アプリのグロースを目指すなら、その入り口としてのプロモーション戦略を欠かすことができません。とはいえひとくちにプロモーションといっても、SNS広告、動画広告、テレビCMに第三者メディアを活用したPR、ユーザー間での拡散など、その手法は数限りなくあり、しかもそれぞれを効率的に運用するには専門的なノウハウと予算・人員が必要。限られたリソースで最大限の成果を発揮するには、自社のアプリに合わせて最適解を導き出さねばなりません。
本記事では、Reproが実施した「モバイルアプリのインストール実態調査」の結果を基に、アプリの認知やインストールに効くチャネルを明らかにしています。ユーザー獲得担当者の方はぜひご覧ください。
アプリの認知獲得にはSNS広告・動画広告が最適
最初に紹介するのはアプリの認知経路についての調査結果です。国内の消費者はどのようなチャネル・媒体で新しいアプリを初めて知るのでしょうか。新アプリのリリースを控えている企業、アプリのグロースを加速するために知名度を得たいデベロッパーには欠かせないデータといえます。
結論からいえば、初回認知を得るための最強のチャネルは「SNS広告・動画広告」であると断言できます。「モバイルアプリのインストール実態調査」では、認知チャネルについて複数回答、単一回答のそれぞれで回答を得ているのでその結果を見ていきましょう。
■アプリの存在を新しく認知するきっかけ(当てはまるものすべて)
※出典:「モバイルアプリのインストール実態調査」(Repro株式会社)
「アプリの存在を新しく認知するきっかけ」を複数回答で聞いたところ、「SNS広告・動画広告」を選択した回答者が最も多く全体の39.1%となりました。2番目に多かったのは「友人・知人の紹介」で34.1%、「Webサイト・アプリ内の広告」が31.5%で続きます。
■アプリの存在を新しく認知するきっかけ(最も多くの情報を得ている)
※出典:「モバイルアプリのインストール実態調査」(Repro株式会社)
上のグラフは、「アプリの存在を新しく認知するきっかけ」として「最も多くの情報を得ている」情報源を単一回答で聞いた結果。全体の傾向は複数回答時と大きく変わりませんが、「SNS広告・動画広告」の優位性がより顕著に表れる形となりました。
これらのデータからは大きく3つの示唆を得ることが可能です。ひとつ目はもちろん、「アプリの認知獲得はデジタルチャネルから開始すべき」だということ。「SNS広告・動画広告」「Webサイト・アプリ内の広告」が、複数回答、単一回答のいずれでも1位、2位になっていることを考えると、異論のないところでしょう。
加えて、「アプリそのもののUI/UXの優位性やブラッシュアップが認知獲得にも効く」ということ。「友人・知人の紹介」が複数回答、単一回答の両方で3番目に選択されている点からの逆算です。
「友人・知人の紹介」は実際にアプリの価値を体験し、「価値がある」「良い」と評価した結果として発生するもの。近年のアプリは、最小限の機能でスピーディにリリースしたうえで、ユーザーのフィードバックを得ながら改善を重ねるMVP(Minimum Viable Product)開発が主流となっていますが、核となるUI/UXは徹底的に追及しておくべきでしょう。決して「早ければ雑でいい」ではないのです。
最後に言及したいのが、「テレビCM・屋外広告等のオフライン広告」「テレビ番組での紹介」という、既存の認知チャネルの低迷です。単一回答ではそれぞれ全体の2.4%、2.8%となりました。
ただし、この結果を「従来のオフライン施策が認知獲得に向かない」と理解するのは早計です。この設問はあくまで「初回認知」について聴取したものだからです。今日のアプリマーケティング施策はデジタルから開始するのが通常。また、オフライン施策は大規模な費用がかかるケースが多く、アプリが一定の成功を収めてから実施されるのが現状です。そもそも初回認知を目的として使用されていないために、このような結果になっていることが考えられるのです。
テレビを中心としたマス広告はいまだ認知獲得の手法として健在です。「デジタルチャネルの認知効果をドライブさせるためにオフラインチャネルを使用すべき」と読み解くのが適切でしょう。
アプリのインストールに長い検討期間を必要とする人は少ない
それでは、消費者はアプリの認知後にどのような行動を取ってインストールへと至るのでしょうか。「新しいアプリを知ってからインストールする前に取る行動」を聞いた結果が下のグラフです。
■新しいアプリをインストールする前の行動(最も多く取る行動)
※出典:「モバイルアプリのインストール実態調査」(Repro株式会社)
最も多く選ばれたのが「すでに知っている情報だけですぐにインストールする」で28.2%、2番目は「アプリストアにアクセスして評価スコアやレビューを確認する」で23.8%でした。アプリストアへのアクセスはインストール直前の行動であると捉えることができます。アプリのインストールにあたって、慎重に第三者の評価を確認したり、長い検討期間を持ったりする人は少ないのです。
認知をインストールへと効率的に転換していくためには、認知を獲得したタイミングで一気呵成に利用価値の訴求を実施すべきだと考えられます。初回接触時のクリエイティブのPDCAはもちろん、その直後の接触量を増やし、インストール動機を一気に高め切る施策が重要であるといえそうです。
「アプリストアにアクセスして評価スコアやレビューを確認する」という回答に対しては「ASO(アプリストア最適化)対策」が非常に重要な意味を持ちます。詳しくは下記のページを確認してください。
【アプリカテゴリ別】インストールの直接的なきっかけとなった情報源・チャネル
「モバイルアプリのインストール実態調査」では、アプリを12カテゴリに分け、各カテゴリのアプリのインストール経験がある人にそのきっかけとなった情報源について尋ねています。直接的にインストールに貢献するチャネルを見つけ出すことが目的です。特徴的な傾向が表れたアプリカテゴリをピックアップして紹介していきましょう。他のカテゴリの結果が知りたい人は「モバイルアプリのインストール実態調査」のレポート資料をダウンロードしてご覧ください。
モバイルアプリのインストール実態調査で調査したアプリカテゴリ
- 「天気/ニュース」アプリ
- 「フードデリバリー」アプリ
- 「EC/ショッピング」アプリ
- 「ゲーム」アプリ
- 「VOD/音楽/マンガ/電子書籍」アプリ
- 「ファイナンス/暗号資産」アプリ
- 「電子マネー/電子決済」アプリ
- 「マッチング」アプリ
- 「ヘルスケア/フィットネス/メディカル」アプリ
- 「ポイ活」アプリ
- 「店舗系会員」アプリ
- 「教育/学習」アプリ
「EC/ショッピング」アプリ
「EC/ショッピング」アプリには明らかに他のアプリとは異なる特徴が表れました。「友人・知人の紹介」がインストールのきっかけとして最も強い影響力を発揮しているのです。
EC/ショッピングアプリは価値提供がアプリでは完結しません。手元に届く商品の品質や配送スピードなどにサービス価値が大きく左右されます。そのため、実際に使用した人のリアルな評価がインストールの強い動機づけとなっているのでしょう。ユーザーを増やすためにはプロモーションだけでなく、ECとしてのサービス改善に注力すべきです。
■【EC/ショッピング】インストールの最も強いきっかけとなった情報源
※出典:「モバイルアプリのインストール実態調査」(Repro株式会社)
「ゲーム」アプリ
「ゲーム」アプリのインストールに最も大きな影響を与えているのは「友人・知人の紹介」で22.3%でした。「周囲がやっているから自分もプレイしてみる」という消費者の行動をわかりやすく読み取れる結果です。「SNS広告・動画広告(21.9%)」でのプロモーションはもちろん重要ですが、ユーザーがユーザーを呼ぶようなコミュニティ戦略も欠かすことができないことがわかりました。
また、「アプリストアのおすすめやランキング」という回答も13.9%を占めており、「なんとなくゲームをしたい」というニーズに対して、アプリストア内でアプローチする施策も有効といえます。
■【ゲーム】インストールの最も強いきっかけとなった情報源
※出典:「モバイルアプリのインストール実態調査」(Repro株式会社)
「VOD/音楽/マンガ/電子書籍」アプリ
「SNS広告・動画広告」「Webサイト・アプリ内の広告」「友人・知人の紹介」が、トップ3になっていることは初回認知チャネルと同様ですが、特徴的なのは「アプリストアのおすすめやランキング」が12.0%で3番目に多く選択されていることです。
消費者は、アプリ名だけでなく動画アプリ、マンガアプリといった形でカテゴリとしてアプリを認識するケースが多く、アプリストア内でウィンドウショッピング的な行動が発生していることがうかがえます。Apple Search Ads、Googleアプリキャンペーンのようなアプリストア内広告やASO対策にも注意を払う必要があるといえます。
■【VOD/音楽/マンガ/電子書籍】インストールの最も強いきっかけとなった情報源
※出典:「モバイルアプリのインストール実態調査」(Repro株式会社)
「フードデリバリー」アプリ
「フードデリバリー」アプリのインストールのきっかけで特徴的だったのは、「テレビCM・屋外広告等のオフライン広告」が13.2%で3番目に多く選ばれていること。
大きな要因として、「Uber Eats」「出前館」「menu」といった大手アプリがテレビCMや屋外広告などを積極的に活用している点が挙げられますが、それ以外にも「視覚的訴求力を高めやすいプロダクトである」「●円割引などのインセンティブを提供しやすい」「年齢・性別を問わないサービスである」といった、マス広告にフィットするプロダクトであるという要素もその一因と考えられます。
■【フードデリバリー】インストールの最も強いきっかけとなった情報源
※出典:「モバイルアプリのインストール実態調査」(Repro株式会社)
「店舗系会員」アプリ
「店舗系会員」アプリのインストールのきっかけは非常にシンプルかつ独特。圧倒的に「店舗内の掲示やスタッフの案内」が多いことがわかっています。OMO戦略にアプリの活用を据えているのであれば、第一に店舗やそこで働くスタッフにアプローチする必要があるということです。店舗ごとに目標を設定してアプリのインストール促進を図り、OMOで成果を上げている企業もあります。ユーザーだけでなく社内にアプリの価値を理解してもらうことから始めるのがよいでしょう。
■【店舗系会員】インストールの最も強いきっかけとなった情報源
※出典:「モバイルアプリのインストール実態調査」(Repro株式会社)
トレンドとカテゴリ特性の掛け合わせで最大成果を
今回の調査で明確になったのは、アプリの認知・インストールに対する、SNS広告・動画広告を主としたデジタルチャネルの優位性、加えてアプリカテゴリごとにインストールに直接的に影響を与えるチャネルには差異があることです。
アプリの新規ユーザー獲得を狙うなら、まずはSNS広告・動画広告を外すことはできません。集客戦略の軸になるように展開すべきです。そのうえで自社が運営するアプリのカテゴリに合わせて優先すべきチャネルを選択して施策を立案していくのがよいでしょう。
AppleによるIDFA(Identifier for Advertisers・Apple独自の広告識別子)のオプトイン必須化による広告ターゲティング・効果測定精度の低下や国内外の大手アプリによる大量出稿がCPI(Cost Per Install・インストール単価)の高騰を招き、新規ユーザーの獲得難易度は上がり続けています。限られた予算で最大の成果を生み出すためのヒントとして、本記事で紹介したデータをご利用ください。