ドッグフーディングとは?自社製品を利用するべき理由と改善方法4選

Repro Journal編集部
Repro Journal編集部
2023.10.17
ドッグフーディングとは?自社製品を利用するべき理由と改善方法4選

目次

2022年、アメリカのフードデリバリーサービス大手DoorDashが「WeDash」という取り組みを開始しました。WeDashは「エンジニアやCEOを含む全従業員に配達などの現場業務を義務づける」ものです。しかし、これに全従業員が納得したわけではありません。あるエンジニアはこの取り組みを公然と批判。メディアの注目を集めるほどの話題となりました。
ユーザーと自社プロダクトをより深く理解するために、自らが自社プロダクトを利用することを「ドッグフーディング」と呼びます。この取り組みに関する論争は、プロダクトチームに次の疑問をもたらしました。「本当にこれは必要なことなのだろうか?」と。

この記事は、IRRATIONAL LABSのブログ ”‘Dogfooding’: Why You Should Be Using Your Product (& 4 Ways to Do It Better)” を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on Revenue Wire in English under the permission from the company.

犬がバナナの匂い嗅いでる

「新」トレンドは新しくない

自社プロダクトを自らが利用し、ユーザーやプロダクトへの理解を深めようという考え方は決して新しいものではありません。OracleやAsana、MicrosoftやGoogleに至るまで、多くの有名企業が採用しているものです。

例えば2022年、AirbnbのCEOであるブライアン・チェスキーは、数週間ごとにAirbnbを利用して街から街へと移動する計画を発表しました。最近ではスターバックスのCEOであるラクスマン・ナラシンハンが、企業の文化や顧客に寄り添うために毎月バリスタとして働くことを発表しています。

極端な方法を取っているように見えますが、この行動にはそれなりの理由があるのです。自社プロダクトを身をもって体験することは、顧客をより深く理解することに役立ち、ペインポイントの特定やユーザー体験の改善に貢献するからです。

これらの例を見るとわかる通り、ドッグフーディングはプロダクト開発において重要な側面を持っています。ユーザーに愛され、使いたくなるようなプロダクトの開発を手助けすることで、エンゲージメント、ロイヤリティ、そして収益の向上に繋がるのです。

名前で食わず嫌いしないこと。必ずうまくいく

「the elephant in the room(エレファント インザ ルーム・触れたくない話題を意味する慣用句)」と比較すると、ドッグフーディングという名前はひどいものです。では、ドッグフーディングを「Kool-Aiding(クール エイディング)」と呼んでみたらどう感じるでしょうか(「Kool-Aid」はアメリカの粉末ジュースブランド。誰もが飲むものという意味で使われている)。

ドッグフーディングという名前に惑わされてはならないのです。適切に実施することができれば、プロダクトチームにとって一石二鳥となるものなのですから。有意義な内部フィードバックを集めることで、より速く、効率的で効果的な試行錯誤が可能になり、最終的にはより優れたプロダクトを創出できるようになるでしょう。

さらに詳しく説明すると、ドッグフーディングとして自社プロダクトを利用するメリットには以下のようなものが挙げられます。

  • ユーザーと感情を共有できる
    ユーザーのペインポイントやモチベーションを実際に体験することで、ユーザー行動をより深く理解できます。その結果、共感的なアプローチによるプロダクト開発とターゲット層との強いつながりが生まれます。
  •  自社プロダクトをより深く理解できる
    自社プロダクトの機能や性能をユーザーとして体験し、潜在的な問題に対して徹底的に取り組むことで、製品の開発と改善に対する貴重なインサイトを得ることができます。
  • プロダクトマーケティングを改善できる
    自社プロダクトを定期的に利用することで、プロダクトのロイヤルユーザーとしての知識を高め、自社プロダクトだけにある顧客価値の特定に役立てることができます。
  • プロダクトオーナーシップが醸成される
    プロダクトを利用することで、プロダクトの成功に対するオーナシップや責任感が芽生えます。このメンタルモデルを確立することで、継続的な改善が生まれ、より熱心なプロダクトチームを育てることにつながります。
  • プレテストとしても機能する
    新機能や機能性のベータテストの完全な代替とはいえませんが、早期に問題を特定する機会となります。貴重な時間とリソースを節約し、将来的な悩みの種を防ぐことができます。

自社プロダクトの活用が非常に有効である理由

自社プロダクト活用の恩恵を受けられるのは、大手のテック企業だけに限りません。Irrational Labsにおいて、この習慣を実践することが行動診断の重要な要素となっており、コンサルティングにおいて重要な役割を果たしています。

行動診断とは、ユーザージャーニー全体を隅から隅まで調査することで、望ましい行動を阻害する心理的障壁を特定し、行動変容の機会を見つけるプロセスです。自社プロダクトを利用することはユーザー体験にどっぷりと浸かること。効果的な対策を設計するためのインサイトを得ることができます。

俯瞰。オレンジ色のソファに座って男性がスマホ見てる。

行動科学に基づいた効果的なドッグフーディング

ここからは、プロダクトチームがドッグフーディングを活用し、そのメリットを最大化するためのヒントを紹介していきます。

【1】隅から隅まで使い切る

自社プロダクトを利用することは、ユーザーが利用しているようにプロダクトを体験することです。効果を最大化するためにはユーザージャーニーの一部だけではなく、全体を理解する必要があります。

それぞれのチームは通常、チェックアウトやオンボーディング体験など、ひとつのセクションに対して責任を持ちます。これは組織的な観点からいうと論理的に思えますが、シームレスな顧客体験の構築を妨げる可能性があります。

異なるチームが顧客体験フロー内の異なるステップに責任を持っている場合、フローの全体像を見ることができないうえに、前のステップにおけるユーザーのマインドセットを知ることができません。その対策こそが「ドッグフーディング」です。

PC2台。三人で1つのPC見て指さしてる。

【2】あらゆるユーザーを想定する

自社プロダクトを使用するときは、すべてのユーザー視点で体験をしましょう。プロダクトの成長をけん引するセグメントであればなおさらです。例えば、DoorDashのほぼすべての従業員はDoorDashユーザーとして食事を注文しています。しかし、ドッグフーディングを要求される前に、Dasher(WeDashユーザーの総称)としてフードデリバリーの経験をしていた人はどれだけいるでしょうか。

すべての人がDasherになるのは難しく、時間がかかります。しかし、ドッグフーディングを最大限活用したいのであれば、すべての視点からサービスを体験しなければなりません。DoorDashの場合は、Dasherとしてサービスを利用する。スターバックスの場合は、一日バリスタとして働くということです。

【3】きめ細やかに行う

細部が重要です。そしてときに神は細部に宿ります。人は素早く効率的な決断をするために、ヒューリスティックな要素や心理的な近道に頼っているからです。これらのヒューリスティックな要素は、一見、些細に見える手掛かり(Webサイトのデザインやメッセージの文言など)に強い影響を受けることがあります。

例えば、Livongoと提携してヘルスケアプログラムへの登録促進を狙ったとき、メールのメッセージを「プログラムに参加しよう」から「ウェルカムキットを受け取ろう」に変更しました。この小さな変更によってメールの開封率、クリック率、プログラムへの登録率が、それぞれ25%、88%、そして120%以上も上昇しました。ドッグフーディングが功を奏したのです。

自社プロダクトを使用する際は、ユーザーの体験や行動に影響を与えるすべてのディテールに注意を払わなければいけません。ボタンに乗せるテキストやページデザイン、タスクを完了させるのに必要なステップの数まで、すべてです。これらすべてを考慮することで、プロダクトチームはユーザーの行動に大きな変化をもたらす改善を行うことができます。

【4】プロセスの一部として取り入れる

自社プロダクトの社内利用を成功させるためには、主要な関係者からの支持が必要になります。その方法が、チームの日常業務にドッグフーディングを取り入れることです。そして具体的な指標で評価し、必要に応じて報酬を与えるのです。言い換えると、年次評価においてドッグフーディングを単なる形式的なチェック項目より重要な位置づけにすべきということです。

その代わり、チーム全体で取り組むようにするべきです。そして、評価や1on1ミーティングにおいて「自社プロダクトの使用を通して、アイデアをいくつ出しましたか」や「このプロセスの結果、どのような機能をローンチしましたか」といった質問をすることで結果を判断しましょう。報酬を出すことでチームをさらに活性化させることができます。

何よりも覚えておいてほしいのは「一度で終わり」ではないということです。プロダクト開発のために持続的に行うべき業務の一部であり、ユーザーのニーズを把握し続けなければいけません。やがて、定期的な社内プロダクトの利用はより活性化したチームを生み出すでしょう。そして、顧客中心の継続的な改善の文化を育むことになるのです。

階段近くでいろんな人がハイタッチしてる。

最後のアドバイス

企業が自社プロダクトを利用すること=ドッグフーディングは、奇妙な名前の一過性のトレンドではありません。顧客体験をより向上させ、より優れたプロダクトを開発し、行動変容を促すために必要不可欠なものです。もしユーザージャーニー全体を経験していないのなら、機会損失をしていることになります。プロダクトチームには申し訳ないのですが、より良い名前が思いつくまでは、黙ってドッグフードを食べ続けることが私たちからの最善のアドバイスです。

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