2023.04.17
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自社のコンテンツを“安定的かつスピーディーにユーザーへ届ける”ことは、Webサイトを運営するうえで大きな課題であり、達成したい目標のひとつでしょう。そのための有効な手段として期待されるのがCDNです。この記事では、CDNの仕組みについて図解を基に解説するとともに、CDN導入によって得られるサイト運営上のメリットや期待されるWebマーケティング上の成果について、独自の調査結果を踏まえて紹介します。
CDNとは「Content Delivery Network(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)」の略で、世界中に配置したキャッシュサーバーを活用し、Web上のコンテンツを安定的かつスピーディにユーザーへ届けるための仕組みです。
インターネットを介したショッピングや動画視聴などの需要が拡大する昨今。サイト運営者側ではサーバー負荷の増大といった問題や、より安定的で円滑なコンテンツ提供の在り方について課題を抱えるケースは少なくありません。
こうした課題解決の一手として期待されるのがCDNです。Akamai Technologiesの「コンテンツ・デリバリー・ソリューション(CDN)」やAmazon Web Service(AWS)の「Amazon CloudFront」、Cloudflareの「Cloudflare CDN」、Fastlyの「Fastly CDN」などの代表的なCDNサービスを見聞きしたことがある人もいらっしゃるでしょう。
では、このCDNとはどういう仕組みのものなのか見ていきましょう。以下では図解を基に、CDNを利用していない場合と利用した場合におけるコンテンツ提供の流れの違いについて簡略化して整理します。
CDNを利用していない通常のコンテンツ提供の流れをイメージ化したものが下のイラストです。
この場合、ユーザーが何らかのコンテンツを閲覧しようと特定のWebサイトにアクセスする際、そのリクエストはサイト運営者が管理しているサーバー(オリジンサーバー)で一元的に処理され、各ユーザーに対してリクエストに応じたコンテンツが配信されます。
この流れそのものに大きな問題はありませんが、例えば一時的に膨大なアクセスが集まってしまったり、サーバーに大容量のコンテンツを大量に保管していたりすると、オリジンサーバーに多大な負荷がかかってしまうことも。その結果、安定したコンテンツ提供に支障をきたす恐れがあります。
また、ユーザーとオリジンサーバーの地理的・ネットワーク的な距離が離れていると、その分、コンテンツを届けるまで、つまりユーザーの端末に所定のページなどが表示されるまでにかかる時間は長くなりやすく、表示遅延につながることも懸念されます。
一方、CDNを利用した場合のコンテンツ提供の流れをイメージ化したものが下のイラストです。
CDNを利用した場合、ユーザーが特定のサイトにアクセスしようとした際、そのリクエストはサイト運営者のオリジンサーバーで処理されるのではなく、世界中の複数地点に分散配置されたオリジンサーバーの内容・コンテンツを複製・保持したキャッシュサーバーで処理されます。ユーザーからのアクセスがオリジンサーバーに一極集中することはないため、サーバーおよびそのネットワークへの負荷が軽減され、よりスムーズなコンテンツ提供の実現が期待できるのです。
また、ユーザーのアクセスを処理するキャッシュサーバーは、地理的・ネットワーク的に各ユーザーにもっとも近いものが応答する仕組みになっています。そのため、よりスピーディーにコンテンツを届けることも可能になるというわけです。
CDNの仕組みについて理解が深まったところで、CDN導入によって得られるWebサイト運営上のメリットについて、改めて整理しましょう。
前述の通りCDNを利用すると、ユーザーからのアクセスを分散処理することができるため、サイト運営者のオリジンサーバーやそれにつながるネットワークへの負荷軽減が期待できます。
また、CDNの導入・運用コストはサーバーの増強や移行に比べて低く済む場合が多く、導入にかかる手間も比較的少なく済む傾向があります。費用や手間を含めたトータルコストの低減が期待できるという点もメリットのひとつです。
CDNを導入することで、ユーザーに対してよりスムーズかつスピーディーなコンテンツ提供が可能になることが期待できます。
つまり、表示遅延(レイテンシー)の改善、サイトスピードの向上が期待でき、より良いユーザー体験の創出やユーザー離脱率の改善につなげられる場合があるというのも大きなメリットです。
CDNの導入によってセキュリティリスクの低減が期待できる場合もあります。分散型サービス妨害(DDoS攻撃)といったサイバー攻撃への備えとしての有用性がその一例です。
DDoS攻撃とは複数の端末を不正操作し、特定のサイトやサーバーに対して過剰なアクセスや大量のデータを送り付けることでサイトへのアクセスを阻害したり、サーバーをダウンさせたりするというもの。複数のキャッシュサーバーでアクセスを分散処理する仕組みであるCDNでは、たとえDDoS攻撃の対象となったとしても、サイト運営者のサーバーへの直接的な影響を低減・回避する効果が期待できます。
このように様々な利点が挙げられるCDNですが、導入にあたって注意すべきこともあります。以下で主なものを見てみましょう。
前述した通りCDNでは、Webサイト運営者のオリジンサーバーの内容を複数のキャッシュサーバーが複製・保持しています。そのためオリジンサーバーの内容を更新した際、その更新内容がキャッシュサーバーに反映されるまでに時間がかかる場合があります。更新反映までにタイムラグが生じ得るという点には注意が必要でしょう。
CDNを導入する際は、キャッシュサーバーにどういった内容やコンテンツを複製・保持させておくかを設定することが可能です。しかし、この設定を誤ってしまうと、場合によっては特定のユーザーに紐づいたコンテンツを他のユーザーに配信してしまうキャッシュ事故につながる恐れがあります。個人情報や重要事項を含むコンテンツはキャッシュ対象から除外するなどの細心の注意を払って設定・運用することが重要です。
CDNの導入によってサーバー負荷が軽減できれば、サーバーダウンといった重大な障害リスクは低減・回避できる場合が多いものです。しかし、CDNそのものに由来する障害、つまりCDNサービスやサービス事業者側のトラブルによって、何らかの障害に見舞われてしまうリスクはゼロではないという点は注意しておきたいところです。
ここまで見てきたようにCDNは、「安定的かつスムーズ、スピーディーなWebサービスやコンテンツ提供体制の確立に効果的な手段のひとつ」だといえるでしょう。
これはサイト運営上のメリットとしてはもちろん、Webマーケティングの観点からも重要です。なぜなら、安定性は事業継続とサービスグロースに欠かせないものであるほか、スムーズさやスピーディさはユーザー体験の向上、ひいてはWebサイトのCVR改善に直結し得る要素だからです。
Webページの表示速度とCVRの関係は密接なものとされており、Webマーケティングを推し進めるうえで押さえておきたいポイントです。
一例ですが、Akamai Technologiesが公表している「2017年春 オンラインリテールの現状-パフォーマンス」における「ページ速度低下がコンバージョン率に与える影響(デバイスタイプ別)」では、ページの表示速度が100ミリ秒(0.1秒)低下するとモバイルの場合で約7%、1秒低下するとモバイルおよびデスクトップで20%以上、2秒の速度低下ではデスクトップの場合で4割近くもCVRが低下するとの調査結果もあるのです。
■ページ速度低下がコンバージョン率に与える影響(デバイスタイプ別)
※「2017年春 オンラインリテールの現状-パフォーマンス」のデータを参考にRepro Journalにて作成
Webサイト・ページの表示速度(サイトスピード)改善に取り組むべき理由を、Reproが実施した独自の最新調査の結果を踏まえて詳しく解説しています。
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では最後に、サイト運営者はどの程度CDNの導入に取り組んでいるのか、そして、実際のWebマーケティング上の成果はどうなのかについて、Repro株式会社が実施した独自調査「Webサイトの表示速度改善についての実態調査2023」の内容を紹介します。
下のグラフは、同調査における「Webサイトの表示速度改善に対する取り組み状況」に関する設問への回答を集計したもの。表示速度改善に取り組んだことがあるサイト運営者は全体の50.1%(「過去に取り組んだことがある」「現在、取り組んでいる」との回答の合算)と過半におよんでいることが分かります。そして、このうち35.5%が具体的な施策としてCDNの導入と回答しています。
■Webサイトの表示速度改善に対する取り組み状況
※出典:「Webサイトの表示速度改善についての実態調査 2023」(Repro株式会社)
一方、マーケティング上の成果はどうでしょう。下の表はCDNの導入をはじめとしたサイトの表示速度改善施策が「表示速度そのもの」「CVRの改善」「SEO対策」「Webサイト経由の売上向上」「リピート率の改善」「PVの改善」の6つのKPIに対して、どの程度成果があったかとの設問に対する回答を集計したものです。
■表示速度改善施策の総合的な成果
※出典:「Webサイトの表示速度改善についての実態調査 2023」(Repro株式会社)
「期待を上回る成果が出ている」「期待と同程度の成果が出ている」とする回答の合算で見ると、CDNの導入は67.8%という結果になっています。なお、「サイトのSPA(シングルページアプリケーション)化」や「WebP・AVIF等の次世代画像フォーマットへの対応」は実に8割前後が期待と同等かそれ以上の成果が出ていると回答している点は興味深いポイントです。
この調査ではCDNの導入は約3割のサイト運営者が取り組んでおり、サイトのKPI向上に一定の成果が期待できるということがうかがえる結果となっています。CDNの導入を検討する際の参考にしてみてください。
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