本記事は、2018年2月13日に開催した「Growth Hack Talks #9」での発表内容を元にしたイベントレポートです。アプリ業界で今もっとも勢いのある市場の一つである漫画アプリ。コミック誌の発行部数が落ち込む中、デジタルコンテンツとしてのマンガは、スマートフォンで楽しめる手軽さもあいまって、年々売り上げを伸ばしています。『マンガUP』『マンガPark』のご担当者様に自社アプリのノウハウをお話していただきました。
自己紹介と事業の紹介
弊社では現在2つのマンガアプリを手掛けています。1つは株式会社スクウェア・エニックスと共同事業で運営しているアプリ『マンガUP!』です。2017年1月のローンチから現在まででDL数は約280万。月20万DLというペースでユーザーが増えています。ユーザーには男性が約70%と女性より多く、10代20代の若年層が約80%占めております。
もう1つは株式会社白泉社と共同事業で運営している『マンガPark』。2017年8月にローンチしたこのアプリは、現在のDL数が約110万、こちらも『マンガUP!』と同じペースでユーザーを着実に増やしていますね。『マンガPark』は『マンガUP!』と男女比が反転しており、女性ユーザーが約70%を占めています。年齢層は10代20代が約80%いますのでほぼ同じ。白泉社は、男性向けだけでなく女性向けに数多くの雑誌や媒体を持っているため、女性ユーザーにもリーチできています。
アプリ成長の本質はKPI
弊社はこれまでにアプリを50本以上運営してきましたが、どのアプリに対してもしっかりとしたKPIの設計をしています。アプリのグロースの基本はMAUが増えること。もちろん、DAUが増えることも大事ですので、ユーザー数が日々、どれだけ増えているかもチェックしています。
設定したKPIの中でARPUも重視しています。アプリをDLしたユーザーにどれだけ課金してもらうか、広告を踏んでもらうかなど、1人当たりの収益を意識することはアプリを成長させるためにも重要なことだからです。
媒体やメディアからすると、アプリは着々とDAUが伸ばせることが魅力。そのため弊社ではDAUを伸ばすことに注力し、ユーザーが翌日以降どれだけ再訪されたかを『Repro』を利用しながら全て数字で追っています。オーガニックの流入も大事ですので、広告がなくても自然流入が多い媒体を作れるように意識しています。
次に、出版社と協力して実施した4つの成功事例を紹介しましょう。
新規獲得にYouTuberとコラボする
マンガアプリのバナーでよく見かけるのは、どこでも見かけるようなデザインやユーザーの目をひくエログロ系ではないでしょうか。 弊社では、他とは少し違った視点で10代20代を確保する出稿をしています。その1つとして、有名YouTuber事務所とのコラボ企画を実施しました。
YouTuberの広告って「この商品を買ってみた」系の企画が多かったりしますよね。マンガアプリの場合、「このマンガアプリは面白いよ」と単純にマンガを紹介するだけではユーザーには響きません。そこで3組のYouTuberに『マンガUP!』を宣伝してもらい、その宣伝動画を『マンガUP!』内で人気投票するという企画を実施。見事1位を獲得したYouTuberには、『マンガUP!』で配信している「地獄の教頭」という作品にも登場していただきました。
これは、出版社と共同でアプリを運営している弊社ならではの企画です。この企画のために、出版社側がマンガ家さんと調整したり、ストーリー構成を考えてくれたりしました。何百万もの視聴者を抱えるYouTuberとコラボしたこの企画はマンガとの連動性も良く、たくさんの人にウケました。
YouTuberの利用はお金がかかりますが、単なる宣伝だけで終わらせず彼らをしっかり活用することでユーザーの満足度向上にもつながります。
プッシュ通知で継続率を高める
弊社は『Repro』を使ってプッシュ通知を配信しています。プッシュ通知はユーザーにとって煩わしく思われるケースもありますが、アプリ側から唯一宣伝できる手段でもあるため積極的に活用すべきだと思っています。弊社では、プッシュ通知によって普段読まれない作品の読者数が前週対比で13倍に増えたケースもありました。使い方次第ではこのように大きな効果が得られるのです。
『Repro』ではABCDテストで同時に4つの効果検証ができるんです。弊社ではターゲティングするユーザー軸はぶらさずに、異なるクリエイティブ訴求を4つ配信してどのクリエイティブが一番効果的だったか、リテンションが高かったかなど検証しています。
また全配信やセグメント配信を使い分けて、1週間起動してないユーザーだけにプッシュ通知を送ったり、DLしてから3日間後のユーザーにだけおすすめ作品を送るなど、ちょっとした工夫でユーザーのリテンション率を上げることができます。
何よりも作品選定が重要
アプリの可処分時間を考える
1つ目はアプリの可処分時間を考えること。現在はマンガアプリを含め、多様なアプリがユーザーの時間を取り合っています。短いとたった5分でアプリを閉じられてしまう。最近はどのアプリでもそうした傾向が見られますので、いかに継続して読んでもらえるかが鍵になってきます。
また、ストーリー展開が早くて面白いという理由から、雑誌や単行本では受けなかったタイトルがアプリでは受けるというケースもあるため、起動時間や滞在時間を考えながら作品選定をすると良いでしょう。
いかに1話目を読んでもらうか
2つ目のポイントは、いかに1話目をユーザーに読んでもらうか。これはあくまでアプリ視点の考え方ですが、ユーザーは筋書き通りに1話目にたどり着く訳ではありません。バナーやキャッチのイラストを見て気になったり、文言に引かれたりして、大半が感覚的な流入をしています。
アプリストアのランキングを眺めながら、「このアプリいいかも」と思ってダウンロードするのと同じで、ユーザーが刹那的に行動を起こすことを想定し1話目の導き方を考えましょう。 この時、作品選定と1話への導き方の組み合わせて考えることが大切です。
オリジナルのサムネイルを作成する
他のアプリでは作品の表紙やキャラクターにフォーカスしたサムネイルを多く見かけますが、弊社では全作品においてオリジナルのサムネイルを作成しています。それぞれ作品のキーとなるイラストを出版社から頂き、コピーをつけて、1つのタイトルにつき何枚もサムネイルを作りながらどのサムネイルだと一番読者数が増えるかを試しています。
最も読者数が増えたのが、『マンガUP!』の「アラクニド」というタイトル。元々スクウェア・エニックス内でも人気がありましたが、『マンガUP!』内で配信した結果、「鋼の錬金術師」に次ぐほどの人気タイトルへと育ちました。これは作品選定とバナー作成の組み合わせが上手くいった事例の一つです。
下3つは青年マンガ誌「ヤングアニマル」のタイトルで、もともと男性人気が高い作品。それを『マンガPark』でも配信したところ、女性ユーザーからも多くの支持をいただくことができました。 男性作品であっても、作品選定や女性でも興味を持つようなバナーのキャッチーさがあれば、同じように支持されるのかもしれません。
オリジナル連載も既存のコンテンツと同じ熱量で取り組んでおり、『マンガUP!』『マンガPark』どちらにおいても読者の傾向を意識しながらオリジナルの本数を増やしています。
作品接触機会を工夫し、ユーザーに複数作品の読者になってもらう
作品との接触機会を増やすために工夫したのは、広告を利用して作った「チラ見せ」コーナーです。他のマンガアプリでも数コマ見せて作品への興味喚起を促す「チラ見せ」のコーナーがありますが、弊社は広告出稿をしてCPI効果の高かったバナーを直売しました。
このバナーをタップすると、作品の詳細ページではなく、1話目がそのまま読める設定になっています。この設定による広告の二次利用により読者数が増え、良い成功事例となりました。
4つ目の施策をまとめると、まずはバナーのクリエイティブを回すこと。そしてどのバナーに効果があったかを見て、そのバナーをアプリ内でも見せること。この施策でユーザーの離脱を防ぎリテンション率を向上させることができました。
※本記事は2018年2月13日時点の情報です。Repro株式会社または掲載企業の都合により、紹介されている機能やサービスの提供が終了している場合があります。あらかじめご了承ください。