本記事は、2017年6月27日に開催した「【Prott×Repro】ECアプリの改善プロセス」での発表内容を元にしたイベントレポートです。ECアプリのUX改善やマーケティングをテーマに、日本最大級のオークションサービス『ヤフオク!』と、月間150万人に利用されるギフトサービス『Anny』のご担当者様に自社アプリのノウハウをお話していただきました。
登壇者紹介
トレンダーズ株式会社 石本愛衣(いしもと・めい)氏
2014年に伊藤忠グループのWEB代理店に新卒で入社し、2016年にAnnyにジョイン。分析を得意とし、Google AnalyticsやRepro、Usergramなどのさまざまなツールを駆使しながら “ユーザーが本当に欲しいギフト情報” を届けるために日々奮闘している。
自己紹介と事業の紹介
トレンダーズ株式会社の石本愛衣と申します。本日はよろしくお願いいたします。 ギフトECサービスの『Anny』でMD(商品仕入れ)とAnalyst(主にアプリのグロース)を担当しています。Annyは「毎日にアニバーサリーを」をタグラインに掲げているギフトECサービスで、ウェブとアプリ合わせて月間150万人のユーザーさんにご利用いただいております。アプリは2015年の11月にリリースしました。
サービスの大きな特徴が3つありまして、1つめは、最新のギフト情報やノウハウ、送り方のマナーなどを記事形式で紹介しているメディア『Anny magazine』です。2つめは、Annyチームが厳選した500を超える商品を揃えた「Annyギフトショップ」です。お酒、グルメ、お花、雑貨・家電・アクセサリーはもちろん、ドローンまで売っています。3つめは、「ギフトレター」という電子上のメッセージカードを相手に贈ることができるという機能です。
CVを生み出す効果的なアプリ内メッセージとは
今回のテーマにある「アプリ内メッセージ」 がどういったものかは、みなさんご存知ですか?アプリを使用中の特定のユーザーに、画像やボタンのついたダイアログメッセージをポップアップで表示できる機能です。アプリ内メッセージは、コンバージョン率の向上に大きな効果が見込めるのですが、表示する内容とタイミングによっては、ただの邪魔な表示になってしまいユーザーの離脱を招いてしまうので、注意して下さい。実際の事例をご紹介します。次のAとBの2パターンのアプリ内メッセージでは、コンバージョン率に大きな差が出ました。
Aパターンのアプリ内メッセージでは、コンバージョン率が3.0%だったのに対し、Bパターンではわずか0.5%でした。AとBの大きな違いについては、こちらになります。
Aのパターンでは、アプリ内メッセージで表示させた商品に関する記事ページへ遷移するのに対し、Bのパターンでは、商品詳細ページへダイレクトに遷移させています。一見、Bのように、商品詳細ページへと直接遷移させた方がコンバージョンには近そうですが、結果的には、記事を経由させて商品の魅力をしっかり伝えた方がコンバージョン率が高くなりました。
この結果は、私がアプリ内メッセージを設計する上で、もっとも大切にしている「ユーザーが本当に欲しい情報は何なのか?」という考え方によって説明することができます。
成功パターンへとたどり着いた方法と失敗から学んだこと
一般的なECサイトですと「〇〇が欲しい!」みたいにあらかじめ決まった商品を探しに来られる方が多いと思うのですが、Annyは”ギフトEC”なので「商品」よりも「誰かに何かを贈りたい」という意識のユーザーさんが多いです。つまりAnnyの場合は、商品をただ表示させるのではなく、なぜこの商品がオススメなのかや、商品のストーリーを伝えることがコンバージョンへの近道だったのです。最終的にはAのアプリ内メッセージ案にたどり着き効果をあげることができましたが、そこにたどり着くまでに以下の3つのことを実践しました。
1.ファネル分析で離脱ポイントを見つける
ファネル分析というのは、ユーザーに最終的にしてほしい行動をゴールとし、そこに至るまでのプロセスのどの部分でユーザーが離脱しているかを確認する分析方法です。AnnyはギフトECなので、ゴールは「商品の決済」です。分析点は上から順番にアプリ起動、商品詳細、カゴ、決済と、4つに分けて考えています。
顔文字の表情でもうお判りかと思いますが、アプリを起動してから商品詳細ページに行くまでに半分以上のユーザーが離脱しています。
2.離脱ポイントを改善する仮説を立てる
ファネル分析を行うと、離脱ポイントに直面することになるのですが、離脱の原因って、もちろん機能がイケてないとか使いにくいとか理由はたくさんあると思うのですが、私はやはり「ユーザーにとって欲しい情報がなかったから」が一番大きいと考えています。そんな時に、無理やりこちら側が意図するコンテンツに誘導するのは逆効果だと思うので「どうやって購入まで繋げるか」ではなく「欲しい情報は何か?」ということを一番に考えながら仮説を立てます。アイデアベースでも良いので、とにかくたくさん出すことが重要です。
3.仮説を基に実施して効果検証をする
先ほど出した案を設定して実際のユーザーの反応を見ていきます。
右側に重なって表示されているのは、あまり効果の上がらなかったパターンなのですが、失敗から気づかされたこともたくさんあります。例えば、かわいい女の子を表示させれば、興味を持ってもらえると思ったのですが、効果検証をしていくうちに、Annyのユーザーは、人よりも商品とか雰囲気の画像の方が反応が良いことがわかりました。また、メッセージの文言でいうと「大人気」とか「売上1位」という「いかにも出回ってます感」が出ている言葉はあまり効果がなかったです。これらの失敗からヒントを得ながらブラッシュアップをしていったことで、最終的に成功パターンへとたどり着くことができました
Annyが日々改善し、CVRを高めている3つの背景
このようにきちんと原因の特定、仮説構築、施策実行、効果検証を繰り返すことでアプリ内メッセージ施策において成果を出すことができたわけなのですが、今日はこれを実現できた背景についてもお話したいと思います。
1.BLT
Annyを運営しているBLTという組織です。メンバーは、すごく自由でフラットな環境の中で仕事をしていて「Annyを成長させたい!」という大きな理想と強い意志で個々人のスキルを高め合っているチームです。
2.OODA BLTの組織文化であるOODA(Observe, Orient, Decide, Act)
OODA(ウゥーダ)は、いわゆるPDCAと基本的には同じですが、決定をする際に会議や上司を挟まないという特徴があります。BLTでは、自分がやってみたいという施策に対しては、事業責任者や会議の承認は無しで自分たちで仮説を立ててトライしていく文化なので、個々人が常に仮説思考を持って、新しい施策にトライしていくOODAの実践によってサービスを急成長させることができています。
3.このOODAにマッチしたツールが『Repro』
通常、アプリ内メッセージの実施検証は、エンジニアの方に設定してもらったり、計測する時にまたタグ入れて・・など非常に時間がかかるのですが、『Repro』だと管理画面1つで全て完結するので「これやってみたい!」という案が浮かんだら非常にスピーディーに施策を実施して、効果検証まで行えます。また、実際に作ったアプリ内メッセージのイメージ画像が出るので、社内共有がしやすくとても便利ですね!
まとめ
最後になりますが、効果的なアプリ内メッセージを設計する上で「ユーザーが本当に欲しい情報は何なのか?」という考え方が重要だということ。また原因の特定、仮説構築、施策実行、効果検証を繰り返していく中で、失敗からヒントを得ながらブラッシュアップをすることで、成功パターンへが見えてくるということ。 そして、『Anny』がアプリ内メッセージを日々改善し、CVRを高めている理由としては、BLTという組織のメンバーたちのチームワークと、組織で実践しているOODAという文化と、それにマッチした『Repro』というツール、この3つが揃ったことが背景にあります。以上になります。本日はありがとうございました。(了)