モバイルアプリのパーソナライゼーション初心者ガイド Vol.2 - 応用と成功のヒント -

Repro Journal編集部
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2025.01.28
モバイルアプリのパーソナライゼーション初心者ガイド Vol.2 - 応用と成功のヒント -

目次

前回の「モバイルアプリのパーソナライゼーション初心者ガイド Vol.1 - メリットと基本活用 -」では、パーソナライゼーションを導入することのメリットに加えて、プッシュ通知、アプリ内メッセージ、メールでの活用法を解説しました。

本記事ではより高度な活用法として位置情報を使ったパーソナライズ、オンボーディングとレコメンドのパーソナライズについて紹介します。あわせてパーソナライゼーションを継続的な成功に導くめのヒントも解説しています。

この記事は、DECODEのブログ “What is mobile app personalization? Complete guide” を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。原文記事を2回に分けて掲載しています。

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モバイルアプリのパーソナライゼーション初心者ガイド Vol.1 - メリットと基本活用 -

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位置情報を活用したパーソナライズ

パーソナライゼーションは、ユーザーの名前や誕生日といった個人情報を活用することだけを指すものではありません。ユーザーの位置情報を活用することでより多くの可能性を開くことができます。

2020 Global Location Trends」レポートによると、平均的なマーケティング予算の52%が位置情報に基づく取り組みに費やされているとのことです。この領域は成長を続けており、下のインフォグラフィックがそれを示しています。

【図】位置情報を活用したマーケティングの成長を示すインフォグラフィック出典:PR Newswire

位置情報を活用したマーケティングは、アプリマーケティングに融合すべきものであり、その成功例がたくさん存在しています。言語学習アプリである「Duolingo」の例を紹介しましょう。

【図】「Duolingo」の位置情報を活用したパーソナライズプッシュ通知のスクリーンショット出典:Instal

これは天才的ともいえるアイデアです。Duolingoはユーザーが普段と別の国にいることを認識していました。多くの海外旅行客が抱える悩みとは何でしょうか。もちろん言葉の壁です。この位置情報によってパーソナライズされたプッシュ通知は、非常にタイミングが良く、ほとんどのユーザーが高く評価すると想像できます。

実店舗を持つECアプリでは、「モバイルアプリのパーソナライゼーション初心者ガイド Vol.1 - メリットと基本活用 -」で紹介したSephoraのように位置情報の活用が非常に効果的に働くケースがあります。「スターバックス」アプリもこのアプローチを上手に利用しているアプリのひとつです。

【図】「スターバックス」の位置情報を活用したパーソナライズプッシュ通知のスクリーンショット出典:App Samurai

上の図で示したプッシュ通知にはふたつのパーソナライゼーション要素が含まれています。ひとつはユーザーの位置情報に基づいて、特定の店舗からオファーメッセージを届けている点。もうひとつはユーザーの購入履歴に基づいたもので、ドリンクのオファーを提示しています。このふたつのパーソナライズ要素が、シンプルかつ効果的なプッシュ通知として機能しているのです。

ガソリン価格情報アプリ「GasBuddy」も同様のアプローチを採用しており、位置情報を基にその地域で最もお得なガソリンスタンドをユーザーに紹介しています。その見返りとしてユーザーはアプリに位置情報とガソリンの消費サイクルを共有します。

この結果、GasBuddyは2021年5月21日に、「App Store」で1位を獲得しました。これは、位置情報に基づくパーソナライズが持つ大きな影響力の証です。

【図】「GasBuddy」の位置情報を活用したパーソナライズプッシュ通知のスクリーンショット出典:CleverTap

位置情報を活用したパーソナライズはすべてのアプリに適用できるわけではありません。しかし、それを必要とする場合や、クリエイティブな活用法を発見したときにはぜひ試してみてください。エンゲージメントを促進する強力な手法であることが理解できるはずです。

オンボーディングプロセスの最適化

アプリの継続率とエンゲージメントを高めるうえで、オンボーディングは重要な要素のひとつです。そしてオンボーディングを改善する最高の方法がパーソナライゼーションです。

パーソナライズによってユーザーを初日から惹きつけ、より良い第一印象を与えることができます。これは非常に重要なことです。ほとんどのアプリは最初の7日間でアクティブユーザーの最大89%を失っていることが知られているからです。

【グラフ】アプリのリテンションレートの低下を示したグラフ出典:Andrew Chen

それでは、オンボーディングフェーズで使用できるパーソナライゼーションにはどのようなものがあるのでしょうか。ひとつはセグメンテーションです。ユーザーに適切な質問をし、その回答に基づいてアプリ体験をカスタマイズします。

例えば、Duolingoアプリでは、一連の質問でユーザーをオンボーディングし、さらにクイズでユーザーの習熟度を把握します。これによって、アプリがユーザーの目標に合わせたカリキュラムを設計することができるようになっているのです。

【図】Duolingo」のオンボーディングのスクリーンショット出典:Duolingo

また、パーソナライゼーションを活用して、オンボーディング中のユーザーのコミットメントを向上させることもできます。これによってユーザーとの感情的な繋がりが生まれ、オンボーディングを完了させやすくなるのです。ファイナンスアプリの「Wealthfront」の例を見てみましょう。

【図】Wealthfront」のオンボーディングのスクリーンショット出典:Appcues

Wealthfrontは、ユーザーが自由に目標を調整できるインタラクティブなオンボーディング機能を備えています。そして、ユーザー自身が目標を設計しているため、より高い継続率に繋がっています。

アプリのパーソナライズには個人情報の提供が必要になります。しかし、それを必須項目にしてはいけません。ユーザーは常に、データの提供を控えるオプションを持つべきであり、しっかりとそのニーズに応えるべきです。

また、ユーザーから情報を取得する際には透明性を確保してください。なぜそのデータが必要なのかを伝え、可能であればユーザーにとってのメリットも説明しましょう。これはユーザーとの信頼関係を醸成するための優れた方法であり、ユーザーが「はい」と答える可能性を大きく高めてくれるはずです。

ユーザーオンボーディングに採用できるパーソナライゼーションはほかにもたくさんあります。これまで紹介してきた、ユーザーの名前を利用するというシンプルな方法も効果的です。どんなに些細に感じられたとしても、ぜひ実施することをおすすめします。オンボーディングの成果が大きく変化するでしょう。

カスタマイズされたレコメンドの配信

アプリのパーソナライゼーション施策の頂点ともいえるのが、ユーザーの行動、嗜好、購入履歴に基づいたレコメンド機能です。ユーザーに「自分のことを本当に理解してくれている」と感じさせることができるからです。継続率、エンゲージメント、さらには収益化の向上につながります。

例えば、レコメンドソリューションを提供するBarillianceは、同社のプラットフォームにより、あるアプリのCVRが550%増加したことを明らかにしました。

そしてもちろん、カスタマイズされたレコメンドについて語る場合、Amazonを思い浮かべずにはいられません。Amazonは間違いなくそのパイオニアです。

【図】Amazonのパーソナライズレコメンドのスクリーンショット出典:Amazon

Amazonのレコメンドアルゴリズムは、ユーザーの購入履歴と行動履歴を組み合わせて使用しています。さらに、位置情報に基づくマーケティングを活用し、ユーザーの地域でトレンドとなっている商品を表示することもあります。

【図】Amazonのパーソナライズレコメンドの仕組みを表す図出典:Barilliance

パーソナライズされたレコメンドを行うためのカギは適切なデータとアプローチです。その方法のひとつが、「協調フィルタリング」。あるユーザーのデータを使用して、そのユーザーと似た嗜好を持つ人が何を好むかを予測するものです。

【図】協調フィルタリングの仕組みを表す図出典:Barilliance

もうひとつはコンテンツベースのフィルタリング。ユーザーの行動履歴に基づいてユーザーにレコメンドを行うものです。そして最も効果的なアプローチがハイブリット型。コンテンツベースのフィルタリングと協調フィルタリングの両方を活用して、よりバランスの良いレコメンドを提供します。

パーソナライズされたレコメンドは、数あるパーソナライゼーションの中でも特に複雑な手法です。しかし、最適な設計が出きればエンゲージメントを大幅に向上することができるでしょう。

パーソナライズ機能が充実したアプリ

パーソナライゼーションに関して、市場で際立った存在感を見せているのが「Spotify」です。

Spotifyは、各ユーザーにユニークで高度にパーソナライズされた体験を提供しており、「Discover Weekly」機能は、その例として最適といえます。AIを使用して毎週、各ユーザーにパーソナライズされた音楽のおすすめリストを作成しているのです。その仕組みは次の通りです。

【図】「spotify」の「Discover Weekly」機能の仕組みを表す図出典:The Lexington Line

この高度なパーソナライゼーションこそが、同社がその分野のリーダーであり、31.7%の市場シェアを誇る主な理由のひとつなのです。

パーソナライゼーションに優れたアプリとしてもうひとつ紹介しておきたいのが、文章作成サポートアプリの「Grammarly」です。

その特徴的な機能のひとつに対象設定機能があります。この機能によってユーザーは、対象者、フォーマル度、分野、意図に応じて、受け取るアドバイスをパーソナライズすることができるのです。

【図】「Grammarly」のパーソナライズ設定画面のスクリーンショット出典:Grammarly Support

これによって、ユーザー個々のニーズに合わせた文章の修正提案やより適切なフィードバックをすることが可能となっています。

Amazonもパーソナライゼーションの優れた事例であり、最も成功している企業のひとつです。事実、同社のレコメンドシステムは年間収益の35%を生み出しています2023年の数字を見てみると、パーソナライゼーションによる収益は2010億ドルに達します。

さらに素晴らしいのは、そのシステムを他の企業も利用できること。「Amazon Personalize」を通じて、レコメンドシステムをサービスとして提供しています。 その仕組みは次の通りです。

【図】「Amazon Personalize」の仕組みを表す図出典:AWS

データを活用してモデルを訓練し、微調整すると、コンテキストに応じたパーソナライズされたレコメンドを得ることができます。これは、アプリのパーソナライズを向上させる素晴らしい方法です。

モバイルアプリのパーソナライズを効果的に行うための重要TIPS

ここでは、アプリのパーソナライズを成功させるためのいくつかの重要なヒントを紹介していきます。

データ分析を活用する

ユーザーデータを収集・分析しなければ、モバイルアプリのパーソナライズはできません。データ分析によって、ユーザーの行動や好みについて深い洞察を得られるからです。

ただし、すべてのデータが同じように役立つわけではありません。アプリのパーソナライズを確実に成功させるためには、最も関連性の高い指標に焦点を当てる必要があります。トラッキングすべき指標や分析として以下のようなものが挙げられます。

  • スクロール深度
  • ヒートマップ分析
  • 機能利用率
  • クリックストリーム分析
  • エンゲージメント時間

これらの指標や分析はユーザーが実際にどのようにアプリを使用しているのかを理解するのに役立ちます。

フィードバックループを実現する

パーソナライゼーションを実施する場合、立ち止まることは後退することと同じです。ユーザーのニーズや好みは常に変化し続けているからです。そこでフィードバックループの出番です。フィードバックループを利用すれば、ユーザーの好みや行動の変化に容易に対応することができます。典型的なフィードバックループを紹介しましょう。

【図】フィードバックループのサンプル

フィードバックループの構築は、ユーザーのフィードバックを継続的に収集し、アプリを改善するための重要な取り組みです。ユーザーのニーズや好みの変化に対応できるようになり、長期的な成功へと導いてくれます。

AIパーソナライゼーションを活用する

AIはパーソナライゼーションに革命をもたらします。膨大な量のユーザーデータを分析し、各ユーザーに極めてパーソナライズされた体験を提供することで、ユーザーエンゲージメントを大幅に改善することができるからです。その仕組みは次の通りです。

【図】AIによるパーソナライゼーションの進化を示したインフォグラフィック出典:LinkedIn

AIによるパーソナライズは次のような様々な分野で応用できます。

  • コンテンツのパーソナライズ
  •  広告のターゲティング
  •  パーソナライズされたメッセージやメール
  •  AIチャットボット
  •  製品レコメンド

すでに92%の企業がAIパーソナライゼーションを活用してビジネスの成長を促進しています。そして、そうしなければ時代遅れになるリスクがあります。

パーソナライゼーションには無限のアイデアがある

2回に分けて掲載してきた「モバイルアプリのパーソナライゼーション初心者ガイド」。ご覧になった人であればわかる通り、パーソナライゼーションの手法や施策は無限に広がっています。企画・施策ひとつで大きな成果が生まれることもあるかもしれません。

まずは自社にどのようなデータが蓄えられているのかを確認し、プッシュ通知やアプリ内メッセージなどの基本的な領域から取り組んでみてください。たくさんのA/Bテストを繰り返す中で、ユーザーが本当に求めている「自分たちへの理解」が見極められるようになってくるはずです。

パーソナライズはユーザーエンゲージメントを高め、LTVを改善するための最良の手段です。ひとつずつ着実に進んでいきましょう。

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