Engagemateのマーケターインタビュー企画。
大規模なキャッシュバックキャペーンを契機に、昨年から盛り上がりを見せるスマホ決済サービス市場。
大手企業が続々参入するなか、2018年4月から通信大手のNTTドコモも、QR・バーコード決済サービス「d払い」をスタートしました。
d払いの強みは、dポイントとの連携にあります。dポイントユーザーは現在約7,000万人、2018年の利用総額は1600億ポイントも。
既に多くのユーザーを抱え込んでいるdポイントをフックに順調に成長し、2019年5月時点でd払いアプリは500万DLを突破。2019年度中に1,000万DLを目標に掲げています。
一方で利用箇所の拡大も急ピッチで進めています。2019年4月時点でd払い/dポイント/電子マネーiDを利用できる箇所は100万箇所で、2021年度末までに200万箇所まで拡大する見通しです。
2019年9月に予定される機能アップデートでは、チャージや個人間送金が可能になるほか、d払いアプリ内に加盟店のサービスを提供できる「ミニアプリ」が秋以降で順次実装されるようです。
着実にユーザーや加盟店を獲得しながら、利便性を高める機能を続々リリースするドコモ。d払いサービスをグロースさせるために重視している指標はどこにあるのか、ユーザー、加盟店に対してどのようなメリットを提供していくのか、同社のプラットフォームビジネス推進部でペイメントビジネス担当課長を務める高須 真氏に聞いてみました。
オンラインだけでなく、実店舗でのアプローチを徹底
――d払いの最重要KPIはどこに設定されているのでしょうか。
高須氏(以下、高須) 今は「取扱高」ですね。d払い上でどれだけの金額が動いたのかを重視しています。将来的には、先日発表したミニアプリへの送客数も重要な指標に入ってくるでしょう。
――ユーザー、加盟店にとっての、d払い利用のメリットはなんでしょうか。
高須 やはりdポイントに尽きますね。dポイントをご利用いただいているユーザーにとっては、ポイントで決済できる先が増えた、店舗にとってはdポイントをフックに集客できるというメリットがあります。
――約1年間で500万DLを達成できた要因はどこにあると考えられていますか。
高須 オンライン、オフライン双方から、ドコモユーザーへの訴求を徹底したところでしょうか。まず、ドコモが持つプラットフォーム全体でd払いの紹介を行いました。
加えて、ドコモショップに来店されるお客様全員にご案内しています。新規契約や機種変更でご来店いただいた方にアプローチすると、多くの方に申し込みいただけています。
ドコモショップではスマートフォン教室をやっているので、そちらでもご案内するようにしています。
――TVCMなどのマス広告も大々的にやられていますよね。マス広告はどのような位置づけなのでしょうか。
高須 d払いに対して良い印象を残すことを最大の目的としています。基本的に、マス広告は好感度を上げてロイヤリティを高めていくための手段として位置づけています。
クラウドペイ参画やミニアプリ提供により、加盟店側のメリットを拡充
――加盟店開拓において注力しているのは?
高須 今はコンビニやドラッグストアがメインで、6月からデジタルガレージが提供開始し、d払いも参画しているマルチ決済サービス「クラウドペイ」では、個人商店もターゲットにしています。
個人商店に対しては、入金タイミングを月2回に設定し、キャッシュフロー面で問題が発生しにくいようにしています。
クラウドペイは、d払いのほかにも国内サービスならLINE Payやメルペイ、海外サービスならAlipay、WeChat Payなど、様々なQRコード決済サービスの店内での掲示QRコードを一本化するサービスですよね。そうなると、ドコモ以外の決済手段を使われる場合もあると思います。
もちろんそうなのですが、ユーザー、加盟店双方のメリットを追求した結果、クラウドペイに参画して利用先を拡大するべきだと結論づけました。
――日本だとまだそれほど普及していないミニアプリにいち早く取り組んだのはどのような意図からでしょうか。
高須 加盟店様のお話を聞いていると、やはり自社アプリに対する課題がよくあがってくるんです。アプリの運営リソースや利用者拡大のためのプロモーションなどにリソースを割ける企業はそれほど多くありません。
そのような課題を解決するため、d払い上で集客から決済まで完結できるようミニアプリ機能の実装を決めました。
ユーザー、加盟店、ドコモすべてがメリットを享受できる、健全なビジネスに育てたい
――他モバイル決済サービスに比べると、手数料を高く設定されていますよね。取扱高の伸びを妨げることにはならないのでしょうか。
高須 もちろん取扱高を追ってはいるんですが、前提として「健全なビジネスとして成長させていきたい」と考えています。
最初だけ手数料を低めに設定して、ある程度ユーザーが増えた段階で手数料を引き上げる戦略もありますが、当社としてはあまり取りたくない方針です。キャンペーンでやみくもに新規ユーザーを増やすのではなく、d払いの利用価値を理解いただける加盟店様を着実に増やしていきたいなと。
ユーザー、加盟店、当社とすべてのステークホルダーにメリットがある状態を目指さないと、サスティナビリティが失われてしまいますからね。
【執筆】水落 絵理香
【編集・撮影】Engagemate編集部
※本記事に掲載されている取材内容、プロフィール等の情報は、2019年6月21日時点のものです。
※本記事は2019年6月21日に公開されたGrowth Hack Journalの記事を転載したものです。