2020.02.11
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昨今、インターネットやスマートフォンの普及により、オンライン上で商品やサービスの売買が行われることが一般的になっています。企業がEC事業に参入する際、EC化率と呼ばれる指標を用いて、どれだけ取引がオンライン化されているかを事前に分析することがあります。業界のEC化率を把握していることは、自社のEC事業が成功するかどうか予測することにもつながります。ここでは、EC化率とは何か、国内のEC市場の動向、EC化におけるポイントなどを解説していきます。
ECとは「Electric Commerce」の略語であり、日本語では電子商取引またはeコマースと呼ばれています。身近なものだと、Amazonや楽天市場、メルカリ、ヤフオク!などがあり、インターネット上で行われる取引全般のことを示しています。
EC化率は、すべての商取引の中で電子商取引が占める割合のことであり、どれだけ電子商取引が使われているかを表しています。
これからビジネスを起こす人や新規事業の担当者が、業界や商材のEC化率を念頭に置いてビジネスプランを立てることで、将来性や競合環境の概要を把握することができるのです。EC化率が高ければ、オンラインでの取引をメインに今後を考えることになります。
逆にEC化率が低ければ、他の会社のECへの参入が少ないため、チャンスと考えることもできます。しかし、業界によってはEC化の敷居が高いために参入が困難という背景から、EC化率が低いこともあるので注意が必要です。
では、経済産業省の調査結果をもとに、日本国内におけるBtoB、BtoC、CtoCの各取引におけるEC化率について詳しく見ていきましょう。
参照元: 経済産業省 電子商取引に関する市場調査
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002.html
BtoB取引の平成30年の国内市場規模は344.2兆円で、前年の318.2兆円から8.1%増えています。BtoBのEC化率は30.2%で、前年比で0.8ポイント増えています。
BtoCとはBusiness to Consumerの略で、企業対消費者での取引のことです。BtoCの平成30年の国内市場規模は18.0兆円で、前年の16.5兆円から8.96%増加。BtoCのEC化率は6.22%で、前年から比べて0.43ポイント増えています。さらに分野別に詳しく見ると、物販系分野が8.12%(前年度7.45%)、サービス系分野が11.59%(前年度11.3%)と、対前年伸び率が大きくなっていることがわかります。
CtoCはConsumer to Consumerの略で、消費者対消費者の取引のことです。メルカリなどのフリマアプリ、ヤフオクなどのオークションサイトが一般的になったことで急速に拡大しています。フリマアプリが初めて登場したのは2012年で、そこから数年で一般的となり巨大な市場が作られました。CtoCの中でもフリマアプリの平成30年市場規模は6,392億円で、前年の4,835億円から32.2%も増えています。
現在、日本ではAmazonや楽天市場など、インターネットで買い物をすることが一般的になりつつあるにも関わらず、BtoCのEC率化は6.22%と低い数値です。対して、中国のBtoCのEC化率は15%以上であり、これだけ見ても日本のEC化はかなり遅れているのがわかります。
中国のEC化が一気に進んだのは、インターネットの無線回線とスマートフォンの普及によるものが大きく、これからも世界的にネット環境の普及は進んでいくので、EC化は各国で急速に進んでいくでしょう。現にEC市場の活発な諸外国では、EC化率は2桁の成長を見せています。
しかし、日本のEC化率の成長率は9%程と遅れを見せており、これからも遅れていくのではないかといわれています。
日本のEC化が進まない要因のひとつは、日本の国民性や文化的な背景によるものでしょう。
令和元年10月の消費税増税をきっかけとしてキャッシュレス決済が多くなってきましたが、それまでは現金決済の習慣が根強く、オンラインでの買い物に抵抗感を持つ人も多いのが実情でした。
また、日本企業の経営陣はオンラインに対して消極的な考えの人が多く、保守的な一面も強いようです。さらに、日本にはWebマーケティングを専門とする人材が少なく、オンライン販売で売り上げを伸ばすことがなかなかできないという課題もあります。
ここからは業界別のEC化率についてさらに詳しく見ていきましょう。
ECと相性が良い業界もあれば、ECと相性が悪いものの、工夫を重ねて少しずつ伸ばしている業界もあります。ここでは、EC化が進んでいる業界を、EC化率の高い順に紹介していきます。
こちらも先ほどと同様の経済産業省の調査結果をもとにしています。
2018年の事務用品・文房具のEC市場規模は2,203億円、EC化率は40.79%。前年比の伸び率は7.57%となっています。
オンラインでの買い物では、実際に商品を手に取って確認することができないため、そのことに抵抗を感じる人が多くいます。しかしながら、ボールペンや消しゴムなどの文房具に対しては高品質のクオリティを求める人は少なく、最低限の機能があればいいという人が多いため、そこまで比較せずにオンラインで買い物するケースが多いようです。
また、単価が数百円〜1,000円ほどと安いことが多く、手に取って確認せずとも気軽に買える値段帯ということや、過去に1度使ったことがある商品をリピートして使う場合が多いことなどが、EC化率が伸びている要因のようです。
生活家電やAV機器、PC・周辺機器等のEC市場規模は1.5兆円、EC化率は30.18%です。前年比の伸び率は0.84%と低いですが、市場規模自体は大きくなっています。
この業界は事務用品・文房具とは違い価格が数万円することも多い、高額商品であることが多いです。
しかしながら、型番が同じであればどの店で買っても同じ商品が届きますし、大型家電などの場合は実店舗で買ったとしても配送をお願いする必要があり、オンラインで買った場合と工程がほとんど変わらないことも多いです。
さらに、ECサイトでは実店舗よりも人件費がかかりづらく、店舗運営費もかからないため、商品の値段が安くなることが多いうえ、価格.comなどのインターネット上で同じ型番の商品の価格比較をするサイトもあります。そのような特徴から、EC化が比較的進んでいる分野となっています。
一方、EC化率が高いことで、「ショールミング」と呼ばれる行動が増えていることも重要です。
ショールミングとは、消費者が店舗で商品を実際に見たうえで納得してもそのまま店舗で購入せず、価格の安いECサイトで購入する行動です。実店舗からは歓迎したくない行動ではありますが、これからの時代では当たり前に起こることとして、対応が迫られるでしょう。
デジタルコンテンツのEC市場規模は1.1兆円、EC化率は26.35%で、前年比の伸び率は7.55%となっています。
デジタルコンテンツには書籍・映像・音楽の3分野がありますが、それぞれ事情が異なっています。
書籍業界ではKindleや楽天Koboといった電子書籍のプラットフォームができ、近年は漫画特化のアプリも増えて利便性が向上しています。
書籍だと保管するのに場所を取り、持ち運ぶにも不便なため、スマートフォンやタブレットなどを使って本を読む人が増加していることも、EC化率が高まる要因です。
しかし、EC化率の増加によって町の本屋さんの存続が危ぶまれるなどの影響も及ぼしています。
映像業界では、サブスクリプション方式を利用した映画やドラマが見放題となるサービスが多く登場しています。サブスクリプションとは、ユーザーは一定期間の利用料を支払うことで、契約期間中はコンテンツを自由に利用できるというビジネスモデルです。
サブスクリプションの登場により、DVD購入やレンタルビデオ店でDVDを借りて見る機会は減っていき、これからさらにEC化が進む分野だと予測されています。
雑貨、家具、インテリアのEC市場規模は1.4兆円、EC化率は20.4%です。前年比の伸び率は9.32%となっています。
家具やインテリアは、基本的に1回買うとなかなか買い替えることはありません。そのため、実店舗で確認して買いたいというニーズが強いです。
しかし、企業努力によってEC化が進められている領域でもあります。
例えば、オンラインで買う際に生まれる不安を解消するために、細かい解説や拡大写真、過去に実際買ったユーザーの口コミなどの掲載や、目当ての空間に置いた場合のイメージをWebサイトで確認できるようにするなど、様々な工夫が施されています。
最近は模様替えのシミュレーションができるアプリなどもあり、さまざまな施策や技術を活用することで、今後もEC市場は活発化していくでしょう。
衣類、服飾雑貨のEC市場規模は1.6兆円、EC化率は11.54%で、前年比の伸び率は5.58%となっています。
アパレル業界は、もともと実際に試着し、サイズや着用感を確認したいというニーズが強いため、家具やインテリアと同じく実店舗で買いたい消費者が多いようです。そのため、他に比べてEC化の伸び率が高いというわけではありませんが、こちらもWebサイトのコンテンツやサービスの拡充によって少しずつ成長しています。
例えば、タグを切り取らない・指定期間内に手続きを行うなどの条件付きで、色やサイズの交換や商品自体の返品が可能になる、といったものです。返品の敷居を低くすることで、買う前に確認をしたい、思っていた商品と違ったらどうしよう、などの不安に応え、ECの利用を促しているのです。
また、一部の店舗では、オンラインで買ったものを実店舗で受け取ってそのまま試着し、もし返品したい場合は返品できる、といったサービスを展開している例もあります。これはオムニチャネルと呼ばれる形態で、オムニチャネルの代表的な例としてはセブンアンドアイホールディングスの「オムニ7」や三井ショッピングパークの「&mall」などが該当します。
EC化をする際、今まで培ってきた運用方法との違いが大きいために、ネットでの運用に向いていない、ECのシステムと自社内の既存システムとの連携が取れるかどうかが不安、サイトを作るためにかかる膨大なコストが足かせになる、などが課題となります。
また、EC化を進めた場合にどの程度の効果がもたらされるか予測が難しいことも、二の足を踏む原因になっています。
なんとかECサイトを開設できたとしても、そこからがスタートです。集客を行い、何度も訪問してもらい、購入に結びつける必要があります。これらの施策を実行していくには、Webマーケティングに関するノウハウを持ち、適切に運用していく必要があります。
このほかにも、社内のリソースやスキルの不足により具体化できないといった問題でEC化に踏み切れない企業も多くあるようです。
EC化を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。
まずは競合のECサイトを研究し、使いやすいサイトの導線を学ぶことが大事です。
複数のサイトで似た商品が置いてある場合、わざわざ買いにくい導線になっているサイトで買う人は少ないでしょう。そのため、顧客がサイト訪問時に使いやすい、馴染みある導線になるよう、他のECサイトを研究しておくことが重要です。
BtoBの場合、EC化して新規の顧客が獲得できた際には、関係を構築するために積極的にアプローチを継続することも大切です。BtoCの場合とは異なり、プライベートな買い物ではないため、顧客が求めている情報を提供し続けることで、継続的な取引につながりやすい傾向があります。
また、既存のアナログな手段で売買していた顧客をECに誘導して、使ってもらうことも重要です。EC化することは、顧客側としても電話・メールでのやり取りが減り、業務の効率化ができるといったメリットがあります。そのことを提示しつつ、使い方をサポートするなどしてECサイトに誘導していきましょう。
この記事ではEC化率とは何か、国内におけるEC市場の動向、EC化における課題や成功するためのポイントを解説してきました。
これからも全世界的にEC化はどんどん進んでいき、最終的にEC化率はどの国においてもある程度同じレベルになるといわれています。日本は諸外国に比べて現状でのEC化は遅れていますが、その分まだまだ開拓の余地があるともいえますので、今後のEC市場の発展に期待が寄せられます。
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