人々はソーシャルログインをただログインを簡単にしてくれる方法と捉えています。その通りなのですが、少し単純に捉えすぎです。最高の企業と長く使われ続けているプロダクトはソーシャルログインをログイン時だけでなく、カスタマージャーニーの全ステップにおいて最大限活用しています。これは見落とされている事実です。
彼らはよりパーソナルな初回体験を作り出すためにユーザーから情報を引き出し、ユーザーをアプリに呼び戻す通知を作り出すためにソーシャル上のデータを引き出しています。本記事ではソーシャルログインを使ってコンバージョンレートの改善、ユーザーの活性化、 再エンゲージメントとユーザーを定着させる3つの方法をお教えします。
ソーシャルログインによって、ファネルは改善し、ユーザーが課金をするようになり、チャーンレートを下げてくれます。そしてそれは何より長期的で持続可能なグロースの基盤を作るのです。
サインアップのコンバージョンレートを20%上昇
ソーシャルログインによって簡単に新しいプロダクトにサインアップできます。メールアドレスやパスワードなどいくつもフォーム入力欄を埋めなければならないものより、1クリックでサインアップできるもののほうが摩擦を軽減することができます。
ソーシャルログインによってコンバージョンレートが上昇するのは驚くに値しません。しかし、コンバージョンレートがどれくらい改善するかは大きく変わってきます。さらに、こうしたコンバージョンレートの改善データの多くはソーシャルログインを提供している会社、つまり明らかに発表することにメリットがある人たちが公表しているものです。しかしながら、コンバージョンレートはだいたいの場合改善され、かなり改善しているケースもあります。
MailChimpも1ヶ月に及ぶ実験を行ったのちにソーシャルログインを利用し始め、ランディングページからログインページへのコンバージョンが3.4%上昇しました。MailChimpはついにブランドとデザインの原則を破ることに決めたのです。MailChimpには毎週何百万ものビジターが来ていることを考えると、少ない労力で3.4%改善し、相当多くのユーザーを捉えました。
ポイント
ほんの少しの手間はかかりますが、ソーシャルログインの導入で手っ取り早くサインアップのコンバージョンレートを高め、潜在ユーザー層を広げることができます。
Auth0のようなサービスプロバイダとして心がけていることは、ユーザーが手間をかけずに色々なソーシャルログインの選択肢を選べるということです。ソーシャルログインの導入に別のAPIを覚える必要はなく、スイッチひとつでできます。
ソーシャルログインを最大限活用するためにログイン画面をカスタマイズしましょう。 もしかしたらソーシャルログインだけでもいいかもしれません。コンバージョンレートを最適化するために異なるボタン配置のA/Bテストを行いましょう。
初回利用時の体験をパーソナライズすることでユーザーをアクティベートする
アクティブ率を改善して見込みユーザーを課金ユーザーに変えるために有効な方法が初回起動時のフローのパーソナライズです。しかし何の情報もない人に対してはどうやって初回起動時のフローをパーソナライズするのでしょう?彼らは登録したばかりでまだ製品を全く使っていません。答えはFacebook、あるいはGoogle、Twitter、GitHub、LinkedInにあります。我々がよく使うSNSを用いることで、アプリ事業者は初回体験をパーソナライズするための情報を得ることができるのです。
Facebookのソーシャルログインで引き出せるユーザー属性のリストを載せておきます。
- 基本情報
- 出身
- 自己紹介
- メールアドレス
- 居住地
- 誕生日
- webサイト情報
- 学歴
- 職歴
- 友人リスト
- 友人の「いいね」
- ユーザーの「いいね」
- などなど...
初回起動時のフローをパーソナライズするために、これら全ての情報を使うことができます。例えば、InstagramにFacebookでログインするとパーソナライズされた初回起動時のユーザー体験が始まり、Instagramを他に使っている友人を表示します。
これはユーザーにAHA!体験の瞬間を素早くもたらします。精度の低いレコメンドから手動でフォロワーのリストを作るのではなく、InstagramはソーシャルログインによってFacebookのGraph APIからユーザーがフォローしたい人(友人)の情報を引き出しているのです。ユーザーは自分と関係のあるパーソナルなフィードを作ることができ、Instagramを価値をすぐに感じられる仕組みになっています。Instagramはホーム画面でソーシャルログインを強調しています。Facebookでログインするボタンが上にあり目立っている一方で、メールでのログインボタンは下にありプレーンテキストで置かれています。
ポイント
初回起動時のフローを共通のままにし、ユーザーの違いを無視して全員に同じ体験をさせてはいけません。初回起動時のフローをパーソナライズするためにできることは全て取り組みましょう。
多くのアプリにとって、ユーザーにソーシャルログインを勧めることはユーザーのネットワークから情報を引き出すことは意味するからです。
Appcuesはパーソナライズした初回起動時のフローを簡単に作ることができるサービスです。初回起動時のフローをパーソナライズする簡単な方法として、{aboutMe}, {website}, {educationHistory}のようなシンプルなユーザープロパティを使ってソーシャルメディアから引き出した情報を初回起動のメッセージに含めることから始めてみましょう。
より上級テクニックとしては、ソーシャルログインの情報からペルソナを抽出するというものがあります。例えば、FacebookかLinkedin経由でユーザーの職歴を引き出したとします。そうすると、その見込みユーザーを4つのグループ、言い換えると4つのペルソナに分類できます。エンジニア、マーケター、プロダクトマネージャー、デザイナーです。そしてユーザーのあてはまるペルソナに合わせて異なる初回起動時のフローを表示します。
プッシュとEメールによる通知でエンゲージメントを3倍にする
モバイル分析ツールのLocalyticsによると、プッシュ通知を許可しているユーザーは許可していないユーザーと比べ3倍のエンゲージメントがあるそうです。モバイルのプッシュ通知とEメールは強力なエンゲージメントと再エンゲージメントを促すツールだからです。ユーザーに起こったことを知らせてくれるプッシュ通知はお馴染みです。
例えば、あなたのFacebookの投稿にいいねかコメントがあったときやTwitterでメンションされたとき、Instagramで写真にいいねを押された時などです。これらの通知の問題点は、ユーザーのアクションに対しての通知はユーザー自身がアクティブでなければ起こらないということです。
FacebookのプロダクトマネージャーだったMeenal Balarは、「高いエンゲージメントを誇るユーザーに通知を送ってもそれほど大きな改善にはつながらないことが分かりました。いずれにせよ毎日サイトにくるのですから」と答えています。
通知は非アクティブなユーザーに対してより大きなインパクトを与えるのです。例えばFoursquareはユーザーがアプリをアクティブに使っていなくてもユーザーに関係する内容のEメールを送っています。メールにはユーザーの友人がどこに行っているかや何が好きかが書いてあります。
これはユーザーがあなたのアプリのなかで友人を作り、関係性を築く強い動機になります。アプリ内でのつながりを活用することでユーザーは効果的な通知を受け取ります。なぜ効果的になるかというと、ユーザーと関係があって興味を持っていることだとわかっているからです。このループを作り出すことで、通知でユーザーを再びアクティブにしアプリに戻ってきてもらうことができます。
あなたのアプリのソーシャルグラフを形成する元となる基盤がソーシャルログインによって提供されるのです。さきほど例に挙げたInstagramのように、サインアップした際にあなたが苦労して構築したFacebookやTwitterのソーシャルグラフとつなげることができます。さらに、自分のソーシャル上のつながりをアプリに加えるので、すでに他でつながっているユーザーにお知らせしてあなたのアプリでもつながるようにお願いすることができます。
上記のスクリーンショットはこのユーザーのソーシャルグラフがInstagram内でいっそう大きくなり、自分と関係するプッシュ通知がくる基盤になることを示しています。これによってユーザーがアプリに再訪してくれる可能性が高まり、ユーザーの友人がこのアプリに感じている価値をユーザーに示すことができるのです。最終的に目指すところは「スマイルグラフ」です。つまり最初はリテンションの呼びかけにすぎませんが、時間をかけてユーザーを復活させ、再びアクティブユーザーにするようなソーシャルグラフです。そうするとリテンションレートのカーブは再び上向き、グロースもうまくいきます。
まとめ
ソーシャルログインはアプリとユーザーの結びつきを強め、リテンションを向上させる通知を出す基盤を提供します。ソーシャルログインから得た情報は初回起動時だけではなく顧客ライフサイクルの全てで利用できることを忘れないでください。
Customer.ioのJanet Choiによると、「フレーミング効果」と呼ばれる人間の脳の神経のメカニズムがあるため 友人がやっていることに関しての通知はもっとも強力になるのだそうです。
我々人間は勝ちと負けを同じように処理しません。得ることよりも失うことを恐れるのです。その結果FOMO、つまり取り残されることへの恐れと言われる現象が感情のトリガーになります。ソーシャルアプリにおいては、FOMOはユーザーを再度エンゲージメントさせる強力な動機付けになります。
Customer.ioはアプリのアクションに基づいてユーザーライフサイクルに合った内容のメールを簡単に送ることができるSaaS製品です。友人がアプリ内でしたアクションを指定し、アクション実行で自動送信されるメールを設定できます。例えば、ソーシャルロケーションを利用したチェックインアプリのSwarmでは、このアプローチをそのまま実行しています。約2ヶ月ごとに「あなたが見逃している友人のチェックイン」というタイトルのメールを送っています。メールには何人の友人がチェックインし、そのうちいくつのチェックインがFOMO(("FOMO":ツイッターやフェイスブックなどを常にチェックしていないと不安な事・ソーシャルメディア依存症。))を満たすことにつながったか書いてあります。
一緒にやると尚良し
ソーシャル上や仕事のつながりは趣味と仕事の両方において我々の活動の大部分を形成しているので、ソーシャルログインはとても役立ちます。そもそも、我々は一人で楽しんだり仕事をすることはめったにありません。社会や仕事の文脈においてそれらを行います。
ソーシャルログイン経由で繋がればそれらの文脈をアプリに持ち込むことができるので、よりすばやくアプリに慣れることができ、アプリ内のユーザー体験をより豊かにすることができます。最新の人気のコンシューマー向けアプリでもB2Bの法人向けアプリでも、ソーシャルログインの導入はもっとも簡単にできることのひとつであり、ユーザーライフサイクルのあらゆる側面で継続率を上げ、グロースを促進してくれます。
この記事は、Auth0社のブログ記事”How to Use Social Login to Drive Your App’s Growth”を、同サイトの了解を得て日本語に翻訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on Auth0 in English under the permission from buzinga.