Apple Search Adsを運用するにあたって、目指すべき指標は何でしょうか?
これは、「Split Metrics」が2018年4月11日・12日に開催した「Apple Search Ads オンラインカンファレンス」に登録したパブリッシャーに向けて投げかけた質問です。
多くのパブリッシャーは、CPA(ユーザー獲得あたりのコスト)を低く抑えることだと答えました。
しかし、どれだけ低い数字であれば、低く抑えられている
また、Search Adsを運用する際にかかるCPT(タップあたりのコスト)やCPI(インストールあたりのコスト)は、どれくらいなのでしょうか?
今回は、カテゴリーごとの平均的なCPT・CPA・TTRを明らかにするため、以下の項目を分析しました。
・Search Adsにおける、3億9000万のインプレッション
・1,450万のアプリのDL
・2000万ドルの広告費
・7カ国のストア:オーストラリア、カナダ、メキシコ、ニュージーランド、スイス、イギリス、アメリカ
この記事では、Search Adsの運用にかかるコストと、パフォーマンス改善のためのポイントをご紹介します。
Search AdsにおけるCPT
Search AdsはCPTに基づいて入札されるため、まずは、カテゴリーごとの平均CPTからスタートしましょう。
Search Adsにおける平均CPTは、$0.84となっています。
ショッピングと金融のCPTが最も高く、それぞれ$3.48と$2.81です。
最もポピュラーなカテゴリーであるゲームや、健康、ライフスタイル、教育のカテゴリーでは、およそ$1となっています。
音楽、本、天気のカテゴリーは、(2018年3月時点)CPTが最も低くなっています。
意外にも、写真と動画のカテゴリーも、CPTはかなり低い部類に入ります。「Apple」は、1タップに必要なコストを$0.5と想定するよう主張していますが、写真・動画アプリを作成するのであれば、CPTは$0.3で済むことになります。
Search AdsにおけるCPA
Search AdsにおけるCPAとは、「入手」ボタンのタップごとにかかるコストを指します。
理論的にはCPAはCPI(インストールあたりのコスト)と同じになるはずです。しかし、実際はアプリページから「入手」ボタンをタップする閲覧者数と、最終的にインストールしてくれる閲覧者数は異なります。そのため、実際のCPIはCPAよりも高くなります。
平均的なCPAはおよそ$1.76ですが、カテゴリーによって大きく差があります。
ショッピングと金融アプリは、最も人気な一方でコストも最大でした。これらのアプリにおける平均CPAはおよそ$6でした。
それに対して、音楽、書籍、天気のカテゴリーのアプリにおける平均CPA$0.3と、かなり下がります。
また、ゲーム、健康、ライフスタイル、教育アプリの場合、平均CPAはおよそ$1.5です。
ここでCPTとCPAの表を見てもらうと、高いCPTが、必ずしも高いCPAに結びついていないということわかります。例えば、ゲームアプリにおけるCPTはかなり高い方ですが、CPAでは全カテゴリーの平均を下回っています。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?
これには、プロダクトページにおけるCVRが大きく影響しています。この場合のCVはアプリのDLになります。CVRが高ければ最終的なCPAは減少し、一方でCVRが低い場合にはCPAは上昇します。つまり、ユーザーが広告をクリックしてはいるが、DLに至っていない場合には、CPTが低くてもCPAは高くなるのです。
このような理由から、Search Adsを最大限に活用するためにも、まずはプロダクトページの最適化をする必要があるのです。せっかく広告をクリックしてもらえても、ユーザーがDLしたくなるようなプロダクトページが実現できていなければ広告が無駄になってしまいます。
ゲームのカテゴリーが良い例です。ゲームアプリは非常に競争が激しいため、ほとんどのパブリッシャーがASOに力を注いでいます。
そのため、CPTは高くても、プロダクトページにおけるCVRが高いため、CPAを低く抑えることができるのです。
では、$1.76という平均CPAは高いのでしょうか?それとも、安いのでしょうか?
ここで、Search Adsと、Facebookのアプリインストール広告を比較してみましょう。「AdEspresso」によると、Facebookのアプリインストール広告におけるカテゴリーごとの平均CPIは、時間帯と利用するデバイスによって異なりますが、およそ$1.22から$2.62となっています。つまり、Search Adsにおける平均CPAと近い数字であることがわかります。
Search AdsにおけるTTR
「SplitMetrics」によれば、App Storeで検索結果の一番始めに表示されるアプリが、トラフィックの19%を占めていることがわかっています。
Search Adsがリリースされたばかりの時期に行われたCVRの調査では、平均的なユーザーは検索結果に表示されたアプリが広告であることに気付いていなかったため、Search Adsは高いTTR(タップスルー率)を保持していました。
しかし、最近行ったTTRの調査では、ユーザーは広告を無視し始めており、オーガニック検索結果に表示されたアプリに集中するようになっていることがわかりました。
表を見るとわかるように、ビジネス、ステッカー、ライフスタイル、書籍、健康とフィットネスのカテゴリーにおいて高いTTRが観測されており、平均TTRはどれも9%を超えています。つまり、これらのカテゴリーにおいては1000人中90人が広告をクリックしているということです。
反対に、医療、ショッピング、スポーツ、教育、SNSのカテゴリーではTTRは低く、5%未満となっています。
なぜ、カテゴリーごとにこのような差が生まれるのでしょうか?
TUNEによると、検索されているキーワードの90%は、「Amazon」「Facebook」
「Google」「SONY」「Netflix」などの大手企業や有名なスタートアップ企業の名前であることがわかっています。つまり、多くのユーザーは、新しいアプリを見つけ出すためというよりも、特定のアプリにアクセスするためにApp Storeで検索しているということです。
そのため、特定のブランドを示すキーワードに入札すればするほど、TTRは低くなるといえるでしょう。
Search Adsが、実は「高くない」理由
端的に言えば、コストを決定するのはパブリッシャーであると言えます。
Search Adsではセカンドプライスオークションを採用しています。つまり、1タップあたりに実際に支払うことになるのは、最も近い金額で入札した競合よりも$0.01だけ高い金額になるということです。
さらに、Search Adsでは広告の関連スコアが付けられているため、関連性が高い競合アプリのみと競うことができる仕組みになっています。加えて、同じカテゴリーの、同クラスの競合アプリとだけ競うことができるのです。
このようにして「Apple」は、CPT入札の高騰や、大企業による広告の独占を防いでいます。
Search Adsのパフォーマンスを改善するには
競争率の高いSearch Adsの運用を始める前に、Search Adsにおけるコストを決定する要因と、マーケティングの目標を達成するためにCPT入札額を調節する方法を知っておきましょう。
Search Adsのコストを決定するのは、次のような要因です。
- CVR(最も重要な要因): 広告をタップしたユーザーが、DLまで進んでくれているでしょうか?
- キーワードの競争力: この競争力は、関連性と検索ボリュームによって決まります。
- ターゲティング: オーディエンスが異なれば、CPTも変化します。
- 時間帯: 広告を表示する曜日や時間によって、コストは変化するでしょう。
- 関連性: 関連性の低いキーワードには入札しないようにしましょう。
以上の要因を念頭に置き、コストを削減する方法を6つご紹介します。
- 最も効果的なのは、CVの最適化から始めることです。これが実現できれば、広告のトラフィック量を失うことなくコストを削減できます。CVの最適化は、「入手」ボタンのクリック数と、DLのバナーのクリック数の両方に対して行いましょう。
- 競合がより少ないキーワードを見つけましょう。同じ金額でも、より多くのユーザーを対象にしたキャンペーンが展開できます。低価格なキーワードを見つけることができれば、Search Adsのトラフィックが減少することもありません。
- 関連性の高い、ロングテールなキーワードを活用しましょう。こうしたキーワードは競争がゆるやかで、よりCVが期待できるユーザーをターゲットにできます。覚えておくべきことは、競争の激しいキーワードで下位に入るよりも、平均的な検索ボリュームのキーワードでトップ10に入る方がより効果的だということです。
- 検索キーワードを最適化するため、除外キーワードを追加しましょう。かなり競争力が高く、予算を超えてしまいそうなコストが極端に高いキーワードを、除外キーワードに加えて下さい。ただしこの方法は、ある程度トラフィックが減少するということも覚えておきましょう。
- 広告を表示する時間帯を調整しましょう。特定の曜日や時間に広告の表示を止めることで予算を削減でき、より効果の高い時間に予算を使うことができます。ただし、時間帯の調整は慎重に行ってください。
- 入札とターゲティングで実験を重ね、キーワードに対する最適な価格を見つけましょう。
Search Adsの最適化で覚えておくべきポイントは、コストと効率性のバランスが取れていないと、パフォーマンスの改善は望めないということです。このバランスを探すのは容易ではないですが、努力に見合う成果をもたらしてくれるでしょう。
この記事は、Split Metrics社のブログ"Apple Search Ads Cost: CPT, CPA and TTR Benchmarks by Categories"を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on Split Metrics in English under the permission from the author.