2020.02.10
関連する記事
おすすめのお役立ち資料
Repro株式会社が制作した独自の市場調査資料、ホワイトペーパー、お役立ち資料です。
ほかでは知ることのできない貴重な情報が掲載されているので、ぜひダウンロードしてご覧ください。
ブランド・エクイティとはブランドに対するイメージの資産価値をあらわした言葉です。この記事では、ブランドの資産価値を高める方法を知りたい方向けに、ブランド・エクイティの意味と高めるメリットについて説明し、ブランド・エクイティの構成要素、測定方法、向上させる方法について解説していきます。
ブランド・エクイティはカリフォルニア大学バークレー校のデビッド・A・アーカーが提唱したもので、ブランド名やブランドをあらわすロゴなどのシンボルと結びついたブランド資産またはブランド負債の集合で、製品やサービスの価値を増減させるものと定義しています。端的にまとめると「ブランドが持つ資産の集合」となります。
一般的に、資産とは将来的に利益を出すと予測されるものを指しますが、ブランド・エクイティの資産は負債を含み、ブランドの良い面と悪い面を合わせた総合的価値をあらわします。
ブランド・エクイティを高めると企業にとって良い影響を及ぼします。ここでは、ブランド・エクイティを高めるメリットを4つ紹介します。
ブランド・エクイティを高めることで、既存顧客をリピーター化できます。リピーター化することでひとりの顧客の購買頻度も増加し、アップセル・クロスセルによって購買単価を上げることも可能です。
また、ブランド・エクイティが高ければ、高額の商品であっても顧客が購入するため、利益率が高くなり、売り上げを伸ばすことができます。
ブランド・エクイティを高めると、顧客が同業他社の商品・サービスよりも自社の商品・サービスを購入するようになるため、同業他社と差別化が図れます。また、同業他社の商品・サービスが全く売れない状況や、価格競争が激しい状況でも、ブランド・エクイティが高いと外的要因の影響を受けることなく、安定した業績を上げることができます。
顧客ロイヤリティとは、顧客が企業・商品・ブランドに感じる信頼や愛着のことです。顧客ロイヤリティを高めると、解約率や同業他社への乗り換え率が低下します。また、ロイヤリティの高い顧客はTwitterやFacebookなどのSNS上でポジティブな口コミ・評判を発信するので、新規顧客の獲得が見込めます。
顧客は商品・サービスに支払った金額相当の価値か、金額以上の価値を求め、購買時に失敗しない、信頼のおける企業を常に探しています。そのため、顧客ロイヤリティを高めて企業と顧客の信頼関係の構築するためには、ブランド・エクイティの向上が必須なのです。
人間は同じルーティンを繰り返す傾向があります。例えば、コンビニに入るときにいつも同じ順路で商品棚を見て、同じような商品を買うという経験は誰しもがあるものではないでしょうか。また、醤油やソースなどの調味料を買うときも深く考えずに、同じ商品を買うことが多いでしょう。
人間は一度決めた行動ルーティンを繰り返していると、他の行動をしなくなるという特徴があります。ブランド・エクイティの向上は、自社製品をルーティンに取り入れてもらうきっかけを作ることにつながります。
ブランド・エクイティは5つの要素で構成されます。各要素について詳しく見ていきましょう。
ブランド認知とはブランドが顧客にどの程度知られているか、他のブランドとどの程度区別されているかをあらわす言葉です。
単にブランドの名前や商品名・サービス名を知っているというだけでなく、そのブランドが提供する商品やサービスがどのようなものかを正しく認識できているか、さらに消費者自身に関わりがあると認識されているかどうか、というポイントが重要となります。
例えばとある洋菓子店について、店名を知っているというだけではなく、「◯◯という看板メニューがある」「季節ごとに限定商品が売られている」「今度の誕生日に買ってみたい」など、詳細な情報や自身との関わりについて消費者が思い浮かべられている状態が、ブランドが認知されている状態といえます。
昨今の消費者は、購入する際に商品・サービスを慎重に調べ上げ、他の人のレビューや評価を参考にするため、ブランドの信頼性は非常に重要です。ブランド認知はブランドの信頼性の基礎になり、ブランドが有名になればなるほどブランドの信頼性が上がります。
また、ブランド認知度が高いと顧客の行動や商品・サービスが特定のブランドに関連付けられます。例えば、絆創膏のことを「バンドエイド」、情報を検索することを「ググる」と表現するなど、行動や製品が特定のブランド名に書き換えられるとマーケティング活動につながります。そのため、消費者のニーズが発生したときにひとつのブランド名だけを思い浮かべてもらえるようになることがブランド認知において理想的です。
知覚品質とはあるブランドの持つ品質イメージです。ただし、企業側が事実だと設定している品質ではなく、消費者がイメージしているブランドへの品質のことを指します。
この品質には性能だけでなく、信頼性やサービス、ブランドへの漠然としたイメージも含みます。例えば、メルセデス・ベンツは高級車であるため、多くの消費者は「高品質な車」という知覚品質を持っていますが、メルセデス・ベンツに対する具体的な品質についてはメルセデス・ベンツのオーナーでもない限り、答えられないでしょう。このように、具体的な品質については答えられなくても品質が高いイメージを持っている場合は、高い知覚品質を持っていると評価できます。
経営学者のR・バゼルらの研究によると、知覚品質で下位20%帯の事業では17%のROI(投資利益率)しかないのに対して、知覚品質の上位20%帯の事業ではほぼ2倍の34%のROIが得られているとされています。つまり、ブランドの知覚品質が高いほど収益率が上がるのです。
知覚品質を向上させる方法はいくつかありますが、ここでは5つ紹介します。
ハウスメーカーの耐震実験の映像や有名なサイクロン掃除機会社のTVCMは、競合他社との比較で高品質を実証しています。この他にも、食器洗い洗剤を販売する企業では、芸能人を家庭に派遣し洗剤の高品質さを実証するTVCMを放映して品質を伝えています。
例えば、ケチャップを宣伝するときに「水っぽさ」よりも「濃厚さ」を打ち出した方が、消費者は栄養価が高そうで美味しそうに感じるため、ブランドの知覚品質は高くなります。また、ビールのCMでは水しぶきのカットが入りますが、消費者に鮮度が高いと認識させるように感覚に訴えているのです。
希少性が高く、手に入りづらいものという認識は、ブランドの知覚品質向上につながります。
海外の宝石店や高級ファッションブランドは生産工場や研究所を「メゾン」と呼称し、優れたデザイナーや職人がひとりずつ労力をかけて、製作しているようなブランドイメージを構築しています。結果として、希少性が高いという認識を作りだし、ブランドの知覚品質向上に成功しています。
消費者はブランドの伝統が長ければ長いほど、高品質であるイメージを抱きます。長い時代を生き残ったブランドであれば、品質が高いであろうという連想を生むからです。
歴史の長いブランドは「古臭い」イメージを持たれがちですが、伝統があり、長く顧客に愛されたというイメージを打ち出すことで、ブランドの知覚品質が向上します。
住宅展示場で窓ガラスフィルターを紹介する際に、あるハウスメーカーでは「FBIでも使われています」と説明しています。また、断熱材を販売している企業は、「南極基地で使用されている断熱材と同じ素材を使用しています」という説明しています。
企業は専門用語や専門的な数値を用いてアピールしがちですが、消費者は専門家ではないため専門用語や数値の比較をよく理解できず、品質をイメージしにくいです。一方、わかりやすいシチュエーションや用語で用途の事例を示すことで品質をイメージしやすく、知覚品質の向上に役立ちます。
ブランドロイヤリティとは消費者のブランドへの「愛着の度合い」です。デビッド・A・アーカーは、ブランドロイヤリティはブランド・エクイティの要素の中でも特別なものと位置付けていまず。
顧客は新規顧客と既存顧客に分けられますが、既存顧客のブランドロイヤリティが低いと、既存顧客は競合ブランドへ流出してしまう高いリスクを抱えた状態になります。しかし、ブランドロイヤリティが向上すれば事業収益も向上します。
フレッド・ライクヘルドの研究によると、ブランドロイヤリティが5%向上した場合、企業の利益率が25〜95%向上するとされています。また、2%のブランドロイヤリティ向上が10%のコスト削減につながり、ブランドロイヤリティの高いブランドに顧客は最大25%の価格プレミアムを支払うという研究結果もあります。
ここではブランドロイヤリティ向上の手法を5つ紹介します。
スターバックスの店員はフレンドリーで知られており、気軽に声をかけてもらえて、「常連」と認められているような接客をされると消費者のエクスペリエンスの質が高まります。このように、顧客とブランドとの距離が近い感覚が強くなると、ブランドロイヤリティの向上につながります。
人間は商品やサービスを使用すればするほど「慣れ」が生じ、他のブランドへの切り替えが起きにくくなります。結果としてブランドのリピート利用がされやすい状態となるのです。企業から能動的に色々な用途を提案したり、丁寧に使用方法を教えたりすることで、リピート使用がされやすくなり、ブランドロイヤリティは向上します。
ブランドのファンが集うコミュニティを形成すると、コミュニティに参加した顧客同士の同属意識が芽生えます。ファン同士のコミュニケーションが活発化するとブランドの歴史や背景、使い方などの情報共有が行われ、ブランドロイヤリティが向上します。
顧客のブランドロイヤリティが高くなると、顧客は伝道師としてブランドに興味を持っていない人々に対してブランドの良さを広めてくれるので、効率的なマーケティングが実現できるのです。
人間は単純に接触頻度が高いだけで、モノやサービスを好きになりやすい特徴があります。雑誌や新聞などでの連載という手法は続編に対する興味を引き出すことを通して既存顧客との接触頻度を保持し、ブランドロイヤリティの向上を促しています。
また、パンメーカーが何十年にもわたってお皿をプレゼントするキャンペーンを打ち出しているのは、コレクション意欲を沸き立たせて接触頻度を向上させて、ブランドロイヤリティの向上と維持を意図した事例です。
Amazonは検索をすることで探している商品を瞬時に探してくれます。さらに、他に興味がありそうな商品をサジェストしたり、日時指定や即日配達オプションが選べたりと、利便性が高いサービスです。
商品やサービスは機能や品質面に目が行きがちですが、利便性の高さはブランドロイヤリティの高さにつながります。
ブランド連想とは、消費者がブランドについて理解し、思い浮かべる一連の連想のことを指します。そして、ブランド・エクイティの高いブランドは、ブランドを想像したときに何かを連想させることが多いです。
ブランド連想はブランドに対する思い入れや指名買いに結びつくだけでなく、個性的な強いブランド連想を構築することで、競合ブランドとの差別化を図るうえでの重要な基礎になります。
その他ブランド資産とは、ブランド以外の知的所有権のある特許、商標などの無形資産や取引先や協力会社との強い関係性などを指します。これらの要素もブランド・エクイティを形成するうえでは重要な要素となり、ときには競合ブランドに対して優位性を得ることができます。
ブランド・エクイティを測るには大きく分けて3つの方法があります。
M&Aなどで発生する企業ののれん=超過収益力を使って算出する方法があります。
現状の価値に対して大きく評価がついている場合、それはブランド・エクイティがもたらしているものである可能性があります。そうした超過収益力に対してどのくらいがブランド・エクイティによるものなのかを考えて算出します。
顧客ロイヤリティを測定する用途にも使用される「NPS」を用いた測定方法です。
アンケートを行って、自社ブランドや自社の商品を他の人にどの程度薦めたいか10段階で回答してもらい、9か10を付けた「推奨者」の割合から0~6を付けた「批判者」の割合を引いたスコアがNPSです。NPSはブランドの価値の測定が容易で、多くの導入実績があり、NPSが高いブランドほど販売数の成長率が高いというデータもあります。
ブランドリプレイス費用とは、そのブランドが認知されていない商圏外でそのサービスを展開した場合、現状と同様のブランド・エクイティを構築するために必要な費用のことです。
ブランドリプレイス費用は「アイデンティティ確立のための費用」と「認知獲得の費用」「顧客維持にかかる費用」の3つに分類可能です。
アイデンティティ確立にかかる費用はWebサイトの構築費用やロゴ制作費用、キャッチコピーの宣伝費用などが該当します。認知獲得の費用とはTVCMや雑誌、Web広告費用などが該当し、顧客維持にかかる費用にはCRMツールにかかる費用やリードナーチャリングにかかる費用などが当てはまります。
確固たるブランド・エクイティの創出に必要なことは、自社のブランドに何が足りないのか把握することです。
ブランド・エクイティを構成している消費者の認知、イメージ、評価などの要素別の測定、ブランド名を売買した際の価格等の対外的な価値の測定を通じて、詳細に分析しましょう。
この記事では、ブランド・エクイティの意味と高めるメリット、構成する要素、測定方法、ブランド確立に必要なことを説明してきました。ブランド・エクイティは企業と顧客をつなぐ、希少性の高い資産です。ブランド・エクイティを高めて競合ブランドと差をつけて、確固たるブランド・エクイティを創出しましょう。
Repro株式会社が制作した独自の市場調査資料、ホワイトペーパー、お役立ち資料です。
ほかでは知ることのできない貴重な情報が掲載されているので、ぜひダウンロードしてご覧ください。