本記事は、2018年4月24日に開催した「アプリ広告における不正事業者の手口とは?正しいデータで実現するプロモーション改善とLTV最大化」での発表内容を元にしたイベントレポートです。
最新の広告不正の状況についてのアップデートをベースに、不正の手口を理解した上で、どのように不正対策を行い、正しいデータに基づいたプロモーション改善とLTV最大化を実現するのかを「AppsFlyer」のカントリーマネージャー、大坪氏にお話しいただきました。今回は前編として、アトリビューションについてご紹介します。
講演者
株式会社AppsFlyer Japan 大坪直哉(おおつぼ・なおや)氏 カントリーマネージャー
一言で説明するのが難しい言葉、「アトリビューション」
「アトリビューション」という単語には、適切な日本語訳がありません。そのため、具体的な説明が非常に難しい言葉なんです。今回はアトリビューションという言葉を違った角度からわかりやすく説明していきましょう。
中華料理店のオーナーをイメージして考えてみる
今から30年前の1980年代後半。自分が中華料理店のオーナーになったと想定して、次のことを考えてみてください。あなたは集客のためにお店を宣伝しようと考えました。1980年代にはスマホもSNSもありません。当時の主な宣伝方法といえばチラシ配りです。
まずは人が集まりやすい場所として自転車置き場前と駅前、大学前を選び、各所で100枚ずつ宣伝用のチラシを配ることにしました。チラシには「チラシ持参で餃子が半額!」と書かれているので、効果が目に見えてわかるようになっています。
さて、3ヵ所からそれぞれ何人がチラシを持ってお店に来てくれたでしょうか?
正解は「わかりません」。 なぜなら、全て同じ内容なので3ヵ所のどこでもらったチラシなのか、区別がつかないからです。
そこで今度は集客率がはっきりとわかるように、自転車置き場前は黄色、駅前は緑色、大学前は青色のシールを貼って、再度チラシを100枚ずつ配ることにしました。結果は黄色いシールがついたチラシを持参したのが40人、緑のシールは10人、青いシールは5人でした。
つまり、駅前の自転車置き場でチラシを配った方が、他の場所と比べてより多く集客できることがわかったのです。
効率よく集客できるチラシの配布場所がわかったら、次は場所による客単価の高さを調べることにしましょう。
最終的に、駅前と大学前で配ったチラシを持って来たお客さんは客単価が平均1,500円、自転車置き場で配ったチラシを持って来たお客さんは平均2,500円でした。この二つの結果から、最終的に「自転車置き場でチラシを配れば、客単価の高いお客さんがたくさん来てくれる」ことがわかりました。
アトリビューションとは「おかげ」である
シールがメディア、客単価をARPPUに置き換えて考えると、この方法はオンラインマーケティングでやっていることと全く同じこと。そう考えたら、アトリビューションとはチラシ配りと変わらないと言えるでしょう。チラシにシールをつけた「おかげ」で場所の効果がわかる。お客さんが増えてお店の売上げが上がったのは、自転車置き場で撒いたチラシの「おかげ」。
難しく考えず、「●●のおかげ」だと考えれば、アトリビューションについて理解を深めることができるはずです。
流入経路を正しく知る重要性
アトリビューションとは何かがわかれば、流入経路もわかるようになります。アドフラウド (不正広告) が増えている昨今、流入経路を正しく知ることがコスト削減と効果的なプロモーションの成功に繋がります。ここからは、正しい流入経路を知る方法をご紹介しましょう。
流入経路を正しく知ることでお金をかけるべき場所がわかる
例えば、メディアAとメディアBに広告予算をかけているとします。
インストール数がそれぞれメディアAは1万件、メディアBは5,000件あった場合、一見メディアAの方が効果は高く見えるかもしれません。しかし、よくよく調べてみると、アンインストール数はメディアAが9,000件、メディアBは1,000件。残存率はメディアBの方が高いため、結果としてメディアBに広告費をかけた方がプロモーション効率が良いとわかります。
オンラインマーケティングを行う際は、クリエイティブやメディア、キャンペーン単位でアンインストール数を計測し、その上で最終的にどこに広告費をかけるべきか考えましょう。
流入経路を計測する方法
現在では流入経路を正しく計測するために様々なツールがあります。
例えばQRコード。オフラインでイベントを実施する時など、チラシやチケット、ポスター、デジタルサイネージなど、オフラインのメディアにそれぞれ違うQRコードを貼ることで、各メディアの流入経路の計測ができます。計測結果がわかれば、どのメディアでプロモーションすればもっとも大きな効果を得られるのか、把握できるようになります。
ブランド認知や新規ユーザー獲得のためにだけ広告を利用するのではなく、テレビコマーシャルから流入したユーザーパフォーマンスの理解も深めなくてはなりません。こちらに関しては、AppsFlyerで計測が可能です。
流入経路ごとのコストとROIを知る必要性
最速で良い結果を出すには、流入経路やクリエイティブごとのコストとROI (費用対効果) を把握する必要があります。
FacebookやGoogleの管理画面だけを見ている、または代理店に任せている方も多いのではないでしょうか? 代理店に任せてしまうと、どのメディアにコストがかかっているのか、手数料やマージンがいくら取られているのかを理解できません。
成果とマージンが見合っているのかを確認するためにメディアごとのコストを把握してください。
マルチメディアからの流入経路
オンラインマーケティングでは、複数の広告に触れてからインストールに至るユーザーが必ずいます。
例えば、カスタマージャーニーが
- Twitterで認知が形成され
- FacebookやLineでも広告を踏んで
- 最終的にGoogleで検索してインストールした
という流れだった場合。最終的な流入経路しか計測できないツールを利用しているとGoogleのみに広告を載せてしまいますよね。きっかけとアシスト、実際の購買行動はそれぞれ役割が違うので、そこに至るユーザーのタッチポイントも正しく理解すべきです。最適な広告ミックスを考えることができるよう、マルチタッチの計測ができるツールを使ってください。
最後に
アトリビューションは「おかげ」と理解してください。正しいアトリビューションと流入経路を知ることができれば、効果的な集客ができるようになるはずです。
また、アプリにはインストールがあればアンインストールもありますので、アンインストールもしっかり計測してください。そうすれば、ROIも変わっていきます。
次回は、後編・アドフラウド (不正広告) の見抜き方と対策方法をご紹介します!