本記事は、2018年2月13日に開催した「Growth Hack Talks #9」での発表内容を元にしたイベントレポートです。
アプリ業界で今もっとも勢いのある市場の一つである漫画アプリ。コミック誌の発行部数が落ち込む中、デジタルコンテンツとしてのマンガは、スマートフォンで楽しめる手軽さもあいまって、年々売り上げを伸ばしています。
「LINEマンガ」のご担当者様に自社アプリのノウハウをお話していただきました。
登壇者紹介
LINE株式会社 平井漠(ひらい ばく)氏
マンガ事業部 LINEマンガ企画チーム マネージャー
自己紹介とサービスの紹介
はじめまして、LINE株式会社の平井です。マンガ事業部では企画から、エンジニアやデザイナーと一緒にサービスのローンチまでを担当しています。
『LINEマンガ』はLINEと連携したマンガサービスで、2013年4月から単行本の電子版を販売するアプリとしてスタートしました。
現在では電子書籍のストアサービスのほか、連載マンガを毎日読める「無料連載」やユーザーがコンテンツを投稿する「インディーズ」が楽しめ、LINEマンガ編集部によるオリジナルコンテンツの配信もしています。
DL数は国内で1,800万DL、売上は単月で10億円を超える規模になっています。特徴的なのは売り上げの95%以上を一般的なマンガジャンルが占めていることです。
マンガアプリを継続的に利用してもらうために一番重要なのは、気に入った作品に出会い手に取って読んでもらうこと。とはいえ、まずはサービスを使ってもらわないことには何も始まりません。
本日は、これまで『LINEマンガ』で取り組んできたことについて、3つの視点でお話しします。
サービス・機能からタッチポイントを創る
現在も継続中ですが、電子書籍の購入特典としてLINEスタンプが入手できるようになっています。これはLINEだからこそできる施策です。
販促目的も一部ありますが、電子書籍を購入したユーザーが友だちとのコミュニケーションでこのスタンプを使えば、自然とその友だちにコンテンツを知ってもらうことができます。
そうすることでコンテンツとのタッチポイントを広げていくことが本来の目的です。
このように、LINEを活用してより多くの人に作品を知ってもらう仕掛けを作っています。
2014年7月には「無料連載」をスタートしました。これは出版社との取り組みで、既存の作品を『LINEマンガ』の中で再連載し、無料で毎週1話ずつ読み進めていけるサービスです。
ただ単に1巻無料キャンペーンをばらして読ませているように見えますが、無料かつ短時間で作品を楽しめるので、多くのユーザーに受け入れられています。現在は、単月で数億話も読まれるほどのサービスに成長しました。
このサービスで最後まで作品を読ませるのではなく、途中まで読んだ後は単行本の購入へ誘導する流れを作っています。
実際に「LINEマンガで無料のマンガ作品を閲覧したユーザーがどんなアクションを起こしたか」をLINEで調査したところ、約40%のユーザーが「その作品の電子または紙(新品)の本を購入する」という結果がでました。
無料で読ませるだけではなく、購入までユーザーを動かしている実績が出ています。
失敗事例
これは失敗例ですが、「読んだ」機能の事例をお話ししましょう。2013年12月から2015年5月までに実装していた機能で、作品に設置されている「読んだ」ボタンを押すとLINE上の友だちに自分が読んだマンガを共有できるようにしていました。
先ほどお話したスタンプ同様、LINEの友だちとの繋がりを使ってタッチポイントを増やしていこうと考えていましたが、読んでいるマンガをまわりに知られたくないという人が多く、あまり積極的には使われませんでした。
ボタンを押すモチベーションを上げることができなかったのが失敗した要因だと考えています。チャンスがあれば、こういう新たな取り組みにもどんどん挑戦していきたいですね。
UIを性別に合わせて最適化する
『LINEマンガ』は、LINEで取得した推定情報をコンテンツ表示の最適化に利用しています。 この円グラフはLINEの推定情報をもとに少年・青年マンガと少女・女性マンガ、それぞれを購読した男女の割合を表したものです。
男性は少年・青年マンガを読む人が多く、少女・女性マンガを読む人は10%しかいません。しかし、女性は少年・青年マンガの割合が意外と多いことがわかりますよね。
掘り下げると女性読者が意外と多いと言っても、ヤンキーマンガや極道マンガといったジャンルは女性にあまり読まれていなかったりします。
『LINEマンガ』を含む電子書籍サービスでは、こうした男女別のカテゴリ分けは定番的なコンテンツの表示分けに使用されると思います。
男女の好みの違いは明確にでていますが、コンテンツによって男女の読者率の割合は大きく異なるので、実態に合わせた施策を考えた方が効果的だと言えるでしょう。
『LINEマンガ』では、連載マンガの曜日別の並び順を男性と女性で変えています。表示されるコンテンツは男女同じですが、女性に対して男性向けマンガであっても人気作品は上部に表示するなど、ユーザーの実態に合わせて並びを変えています。
LINEならではの取り組み
次はアプリ外でのタッチポイントの創り方についてお話しましょう。
2017年9月に「LINE」アプリ内でマンガが読める「LINE版LINEマンガ」というサービスを開始しました。このサービスは『LINEマンガ』のアプリをDLしなくても、コミュニケーションアプリ「LINE」で『LINEマンガ』が利用できます。開始当初は連載マンガのみでしたが、現在では無料の単行本も読めるようになりました。
この取り組みを始めた理由は、『LINEマンガ』をDLする前にコンテンツとのタッチポイントを作りたかったからです。アプリを継続的に利用してもらうことも大切ですが、その前に、まずはアプリをDLしてもらう必要がありますよね。
そもそも、アプリをDLしてもらうこと自体、ハードルが高い。 ユーザーが日常的に利用しているアプリは数個程度だという話もあります。「LINE」は国内ユーザーの約84%が毎日使っているサービスなので、すでにユーザーの可処分時間をかなり持っている。
こうしたいくつかの事実を考慮して、LINE内でコンテンツのタッチポイントを作ることは非常に意味のある取り組みだと考えました。 この狙い通り、多くのユーザーに使ってもらえていますので、今後はよりLINEと連携した取り組みを行なっていきたいと思っています。
まとめ
マンガアプリにおいて大切なことは、アプリ内だとユーザーに合わせた機能やサービスの最適化、アプリ外だとどのように集客するかに注力することではないでしょうか。
『LINEマンガ』では、LINEの強みを活かした取り組みを今後も積極的に推進していきたいと考えています。例えばですが、LINEの推定情報を利用し、ユーザーの実態に合わせてセグメント別にマンガをレコメンドしたり、LINEと連携させて、LINE上で『LINEマンガ』の訴求も強化していきたいですね。
ユーザーが本当に求めている情報をプッシュすることで、これまで以上にコンテンツとのタッチポイントを創出し、ユーザー自身すら気がついていなかった潜在ニーズを掘り起こして、世の中にWOWを与えるようなサービスを作っていきたいと考えています。