2020.02.10
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現下の競争が激しい経営環境においては、顧客満足度を高めるだけでなく、社員の働きがいにも目を配っていかなければ会社のパフォーマンスを高めることは叶いません。社員の働きがい、すなわち社員の自社に対する満足度を素早くかつ的確に把握できるものとして、いま脚光を浴びているのが「eNPS」です。
eNPSは多くの企業で採用が進んでいますが、適切に用いないと逆に社員のモチベーションを下げる恐れもあるため、導入にあたってはその意味・活用方法を正しく知っておくことが大切です。今回は、eNPSを導入するメリットや算出方法を解説していきますので、貴社でのスムーズなeNPS活用にお役立てください。
eNPSとは、Employee Net Promoter Score の略であり、「従業員エンゲージメント」、すなわち社員が自ら率先して企業に貢献していこうとする意欲を数値化したものです。
eNPSは、顧客ロイヤリティを明らかにする指数であるNPS(顧客推奨度)を活用していたAppleが、社員の職場への愛着度や貢献意欲を可視化する目的にNPSを転用したことがきっかけで広まったといわれています。
従業員のエンゲージメントは、社員が企業の理念に共感し、企業とビジョンを共有できたときに生まれるものです。エンゲージメントが高い社員は、その企業で働くことに誇りを持ち、積極的に業務に向かいます。こうした社員が多い企業では、優秀な人材の流出が少なく、収益や生産性の点でも好成績を出す傾向があります。
eNPSは、「共有」や「意欲」という主観的要素からなる従業員エンゲージメントを数値化したものです。定量把握ができれば、職場における課題を探ること、改善策を見出すことが容易になります。こうした特長を持つことから、従業員エンゲージメントの向上を図りたいと考える多くの企業の間で、eNPSの導入が進んでいるのです。
従来、社員の職場や仕事に対する満足度を測定する手段としては、「従業員満足度」を指標とするものが一般的でした。従業員満足度とeNPS、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
eNPSが従業員満足度よりも優れているとされるポイントを2点ご紹介します。
・社員の本音をつかみやすい質問方法
従業員満足度調査では、今の会社に満足しているか否かといった漠然とした質問が投げかけられます。一方、eNPSでは「自分が働いている企業を親しい友人や家族に勧めたいか」というより具体的な訊き方をされるため、調査を受ける社員は自分の親しい人を実際に思い浮かべて、本当に推奨すべき職場かどうか真剣に考えるようになります。
このような質問方法は社員の本音をつかみやすいことから、結果として従業員満足度調査よりもより現状に近い職場環境を知ることができるでしょう。
・「推奨者」「中立者」「批判者」カテゴリーごとの対策が可能
eNPSでは、社員を「推奨者」「中立者」「批判者」と3つに分類して、カテゴリーごとに分析を加え、対策を考えていくことができます。
例えば、推奨者が評価している点を分析することで、企業の財産となる推奨者をさらに増やすための施策を講じていくことができるようになるでしょう。反対に、批判者が挙げた不満点から課題を発掘して、より働きやすく、かつ誇りが持てる職場環境にしていくためのヒントを見つけ出すことも可能です。
このように優れた特長を持つeNPSですが、導入すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。4つの視点から、詳しく見ていきましょう。
人手不足に陥る企業が少なくないという現状は、社員から見れば転職のチャンスに恵まれているとも言い換えられます。このような状況下では、社員の離職を防ぐこと、特に優秀な人材の流出を阻止することがとりわけ大きな経営課題となっています。
eNPSスコアと離職率には強い相関が見られ、批判者の離職率は、推奨者や中立者の2倍に上るといわれています。
eNPSのカテゴリーごとの分析では、離職リスクの高い「批判者」社員の不満点とその原因を明らかにできます。批判者の回答に表れたボトルネックを除去したり、きめ細やかなフォローに努めたりすることで、離職を防ぐことが可能になるでしょう。
eNPSにより社員の働きがいを把握し、職場の生産性を向上させることができます。
eNPSが高い社員は、企業に貢献したいと願い、高いモチベーションを持って仕事に励むでしょう。企業の期待に応えるために、顧客により良い商品・サービスを提供しようとする姿勢は、自ずと業務のレベルを向上させ、結果として顧客満足度を高めることを可能にします。
また、自発的な仕事への取り組みは効率的な業務の進め方を身につけさせ、そのテンポが良い仕事ぶりは周囲にも波及して職場全体の雰囲気をポジティブなものに変えてくれるでしょう。メンバーがやる気に満ち溢れていれば、建設的な議論から優れたアイデアが生まれてくるチャンスが増し、さらに社員のモチベーションが上がり、結果的に顧客満足度を押し上げる、といった好循環も大いに期待できます。
eNPSが高い社員は、リファラル採用に協力的である傾向が強いといわれます。リファラル採用とは、自社の社員に友人や知人を紹介してもらう採用方法です。社内事情に明るい者からの紹介なのでミスマッチが起こりにくく、かつ採用コストの抑制が見込めるメリットもあります。
職場に愛着を持つ社員が、自らがよく知る人間をスカウトしようと考えるのは理解しやすいでしょう。知人であれば気持ちが通じやすいでしょうし、その人物が優秀であればなおさら企業に貢献してくれる可能性も高まります。実際、リファラル採用で入社した社員は、企業理念やヴィジョンへの高い適性を示し、定着率の向上が期待できるといわれています。
eNPSを高める取り組みを通じて職場に愛着を持つ社員が増えれば、採用広告に高いお金をかけなくても社員が優秀な人材を自ら進んで連れてきてくれるという、費用対効果の高い採用活動のサイクルを回すことも可能になります。
eNPSが高い企業は、リファラル採用などにより優秀な人材を効率よく集められるだけでなく、適切な対応によりその流出を防ぐことにも長けています。また、高いモチベーションで業務に向かう社員が多くなれば、サービスのレベルが向上するので顧客満足度も増すでしょう。顧客満足度の向上は、リピーターを生み売り上の維持・増収益に繋がるのはもちろん、既存顧客の紹介による新たな顧客獲得の可能性を高めます。
このようにさまざまな要素での改善が進むと、結果的に企業の業績向上につながります。
eNPSを高める、すなわち従業員エンゲージメントを増大させることが業績向上に直結するわけではありませんが、両者間には明らかな関係性が認められます。これまで見てきた通り、社員の業務へのモチベーションや企業に貢献したいという意欲を引き出す取り組みには、利益を生み出すさまざまなしくみが内包されているからです。
その意味でさまざまNPSへの着眼は、わが国の近江商人の経営理念として有名な「三方よし」の教え、すなわち「売り手よし、買い手よし、世間よし」の精神を現代に伝えるものであるという評価もできるでしょう。
先程も簡単にご紹介しましたが、eNPSの算出方法は非常にシンプルです。
社員に対し「いまの職場を親しい人たちにどの程度勧めたいと思うか?」という質問を投げかけ、それに対して0~10点で評価してもらいます。
0~6点のスコアをマークした社員を「批判者」、7~8点を「中立者」、9~10点を「推奨者」とし、推奨者の割合から批判者のそれを差し引いた値がeNPSになります。
たとえば、推奨者が40%、批判者が35%だとすると、40%-35%=5%ですから、eNPSの値は5となるわけです。
自社のeNPSが判明したら、業界別の平均値と照らし合わせてみること、必要に応じてクロス分析など、より詳細な調査・分析を行うことが大切です。
ちなみに、点数をつけてもらう質問だけでは、各社員がその点数をつけた理由が把握できません。そのため、採点理由を明確にするような質問を組み合わせるのが効果的です。このときの質問には明確な定形はありませんので、企業ごとに業種やサービスの特性に応じて質問を設計しましょう。
質問の例としては、
・納得の行く報酬がもらえているか
・仕事にやりがいを感じているか
・会社の理念に共感しているか
・仕事量に満足しているか
などが挙げられます。
こうして自社の職場環境の現状を明らかにしていくことで、改善すべき点のあぶり出しと解決の道筋を得ることができるでしょう。
eNPSを高めることが、企業にとって多くのメリットをもたらすことが分かりました。では、eNPSを向上させるためにはどのような施策を行っていけば良いのでしょうか。ここでは、ふたつの視点から考えてみましょう。
eNPSを高める要素の筆頭格が、納得のいく評価に基づく正当な報酬です。ここでいう報酬とは、給与や賞与など、労働の対価として企業から支給される「金銭的」なものです。
「正当な報酬を得ることができている」という実感を持つ社員のeNPSスコアが高くなることが調査からも明らかになっています。
「正当である」と納得してもらうためには、まずは透明性が高い人事評価制度に基づく報酬基準の明確化が必要です。基準が明らかになれば、社員は報酬を上げるための適切な目標設定ができるようになりますし、たとえ成果不足により報酬が上がらないことになっても、納得してこれを受け入れることができます。報酬への納得感は、企業と社員との従業員エンゲージメントの基礎であり、社員の自社への貢献意欲を生み出す基盤となるものといえるでしょう。
もちろん、「金銭的」な報酬がすべてではありません。eNPSを高める観点からは、「周りから正しく評価される」という「心理的」な報酬の付与も大切です。先ほどご紹介した調査でも、「正しく評価されている」と回答した社員のeNPSスコアが高いことがわかっており、これを裏づけています。人間には基本的に、社会生活において他人から認められたいと感じる欲求、すなわち「承認欲求」がありますから、職場においても社員がこの心理的な報酬を得やすいしくみを積極的に取り入れていくと良いでしょう。
日頃からすぐにでも取り組めるものとしては、社員同士が自由に話し合える環境を整えて、同じ職場の一員として互いにかけがいのない存在であることを確認し合える関係性を作っておくことがあります。良い働きぶりには「おめでとう」、手伝ってくれた同僚には「ありがとう」など、一声かけられるだけでも「自分は認められている」という実感を得られるのではでしょうか。
eNPSを高めるには、社員の仕事に対するモチベーションを高めるための工夫も大切です。これには、さまざまな手法が考えられます。
まず、会社のヴィジョンや理念を全社員で共有し、「何のためにいまここで働いているのか」を明確にすることが必要です。これには、普段から経営層が社員に向けて、会社をどうしていきたいのかという大きなテーマについて、積極的に語る姿勢が重要となります。ビジョンの共有は、自社の将来像への共感を呼び起こします。社員一人ひとりが自身の目標や人生設計を企業の将来像と同一線上に並べることができるからこそ、社員はそこで働くことへのモチベーションを高めることができるのです。
人材配置や権限移譲、さらには育成方法に工夫を凝らすことでモチベーションを高めていく方法もあります。
適材適所の人材配置は、業務内容と社員の特性との調和による生産性の向上はもちろん、その社員に対し「会社や上司は自分のことをしっかり理解している」との実感を与え、働きがいを引き出す効果も大いに期待できるでしょう。
部下への権限移譲にも同様の心理的効果があります。大切な仕事を任された社員はこれを意気に感じ、業務遂行への使命感と責任感が増すため、モチベーションを高めることにつながります。
新入社員など、新たに配属される人材の育成は、eNPSを高める絶好の機会でもあります。無味乾燥なマニュアルの伝授に終始するのではなく、常に問題意識を持たせつつ、自発的な取り組みを引き出すトレーニングを行っていくことがポイントです。教えられる新人はもちろん、育成に携わる担当社員自身も業務の意味や効果を再確認することで成長を実感できることが少なくありません。お互いにトレーニングへのモチベーションを向上させることで、企業への貢献意欲を高めていくことが期待できます。
この記事では、企業での社員の働きがいを把握するうえで有効な指標となるeNPSについて解説してきました。少子高齢化が加速し、労働力不足に伴う人材獲得競争が今後一層激化することは不可避であるのが現実です。これまでのように顧客満足度の向上のみに力を注ぐだけではなく、社員の会社へ貢献したいという意欲を引き出す施策を打ち出していく必要性がかつてなく高まっているのです。
社員がいきいきと業務に励むことで顧客を満足させるとともに、企業も業績を向上させ成長を図ることができる、そんな好循環を創り出すための基準点となるのが、eNPSなのです。より良い職場環境づくりに向けて、eNPSを導入し、社員の心の内を探ることから始めてみてはいかがでしょうか。
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