BCGマトリックスとは? デジタルマーケティングにおける戦略、活用法

Repro Journal編集部
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2020.06.05
BCGマトリックスとは? デジタルマーケティングにおける戦略、活用法

目次

本記事は、BCGマトリックス(成長率・市場占有率マトリックス)を使って、製品 (アプリ) 自体を見直す方法を、具体例を挙げながらご紹介します。

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BCGマトリックスとは?

BCGマトリックスとは、「The Boston Consulting Group」が発案したフレームワークで、企業の長期的な戦略を計画する際に広く使われています。これをもとに、製品を見直し、グロースのチャンスを見極めることで製品の撤退や開発をすすめることができるのです。BCGマトリックスは成長率・市場占有率マトリックスとも呼ばれます。

BCGマトリックスは、市場成長率および市場占有率(シェア)の分析に基づく4つの象限に分けられます。

BCG

  1. 負け犬 : 市場成長率、市場シェアがともに低い製品。
  2. 問題児 : 市場成長率が高く、市場シェアが低い製品。
  3. 花形 : 市場成長率、市場シェアともに高い製品。
  4. 金のなる木 : 市場成長率が低く、市場シェアが高い製品。

BCGマトリックスの活用法とは?

BCGマトリックスは製品のポートフォリオを表すためのものだと考えられているため、通常は複数の製品を持つ大企業に適しています。ただ、中小企業のマーケターの場合も、同様にポートフォリオを作成することで、製品の見込み顧客を獲得したり、セールス促進を図ることができます。

次に、それぞれの象限ごとに行うべき戦略をご紹介します。

・負け犬 : 市場成長率、市場シェアがともに低い製品

一般的なマーティングにおいて、企業のリソースの損失につながる「負け犬」に分けられた製品については、ポートフォリオから除外させることを勧めます。

しかし、ほとんどコストをかけずに継続的な収益を上げる製品 (=金のなる木) になる可能性もあるため、その後の可能性を十分に考慮してから除外するかどうか決定するようにしましょう。

例えば自動車業界では、特定の自動車の製造が終了しても、スペアパーツのニーズは継続します。スウェーデンの自動車メーカー「SAAB」も、新車の販売取引および製造を中止してからは、部品販売へとビジネスを移行しました。

・問題児 : 市場成長率が高く、市場シェアが低い製品

「問題児」とは将来的に「花形」と「負け犬」のどちらにもなり得る製品のことです。これらの製品を「花形」へと成長させるためには、多額の投資が必要となります。

例えば、ゲーム制作会社の「Rovio」は、大ヒットしたゲームアプリ『Angry Birds』をリリースする以前にも数多くのアプリを開発していましたが、いずれもヒットには至りませんでした。

ヒット商品を生み出す前に、何百というゲームアプリを製作している企業はいくつもあります。将来的な「花形」となる商品を見出すのは簡単ではなく、結果として資金が無駄になってしまう可能性もあります。

・花形 : 市場成長率、市場シェアともに高い製品

市場を牽引する製品になる可能性が大きいですが、そのためには継続的な投資が必要となります。他の製品カテゴリと比較して、ROIは高くなります。

・金のなる木 : 市場成長率が低く、市場シェアが高い製品

「いかに木を腐らせずに、できる限りのお金を実らせるか」にかかっています。ここに分類されている製品の多くは、安定したシェアの高さを保っています。

おむつの『パンパース』や、脱臭剤『Lynx』など、さまざまな商品を製造する「P&G」はよく、「金のなる木の会社(Cash cow company)」と呼ばれてきました。

BCGマトリックスは、細かな分析にはあまり適していないため、あくまで製品の概要を掴むものとして活用しましょう。また、市場が小さい場合、BCGマトリックスにおける「関連する市場」軸は市場全体ではなく、競合他社に基づいて策定されます。

デジタルマーケティング戦略におけるBCGマトリックスの活用法

BCGマトリックスは、サービスよりも製品の分析を目的として考案されたものではありますが、サービスにおいても活用することができます。特に、新製品の開発を始める前に、その製品の規模を計測するために活用するのに適しています。

イギリスの小売業者である「Marks&Spencer」を例に見てみましょう。同社は幅広い製品を扱っており、ラインナップも豊富であるため、BCGマトリックスのすべての要素に製品を分類することができます。

・負け犬

例:「Autographシリーズ」

市場成長率、市場シェアともに低いものに当たるのが、Autographシリーズ (メンズ、レディース衣料品の高級ライン) です。これは負け犬のカテゴリに分類されているものの、商品の単価が高いため、1回の販売における利益を多く得ることができます。

・問題児

例:「食品」

現在、「Mark&Spencer」はイギリス国内に自社の食品を取り扱うスーパーマーケット「M&S Simply Food」を400店舗以上展開しています。これはイギリス国内での主要なスーパーマーケットには含まれませんが、市場成長率は高く、市場シェアは低くなります。

・花形

例:「ランジェリー」

まだランジェリーを販売する企業がそれほど多くなかった時代、「Mark&Spencer」は女性に人気のランジェリーブランドとして知られていました。数多くの企業がランジェリーの販売を展開している現在も、「Mark&Spencer」のランジェリーはイギリスのマーケットを牽引する存在として、高い成長率と市場シェアを誇っています。

・金のなる木

例:「Classicシリーズ」

市場成長率が低く、高い市場シェアを誇る「Mark&Spencer」のClassicシリーズ(上質な普段着のライン)には、現在も根強い支持者がいます。

BCGマトリックスは製品の分析だけでなく、それ以外にもさまざまな活用方法があります。

例えば、ブランドがあらゆるマーケットチャネルへの投資を評価するために、BCGマトリックスを活用するという方法もあります。この場合、検証の対象となるのは製品ではなくチャネルになりますが、4つの象限は変わりません。つまり、「金のなる木」にはできる限りの投資をして収益を上げ、「負け犬」には投資せず、「花形」に投資をしましょう。そして「問題児」においては、「花形」になる可能性を確認するための実験的な投資を行う必要があります。
他にも、デジタルマーケティング戦略開発をサポートするためにマトリックスを統計的に使用する方法として、「スマートインサイツ(Smart Insights)も挙げられます:

・コンテンツ・マーケティング・マトリックス - 競合他社との比較に基づき、コンテンツ資産のポートフォリオを検討するために使用するもの。

・コンテンツ・オプティマイゼーション・マトリックス - リードおよびセールスを生み出すウェブページの価値を評価するもの。

・コンテンツ・ディストリビューション・マトリックス - 異なるチャネルを使用し、ウェブサイトのトラフィックを構築するオプションを確認するもの。上のチャートに近いです。

BCG

最後に

BCGマトリックスは大企業における製品の分類を想定して単純化されたものであるため、相対的市場シェアが小さいために定量化できない中小企業の製品を分類するのは難しい場合があります。また、このモデルは、マーケティングの予算が多ければ多いほど、市場シェアが高まるという前提に基づいています。BCGマトリックスを正しく理解した上で活用して、製品をグロースさせましょう。

この記事は、Smart Insights社のブログ"How to use the BCG Matrix model "を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on Smart Insights in English under the permission from the author.

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