2021.01.27

モバイルアプリは今や私たちの生活、ITビジネスの分野において中心的な存在となりました。今やWhatsAppやInstagram、Snapchatの時価総額はものすごい額になっています。しかし、モバイルがいつでもどこでも使われるようになったのにもかかわらず、 モバイルアプリで価値を生み出すことについてまだきちんと理解されていないようです 。
大きく分けると、市場には2種類のアプリがあります。
取引型のアプリにおいて、コンバージョン率や購入数といった重要指標は広く確立されており、Webサイト上で取引するEコマースと同じロジックに従えばいいのでよく理解されているでしょう。一方プロダクト型のアプリにおいては、アプリの成長を測るための 指標や手法は多種多様です(例:インストール数、ユーザーベース、バイラリティ定着率、継続率など)。
そこで本記事ではプロダクト型のアプリに絞り、TADという指標をご紹介したいと思います。TADとは真に重要な問題である、長期に渡ってユーザーと継続的な関係性を築くこと にアプリ事業者が専念できるようにしてくれる統合的な指標です。
TADとはユーザーあたりの合計アクティブ日数(Total Active Days per User 以下TAD)です。
これは単純にユーザーがアプリをインストールして離脱するまでにアプリ内で何日間アクティブだったのかを示します。これを男女関係に当てはめて考えて見ると、初めて会ったとき(インストール)から別れるまで(離脱)にユーザーとアプリの関係がどれだけ強く、長いものだったのかを示してくれるということです。
さらに細かくすると、1ユーザーあたりの合計アクティブ時間数(TAM)(TAM = TAD*Active Minutes per Day)はユーザーの利用習熟度を考慮しているので、より強力な指標となるでしょう。ただ、60%のアプリは一度開かれたらもう二度と開かれることはないので、ユーザーの利用習熟度を上げることよりもまずはユーザーをアクティブにすることから始めてください。
a) プロダクトの質をダイレクトに示すから
自分が使いたい虚栄指標を使っても構いませんが、それはユーザーがあなたのアプリを頻繁に使っているような、つまり市場にプロダクトがフィットしている場合のみです。
b) マネタイズや収益の可能性にダイレクトに反映するから
あなたが広告でマネタイズしていようと、アプリ内課金(IAP)でマネタイズしていようと、ユーザーがアクティブにあなたのアプリを使っていなければ意味がありません。
c) 企業価値にダイレクトに反映するから
実際の収益なしにWhatsAppやSnapchatが何十億という価値がつけられているとは誤解しないでください。彼らは1ユーザーあたりの合計アクティブ日数(TAD)が何百日にもなっている、世界でトップ10のアプリの一つです。
TADが素晴らしいのは、1日目、7日目、30日目の継続率がわかりさえすれば簡単に算出することができるという点です。(ここでいう継続率はその日の継続率を見るというやり方で定義します。例:7日目の継続率 = インストール後7日目のアクティブなユーザー数 / 7日前のインストール数)ユーザーあたりの合計アクティブ日数(TAD)を算出するには、シンプルにX日目のすべての継続率を足せばいいのです。
簡単な例:あるアプリの0日目の継続率は100%です。(インストールされた日は全員アプリを使ったとしましょう)、そして1日目の継続率は50%、2日目の継続率は25%、その後みんな離脱してしまいました。(3日目には継続率が0%になってしまったとしましょう)
TAD = 1 + 0.5 + 0.25 = 1.75 day
仮に何十億もの価値があるソーシャルネットワーク(Instagramのような)、イケてるゲーム(Words with Friendsのような)、そして普通のアプリを例にとって見てみましょう。
以下の図は、上の継続率を用いて標準的な継続率のグラフを作った時に、0日目から30日目の継続率がどのように見えるのかを表したものです。
最初の30日間の継続率を表したチャート
何十億の価値があるソーシャルネットワークアプリはアクティブ日数が多く、離脱も少ないことを示していますが、他との違いは歴然です。
上のチャートを720日目まで伸ばしてみると、ユーザーとの長期継続的な関係がとても重要であることがすぐに見て取れると思います。
最初の720日間の継続率を表したチャート
普通のアプリとカジュアルゲームアプリはインストール後30日間に比べてTADの数値を大きく上げることができなかったのに対し、何十億も価値があるソーシャルネットワークの方はユーザーとの長期継続的なリレーションシップのおかげでTADが10倍にまで増加しました。2年以上経った後もロイヤルユーザーがアクティブであるということがわかります。それはカジュアルゲームや普通のアプリではとっくの昔に「死んでしまった」ものです。
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TAD vs MAU(月間アクティブユーザー数): MAUには2つの欠陥があります。まず、特定の一ヶ月におけるアクティブなユーザー数を示すものであり(対して、TADはインストールしてから離脱までを包括しています)、従って、その特定の一ヶ月にマーケティングにたくさんお金を費やせば簡単に数を上げることができてしまうのです。
もう一つのほうが問題なのですが、MAUは少なくとも月に一度はアプリを使っているユーザー数を示しているということです。月に一度の利用頻度では十分ではないのです。月に一度の利用ではマネタイズすることができませんし、バイラルさせることもできません。
TAD vs DAU(デイリーアクティブユーザー数):DAUはMAUの「月に一度では少ない」という問題はありませんが、ある一時点 vs ライフタイムという問題は残っています。また同じことの繰り返しになりますが、マーケティングを頑張ればDAUの数値を一時的に上げることはできるでしょう。しかしそれが、アプリが本当に素晴らしいユーザー体験をもたらしているのと同義なのかは分かりません。
TAD vs 継続率: 継続率は根本的には見るべき指標なのですが、厄介なのはその詳細がどうなっているかです。累積継続率(例:ある特定の日以降のアクティブユーザー数)はアプリの利用習熟度について何も教えてはくれませんし、プッシュ通知やキャンペーンなどで簡単に増加させることができます。しかし、インストール後X日目の継続率はアプリを分析するのに非常にいい方法です。なぜなら、1日目、3日目、7日目、30日目、90日目の継続率を同時によくするのは非常に難しいからです。そこでTADの出番です。
プロダクト型アプリのマネタイズには主に2通りのやり方があります:
a) 広告
例:10 (TAD) * 2 (1日あたりのセッション数) * 2 (広告インプレッション数/ セッション数) * 5$ (eCPM /1000)=0.20$ 広告収益/ ユーザー(1ユーザーあたり0.20ドルの広告収益になるということ)
私の考えでは、急激な増加の「てこ」となりえる(つまりコアとなる指標)のはTADだけだと思っています。これはなぜかというと、以下の3つには必然的に数に制限がかかるからです。1日あたりのセッション数(誰が1日に20回以上も同じアプリを使うでしょう?)、広告数/セッション数(スパマーになる前までです)、eCPM(広告主はインプレッションのために無限に投資はしません)。あなたのアプリにユーザーを何日、何週間、何年とアクティブにさせることだけが、唯一必然的な制限が生まれないものなのです。
b) アプリ内課金(IAP)
例:10 (TAD) * 1% (課金しているデイリーアクティブユーザーの割合) * 5$( 平均購入額)= 0,50 $ (1ユーザーあたりのアプリ内課金の収益)
もう一度いいますが、アクティブユーザーだけがアプリ内課金をすることができるので、TADはマネタイズの最適化において重要な指標なのです。
上の例では、TADが10あるアプリは0.70$のRPI(インストールあたりの収益)を得ていましたが、モバイルマーケティングにおけるCPIs(インストールあたりのコスト)は1~3ドルに上昇しています。よって、収益をあげながらユーザーベースを構築するというのは非常に難しくなっているのです。
TADが116あるような大成功しているソーシャルアプリなら、ユーザーあたり8.12$のRPI(インストールあたりの収益)を稼ぐことができ、同時にさらなる成長と新規ユーザーごとに5$以上の収益を得ることができます。(およそ1~3$のCPI)
この記事は、Medium上の記事”How to measure the success of your app“ を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on Medium in English under the permission from the author.
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