2020.02.10
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近年、カスタマーサクセスという言葉を耳にすることが増えてきました。市場が成熟した現代において、カスタマーサクセスは重要な概念です。しかし、日本に取り入れられたのはほんの数年前ですが、急速に市民権を得ています。この記事では、カスタマーサクセスが注目されるようになった背景や、カスタマーサクセスの目的など、知っておくべきポイントを中心に説明していきます。
カスタマーサクセス(Customer Success)は、日本語へ直訳すると「顧客の成功」という意味になります。LTV(顧客生涯価値)の最大化を目的とし、顧客にサービスを使い続けたいと感じてもらうために行う取り組み全体のことを指します。
アメリカでは2000年代初めから導入されはじめた概念ですが、日本で一般的に広く認識されるようになったのは2018年頃です。
カスタマーサクセスが広まった理由として、サブスクリプション方式のコンテンツが増えたことが挙げられます。サブスクリプション方式のサービスは今まで一般的であった買い切り方式とは違い、使い続けてもらうことが重要です。そこで、顧客がサービスを使うことによって「成功」を体験し、「使い続けたい」と思ってもらうために、カスタマーサクセスが重視されるようになったのです。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは言葉の雰囲気は似ていますが、実際はまったく違うものです。
カスタマーサポートとは、何らかのトラブルによって問題が生じた顧客からの問い合わせを受けて、その問題の解決を目指してサポートを行うものです。顧客から問い合わせを受けた後に、どれだけ素早く、そして正確に解決へと導けるかが求められます。その迅速さや丁寧さ、正確さによって顧客の満足度の向上も期待できるでしょう。このように、カスタマーサポートは短期的なスパンで行う受動的なサービスです。
対して、カスタマーサクセスは中長期のスパンで企業側から能動的にフォローし続けるものです。顧客が感じそうな問題点や要望などの課題を先回りして把握し、顧客が「成功」をするための支援を行って顧客の満足度の向上を目指します。
近年、カスタマーサクセスの考え方が重視されているのは、ビジネスの環境や役割の変化が大きいためだとされています。詳しく見ていきましょう。
近年、市場のグローバル化が急速に進み、人件費や完成度の違いはありますが、世界中どこでも同じような製品を手に入れることが可能になりました。そのため例えば、あるSaaS企業が自社製品に新機能を搭載開発したとしても、発売して数カ月もすれば同業他社に研究され、同じような機能を搭載した商品が発表されるといったことも多々あります。そういった意味で、製品だけでは優位性がなかなか維持できないことが多くなっています。
そこで、製品だけで勝負をするのではなく、製品を買った後のメンテナンスなど、アフターサービスという付加価値を付けていくことで差別化を図る必要性が高まりました。
これまでは購入を決断してもらうための営業が重要視されていましたが、現在は購入後に顧客が得る「体験」が重要視されるようになっています。購入後も満足度の高い体験が提供できれば、今後も使い続けたい感じてもらえる可能性が高まります。購入してもらうことがゴールだった今までとは変わり、購入してもらうことはスタートとなったのです。
サブスクリプションとは、予約購読、年間購読といった意味を持つ言葉です。料金を支払うことにより、一定の期間特定のサービスを受ける保証をもらう形式のことをいいますが、最近では定額制のサービスをサブスクリプションと呼ぶ例も多くあります。例えば、毎日、家に配達される新聞の定期購読もサブスクリプションの一種です。
このように古くからサブスクリプション方式のサービスはありましたが、近年ではインターネット上での音楽配信や動画配信、さらにランチや車の利用など、サブスクリプション方式のサービスが急激に増えています。このような市場の変化に伴い、自分の好きなタイミングで、期間を自由に決めてサービスに対して課金をするという考え方が当たり前となりました。
サブスクリプションは契約が長期化すればするほど利益が大きくなるため、サービスを提供する側は継続して使ってもらうため、より一層の特徴を持たせた差別化が急務となりました。
近年、TwitterやInstagramなどのSNS、食べログや価格.comなどの口コミサイトが普及した影響で、商品やサービスに対する顧客からの評判がネットワークを通じて簡単に広まるようになりました。
商品やサービスなどを新たに利用・購入したいと思ったときに、とりあえずインターネットで検索をして、目に入った評判を確認してから利用や購入を判断する人が増えています。もしも調べたときに悪い評判が目立つ場合、購買行動を躊躇してしまう可能性があるため、評価される側としては常に良い評判が得られるよう、注意する必要が出てきています。
シェアリングエコノミーとは、個人の所有するスキルや乗り物、住居、家具、洋服などの活用可能な資産を、インターネットを介して個人間で貸し借りをする、もしくはその仲介をするサービスを指します。欲しいものを購入するのではなく、必要な時に借りたり、他人と共有したりすることで成り立つ新しい経済の形です。自動車を個人や会社で共有するカーシェアリングや、家を共同で使うシェアハウスなどもそのひとつです。
シェアリングエコノミーの代表例としては民泊のマッチングサービスAirbnb(エアビーアンドビー)や、個人の車に相乗りできるようにするマッチングサービスUber(ウーバー)などがあります。
こういったシェアリングサービスでは、提供者と利用者双方にサービスに対して信頼してもらい、安心して利用できる環境を整えることが重要となります。この信頼性向上のために必要となるのが、カスタマーサクセスの考え方です。
カスタマーサクセスの目的は、前述の通りLTV(Life Time Value)を最大化することです。
LTVとは、日本語に直訳すると「顧客生涯価値」といわれます。これは、顧客と取引をしている間(顧客ライフサイクル)にどのぐらいの利益が出たのかを算出したもので、1回の取引だけでなくそれ以降のすべての取引で得られる利益も含めた指標です。LTVの計算式は、以下の通りです。
LTV=平均顧客単価×購買頻度×継続期間
LTVを最大化させるためには、平均顧客単価を上げる、購買頻度を上げる、継続期間を延ばす、の3つの要素について考えていく必要があります。それぞれについて、カスタマーサクセスと絡めながら解説していきましょう。
平均顧客単価を上げるには、アップセルやクロスセルの獲得を行うことが有効です。
アップセルは顧客に対してより高額な上位モデルに乗り換えてもらう手法、クロスセルは顧客に別の商品もしくはサービスをセットで購入してもらう手法です。
アップセル、クロスセルともに、新規顧客を獲得するより売り上げを向上させやすいといわれていますが、これらがうまくいくのは提案者に対して顧客の信頼が厚い場合のみです。顧客の信頼とは、顧客が提案者に対して価値を感じているとも言い換えられます。
そのため、現在利用している商品やサービスで顧客を十分に満足させること、すなわちカスタマーサクセスを推し進めることが、アップセル・クロスセルの成功可能性を高めるのです。
購買頻度を上げるには、顧客が製品を買った後にアフターフォローを適度に行っていくことが重要です。
顧客への情報発信を適度に増やすことで、顧客からの信頼が上がります。適切なタイミングで使っている製品の補充や買い替えなどの提案を行うことで、購買頻度を上げることにつながります。
サービスの継続期間を延ばすとは、すなわち解約率を減らすということです。利用している商品やサービスに不満が生まれると、すぐ同業他社の似たような商品やサービスに乗り換えられてしまいます。そういったことを防ぐため、カスタマーサクセスを導入し、顧客の活用状況を把握してさらなる活用をしてもらうために行動を起こす必要があります。
市場の飽和が進んでいる場合、新規顧客を獲得するには既存顧客を維持し続けるのに比べ、5倍のコストがかかるといわれています。解約率をできるだけ抑えるために、新たな顧客を獲得しつつ、すでに利用してくれている顧客に満足してもらい、顧客の定着を進めることが重要です。
カスタマーサクセスでは、企業は具体的に何をすべきなのでしょうか。重要なポイントをいくつかピックアップしてご紹介します。
オンボーディング(on-boarding)とは、船に乗っているという意味のOn-boardから派生した言葉です。元々は、船に新しく乗り込んできた乗組員に対して、必要なサポートを行って慣れてもらうプロセスのことをいいます。
サービスにおけるオンボーディングは、顧客がサービスを使いこなせるようになるまでの初期フェーズにおいて行う支援を指します。利用開始当初から、サービスが提供する価値を十分に届けられるかどうかは、その後のサービス継続を左右する重要なポイントです。
カスタマーサポートも、顧客満足度を高め、カスタマーサクセスを実現させるために重要な要素です。
顧客からの疑問やトラブル発生時に迅速な対応ができなければ、顧客満足度は下がってしまいます。カスタマーサポートを利用した際にその対応が悪ければ、サービスを継続しないという選択をする顧客も多くいます。カスタマーサポート体制をしっかりと整えておくことは、カスタマーサクセスの実現につながります。
ヘルスチェックとは、製品やサービスの利用状況やコミュニケーション頻度などから顧客の状況を把握し、利用状況が健康かどうか、もし不健康=解約のおそれがある場合は、状況に応じたサポートを行うものです。対象の製品やサービスにおいて、企業側の理想とする使われ方の定義を明確にし、その定義と顧客の現状を比較していくことが必要です。
カスタマーサクセス導入におけるポイントとして、顧客の情報を分析し、徹底的に知っていくことが挙げられます。
まずは、顧客にとっての「成功」とは何なのかを正確に知ることから始めましょう。そのうえで、顧客が商品やサービスをどのように使っているのかという詳細なデータを蓄積し、分析していくことで提供している商品やサービスを最適化していくことが重要です。顧客が何を求めているのかがわからないまま、顧客の欲しい機能とズレた機能を無理に使ってもらおうとしても、顧客が離れていくだけです。
また、サービスの利用に当たり、自分たちでは問題視していなかった要素が、実際は顧客にとって利便性を下げてしまっていたという場合もあります。そのため、多角的な視点からサービスについて見つめ、改善を図っていくことが重要となります。
そして、問題を把握したら、その問題を解決するためのアクションを実践していきましょう。問題の規模に応じて、まずは限られた顧客から優先的に対処を行い知見を貯めていくスモールスタートの形を取るのも有効です。
近年マーケティングにおいて注目されているカスタマーサクセスについて、その目的や重要視される理由、具体的な実践ポイントなどについてご紹介してきました。
SaaSやサブスクリプション型のサービスが広がる現代において、カスタマーサクセスは確実に取り組んでおくべきものです。この記事を参考にしてカスタマーサクセスの理解を深め、日々の業務に役立ててみてください。
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