ASO（アプリストア最適化）対策においてアプリの「評価とレビュー」が今まで以上に重要な理由

Redbox MobileのAnil Ozdemir氏は、最近のアプリストアの変化を背景として、「評価とレビュー」に注力しなくてはならないときが来たと語ります。

Anil Ozdemir氏は教育工学と経営学をバックグラウンドに持ち、Redbox MobileのASO（アプリストア最適化）チームを率いている人物です。担当領域はASO対策の戦略的プランニング、最適化およびレポーティング。ASOチームの指導も担当しています。

アプリ市場にはここ数年で数多くの変化がありました。アプリストアのアルゴリズム、プライバシー設定、アトリビューション手法、さらにはストアの新機能によってマーケターは戦略変更を余儀なくされ、ASOチームは他のグロースチームとの調整に追われています。

本記事では、App Store（iOS）とGoogle Play ストア（Android）の変化に加え、変転する環境の中で評価とレビューがどれほど役に立つのかを紹介します。

この記事は、Revenue Catのブログ ”Why ratings and reviews in ASO are more important than ever” を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on Revenue Wire in English under the permission from the company.

アプリストアにおける 「評価とレビュー」の効用

評価スコアと評価数は、検索結果とアプリ詳細ページに表示されます。両者ともにユーザーがアプリをダウンロードするか否かの意思決定に重要な影響を与えるものです。また、評価スコアはGoogle Play ストア、App Storeの検索アルゴリズムに影響を与えており、両ストアとも評価スコアと評価数をインデックス化しています。

ちなみに、App Storeはレビューを「参考になった」「高評価」「低評価」「最新」の4つのカテゴリに分けています。Google Play ストアは、レビューを「すべて」「良い評価」「批判的な評価」の3カテゴリに分類しています。

レビューについて考えるとき非常に重要な要素のひとつといえるのが、「Google Play ストアがレビューをインデックス化している」こと。つまり、ユーザーがレビューに書いたキーワードが、Google Play ストア内の検索順位に反映されている可能性があるということです。

「評価とレビュー」はアプリストア内でどのように表示される？

評価は、ユーザーの意思決定のファーストステップに特に影響を与えます。検索結果上でユーザーの目に入るからです。App Store、Google Play ストアともに検索結果には、アイコン、評価スコア、評価数がアプリのスクリーンショットとともに表示されます。アプリ詳細ページへの流入獲得を左右する可能性を持っているのです。

一方、レビューに関していうと、どちらのストアでもユーザーがアプリ詳細ページを訪れて下にスクロールしない限り表示されません。評価数や評価スコアと比べて、相対的に目につきづらいものであると考えていいでしょう。

参考になった（App Store）・関連度が高い（Google Play ストア）レビューが重要

ユーザーがアプリ詳細ページを訪れ、レビューのセクションまでスクロールすると、最初に表示されるレビューは、最も「参考になった（App Store）」および「関連度が高い（Google Play ストア）」レビューです。

App Storeのレビューはデフォルトで「参考になった順」、Google Play ストアのレビューは「関連度順」で表示される仕組みになっており、その最上位のレビューが、アプリ詳細ページの最初に表示される形になっているからです。

これらのレビューは、ユーザーの第一印象を決める重要な要素となっており、他のレビューよりも重点的に対策をすべきものです。ユーザーのレビューに回答する際には、これらに優先的に対応する必要があります。

なお、ユーザーが他のレビューを読みたい場合は、「矢印アイコン（Google Play ストア）」または「すべて表示（App Store）」をタップすることで、すべてのレビューが表示されます。

「参考になった」または「関連度が高い」レビューを評価する方法

Google Play ストアでは、レビューについている「このレビューは役に立ちましたか？」に対して、「はい」という回答が多いほど「関連性が高い」レビューであると認識されるといわれています。「はい」の数が多いレビューが上位に表示され、それがユーザーの意思決定に大きな影響を与えるのです。

App Storeでは、レビューをロングタップしたあとに「参考になった」という選択肢をタップすると、レビューを評価することができます。

アプリマーケティングにおける「評価とレビュー」の重要性の変化

キーワード最適化の重要性が低下しつつある

ASO対策の専門家は、App StoreとGoogle Play ストア内の変化を注視し、ツールを使用して検索アルゴリズムの変化をモニタリングしています。検索アルゴリズムのアップデートに関して、AppleやGoogleが公式発表をすることが少ないからです。

しかし、3、4年前と比べて、メタデータの最適化が徐々に効果的でなくなっていることは確かです。これは、キーワードの微調整によって著しい改善を図ることがもはや容易ではないことを示しています。その代わりに、評価とレビューがアルゴリズムに与える影響が大きくなっているのです。評価とレビューが、認知度やCVRへ与える影響はますます大きくなっています。

iOS 14以降、リアルタイムのデータ収集が困難に

2021年にAppleが行ったiOS 14に関する変更により、SKAdNetworkがマーケターの生活に登場し、わずか数週間ですべてが変わりました。インストール後のイベントトラッキングが難しくなり、リターゲティングやユーザー行動の把握も困難になったのです。

レビューの重要性が高まったのはこのためです。レビューこそが、アプリに対する不満や満足している点を理解するための最も簡単な方法のひとつになったのです。もちろん、さらに重要な役割として、UXのフィードバックを収集する手段としても機能しています。

Google Play ストアにおけるダウンロード数への影響

Googleは2023年2月から、Google Play ストアのトップチャートへの掲載基準を平均評価スコア3.0に設定すると発表しています。

トップチャートは「探索トラフィック（検索結果からではなく、Google Play ストア内でアプリやゲームを見つけたユニークなユーザーのトラフィック）」における、重要なトラフィックソースです。そのため、トップチャートにランクインできないアプリが苦境に立たされることは明らかであり、平均評価スコアを3.0以上に保つことが非常に重要であるといえます。

Google Play ストアの「評価とレビュー」へのアプローチ

過去半年間で、平均評価スコアと獲得評価数に大きな変動があったAndroidアプリがいくつかあります。低評価の数が減少した一方で、高評価の数が増加しているのです。しかし、それほど多くのユーザーが同じ日に評価を変更することがあり得るのでしょうか。

下記のグラフで示したスポーツベッティングアプリでは、まさにそのような状況が発生しています。評価スコアは1月から6月まで2.5未満でしたが、ある日、4.5以上まで急上昇しました。これは多くのネガティブな評価がポジティブなものに変わり、全体の評価が変化したためです。なぜこのようなことが起きたのでしょうか。その理由を以下に示します。

■獲得した評価数

■評価スコアの分布の変化

■平均評価スコアの変化

1. Googleは、常に評価スコアの分布を状況や条件の変化に合わせて調整しています。アプリのGoogle Play ストアにおける評価、および星の数の割合を示す棒グラフは、アプリの現在の品質を評価して算出されています。
2. つまり、アプリの全期間にわたるユーザーのレビューの平均値ではないということです（アプリの評価数が少ない場合は除く）。Googleは状況や条件の変化に対して、独自に偏りをつけて評価をしているのです。
3. Googleは、長期間運営されているアプリは新機能やUXの向上（または悪化）、バグ修正などで何度も進化できると考えています。ユーザーはこれらの変更に満足するかもしれませんし、そうでないかもしれません。
   例えば、新しい機能を導入したが、ユーザーがそれに不満を感じた場合、ユーザーは低い評価を残すことで不満を示すことができます。しかし、そのひとつの評価では全体の評価に影響を与えない可能性があります。既に多くの良いレビューと高い平均評価スコアを獲得しているためです。
4. そこでGoogleは、最新（最近）のレビューを考慮して、ユーザーからの評価スコアを調整／再分配しているのです。上記のスポーツベッティングアプリの場合、Googleは、多くのひとつ星評価を削除し、最新のレビューに基づいて高いスコアの評価を追加していると考えられます。

まとめ

1. 「評価とレビュー」は、競争の激しい市場での消費者の意思決定に影響を与え、アプリマーケティングにおいて重要な役割を果たしている。
2. アプリストアのアルゴリズムにおいて、キーワード最適化が効果的でなくなりつつあり、CVR、「評価とレビュー」がアプリの露出により大きな影響を与えている。
3. iOS 14のリリースに伴ってインストール後のイベントを追跡することが困難になった結果、レビューがユーザーのフィードバックを得る重要な情報源となっている。
4. Google Play ストアは、アプリがトップチャートにランクインするために必要な平均評価スコアを3.0に設定しており、高い評価を維持することが重要である。
5. 「評価とレビュー」はアプリの露出、認知向上に直接的な影響を与え、ユーザーの意思決定において重要な役割を果たす。
6. ユーザーにポジティブな第一印象を与えるためには、「参考になった（App Store）」および「関連度の高い（Google Play Store）」レビューを優先することが必要不可欠である。
7. Google Playにおける「関連度順」レビュー、App Storeにおける「参考になった順」レビューを評価することで、ユーザーのアプリに対する印象に影響を与えることができる。
8. Google Play ストアの評価分布は、現時点でのユーザーレビューに基づいて変化し、時間の経過とともに評価は変化する。