CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?言葉の意味と顧客体験を改善すべき理由

Repro Journal編集部
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2020.02.14
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?言葉の意味と顧客体験を改善すべき理由

目次

ユーザーを取り巻く環境の変化のなかで、より複合的にサービスの体験を捉える考え方である「CX(カスタマーエクスペリエンス)」が注目を浴びています。この記事では、CXが注目を浴びるようになった背景や、他の似た概念であるUX(ユーザーエクスペリエンス)やCE(カスタマーエンゲージメント)、CS(カスタマーサティスファクション)との違いなどを解説します。

CXをなぜ向上しなければならないのか、どう取り組めば良いのかなど、これからのマーケティング施策のヒントになれば幸いです。

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは

CX(Customer Experience・カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客が商品やサービスを購入・利用するときの、一連の体験を指す言葉です。日本語では「顧客体験」と訳されるのが一般的です。

CXにおける体験は、実際に顧客が商品を購入するときの体験だけでなく、購入前の検討段階から購入後のサポートやメンテナンスまで、商品・サービスの購入・利用を取り巻くすべての体験を指しています。また、CXには提供している企業に対してユーザーが抱いている印象といった要素も含まれます。

では、CXと似た概念であるUX、CE、CSとの違いはどういった点にあるのでしょうか。

UX(ユーザーエクスペリエンス)との違い

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーが個別の商品・サービスの利用を通じて受けた感情や、体験のことです。「個別の」商品・サービスという点が重要で、例えば化粧品販売のWebサイトをユーザーが使用している場合、UXの概念では「Webサイト」と「各化粧品」のUXは別々に分けて考えます。

一方でCXは顧客がWebサイトを利用して化粧品を購入し、使用後までの全ての段階が対象になります。CXとUXは意味が似ていますが、UXが一時的な相互作用(インタラクション)をあらわすのに対し、CXは相互作用全体をあらわします。つまり、CXはUXが積み重ねてできたものと考えると良いでしょう。

参考: カスタマーエクスペリエンス(CX)とカスタマーエンゲージメント(CE)の違いとは?定義・歴史的背景から考える。

CE(カスタマーエンゲージメント)との違い

CE(カスタマーエンゲージメント)とは企業と顧客のつながり、信頼関係の強さをあらわしています。CEは顧客をファンにすることで、中長期的な関係を築くためのマーケティング手法です。CXが1回の体験での価値を最大化するのが目的であるのに対し、CEは複数回の体験を積み重ね、顧客との関係を築くことが目的です。また、CEは収益をメトリクスとする、実利的な要素も含んでいることも特徴です。

CS(カスタマーサティスファクション/顧客満足度)との違い

CS(カスタマーサティスファクション)は顧客満足度を意味します。CSは顧客へのインタビューやアンケートを通じて、自社商品・サービスに対する満足度を測定することで数値化させ、現状の評価を行います。一方、CXは顧客の商品・サービスの購買プロセス全ての体験を評価するものです。したがって、CXはより顧客目線で商品・サービスを全体的に判断する側面が強いといえます。

CXが注目されている理由

ここではCXが注目されている理由・背景を3つ紹介します。

SNS・スマホの普及による顧客との接点の増加

近年CXが重要視されている理由のひとつに、顧客と企業との接点が増えたことが挙げられます。

スマホ利用者が急増している現代では、SNSやLINEでコミュニケーションを取ったり、WebサイトやSNSで情報収集を行ったりすることが当たり前になりました。そのため、顧客が商品の購入を検討する際は企業のWebサイトはもちろん、企業の商品・サービスの内容についてSNSで発信されている情報もチェックすることができます。

さまざまな情報へ容易にアクセスができるようになったことで、企業が一方的に情報を発信するスタイルは通用しなくなってきているのです。

データ活用技術の発展

マーケティングに関わるIT技術が進展したことで、購入方法、情報取得経路をはじめ、顧客の位置情報、広告への反応など、顧客に関するありとあらゆる情報を取得できるようになりました。顧客ごとに詳細な情報を取得可能になったことで、顧客一人ひとりに合わせた体験の提供が実現できるようになってきています。

体験消費や時間消費へのシフト

商品やサービスの機能よりも、商品・サービスによって得られる体験に価値を感じお金を支払うことが、現在では当たり前になりました。例えば、高級外車を持つことよりも、自由に移動できる体験にメリットを見出す人の方が多くなり扱いやすい車の需要が高まったり、訪日外国人観光客もいわゆる「爆買い」から観光という体験を目的とした活動へとシフトしたりと、業界を問わず体験を重視した動きが活発になっています。

また、特定の時間、場所でしか味わうことのできない体験を求める傾向も増加しています。音楽フェスや、バーでのスポーツ観戦などが代表的な例です。ネットでさまざまな情報へアクセスできる現代では、限られた空間と時間で経験する体験だからこそ価値があるという新たな考えが生まれてきています。

よりよいCXの提供が企業にもたらすもの

では、CXを向上することには、企業にとってどのような効果・メリットがあるのでしょうか。主要な3点について解説します。

顧客継続率の向上

売り上げの向上にはリピーターの獲得が重要です。新規顧客を獲得するにはリピーター維持の5倍の労力と費用がかかるとされているので、リピーターの獲得は売り上げの向上に重要な意味を持っています。

CXを向上させることは、リピーターの獲得につながります。顧客が想定した以上の高いCXが実現されていれば、顧客が何度も同じ商品を繰り返して購入したり、サービスを継続的に利用したりと、リピーターになる確率が上がります。リピーターが増えれば安定した利益を上げやすくなり、ブランドの認識拡大にもつながります。

競合他社との差別化

市場が成熟している現代では商品・サービスの差別化が難しくなってきているため、CXの向上が差別化を図るための重要な要素になります。類似した商品やサービスがあった場合、より良いCXを提供できる商品・サービスのほうが選ばれやすくなります。価格が競合他社より高かったとしても、他の類似商品・サービスにはないメリットを顧客が発見してくれれば、顧客は進んで商品を購入してくれるでしょう。

また、ユーザーが常に満足するCXを提供することができれば、途中で他社商品・サービスに乗り換えられることを防ぐことができますので、CXの向上は顧客に長く愛される商品・サービスの創出に繋がります。

SNSなどの口コミによる宣伝効果

近年では、スマホやSNSの普及によりひとりの顧客体験が一瞬で多くの人に伝わってしまうようになりました。顧客の率直な感想がネット上にアップされ、いいね!やリツイートの数が爆発的に伸びて、さまざまなメディアに紹介されることも珍しくありません。また、インフルエンサーはネット利用者の中で多大な影響力を持っているので、ひとりのインフルエンサーの口コミがヒットのきっかけを作るケースもあります。

そのため、商品・サービスだけでなく、問合せに対する誠実な対応がエピソードとして拡散されれば、商品・サービスに興味を持ってくれる人が増えるだけでなく、企業の信頼感の向上につながります。

CXは5種類に分かれる

CXは「SENSE」「FEEL」「THINK」「ACT」「RELATE」の5つの価値に分けられます。それぞれどういった意味を持つのか、詳しく見ていきましょう。

SENSE

SENSEとは感覚的経験価値をあらわします。視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚といった知覚を刺激する経験に対する価値のことです。

例えば、レストランやカフェであれば、コーヒーやパンの味や香りの他にも店内にかかるBGMや椅子の座り心地などに価値を感じ取ります。顧客にとって居心地が良い空間が実現できていれば、CXは高いといえます。

FEEL

FEELとは情緒的経験価値をあらわします。顧客の内面的感覚や感情に訴求する経験に対する価値のことです。人間は感情に左右されやすく、親切な接客や応対、細かな気配りなどによって顧客は高い満足度を得ます。

また、商品・サービスよりも接客・サービスが良かったという理由でリピーターになる顧客も多いです。実際に、ディズニーランドや有名ホテルなど接客のレベルが高い企業はFEELを重要視しています。

THINK

THINKとは創造的・認知的経験価値をあらわします。顧客の知的好奇心をくすぐり、知的欲求や創造性を刺激することで生まれる価値です。

最新技術を搭載した製品には、利便性や快適な操作性だけではない価値があります。例えば新しいスマートフォンを購入したユーザーは、高機能なカメラやプロセッサーなど時代の最先端の技術を使用しているという感覚を味わうことが可能です。そして、新しいスマートフォンを使って何かしようという創造性にも訴求し、新機能でできることは何か、どれほど便利になるのかといった好奇心を刺激するCX設計を行うことで、機能以上の価値を生み出すことができます。

ACT

ACTとは肉体的経験価値とライフスタイル全般を指します。行動やライフスタイルに与える変化に対して感じる価値のことです。

例えば、通勤時間で文書を作成できるアプリによる時間節約や、スマートウォッチによる電子マネー決済、脈拍・血圧・睡眠時間が計測できる時計などは、ライフスタイルに変革をもたらします。このようにユーザーのライフスタイルに自社の商品やサービスが浸透すれば、顧客のリピーター化も見込めるでしょう。

RELATE

RELATEとは準拠集団や文化との関連付けを指します。特定の文化・思想や集団に属しているという感覚を刺激する経験に対する価値のことです。

わかりやすい例でいえば、アーティストやアイドルのファンクラブの入会やグッズの購入が挙げられるでしょう。ファンクラブの入会やグッズの購入によりアーティストやアイドルとのつながりを感じ、応援や貢献している感覚に訴求できます。またファンクラブの入会は、ファン集団に対する帰属意識に結びつく価値も創出するのです。

CXを向上させるには?

CXを向上させるにはどうしたら良いのでしょうか。CXを向上させるための3つのステップについて、順を追って見ていきましょう。

まずひとつ目は現状のCXの把握です。顧客が商品やサービスに触れる機会は複数のプロセスに分かれています。ターゲットに関する情報の収集や、購入時のプロセス、利用方法などを確認し、現状のCXの把握に努めましょう。

ふたつ目は顧客の行動を可視化するためにカスタマージャーニーマップを作成することです。カスタマージャーニーマップによって、顧客の購買プロセスが明確になり、改善点が明らかになります。また、カスタマージャーニーマップを社内で共有することで、課題や改善点の共通の認識を持つことができ、提供する商品やサービスの方向性を決定できます。

また、カスタマーエクスペリエンスの改善を定量的に測るための指標と、数値目標を設定しましょう。指標の例としては、顧客満足度(CS)や、ネット・プロモーター・スコア(NPS)、購入頻度など実際の顧客の購買行動、SNS投稿の感情のスコア化、従業員のエンゲージメントなど、さまざまなものが挙げられます。CX向上施策の内容を踏まえ、適した指標を活用しましょう。

3つ目はCX向上に向けて仮説を立てて実行し、検証を繰り返すことです。カスタマージャーニーマップをもとにして浮かび上がった課題点に対して、解決のための仮説を立て、実行・検証・改善を行います。

では、どのような施策を行っていくと良いのでしょうか。ここでは実際にCX向上につながった施策例ふたつを紹介します。

スターバックスの事例

都市部に多く展開している「スターバックス」は、コーヒー以外にも幅広い品揃えとスタッフの優れた対応、Wi-FiやPCの電源完備など、ビジネスパーソンから友人とのお喋りまであらゆるシーンで活用できるカフェとして知られています。

スターバックスでは、再度立ち寄りたくなる工夫のひとつに「Starbucks Rewards」というプログラムを提供しています。Starbucks Rewardsは、カードを購入してWeb登録すると、購入するたびにポイントが貯まるプログラムです。このポイントで新商品を早くに購入できたり、Webストアでしか買えない商品が買えたりと、リピーターにしかできない体験ができるようになっています。

また、コーヒーに興味がある人に向けて上手なコーヒーの淹れ方や、シーズンごとのコーヒーの楽しみ方を提供するセミナーも開催していて、多様な顧客体験ができるようになっています。

無印良品の事例

家具や雑貨などを販売する「無印良品」では、検討から購入利用までの一連のプロセスの流れを考え尽くすことを重視しています。顧客の要望を洗い出して商品化し、モニターに使用感の意見をもらう仕組みを構築したり、Webストアにユーザーが意見や要望を伝えることができるプラットフォームを設けたりと、積極的に意見を受け入れています。

さらに、ユーザーの貴重な意見を企業運営に活かすために、ネット、電話、店舗での接客情報を取りまとめ、フィードバックするミーティングが毎週行われています。

まとめ

この記事では、CXとは何か、またUX・CE・CSとの違いについて解説し、CXが注目されている理由やCXを向上させる方法などについて紹介してきました。

新規顧客を獲得するのはリピーターを維持するより多大なコストを必要とします。市場が成熟している現代では新規顧客の獲得は容易ではなく、リピーターとの関係性の構築が重要になっています。そして、リピーターの維持にはCXの向上が欠かせません。この記事を参考にCXを向上させ、売上アップを目指しましょう。

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