2025.11.12
「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(以下、スマホ新法)の全面施行が2025年12月に予定されています。アプリ事業者・開発者にとってアプリ外での決済が現実の選択肢となる一方で、様々な疑問や懸念を持っている方も少なくないようです。そこでRepro Journalではスマホ新法やアプリ外決済に関わる様々な立場の方へのインタビュー連載を企画。第1回は、ゲームアプリ決済のグローバルリーダーとして世界中の様々な変化に対応してきたXsolla(エクソラ)社のヘッド・オブ・ジャパンに就任した國分英孝氏に、世界におけるアプリ外決済シフトの動きや、日本市場の今後についてお話を伺いました。。
2005年に設立されたXsollaは、世界200カ国以上でビデオゲームコマース関連サービスを提供している企業(本社:米国カリフォルニア州 ロサンゼルス)
――アメリカではEpic Games対Appleの判決を受け、アプリ外決済に大きな変化が起きています。この出来事は、現時点でゲームアプリの事業者・開発者にどのような影響や変化を与えていますか?
Epic Games対Appleの判決により、米国のユーザーを外部Webショップに誘導する自由度がゲーム事業者・開発業者に大きく認められるようになりました。一部のゲーム事業者や開発業者は、Webショップを通じて限定特価や期間限定バンドル、パーソナライズされたプロモーションを提供したことにより、有料ユーザー数が3~4割増加したり、エンゲージメントが向上したりしています。また、専用の購入フローに誘導することで、クロスプラットフォーム取引の簡素化やリテンションの改善にもつながっています。
――EUでも、デジタル市場法(DMA)の制定を経てアプリ外決済に関する手数料率の変更や市場の開放などの動きが起きつつあります。EUにおいて、現時点でゲームアプリの事業者・開発者にどのような影響や変化を与えているのでしょうか。
現在でも多くのEU市場ではAppleの制限が適用されていますが、米国でのEpic Games対Appleの判決とデジタル市場法(DMA)の施行が重なったことにより、Appleなどの支配的なプラットフォームに対する規制緩和の圧力が強まっています。
例えば、EUでAppleは規制当局により代替するWebショップを強制的に認めさせられました。これはデジタル市場法(DMA)の施行によるものです。AppleはこれによりApp Store外での運用を認めた代わりに27%のコアテクノロジー手数料を新たに課しました。この手数料は開発業者がストア外でマネタイズすることを阻む要因になっていましたが、EUはAppleのこの行為に対して5億ユーロの罰金を科し、裁判所はそのような追加手数料は一切認められないということを明確に示しました。このような状況から、EUにおいても、開発業者やゲーム事業者は、プラットフォーム外でのオプションへのシフトを加速させていくと思います。
――現在、ゲームアプリのビジネスが成長している国・地域と、その状況について教えてください。
欧米市場に加えて、東南アジア(SEA)、特にインドネシア、フィリピン、タイが、次なるゲームアプリ成長の波を牽引しています。 同地域は6億人を超える人口、モバイルを中心に利用する若年層ユーザー、そして電子ウォレットの広範な普及により、世界でも最も活発なデジタル経済圏のひとつとなっています。

2024年上半期には、東南アジア地域でのモバイルゲームのダウンロード数が半期比で3.4%増加し、42億件に達しました。そのうちインドネシアが41%を占めています。フィリピンは、スマートフォンおよびインターネットの普及率が最大74%に達している点で際立っており、広告やマイクロトランザクションを通じて収益化するフリープレイ層の拡大を後押ししています。 また、タイでは、堅調な中間層と地域内でも高水準のユーザーあたりゲーム支出額を背景に、モバイルとPCのクロスオーバータイトルの両分野で急速に成長しています。
――世界的なゲーム市場の成長やアプリ外決済シフトの動きがある中で、日本でも2025年12月には「スマホ新法」が施行されます。ゲームアプリ決済のグローバルリーダーとして、様々な変化を見てきたXsolla様は、今後日本市場でどのような変化が起きると予想されていますか?
「スマホ新法」では、Apple やGoogleという巨大プラットフォーマーに対して、自社のアプリストア以外での決済、つまりアプリ外決済の利用を認めるように義務付けるものです。この法律により、ゲーム事業者や開発業者が自社開発や外部の決済システムを導入することでエンドユーザーとの直接的な関係を構築したり、プラットフォーム手数料の削減することができるようになります。日本の国民性もあり最初は慎重に動かれるかと思いますが、米国や欧州同様に徐々にアプリ外決済の道に進んで行くと思います。

――スマホ新法の施行が間近に迫った2025年9月というタイミングで「ヘッド・オブ・ジャパン」に國分様が就任された狙いはどこにあるのでしょうか?
Xsollaは、2025年12月に施行される「スマホ新法」に向けて、かなり以前から準備を進めてきました。日本市場ではすでに3年以上にわたり事業を展開しており、他国で見られた類似の動向を踏まえて、規制変化を予測していました。日本はXsollaにとっても挑戦的な市場ではありますが、日本法人の設立、国内の決済チャネルの確保、そして主要パートナーとの関係構築をすでに実現しています。
今回のヘッド・オブ・ジャパンへの就任は、Xsollaの日本におけるプレゼンスを強化し、日本および海外のパートナーとの連携をさらに深めるための戦略的かつ前向きな一手です。このタイミングでの決定は偶然ではなく、変化を先取りし、信頼されるローカルエキスパートとしての地位を確立するというXsollaの継続的な取り組みの一環です。
――最後に、日本のアプリ事業者に向けた國分様からのメッセージをお願いいたします。
これまで主に映像系のエンターテイメントの業界で働いてきましたが、ゲームやアニメーションという分野では日本の作品は世界的に人気が高く、誇れる文化だと思っています。昨今ではプロスポーツを見ても、野球、サッカー、ゴルフなど日本人選手のグローバルでの活躍が目覚ましく、今後も若い選手がどんどん出てくると思います。同様に日本のゲームも今後さらに世界的に人気を高め、存在感を増していけると考えています。
米国での判決やEUでのDMAをはじめ日本でもスマホ新法が施行され、プラットフォームによる囲い込みや制限、そして一方的な制約が許容されてきた時代が変わり始めています。アプリ事業者の皆様は、今、アプリ外決済をはじめゲームファンに直接リーチし、海外展開を推し進める機会に恵まれています。
弊社は、日本に進出してまだ3年目ですが、MoR(Merchant of Record)として創立以来20年以上の経験を積んでおり、200以上の地域でのサービスを展開しています。現在では多くの日本の大手パブリッシャー様ともご一緒させていただいておりますが、より多くのアプリ事業者様をサポートさせていただき日本のゲーム業界と共に成長していくことを楽しみにしております。
Xsolla
ヘッド・オブ・ジャパン
國分 英孝氏
Repro株式会社が制作した独自の市場調査資料、ホワイトペーパー、お役立ち資料です。
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