Spotifyはどのようにアジアの難しい6市場を制したか。上陸前の日本の事例もご紹介!Part1

Repro Journal編集部
Repro Journal編集部
2020.12.15
Spotifyはどのようにアジアの難しい6市場を制したか。上陸前の日本の事例もご紹介!Part1

目次

この記事は、Spotifyのグローバル展開の徹底分析のPart1です。1億人以上のユーザーを獲得するためにSpotifyが実践している9つのグローバル成長戦略は こちら

今年の初め、Spotifyアジア代表取締役であるSunita Kaur氏は「アジアのあらゆるところに進出したい」とブルームバーグ紙で発言しました。Spotifyがアジア展開に着手してから3年が経ち、「あらゆるところ」というのはまだ実現されていませんが、この企業が好調なのは間違いありません。Spotifyが5年間かけてグローバル展開し、2,500万人のユーザーを獲得した後、2013年に初めて音楽ストリーミングサービスがアジアに上陸しました。アジアで最初の市場は、シンガポール、香港、マレーシアの3つで、2014年に台湾とフィリピンが続き、そしてつい先月日本に上陸しました。

中国を避けているのに何らかの意図があるとするならば、この上陸の流れはSpotifyの戦略通りです。彼らの最新の進出先である、日本の音楽業界は入り込みにくいというので有名です。「最も難しいのを最後に取っておく」というのは、フレームワークの1つでもあります。これらの国の新規ユーザーがSpotifyの最新の統計データに貢献していることは間違いありません。なぜなら、今やSpotifyは1億人のアクティブユーザー、3,000万人の有料ユーザーを抱えているからです。アジアでの成功は難しいのかもしれません。言語や文化の壁、政府機関や支払いシステムの違いから消費者の習慣やEコマースの様式の違い、生活費まで、違いをあげればキリがないからです。

今のところどうやらSpotifyはアジア市場を制している

Spotify自体はまだ収益データを発表していませんが、海外市場調査会社であるTNSの、Spotifyに委託された最新レポートによると、シンガポールではかなりの速さで普及しています。

もしもSpotifyがシンガポールのラジオ局だった場合、週のリーチ ((視聴率の分析手法の一つ。一定期間内に、一度でも接触したことがある人の割合。到達率ともいう。))でいうと国内第3位になります。TNSによると、シンガポールではインターネット環境がある5人のうち2人以上がSpotifyを利用していると報告しています。これは以前に比べて、音楽ストリーミングサービスが市場に出回っているということです。

アジアの他の市場では、無料ユーザーから有料ユーザーへのコンバージョン率は20%であるとKaur氏は言います。「Spotifyは現在、一部の人々にはリスキーだと思われていたモバイル端末で、音楽を無料で提供している唯一の音楽会社です。そして私たちにとって本当に嬉しいことは、ユーザーがSpotifyを使いこなせるようになることです。」と続けています。Spotifyのアジアでの成功は偶然ではないのです。

前回までの記事の続きとして、この事例記事は次の内容についてご説明していきます。

  • Sunita Kaur氏の、アジア上陸に向けた独自の戦略
  • Spotifyアジアが同社の成長戦略をどのように現場に適用させているか
  • Spotifyの上陸前の日本における戦術
  • Spotifyのアジアおよび日本における長期的な成長プラン

さて、アジアを制するためのSpotifyのベストプラクティスは一体何でしょう。早速見てみましょう。

アジアは世界一特殊な市場である

もちろん、すべての市場に多様性はあります。しかし、アジア市場における主な課題の1つが、まさにその多様性なのです。Kaur氏は彼女のチームが行ったアジア展開の取り組みについてのインタビューで、「アジアが他の国とどのように違うのかを理解することが、主要な取り組みの1つでした。」と答えました

「アメリカは50州で成り立っているとはいえ、本質的には同じ文化と言語です。それに対してアジアは、非常に多種多様です。インドのような国を1つとっても、多数の文化や言語が存在し、28ヶ国が一つの国に集結しているようなものだからです。」

どんな地域にどのようなユーザーがいるか、全ての想定を疑っていかなければなりません。彼女は、たとえ1つの地域でも非常に異なるところがある市場に直面したのなら、すぐにホワイトボードに向かって考えるべきだと言います。 Spotifyのベストプラクティスは、「あらゆる市場において、戦略を型にはめないこと。」だと言います

「私たちが関わると、どのような国でもその国の著名なアーティストと仕事をします。各国の音楽トレンドを見ると、どの国も地元のアーティストに非常に情熱があることが分かります。そのトレンドはアジア全土に当てはまるのです。」彼女たちは、それぞれの新しい市場で「マーケティング・ストーリーを作る」ことに投資をしており、「それはどの国でも、ゼロから始めるようなものです。」と続けて述べていました

オンラインのチャネルを通じて、ローカル市場に合わせる

あなたがこれから飛び込む新しい市場をよく調査し、適切なチャネルで適切なコンテンツをユーザーにアプローチできているかどうかを確認してください。これは、マーケティングだけでなく、製品やサービスにおいても言える話です。Kaur氏は、Spotifyアジアの戦略として以下のことを明らかにしました。

1.アジアでのスマホ普及率は特に高い。

「アジアにおいてモバイルファースト戦略は非常に重要でした。ここでは皆がスマホを持って暮らしているので、私たちにとって好条件なのです。」とKaur氏は言います。

2.流通チャネルとしてソーシャルメディアを使うことが利益をもたらす。

モバイルファースト戦略は、Kaur氏のチームがソーシャルメディアをアクティブなチャネルとして重視していたことを意味しました。「この新機能を立ち上げたとき、人々はソーシャルメディアでこれについて話題にしていました。私たちにとって最高のマーケターはSpotifyのユーザーです。」LINEとFacebookは東南アジアの多くの国で人気があります。

3.現地の言葉で話すこと。翻訳という意味ではなく、ユーザーの気持ちを熟知し、素晴らしいローカルコンテンツを作ることが重要。

これは時に、ローカルニュースを聞き、言いたいことを言うことも意味します。シンガポールとマレーシアが近隣のインドネシアの森林火災の煙に冒されたとき、Spotifyは冗談で、Billy Joelの「We did not the Fire」や、Maroon5の「Harder to Breathe」のような激しい40曲でできた「Hazed and Confused」というプレイリストを作りました。このプレイリストはヒットし、地域のリスナーの間で多くのソーシャルシェアがありました。

4.どの広告チャネルが最も効果的かを検証し、実験すること。

Kaur氏のチームは、消費者が動画広告に注目する中、今年の4月にシンガポールで動画広告に着手しました。「私たちはよく聞き、見ることで、安定した提供を続けられています。」と彼女は言いました。今や沢山の市場に参入しましたが、シンガポールは彼女たちにとって最初の実験国です。Kaur氏は、Spotify全体の前進にとって動画広告は最優先事項になるだろうと主張しています。

オフラインのターゲットユーザーとのエンゲージメントを高める

Spotify USの通信責任者であるGraham Jamesは、ローカライズの優先順位について「まず素晴らしいローカルコンテンツをリリースして、その後強力なローカルチームを市場に据える。」と述べています。ローカルチームはオフラインのイベントにとって重要です。そして、ローカルリスナーを魅了し、(Spotifyのターゲットユーザーの一部でもある)ローカルミュージシャンに活気を与えるというSpotifyの2つのゴールの鍵となります。

Kaur氏の優先事項の1つは、各市場で眠っている才能を開花させることです。 Spotifyアジアでは、各国にユニークなプレイリストを用意していて、リスナーに新しいローカルミュージックを提供しています。フィリピンでは、ローカルアーティストを中心にコンサートを開催し、現地のパートナーと協力しています。そうすることで香港のように地域の音楽業界のアーティストを紹介したり、リスナーがライブイベントで自分のお気に入りを投票したり共有したりすることができました

次回は、いよいよ日本での展開について踏み込みます!

この記事は、 OneSky上の記事 “ How Spotify Wins 6 Challenging Markets in Asia (Includes Japan Pre-Launch Case Study)“を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on OneSkyin English under the permission from the author.

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