2024年12月26日から27日にかけてReproが実施した、「タイパ意識とWebサイト・アプリの表示速度に関する調査」のなかから、「タイムパフォーマンス(以下、タイパ)」に関する意識や負担感について調査した設問をピックアップし、その結果を紹介します。
2022年には「今年の新語 2022(株式会社三省堂)」で大賞を受賞したタイパという言葉。2年余りがたち、その意味がどれだけ世の中に浸透しているのか、タイパを意識することがどれだけ一般化し、消費者に負担をもたらしているのか。多様な側面から調査・分析を実施しました。
消費者のタイパ意識の実態
20~50代の8割以上が「タイパ」という言葉を知っていると回答
「タイムパフォーマンス(タイパ)という言葉を知っていますか?」に対し、「はい」と回答した人は全年代で65%を超えています。タイパという言葉は、日本で一定の市民権を獲得しているワードであるといっていいでしょう。意外なのは10代で「はい」と答えた割合が75%であったこと。もともと若年層の行動を分析した結果として生まれた言葉であるにもかかわらず、60代以上の68.5%に次ぐ低さとなりました。
20~50代では80%以上が「はい」と回答していることを考えると、タイパという言葉が流行し始めた当時とは消費行動が変化している、あるいは分析する側の言葉であるという可能性も考えられます。
■「タイパ」という言葉を知っているか
※各年代すべてn=200
約6割の人が日常生活でタイパを意識している
「(仕事を除く)日常生活で、タイムパフォーマンスを意識することはありますか?」に対して、「非常に強く意識している」「ある程度意識している」とした回答者は全体の57.3%。半数以上が日常生活においてタイパを意識しながら過ごしていることがわかりました。「まったく意識していない」「あまり意識していない」と回答した人が22%であることを考えると、タイパを考えることが当然になっているのかもしれません。
■日常生活でタイパを意識することはあるか
※n=1,200
「食事」「掃除」などルーティン化しやすい行動でタイパ意識は高まる
日常生活におけるシチュエーション別のタイパ意識を尋ねた結果が下のグラフです。「非常に強く意識している」「ある程度意識している」を合わせた割合は、「食事・料理」「掃除」「買い物」「洗濯」といったルーティン化しやすい行動で大きくなる傾向があるようです。日常生活で数多く繰り返す行動だからこそ、効率化への意識が高まるのかもしれません。
■日常生活でタイパを意識する度合い
※それぞれの有効回答者数は、「Q.(仕事を除く)日常生活の各場面において、タイムパフォーマンスを意識する度合いを教えてください。」で「自分は該当しない」と回答した人を除いた数
デジタルデバイス使用時のタイパ意識は日常生活よりも低い
「(仕事を除く)デジタルデバイス使用時に、タイムパフォーマンスを意識することはどの程度ありますか?」という設問で、スマートフォンやPC等のデジタルデバイス使用時のタイパ意識についての調査も実施しています。デジタルデバイスの使用時にタイパを「非常に強く意識している」「ある程度意識している」と答えた割合の合計は44.7%でした。デジタルデバイス使用時のタイパ意識は、日常生活におけるタイパ意識よりも低い水準にあるようです。
■デジタルデバイス使用時にタイパを意識することはあるか
※n=1,200
情報収集やオンラインショッピング時にタイパ意識は大きくなる傾向
日常生活の場合と同様に、デジタルデバイスの利用シチュエーションを分類し、それぞれにおけるタイパ意識を尋ねたのが次のグラフ。「ニュースや調べ物」「オンラインショッピング」に対して、「非常に強く意識している」「ある程度意識している」と回答した人が50%を超えました。
■デジタルデバイス使用時にタイパを意識する度合い
※それぞれの有効回答者数は、「Q.デジタルデバイスを使用する各目的において、タイムパフォーマンスをどの程度意識していますか?」で「利用したことがない」と回答した人を除いたもの
デジタルデバイス使用時間とタイパ意識の関係
1日のデジタルデバイス使用時間は、半数以上が「3時間以上」と回答
「(仕事を除く)日常生活で、スマートフォンやPC等のデジタルデバイスを使用する時間はどのくらいですか?」という設問に対して、最も多くの回答が集まったのが「1日3~5時間程度」という選択肢。全体の33.2%を占めました。2位、3位はほぼ差がなく、「1日1~3時間程度」が27.9%、「1日5時間以上」が27.3%となっています。1日3時間以上、デジタルデバイスを使用している人が全体の半数以上を占める形となりました。
■1日のデジタルデバイス使用時間(※仕事を除く)
※n=1,200
デジタルデバイスの使用時間が長いほどタイパへの意識は高まる
デジタルデバイスの使用時間とタイパ意識の関係を分析すると興味深い示唆を得られました。スマホの使用時間が長いほど、タイパ意識が高い傾向が見られるのです。この傾向はデジタルデバイス使用時のタイパ意識により顕著に表れています。1日の使用時間が3時間以上になると、日常生活においては「非常に強く意識している」人の割合が急増し、デジタルデバイス使用時では、「非常に強く意識している」「ある程度意識している」の合算人数も急増します。
■デジタルデバイス使用時間 ✕ 日常生活のタイパ意識

■デジタルデバイス使用時間 ✕ デジタルデバイス使用時のタイパ意識

タイパを意識することへの負担やストレス
デジタルデバイスの使用時間が長いほどタイパに対して負担を感じやすい
「(仕事を除く)日常生活で、タイムパフォーマンスを意識することはどの程度負担に感じますか?」「デジタルデバイス使用時において、タイムパフォーマンスを意識することはどの程度負担に感じますか?」という設問と、デジタルデバイスの使用時間を尋ねる設問を組み合わせ、その関係性を分析したのが下のふたつのグラフです。
タイパ意識の高さがデジタルデバイスの使用時間、1日3時間を境に変化していたことを考慮し、3時間以上、3時間未満で区切っています。日常生活、デジタルデバイス使用時いずれの場合も、デジタルデバイスの使用時間が長いほどタイパを意識することに対して負担を感じる人が増えるという結果になりました。
■デジタルデバイス使用時間 ✕ 日常生活でのタイパへの負担意識

■デジタルデバイス使用時間 ✕ デジタルデバイス使用時のタイパへの負担意識

約7割がタイパを意識しない生活を望んでいる
「タイムパフォーマンスを意識しなくてもよい生活があれば、それを望みますか?」として、タイパを意識しなくてもよい生活を望むかを質問しています。「強く望む」「どちらかといえば望む」と回答した人は、全体の68.0%に上りました。タイパを意識してはいるものの、単位時間に対する効率を意識する生活に疲れ始めた人、忌避感を持っている人が一定数いることがわかります。
■タイパを意識しなくても良い生活を望むか
※「Q.日常生活(仕事を除く)で、タイムパフォーマンス(タイパ)を意識することはありますか?」に対して「非常に強く意識している」「ある程度意識している」と回答した688人が対象
Appendix:デジタルネイティブのタイパ意識
20代でタイパを意識している人は5割以上。他の年代よりも高い傾向
(仕事を除く)デジタルデバイス使用時のタイパ意識を年代別に分析した結果が下のグラフです。「非常に強く意識している」「ある程度意識している」と答えた割合は、20代を頂点として年齢が高くなるごとに減少していくことがわかります。
注目したいのは、同じデジタルネイティブ世代である10代のタイパ意識が20代を大きく下回っていること。他の年代に比べて、社会に出ておらず仕事に時間を拘束されない、結婚・出産を経験しておらず家庭生活に時間を拘束されない人が多いなどといった背景が考えらえます。
■【年代別】デジタルデバイス使用時のタイパ意識
※各年代すべてn=200
デジタルネイティブ世代もタイパを意識することは負担に
(仕事を除く)デジタルデバイス使用時のタイパ意識への負担感を、上記と同様に年代別に分析したのが下のグラフです。「非常に負担に感じる」「やや負担に感じる」と答えた割合は、20代が最も多く46.4%、2位は10代で41.6%となりました。デジタルネイティブ世代といえども、デジタルデバイス使用時のタイパ意識への負担は大きなものとなっているようです。
■【年代別】デジタルデバイス使用時のタイパへの負担感
※「Q.デジタルデバイス使用時において、タイムパフォーマンスを意識することはどの程度ありますか?」に対し「非常に強く意識している」「ある程度意識している」「どちらともいえない」と回答した831名が対象

タイパを意識しない体験が求められている
本調査の結果、以下のようなことが浮き彫りになりました。
- デジタルデバイス使用時は「情報収集」「オンラインショッピング」のときにタイムパフォーマンスへの意識が強まる
- 日常生活においても、デジタルデバイス使用時においても、タイパを意識することに負担を感じている人が一定数存在する
- 約7割がタイムパフォーマンスを意識しない生活を望んでいる
- デジタルデバイスの使用時間が長い人ほどタイムパフォーマンスに負担を感じている
タイパという言葉や意識が一般化している以上、WebメディアやEC事業者は消費者に対して単位時間当たりの価値を高めていく活動は必要不可欠です。消費者があえてタイパを意識しないようなサービス設計がより適切であるといえるでしょう。例えば、Webサイト自体の表示速度を高速化する、パーソナライズされたUIやレコメンドを表示するといった手法です。
「サイトにアクセスするだけで自然にタイパが向上している」、そんなUXを実現することがこれからのデジタルサービスに求められるものなのではないでしょうか。
■調査概要
- 調査名:タイパ意識とWebサイト・アプリの表示速度に関する調査
- 調査期間:2024年12月26日~12月27日
- 調査方法:インターネットアンケート調査
- 調査対象:直近1カ月以内にECサイトを利用したことがある15~69歳の男女
- 回答者数: 1,200名