嬉しい出来事を報告する時、笑った顔の絵文字をメッセージの最後に添えて送る習慣がないという人は、絵文字を多用したメッセージを見ると外国語の会話のように感じるかもしれません。しかし絵文字を使う習慣がないからといってその存在を頭から否定するのは危険です。
あなたの顧客(そしてライバル会社)はすでに絵文字を活用しているのです。実際、Emogi Research teamが発表した調査報告によると、92%の人が絵文字を使用しています。1日に何度も絵文字を使うという人は30%以上です。またAppboyの調査では、絵文字を使用したマーケティングキャンペーンの実施件数は前年から777%も増加しています。多くの先進企業が絵文字を使って顧客にメッセージを発信し、独自のブランド構築に役立てています。絵文字を使用することで、次のような注目すべき効果が得られているのです。
この結果を見れば、バンガー大学の言語学教授、Vyv Evans氏が、絵文字は「歴史上最速で成長した言語の一種である」と述べたのも頷けます。オックスフォード辞典が発表した2015 World of the Yearに絵文字が選ばれたのも納得です。ソーシャルメディアにおける絵文字の重要性がわかったところで、効果的なブランディングのために絵文字を使用する7つのコツを見ていきましょう。
絵文字は文章と組み合わせて使う
絵文字の重要な役割は、微妙な感情をシンプルに表すことです。例えば「嬉しいと思った」と言葉で伝える代わりに、絵文字を使います。このように、絵文字を使うことで自分の気持ちを明確に表現することができます。あまり独創性が過ぎると、2015年のChevy Goes Emojiキャンペーンのような事態になってしまいます。2016年の新型クルーズ販売開始に先駆けて、シボレーが絵文字をテーマとした広告を次々と発表しました。その第1弾がすべて絵文字のみで書かれたプレスリリースです。
2015年6月にGM社が出した新しいシボレー・クルーズの発売に関するプレスリリース
しかしシボレーが思っていたような反響は得られなかったようです。Dallas Morning News紙の記者Sean Lester氏は同紙で次のように述べています。「現時点で読み取れる限りでは、新型シボレー・クルーズにはいくつかのコンピュータと、パンかトーストがついていて、様々なバッグがたくさん収納できるらしい。これでは解読されたメッセージの発表を待つ他ない。」その1年後にもシボレー・クルーズはよくわからない絵文字の使い方をしたテレビCMを放送しています。「世間の人々」に絵文字を使って車に対する感想を表現してもらうというものです。
絵文字を使用したシボレーの広告
シボレーは広告に絵文字を活用したことで、『Twitter』のエンゲージメントが18倍に増え、このテレビCMシリーズ全体のペイドメディアにおける閲覧回数は2,170万回を突破しました。このように注目を集めたことは評価できますが、寄せられた意見にはネガティブなものが目立ちます。
現時点でシボレーのCM動画は『YouTube』で約100,000回再生されていますが、「低評価」の数は「高評価」の5倍にもなります。注目を集めるだけでは評判は上がらないということです。絵文字は文章と合わせて使いましょう。そうでなければ絵文字は使わない方がいいようです。
絵文字の意味を理解した上で使用する
絵文字を使う上で最も気を付けなければならない落とし穴は、小さくてかわいらしい絵文字が思いもよらない意味を持つ場合があるということです。下の円グラフを見てください。Get Emojiがその事実を明らかにしています。
「桃」の絵文字は実に27%の人が性的な連想をすると答えた
しかし絵文字から連想される様々な意味に気付けば、そこから新たな発想が生まれます。例えばNYC Health+Hospitalsはナス(隠語として使われることがよくある)の絵文字を使って性教育のマーケティングキャンペーンを実施しました。
ブランドのテーマに合った絵文字を使用する
2016年は、下品でヒーローらしくないヒーローを主人公としたコメディ映画と、絵文字を使ったマーケティングキャンペーンの組み合わせが最高にマッチして人気となりました。『デッドプール』の絵文字の使い方はシンプルで、漫画の持つ要素を上手く捉えたものでした。AdWeekでは「映画『デッドプール』の絵文字広告は馬鹿馬鹿しくて、天才的だ」と評価されました。
映画『デッドプール』の屋外広告。(= Dead)と(= poo)の絵文字を使って映画タイトルを表している
絵文字を上手く使いこなすためには、ブランドのイメージにピッタリ合った絵文字を選びましょう。真面目なイメージの保険ブローカーが、舌を出した顔の絵文字を突然使いだしたら、悪い印象を与えてしまう可能性があります。せっかくの顧客が離れてしまうかもしれません。
絵文字を使ってリアルタイムのエンゲージメントを獲得する
『Snapchat』や『Twitter』のライブストリーミングでも絵文字を使用することができます。これを最大限に活用することで、顧客に企業の人間性を示すことができます。ソーシャルメディアで発信する文章のどこにでも好きなように絵文字を入れることができます。絵文字の濫用が逆効果となることはシボレーの例からも明らかですが、アイデア次第では成功することもあります。例えばバド・ライトが7月4日愛国心に溢れたツイートを発信しました。
バドライトの公式Twitterは7月4日のアメリカ独立記念日に絵文字を使った遊び心あるツイートを投稿した
タンピコの「Emojiball」キャンペーンのように、絵文字をゲームにすることでエンゲージメントを獲得できた例もあります。また『Spotify』が実施したキャンペーンでは、多くの人に本当に愛される絵文字をカスタマイズしてエンゲージメントを得ることができました。
ビートルズが聴けるようになった際の『Spotify』のツイート
絵文字とブランドの関連性を高める
世界自然保護基金 (WWF) は環境と絶物危惧種の保護に従事する団体です。WWFは『Twitter』でその活動を広めてもらい、支援を得るために、#Endangered Emoji Twitterキャンペーンを展開しました。絵文字のキャラクターをどれでも1つツイートする度に、0.10ユーロが寄付されるというものです。
絶滅危惧種に関した絵文字をツイートすると寄付されるWWFのキャンペーン
このキャンペーンでWWFは、絵文字のかわいさという他の企業が無視していたひとつの特徴を上手く利用しました。このツイートは35,000回以上リツイートされ、11,000「いいね」を獲得しました。 もうひとつ、男女平等を主張する#HeForSheキャンペーンを紹介します。このキャンペーンのためにカスタマイズした絵文字が多くの有名セレブの支持を得たことで、ソーシャルメディアにおける関連発言数が115%増加しました。
ジェンダー平等を呼びかけるHe For Sheキャンペーンでは、キャンペーン用に作成した絵文字が著名人の支持を得た
#HeForSheキャンペーンの場合は、絵文字のかわいさを売りにはしていません。絵文字をひとつのシンボルとして使用することで、支持者を集めました。ブランド独自の絵文字をカスタマイズする場合、次の3点に気を付ければその効果はまったく違ってきます。
- どの端末でも表示できる絵文字にする。
- 顧客が参加できるプロモーションやイベントを企画し、絵文字をシェアできるようにする。
- 多くの人が喜んで絵文字を使ってくれるような理由付けをする。またはシンボルとする。
セールスファネルの中に絵文字を組み込む
ドミノピザのEasy Orderキャンペーンは、絵文字マーケティングの見本としたい画期的なキャンペーンです。このキャンペーンでは絵文字で単にブランドを宣伝するのではなく、顧客が絵文字を使ってピザを注文できるようにしたのです。注文方法は簡単です。ドミノピザのサイトでアカウント情報とお気に入りのピザを登録します。そして自分の『Twitter』のアカウントと連動させたら、ピザの絵文字をツイートするだけで、ドミノピザから確認のメッセージが届きます。するとすぐさまお気に入りのピザが届くのです。
ピザの絵文字を送信することで注文が完了する
絵文字を活用する企業はたくさんありますが、その用途のほとんどが顧客への呼びかけ、ブランドの宣伝にとどまっています。しかしドミノピザはセールスファネルの要所に絵文字を導入しました。
検討すべき重要なポイント
ソーシャルメディアを通して顧客とコミュニケーションをとる機会が増えた今、微妙な感情やちょっとした遊び心などを文章だけで表現するのは難しいと悩むこともあるのではないでしょうか。しかし絵文字の利点を最大限に活用すればそのような問題も解決します。使い方次第で絵文字は強力なマーケティングツールとなります。絵文字が好きになれないという人もいるでしょうが、しかし絵文字は世の中にすっかり定着しています。絵文字を使ったソーシャルメディアマーケティングを成功させるには、その他の販促キャンペーンと同じように以下の事項を十分に検討する必要があります。
ターゲットとする客層を検討した上で、次の3点を確認しましょう。
- 絵文字はターゲット層の共感を得られるか
- ターゲット層は絵文字をどのように感じるか
- ターゲット層の間ではどのような絵文字が使用されているか
ブランドのテーマとするものを検討した上で、次のことを確認しましょう。
- どの絵文字がブランドのコアバリューを表せるか
- どの絵文字がブランドを連想させるか
キャンペーンで伝えたいメッセージを検討した上で、次のことを確認しましょう。
- 使おうとしている絵文字にどのような意味が含まれているか
- メッセージを明確に表現できているか
絵文字は今や誰もが日常的に使用する言葉となっています。またバーチャルアシスタントツールの普及も進み、企業は顧客の好みに合わせた様々な媒体を通してブランドを紹介しています。そのため絵文字は今後も重要なコミュニケーションツールとして使用され続けると期待されています。Snap社のCEO、Christian Brucculeriは次のように述べています。
現在1日に発信されるメッセージは2,700億件、その中で約60億個の絵文字が使用されている。このまま順調に成長を続ければ、絵文字という表現方法の重要性はいっそう高まるだろう
この記事は、 SocialMediaToday社のブログ“ 7 Ways to Use Emojis in Social Media Marketing”を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on SocialMediaToday in English under the permission from the author.