モバイルに対応していることに優位性はもはやないと言ってもいいでしょう。もはやモバイル対応はマーケティングにおいて必須条件です。2014年以降、企業のモバイル広告費は50%増加しています。
しかし、マーケティング担当者はモバイルのキャンペーンを強化しても、多くの場合デスクトップのコンバージョン率が2.8%なのに対し、モバイルでのコンバージョン率が0.8%に止まっているという事実に困惑しています。人々が1日にスクリーンを見ているうち、59%はモバイルであるにも関わらず、実際にモバイル上で買い物をする割合は僅か15%です。
一方、デスクトップを利用している人は41%ですが、その85%が買い物をしています。モバイルでのコンバージョン率の低迷にも関わらず、広告費は増加しているのです。しかしその原因はモバイルではなく、マーケティング担当者のモバイルキャンペーンやプロダクトの成功の定義の仕方にあります。
マーケティング担当者の多くは、モバイル上での売上数を、デスクトップ上での売上と比較しようとしています。しかし、これは消費者がモバイルを実際にどう使っているかを考慮しているとはいえません。
モバイルで誤解を招きやすい指標
モバイルはデスクトップと同様、現在のセールスファネルにおいて不可欠ですが、スマートフォンを使うのは、ファネルの初期段階です。彼らは商品情報をリサーチし、価格を比較検討しているのであって買い物をするわけではありません。消費者の行動心理を理解していないマーケティング担当者は、しばしば間違った指標で消費者のモバイルでの行動パターンを見て、キャンペーンを測定してしまうのです。
1.コンバージョン数
キャンペーン測定には、コンバージョンが最も重要な指標であるという一部のマーケティング担当者の主張が存在します。しかし、コンバージョンはセールスファネルの一つです。
消費者の81%は購入前にオンラインで商品をリサーチすることが分かっています。この過程を経ることで10人の消費者のうち8人が最終的にコンバージョンするため、必要不可欠なステップといえるでしょう。ここで使用するデバイスはモバイルが最適です。
また、調査によりスマートフォンを利用する消費者の90%以上が小売店での買い物中、スマートフォンを使っていることが分かっています。使用目的は、54%が価格比較、48%が商品情報リサーチ、42%は購入者のレビューを読むでした。消費者は、デスクトップや実店舗ほどの収益ボリュームでコンバージョンしていない一方で、多くの時間をモバイルに費やし、結果的にコンバージョンに繋がるアクティビティをしています。
最近の78%が検索後24時間以内にその商品を購入しているということが分かりました。
2.カート放棄
モバイルキャンペーンを測定するために、マーケティング担当者が見るカート放棄の数は、モバイルでコンバージョン率を見てたときと同様の罠に陥ります。すべてのオンラインプラットフォーム上のカートの68%は放棄され、97%もの途方もない量のモバイルカートが、デジタル情報の深い底に失われています。
読者の皆さんの中から、モバイルキャンペーンが、消費者にカート放棄させる原因になっているのですか?という質問が来るかもしれませんが、そういうことでは決してありません。カート放棄は、消費者のスマートフォンの使い方を反映しているだけです。移動中の買い物客がモバイルカートにアイテムを追加する際、彼女はその興味を持った商品をブックマークするでしょう。カート放棄する買い物客の3/4は、再度そのサイトや店舗に商品購入の際、戻ってくるつもりでいると言っています。このようにしてモバイルは多くの場合、購買促進に成功しているのです。
3.セッションの長さ
マーケティング担当者は、しばしばモバイルセッション時間をコンバージョンの可能性と捉えてしまいがちです。調査で最短のセッション時間が意味していたのは、消費者はその商品をあらかじめ購入するつもりでいたということです。YouTubeの平均的なモバイルセッション時間は40分で、ショッピングアプリはわずか68.71秒です。それは店舗の営業時間や位置情報を検索するためのブラウザでのセッション時間に準じます。
-トータルの平均セッション時間はちょうど74.01秒です。これもまた、消費者が購入の意思決定を行う上で、モバイルを実際にどう使っているかで説明ができます。モバイルは、店舗の位置情報や、商品の価格比較といったその場の検索ツールとして使われます。消費者がモバイルデバイスで時間をかけて商品リサーチするという行為は、すぐに価格チェックを済ませる行為よりもコンバージョンしにくいので、セッションの長さという指標はマーケティング担当者に信じられないほどの誤解を招くのです。
モバイルでウォッチすべき指標
モバイルは根本的なカスタマージャーニーを変えてしまうので、従来のマーケティングを覆します。以下の指標は、消費者がモバイルを実際にどう使っているかを考慮しているので、マーケティング担当者がモバイルキャンペーンを見る上で、ウォッチすべき指標です。
1.直帰率
直帰率は、依然として、モバイルとデスクトップの両方のプラットフォームで有効な指標です。しかしながら、デスクトップでのユーザー体験は過去10年間改良され続けているので、デスクトップでの直帰率の高さはセールスファネルにおいて中断すべきタイミングであると示唆しているのかもしれません。
モバイルでの直帰率は大抵、デスクトップのそれよりも高いです。その理由は、ユーザーエクスペリエンスの多くが依然と最適化されておらず、直接的な直帰につながっている傾向にあるからです。平均的に、モバイルでの直帰率はデスクトップと比べて10?20%ほど高いです。
この指標はマーケティング担当者にとってな宝の山かもしれません。80-90%近くの直帰率はユーザー体験の課題を物語っています。その課題はもしかするとブラウザとの相性の問題かサイトのデザインが優れておらず、ユーザーを遠ざけているのかもしれません。直帰率が20%を下回っている場合、分析ツールを導入する意味はありません。複製コードや質の低いイベントをトラッキングして、直帰率が高くなるのは仕方がないので、分析する必要はないです。
2.日別アクティブユーザー(DAU)と月間アクティブユーザー(MAU)
モバイルアプリケーションで、DAUとMAUは、モバイルでの成功を測定する最良の方法です。モバイルアプリケーションにおいてこの指標は日別、月間でどれだけのユーザーがアプリを開いているかを示します。Quettraが見つけたのは、DAUの77%は、インストールから3日以内に離脱しているということです。ここで意味しているのは、モバイルではユーザーを留めておける時間が少ないということです。
この場合、マーケティング担当者は即座にユーザーに価値を提供しなくてはなりません。ビジネスアプリは、リテンション率が非常に低いことで有名ですが、DAUのベンチマークを超えている場合、そのマーケティング担当者はモバイルキャンペーンを揺るぎないものにしていると、自らを褒め称えていいでしょう。
モバイルでDAUの低いプロダクト、とりわけインストール初期の数日以内に10人のユーザーのうち9人以上がいなくなるプロダクトの場合、そのブランドのモバイル戦略に根本的な問題があります。この場合、ユーザーエクスペリエンスを再考する必要があるか、あるいはアプリ自体がユーザーの求める価値を提供できていないことになります。
3.プッシュ通知の開封率
強力なモバイルマーケティングキャンペーンは、消費者にスマートフォンでの購入を促すためにプッシュ通知を活用しています。Thanx社 のマーケティングチームで最近分かったのは、そのプッシュ通知の開封率が47%~80%にわたっていること、そして一番良いパフォーマンスには共通する特性があるということです。調査から分かった最も効果的なプッシュ通知は以下の通りです。
- リワード通知「おめでとうございます。今日お買い物をすれば $5のキャッシュバックがあります。」
- ロイヤルカスタマーへの通知 「いつもご利用いただいているあなたにはこっそりと次回販売の案内をさせていただきます。」
- 位置情報に基づく通知 「今ダウンタウンにいらっしゃるのですね。私たちのお店に立ち寄っていただければ割引きサービスがご利用になれます。」
プッシュ通知はモバイルキャンペーンを反映するものなので、モバイルキャンペーンの成功を見る上で、非常に効果的な指標です。マーケティング担当者のモバイル戦略が、他社との差別化という観点で顧客をターゲティングできていないのであれば、消費者が近所で買い物をする場合、あるいは大きな買い物をした後という場合も考えられますが、自ずとプッシュ通知の開封率は平均を下回ります。
モバイルはトリッキーな媒体です。マーケティング担当者が10年かけてデジタルキャンペーンを測った数値はモバイル戦略の成功に対する見方を歪め得るし、最悪の場合にはそれに費やした時間が無駄になります。だからデータを見ることを忘れてはいけないのです。しかし、もっと重要なのは、あなたのモバイルキャンペーンの裏側にある適切なデータを見ることです。それが何かを見つけることができれば、きっとあなたは驚くことになるでしょう。
この記事は、 Fourth Sourceの “ Why Conversions Shouldn’t Define Your Mobile Strategy” をサイト元の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on Fourth Source in English under the permission from the author.