがしっかりと整っていることを前提として、ゲームの外でも熱狂できるコンテンツをちりばめていくことが重要になっていく。いわゆるコミュニティマネジメントが重要になる」

さらに、今後、オウンドメディアの企画運営にリソースが寄っていく可能性についても言及しています。

また、山田氏からはUNICORNで開発が進んでいる「Probabilistic Targeting」という手法についても紹介がありました。

ユーザーの状態を推測し、広告を配信することが可能になるため、対象となるユーザーがアクセスしそうなトラフィックを推定してコミュニケーションを取ることもできるといいます。定常的にコンテンツに触れてもらうために、広告を使用するという考え方もありなのではないかと語りました。リリース準備が整い次第、詳細をアナウンスしていくそうです。

休眠を避けるためには、アプリ内外でのコミュニケーションも重要というのはReproの稲田。いわゆる、プッシュ通知やアプリ内メッセージの活用です。「休眠したユーザーを復帰させるのは非常に難しい。休眠前にユーザーとコミュニケーションを取ることが重要」としています。

ユーザーの識別にこだわりすぎていたこれまで

マーケティング全体にディスカッションテーマを移すと、「ユーザーの識別にこだわりすぎていたのではないか?」という疑問が浮かび上がります。

「まさしく同じことを考えていました。今までが正しく取れすぎていたという感覚を持っています」というのは窪田氏。「大局を見て、社内外のデータ・ツールを横断しながら、マーケティング施策を評価するという姿勢が求められていく」と指摘します。

早川氏は、SKAdnetworkに関して、短期的な媒体評価に加えて、短期的なデータを基にした長期間のユーザー、キャンペーン評価を行う機能を、近くリリースする予定であると語ります。厳密なユーザーの識別なしで、投下コストを回収していく計測・評価方法が必要になっているわけです。

アプリマーケターがプロダクトに寄り添っていく

セッションの締めくくりにあたり、「これまではマーケティングをハックするようなアプローチが主体だった。今後は、いいプロダクトを作って、それを世に広めていくという本質的なマーケティングに進んでいかないと、勝負が難しくなる」と、マーケターの仕事の変化についても話を展開させた山田氏。

窪田氏も、「プロダクトチームと一緒に考えながら、月ごとのキャンペーンを作っていったり、施策を作っていったりすることが、徐々に増えてきています」とコメント。アプリマーケターがプロダクトに寄り添ったマーケティング施策の立案をすることが増えてきているといいます。

Repro稲田も「4P(Product・Price・Place・Promotion)のうち、Place ・Promotionしか担当していなかったアプリマーケターが、よりProductに寄っていくというのは不可逆な流れなのでは」と同調します。

さらに、アプリストアのコンテンツやLPの質についても話は及び、「最近、LPを挟むお客様がすごく増えています。IDFAが使えなくなったあとを見越してだと思うのですが、感覚値では問い合わせがめちゃくちゃ増えました」と早川氏。

IDFAオプトイン必須化の影響は、広告効果の計測だけにとどまらず、マーケティング手法の変化、さらにはアプリマーケターの仕事への向き合い方にも及んでいるようです。今後の環境変化を注視しつつ、企業としても個人としても、柔軟に対応ができる組織とスキルを準備しておいたほうが良いでしょう。無料アプリストア診断

Webとアプリの
売上最大化ツール
「Repro(リプロ)」

サービス資料をダウンロードする すぐに担当者に問い合わせる

Webとアプリの
売上最大化ツール
「Repro(リプロ)」

サービス資料をダウンロードする すぐに担当者に問い合わせる

PAGE TOP