競合ではなく協業で挑む。メルカリのスマホ決済サービス「メルペイ」のマーケティングに迫る

Repro Journal編集部
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2020.03.01
競合ではなく協業で挑む。メルカリのスマホ決済サービス「メルペイ」のマーケティングに迫る

目次

Engagemateのマーケターインタビュー企画。昨年から急激に盛り上がりを見せるスマホ決済サービス市場。通信キャリアをはじめ、大手企業が続々参入する中、フリマアプリ『メルカリ』からも、2019年2月に満を持してスマホ決済サービス「メルペイ」がリリースされた。

メルカリは現在、月間利用者数は約1,300万人となり、年間の流通総額は5,000億円を超えており、CtoCプラットフォームとしては国内最大規模を誇る。なぜスマホ決済サービス市場に切り込んだのか。競合がひしめく中で後発組としてどのような戦略を描いているのか。メルペイの営業統括を担当する金 高恩氏に伺った。


メルペイがリリースされた背景を教えてください。

――まず、メルペイのサービス概要を教えてください。

金氏(以下、金) メルペイは、メルカリを母体に持つスマホ決済サービスです。メルカリは、自分にとって不要なものを売ったり、欲しいものを買ったりできるフリマアプリで、多くのユーザーが売上金を保有しています。

メルカリで得た売上金の使い道は主に2つ。連携している口座から引き出して現金化するか、メルカリ内で使うかでした。しかし、口座から引き出す際は手数料がかかってしまい、ユーザーにとっての利便性は決して良いとは言えませんでした。

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そこで、売上金を実生活で気軽に使えるようにするために開発されたのがメルペイです。メルペイを使えば、わざわざ現金化することなく、スムーズに街中のお店やネットショップで売上金を使うことができます。もちろん、連携している銀行口座からチャージすることも可能です。

2019年2月13日にリリースし、つい先日登録者数200万人を突破しました。現在はコンビニやファストフード店など、約135万カ所の加盟店(年内に200万ヵ所を予定)で利用可能です。

――「◯◯ペイ」というスマホ決済サービスがたくさん存在していますが、メルペイの強みはどのようなところにあるのでしょうか。

金 現状は、メルカリユーザーに対する利便性が大きいですね。メルカリアプリの中にメルペイの機能が内包されているので、月間約1,300万人いるメルカリユーザーは新たなアプリをダウンロードする必要はなく、少ない手間ですぐに使える点が強みです。

一般的なスマホ決済サービスは、アプリを新たにダウンロードし、チャージするという2ステップが必要ですが、売上金を保有するメルカリユーザーであればこの手間のかかるプロセスをスキップできます。

メルカリさえダウンロードしていれば、キャッシュレスに慣れていない人も導入しやすそうですね。

地方自治体や競合企業ともパートナーシップを組む「OPENNESS」へのこだわり

――メルカリと言えば、ユニークな企業カルチャーが有名ですがメルカリのスマホ決済サービスだからこそこだわっていることはありますか。

金 「OPENNESS(オープネス)」という考え方を大事にしていますね。これは、スマホ決済サービス同士でライバルとして競争するのではなく、銀行やカード会社、競合企業などや垣根を越えて協業し、みんなで国内のキャッシュレス化を推進しようという考えです。

例えば、LINE Payさんと「Mobile Payment Alliance」(MoPA)というパートナーシップを結び、店舗がキャッシュレス導入をしやすくなるような取り組みを実践しています。

キャッシュレス文化が浸透することで、ユーザーも決済が気軽にできる、加盟店も決済が短時間で正確にできるなど多くのメリットが生まれます。キャッシュレス化がまだまだ進んでいない中で企業間で競いあうのではなく、まずは力を合わせて、なめらかに決済ができるような文化を浸透させようと思っています。

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――競うのではなく手を組む。サービスが乱立しているからこそ価値ある考え方ですね。

金 そうですね。この姿勢にメルカリのカルチャーが表れていると思います。サービス開始当初から、民間企業だけでなく、地方自治体との連携にも力を入れています。決済サービスを提供する以上、ユーザーが自分の生活圏内で気軽に使えるようにならなければ意味がありません。また、メルカリの売上金を地元で使っていただくことで、地域活性化にもつながります。

重視するのはアクティブ率。ユーザー、加盟店に「使える決済」と認識してもらえるように

――多くの取り組みを同時並行で進めるメルペイですが、サービスをグロースさせるうえで具体的にどのようなKPIを重視しているのか教えてください。

金 決済サービスは「利用ユーザー」と「加盟店」がいなければ成立しません。

「多くのユーザーが、多くの場所で使える」のが理想ですが、当社の場合、利用ユーザー・加盟店双方の数ではなく、ちゃんと活用していただけているかどうかという「質」を重視しています。メルペイに登録しただけ、加盟店契約しただけでは意味がないんです。

なので、アプリユーザーにおいてはリテンション率を、加盟店においてはスタートキットを開封し、きちんと店頭で使っていただけているかどうかを指標に置いています。

また、新規ユーザーを増やすためのプロモーションにも注力しています。今年のGWには、メルペイを使えばおにぎりなどが11円で購入できるキャンペーンを実施しました。キャンペーン中、加盟店のマーケティング担当者様と弊社のマーケティング担当者で、店舗のどこにポップや商品を配置すればお客様の目に触れやすいかを細かく話し合い、一緒に設計してきました。

――加盟店とかなりコミュニケーションされているんですね。

金 そうですね。メルペイを活用していただくために、営業チームのみならずマーケティングチームも一緒に、加盟店との密なコミュニケーションを行うようにしています。

――加盟店には、メルペイ導入のメリットをどのように伝えているのでしょうか。

金 日本全国で毎月約1,300万人のお客様が、年間5,000億円超の売り買いをメルカリで行なっております。そのお客様の生活の中でいつものお店で、メルカリで得た売上で買い物できれば、そのお客様の生活はなめらかになると思っております。加盟店には、この世界観をまずは伝えさせていただいております。

また、ユーザーにとっても加盟店にとっても分かりやすいもう1つの違いが、電子マネーの「iD」が使える点です。コード決済にまだ慣れていないユーザーにもう1つの手段をご提供させていただくことで、1人でも多くのお客様になめらかな買い物をご体験いただけると思っております。

メルペイ普及の先に見据えるのは、個人の信用に応じてお金を自由に使える世界

――メルペイをグロースさせた先に描いているビジョンを教えてください。

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 当社のミッションは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」こと。個人の信用に応じて自由にお金を使える世界を実現したいと考えています。

資本主義社会では、お金がないと何もできません。お金がないばかりにあらゆるチャンスを奪われている方が大勢存在します。環境に左右されず、誰でも自由に学べたり、やりたいことに取り組める状態を作るために、個人の信用に応じて自由にお金を使える状態にしたいんです。

現状、個人に対する信用は、人そのものではなく、所属している組織がベースになっていることが多いようです。例えば、住宅ローンを組むときはその人自身ではなく、勤務先の規模や年収を重視されたりしますよね。一人ひとりの信用度を正しく計測し、信用が個に紐づけば、市場価値は所属組織に左右されることはありません。

個人の信用は、当社の場合だとメルカリの利用実績等で計測可能です。メルカリできちんと発送をしている、利用者の評価が高いなど丁寧に利用いただいているかどうかなどです。

そのためにも、まずはスマホ決済を浸透させて、今後面白い取り組みを次々と仕掛けていきますので、ぜひともご期待ください。

※本記事に掲載されている取材内容、プロフィール等の情報は、2020年3月1日時点のものです。
※本記事はGrowth Hack Journalで公開された記事を転載したものです。

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