動画制作にはさまざまな問題が付きものですが、iOSのプロモーションにおいても同様です。
App Storeの動画制作はASOと同様、どのクリエイティブを利用するかによって最終的な成果が大きく変わってきます。
この記事では、ドイツのゲーム開発企業「Wooga」によるパズルゲームアプリ『Tropicats』の動画制作の裏側をご紹介します。アプリのリリースまでにどのようなブレインストームを行ったのかなど、アプリのプロモーション動画制作におけるポイントをまとめました。
また、最短でもっとも効果の高いプロモーション動画を作成するためのA/Bテストの方法についてもまとめています。
『Tropicats』とは?
『Tropicats』とは、同じフルーツやコインを3つ以上揃えて南国の島を作っていくパズルゲームです。
キャラクターである猫たちが住む村が破壊されてしまったので、新たに南国の島を作っていくというストーリーからゲームが始まります。ステージをクリアしながら猫たちを助けることでコインをゲットすることができ、そのコインを貯めることで島を自分好みにカスタマイズしていくのです。

このアプリはiOSとAndroidのどちらでもDLできます。
当初行われた議論
2017年6月当時、すでに『Tropicats』はカナダやイギリスを含め数カ国でリリースされていましたが、「Wooga」は新規ユーザー獲得に向けて、アプリストアにクリエイティブアセットを追加したいと考えていました。
当時はちょうどiOS11(App Storeでの動画の自動再生)がリリースされたところだったので、まずは競合の分析からはじめました。
Appleがアプリプロモーションにおけるガイドラインの制限を緩めている傾向にあったため、担当者のAndrey氏から横画面の動画を利用したいといった提案があったのです。

当時は、縦画面のゲームで横画面の動画を使うことはあまり多くありませんでした(現在でもこの方法は却下されるリスクが高く、他にも申請が承認される可能性を上げるために必要な暗黙のルールがいくつかあります)。 実際に過去にいくつか横画面の動画が検索結果に表示されなかったというケースがあったのです(現在は改善済み)。
このように、「Apple」のガイドラインに違反しないようにしながらもできるだけ多くの種類の動画制作を行い、検証しましたが、最終的には縦画面の動画だけに集中することに決めました。
準備段階でのポイント
- 競合がApp Storeで使い続けている動画をよく分析する
App Storeでしばらくの間使われているということは、「Apple」がその動画は特に問題ないと判断しているため、リジェクトされる可能性が低いです。
- またそれに対して新規ユーザー獲得のための動画やそれに対する議論からの考察
動画のクリエイティブコンセプトをまとめる上で重要なデータを収集していきましょう。
動画のコンセプト
上記のポイントを踏まえた準備を行ったので、リリース予定であったゲームのためのスクリプトをスムーズに完成させることができました。2つのスクリプトのうち、1つはテキストがあるもの、もう1つはテキストがないものです。

Andrey氏から提供していただいた「Wooga」のビフォーアフター動画に、十分なクオリティのアニメーションがあったので、それを活用してプロモーション動画を3パターン作成しました。

パターン1. メイン要素を簡潔に表示
このバージョンではまずゲームの概要をわかりやすく説明しています。また、 動画に合わせたテキストやキャッチコピーを表示しました。
表示順序
- ゲームのメイン要素を簡潔に表示 a. パズルのプレイ画面 b. 島をカスタマイズしている画面
- パズルのプレイ画面でフィーバーしている様子
- 最後に、たくさんプレイしたユーザーのみ獲得できる賞品を表示
パターン2. 世界観を表現
このバージョンではゲームの世界観を掴んでもらうため、始めに島の様子を表示し、ゲームのそれぞれの場面をテキストで紹介しました。
表示順序
- 島の紹介からスタート
- パズルのプレイ画面でフィーバーしている様子(テキストで説明)
- 島をカスタマイズしている画面(テキストで説明)
- 最後に、たくさんプレイしたユーザーのみ獲得できる賞品を表示(テキストで説明)
パターン3. テキストなし
このバージョンは動画1と同じ形式で始まりますが、ゲームプレイの紹介後はテキストを入れずにゲームの雰囲気やカスタマイズの機能を表示します。
表示順序
- パズルのプレイ画面を表示
- パズルのプレイ画面でフィーバーしている様子
- 島をカスタマイズしている画面
- 最後に、たくさんプレイしたユーザーのみ獲得できる賞品を表示
ポイント
- スクリプトやシナリオを作成する際は、必ず制作チームとよく話し合い、まとめてから動画制作に取り掛かってください。動画が出来上がってから修正すると効率が悪くなります。
- 様々なバージョンのプロモーション動画を制作することで、パフォーマンスの向上につながります。
ファインチューニング
このステップでは動画内で紹介した内容が、実際のゲームと一致しているかどうかを確認します。
動画制作に取り掛かる前に、BGMやアナウンス、ゲームの画面など、スクリプトの詳細を細かく共有することで、実際のゲームとプロモーション動画との不一致を防ぐことができるのです。

ポイント
- どのタイミングでどの画面を使用するのか、明確にしておきましょう。
- 「Apple」のガイドラインに対して多少リスクの高い実験をしてみる場合は、却下された時に備えてバックアッププランを練っておきましょう。
動画について
動画1では概要を簡単に紹介し、その後に必要なテキストを加えました。
動画1
Tropicats - iPhone App Preview #1 from Apptamin on Vimeo. 次に残り2つの動画を制作しました。
動画2
Tropicats - iPhone App Preview #2 from Apptamin on Vimeo.
動画3
Tropicats - iPhone App Preview #3 from Apptamin on Vimeo. 実際にどのプロモーションが1番成功したのかをご紹介する前に、どんな動画がAppleに好まれるのかご紹介します。
最新機能に対するAppleからの要求
ご存知のようにiOSのプロモーションは端末が限定されています。
iPhoneにおけるプロモーションの解像度は以下2つのバージョンで異なるのです。
- iPhone6/7/8とPlusのバージョン(比率9:16、解像度1080×1920)
- iPhone Xのプロモーション(比率9:16、解像度886×1920)
また、iPadの場合はさらに別のバージョンが必要になります(比率3:4、解像度1200×1600)。
今回、『Tropicats』のプロモーションはiPhone Xがリリースする直前に進められたため、「Apple」からiPhone Xに適した動画の制作を要求されました。
このように、アプリの開発中に「Apple」からクリエイティブアセットを突然要求される可能性があることを念頭に置いておきましょう。
迅速に対応できた結果、アメリカやヨーロッパなどで「Apple」が『Tropicats』をフィーチャーしてくれるなど、大きな成果を得ることができました。
ポイント
- 「Apple」の最新機能に対応するために、それに合わせた最終段階におけるアセットの調整が必要になる場合があります。
- 「Apple」の最新機能や機能(Apple Payや3D touchなど)を活用すると「Apple」からポジティブな評価を受けます。アプリに互換性がある場合は、それぞれバージョンに対応した動画が必要です。
動画のパフォーマンステスト
今回制作した3つの動画のうち、最も成果の高いものを調べるために、「Wooga」はA/Bテストを行いました。
A/Bテストでは、どのバージョンが最も成果の高いものかを知ることができます。

ポイント
- 動画制作のテストを行う場合は可能な限り異なるバージョンを試しましょう。
- 予算が許す限り、より大きなサンプルサイズでテストを行いましょう。サンプルサイズが大きければ大きいほど、データの信頼性が上がります。
- 結果を分析する時は信頼区間を念頭において、結論を急がないようにしましょう。
より詳しいA/Bテストの実施方法については、こちらをご覧ください。
最後に
プロモーション動画の目的は2つあります。1つは、App Storeの全体的なCVを増加させること、もう1つはインストール後のエンゲージメントを最大限にするため、動画でゲームの内容を簡潔に伝えることです。
プロモーションを始める前に、ユーザーがDLしたくなるような動画を製作する計画を立てましょう。このとき、アプリの内容を簡潔に紹介することで、DL後の継続率を高めることができます。
より良い動画を選ぶために、プロモーション動画が完成したら、A/Bテストを行い、もっとも成果の高い動画を選びましょう。
この記事は、Apptamin社のブログ"CREATING THE TROPICATS APP PREVIEWS WITH WOOGA (AND WHICH ONE PERFORMED BEST)"を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on Apptamin in English under the permission from the author.