2026.03.19
「マルチチャネル」は多くの企業で語られるテーマですが、 マルチチャネルがビジネス成果に結びつくかどうかは、チャネルの数ではなく「顧客体験の設計」にあります。
施策の数を打ってもなぜかに成果につながらない……そんな悩みがある場合、自社のマルチチャネル施策を一度見直してみる必要がありそうです。実際に運用している現場を見てみると、予期せぬ迷走に陥っている場合も少なくありません。たとえば、チャネルを増やすこと自体を目的にしてしまってはいませんか?
今回は、運用が迷走しがちな現場で見られる3つの「誤解」と、マルチチャネルをビジネス成果につなげるために必要な3つの「視点」についてお伝えします。
本題に入る前に、まずは「マルチチャネル」という言葉の定義について整理しておきましょう。マルチチャネルとは、複数のチャネルを通じて顧客との接点を持つマーケティング手法を指します。
以前は「店舗だけ」「ECだけ」といった単一チャネルでのマーケティングが一般的でしたが、今では、店舗・ECサイト・アプリ・メール・LINEなど、複数のチャネルを組み合わせながら顧客とのコミュニケーションを図ることが当たり前になっています。
店舗とECの両方で商品を販売しつつ、メールでキャンペーンの情報を送り、アプリやLINEではクーポンを配布する。このように複数のチャネルを横断しながら顧客との関係構築に取り組むマーケティング戦略は、「マルチチャネル施策」と呼ばれています。
ちなみに、マルチチャネルと似た言葉に「クロスチャネル」「オムニチャネル」がありますが、それぞれ以下のように意味が異なります。
・マルチチャネル
複数チャネルを併用して顧客と接点を持つ戦略
・クロスチャネル
複数チャネルを併用しつつ、チャネル間でデータや施策を一部連携させる戦略
・オムニチャネル
すべてのチャネルでデータを統合し、チャネル間の連携により一貫したユーザー体験を提供する戦略
クロスチャネルやオムニチャネルは、マルチチャネルをより高度化させたものと捉えるとわかりやすいかもしれません。
※今回は、「まずは複数チャネルを併用して接点を持つことから始めたい」という方向けにマルチチャネルの基礎をお伝えしつつ、一部クロスチャネル・オムニチャネルの考え方にも触れています。
近年、マルチチャネルが注目されている背景には、顧客行動と市場環境のふたつの変化があります。
マルチチャネル施策が求められる背景として、まず消費者の行動が複雑化し、購買に至るまでに多くの接点を経由するのが当たり前になったことが挙げられます。
店舗だけで購買が完結していた一昔前と異なり、現代の顧客は「SNSで見かけて商品を知り、Webサイトで詳細を検索し、最終的にアプリで購入する」といったように、複数のチャネルを行き来する行動を取ることが増えています。
こうした変化により、さまざまな接点で顧客に伴走できる体制を整えている企業が選ばれやすくなっています。
デジタルマーケティング市場が拡大した現代では、LINEでのクーポン配布、メールでのキャンペーン案内、アプリでのポイント付与といった単発施策の定石はすでに出揃っています。そのため、単にひとつのチャネルを運用しているだけでは、競合他社との差別化を図りづらくなりました。
こうしたなか、今問われているのは「多様なチャネルを持っていること」そのものではなく、複数のチャネルを併用することを前提として、それらをいかに組み合わせて一貫した体験を作るかです。マルチチャネルを使いこなすことは、企業の競争力を左右する重要な要素となっているのです。
マルチチャネルは今や多くの現場で語られるテーマですが、言葉だけが先行してしまい、実務の現場では予期せぬボタンの掛け違いが起きているケースが少なくありません。ここでは、運用が迷走しがちな現場で見られる3つの典型的なパターンについて解説します。
よくある失敗が、チャネルを増やすこと自体が目的になってしまうケースです。
目的やKPIが整理されないまま「他社もやっているから」とチャネルを増やした結果、顧客の体験改善にはつながらず、単に「管理すべきチャネルやデータが増えて現場が疲弊しただけ」という状況に陥っている企業は少なくありません。
意図がはっきりしないマルチチャネルは、顧客に対して「メールからもLINEからも同じ通知が来る」といったネガティブな印象を与え、かえって離脱のリスクを高めてしまいます。
こうした事態を避けるためには、チャネルを追加する前に顧客体験(ユーザーストーリー)の理想形をチームで共有しておくことが肝心です。たとえば、「SNS検索から認知→来店→LINEのポイントカードでリピート促進……」のような顧客体験の理想形をチームで共有すれば、「どのフェーズで、何のために、どのチャネルを使うべきか」が自然と見えてきます。
組織が大きくなるほど、アプリ担当者はDL数、LINEの担当者は友だち数といった縦割りのKPIに縛られ、全体の目標が見失われやすくなります。
たとえば、アプリのダウンロード数に責任を持つメンバーが、新規顧客獲得のためにリワード広告で瞬間的にダウンロード数を稼いだとします。しかし、そうして集めた顧客が本来のターゲットから外れている場合、リテンション率を確保できず、結果としてLTVを下げてしまう可能性もあります。
中間指標の達成に向けて各施策が個別最適化された結果、マルチチャネルがKGI達成に寄与しない。そうならないためには、個別のチャネルの数字が、最終的な事業成長(KGI)にどう寄与しているかを常に問い続ける姿勢が求められます。
近年では「AIを導入すれば、施策の提案から顧客へのレコメンドまで勝手に進めてくれるのでは?」という期待の声もよく聞かれるようになりました。しかし、残念ながら現時点ではAIにすべてを任せるのは現実的ではありません。汎用的なAIが提示するのは、あくまで「一般的な平均値」としての答えです。
また、一時的に適切な判断が下されたとしても、AIの戦略設計に依存することで、社内にナレッジが蓄積されず、改善が止まってしまうリスクもあります。
AIをデータマーケティングに活用するためには、最低限、顧客ごとに「どのチャネルでどんな行動が取られたのか」を追える仕組みが欠かせません。AIはあくまで「人間が描いた戦略を、高速で実行し、精度を高めるための強力な道具」と位置づけるべきです。
マルチチャネルをビジネス成果につなげるためには、全体の目標に基づき、各チャネルの役割を明確にしたうえで施策を進める必要があります。具体的にどのような視点を持つべきか、3つのポイントを見ていきましょう。
新しいチャネルを導入すれば、その分だけKPIになり得る指標も増えます。マルチチャネル施策を成功させるには、数あるKPIのなかで自社が今何を優先すべきかを考えることが大切です。
たとえば、「初回購入については目標を上回っているものの、2回目の継続購入にはつながっていない」という場合、2回目の購入率を上げることが売り上げ拡大のカギであると考えられます。
このように、「KGI達成に向けて、ボトルネックになっているのはどの指標なのか」を明確にすることで、目的に沿ったかたちで各チャネルを運用しやすくなります。
顧客には、新規、検討、購入、継続、ロイヤル化などさまざまなフェーズがありますが、「ターゲットが今どの状態にいて、次にどういう状態になってほしいか」によって、優先すべきチャネルや打つべき施策は変わります。
顧客の行動変容を促すためには、まず顧客の現状を定量・定性の両面から把握する必要があります。
アプリをダウンロードしている人のなかで、プッシュ通知を許諾している人は何人なのか。LINEを友達登録し、ブロックしていない人は何人なのか。こうした母数を把握すれば、「自分たちが今、どんな顧客と、どのチャネルで接点を持てているのか?」「LTVの高いユーザーがどのチャネルを好んで使っているのか?」を分析できます。また、N1インタビューや簡単なアンケートなどから、数字だけではつかめない顧客のインサイトを把握することも、施策の改善に役立ちます。
マルチチャネルには、業界ごとに商材や顧客の性質に応じた鉄板の戦略があります。
はじめからすべてのチャネルを完璧に運用しようとするのではなく、優先度の高いチャネルから段階的に広げていくことで、成果を出しやすくなるうえ、その後の改善サイクルも回しやすくなります。
【業界別・鉄板施策の例】
EC・小売
まずはWebで広く接点を持ち、購買時の特典案内などからアプリやLINEへ誘導して固定客かを狙う
メディア・情報
SEO流入を軸に、検索でたどり着いたユーザーに対して有料会員化(Webもしくはアプリ)を促す。会員に対しては、毎日定刻にメールで更新を通知
金融
利用頻度を高めるため、早い段階でアプリ利用へシフトさせる
ゲーム・エンタメ
指名検索からなるべく早くアプリダウンロードにつなげ、ロイヤル化を促進する
こうした鉄板施策と呼ばれるものを参考にしつつ、まずは自社の業界における“核”となるチャネルを特定し、効果検証をしながら自社に合った形にアレンジしていくことで、「マルチチャネルの成果が出る前に挫折する」といった事態を回避し、無理のない運用につなげやすくなります。
マルチチャネルがビジネス成果に結びつくかどうかは、チャネルの数で決まるわけではありません。ひとりのお客様に対していかに心地よい体験を提供するか。この「顧客体験の設計」こそが成果に大きく影響します。
施策の数は打っているはずなのに、なぜか数字につながらない。もしそんなお悩みがある場合は、自社のマルチチャネルが「点」の集まりになっていないかを見直してみてはいかがでしょうか。
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