【マルチチャネル入門 第5回】アプリ・Web・メール・LINEをどう使い分ける?目的と得意分野で成果につなげる

中野 竜太郎
中野 竜太郎
2026.03.31
【マルチチャネル入門 第5回】アプリ・Web・メール・LINEをどう使い分ける?目的と得意分野で成果につなげる

目次

これまで4回にわたり「マルチチャネル入門」と題し、マルチチャネルを単なる施策の集合ではなく構造的に捉え、上手に活用していくための情報をお伝えしてきましたが、読んでくださった方の中には、「結局、各チャネルをどう使えばマルチチャネル施策を軌道に乗せ、成果を出すことができるの?」という疑問を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、各チャネルの基本的な役割やチャネルごとの得意・不得意を知り、そこからマルチチャネルを活用していく考え方と、成果を出すための鉄板パターンをお伝えします。

なぜチャネルの役割整理が必要なのか?

せっかく複数のチャネルを活用していても、それぞれの役割が曖昧なままでは、運用の工数ばかりが膨らみ、なかなか成果に結びつかないといった状況になりかねません。

チャネルの役割を整理しておくことが、なぜ重要なのでしょうか。まずはその理由について、ふたつの側面から確認していきましょう。 

【顧客視点】メッセージの重複による「しつこさ」を避ける

マルチチャネルに取り組む際、よく見られるのが「重要なキャンペーンだから、メールもLINEもアプリも、すべてのチャネルでメッセージを送っておこう」といった施策の進め方です。

しかし、顧客視点で考えてみると、決して体験はよくありません。メールを開いて内容を確認した直後に、まったく同じ内容のLINEが届き、さらにスマホの画面にアプリのプッシュ通知が表示される。これでは、たとえお得な情報であっても、お客様は「しつこい」と感じてしまいます。このような体験が積み重なると、通知オフやアプリの削除につながってしまいます。

「どの情報を、どのチャネルで伝えるか」という分担を明確にすることは、ブランドやサービスに対するネガティブな印象を避けるために欠かせないプロセスなのです。

 【企業視点】個別最適化された動きによる施策の無駄打ちを防ぐ 

各チャネルの役割が曖昧なままでは、それぞれの運用がバラバラに動いてしまい、会社全体で見たときに効率の悪い投資をしてしまうことがあります。

たとえば、「すでにアプリで十分に情報を受け取っているロイヤル顧客」に対して、他チャネルでも同じ案内を重ねて送ってしまうケースです。本来、その手間や予算は、最近サイトに来ていないお客様への呼び戻しや、まだ自社を知ったばかりの方への案内に使うべきものです。

「どのチャネルで誰を動かすのか」という役割分担ができていないと、限られた予算と人手を、本当にアプローチすべき層へ集中させることが難しくなります

マルチチャネル施策では「目的」と「得意分野」を基準にチャネルを選んで

マルチチャネルを形だけで終わらせないためには、まず各チャネルに「役割」を持たせ、それらを適材適所で使い分ける必要があります。

具体的にどう使い分けていくべきか、ここではふたつの判断基準をご紹介します。

チャネルは「目的別」に考える

新しいチャネルを導入する際は、つい「そのチャネルで何ができるか」という機能面に目が行きがち。しかし、本来考えるべきは「そのチャネルを使って、顧客にどうなってほしいのか」という活用の目的です。

顧客のフェーズごとに、最適なコミュニケーションの形は異なります。「新規層にブランドを知ってほしい」のか、あるいは「休眠しそうなお客様に再訪してほしい」のか。こうしたゴールから逆算してチャネルを選べば、施策の優先順位が明確になり、無駄な打ち手を減らすことができます。

チャネルごとの得意・不得意を理解する

それぞれのチャネルには、性質上どうしても向き不向きがあります。これらを「強み」と「弱み」の両面から正しく把握しておくことも、施策の精度を高めるうえで欠かせません。

私はよく、以下の4つの観点からチャネルの適性を判断しています。

●    到達範囲
まだ接点のない見込み顧客に届くのか、既存顧客に届くのか

●    情報量
リッチなコンテンツをじっくり読ませるべきか、短文で即座に読めるメッセージにするべきか

●    即時性
「今この瞬間」に伝えるべき情報(例:キャンペーン)か、数日以内に読んでもらえればいい情報か。

●    日常性
顧客の日常生活に溶け込み、頻繁に見てもらえるか。

これらの観点を軸に、それぞれのチャネルの特性を理解することで、効果的にチャネルを使い分けやすくなります。

各チャネルの基本的な役割を押さえよう

チャネルごとの得意・不得意を理解できれば、自ずとそれぞれの使い所が見えてきます。

ここからは、マルチチャネルを支える4つの主要チャネルの基本的な役割について、もう少し詳しく見ていきましょう。

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【Web】広い接点を作る、集客の入り口

Webサイトは、まだ自社のサービスを知らない人や、興味を持ち始めたばかりの人が最初に訪れる場所です。検索エンジンやSNSから「たまたま見つけて流入してくる」というケースが多いため、まずは自分たちの存在を知ってもらう窓口としての役割が中心になります。

ただし、Webは競合他社と比較されやすく、離脱も早いという特性があります。ブラウザの通知はアプリほど許諾されないうえ、Cookie規制の影響もあって「一人ひとりに合わせた細やかなフォロー」をWebだけで完結させることは容易ではありません。

そのため、Webにおいては「訪れたお客様を、いかにスムーズにアプリやLINEといった継続的に接点を持ちやすいチャネルへ誘導するか」を最優先に体験を設計しましょう。

【メール】リッチなコンテンツでファン化を促進

メールは、すでに接点のあるお客様に対してリッチなコンテンツを届けるのに適したチャネルです。LINEやアプリ(プッシュ通知)に比べると即時開封の割合は低く、期間の短いキャンペーン情報などの配信には不向きであるものの、エンゲージメントの高いお客様は自分の好きなタイミングで、じっくりと確認をすることができます

メールを活用する場合は、瞬発的な売り上げ向上を狙ってクーポンを送付するような使い方よりも、ブランドのストーリーや活用ノウハウを伝え、時間をかけて関係性を構築し、ファンを育てていくツールとして活用するのが得策です。

【LINE】即時アクションを促すキラーコンテンツの配信

幅広い世代が日常的に使用しており、実質的にインフラのような存在となっているLINE。その最大の強みは、開封率の高さと通知から開封までの速さです。メールよりも心理的ハードルが低くなりやすい性質から、スピーディかつ確実に情報を届けたいときに力を発揮します。

一方で、LINEにはユーザー数に応じて配信にかかるコストが増え、サービスの規模が大きくなるほど費用がかさむという難点もあります。「バースデークーポン」や「期間限定のタイムセール」など、ここぞというタイミングで確実にアクションを促したいときに絞って使うことをおすすめします。

【アプリ】体験をパーソナライズする、ロイヤル化の要

自社アプリは、一人ひとりに合わせた体験設計ができるといった特性から、顧客育成において最も自由度が高く、かつ強力なチャネルといえます。

インストールのハードルはあるものの、「自社のコンテンツだけに集中して見てもらえる」「自社でデータ取得ができる」といった性質をうまく活用できれば、初回利用で満足したお客様のロイヤル化を促進することができます。

また、リアルタイムな接客ができるのも特長で、「商品購入直後にお礼メッセージを送る」「レジャー施設でアトラクションの混雑状況を伝える」など、お客様の状態や行動に合わせたアプローチが可能です。

チャネル リーチ範囲 エンゲージメント 強み 適した用途
Web 広い
(新規・検索流入)
   ・検索流入が多い
・認知拡大に強い
・認知拡大
・新規顧客獲得
メール
(許諾済みリスト)
やや高 ・リッチなコンテンツを配信できる ・キャンペーン告知
・時間をかけて関係性を構築
LINE 広い
(日本国内特化)
やや高 ・開封率が最も高い
・日常的に開かれる
・限定情報の配信や特典配布
・タイムリーな告知
アプリ 狭い
(既存顧客中心)
やや高 ・データ取得しやすい
・プッシュ通知で即時性が高い
・ロイヤル化に強い
・ロイヤル顧客育成
・パーソナライズ

まず押さえておきたいマルチチャネルの鉄板パターン

ここまで読んでくださった方のなかには「結局、それぞれのチャネルをどう組み合わせればマルチチャネル施策を軌道に乗せることができるの?」という疑問を抱いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「どのチャネルに比重を置くべきか」は状況によって異なりますが、まずは成果を出すための鉄板パターンを押さえておくと、施策を迷わず実行しやすくなります。

【マルチチャネルの鉄板パターン】
1.    Web(検索・SNS)で「存在」を知ってもらう
まずはWebで広く接点を作り、興味を持ってくれた方をアプリやLINEへ誘導する。

2.    メール・LINEで「再訪のきっかけ」をつくる
 一度きりの訪問で終わらせないために、メールやLINEを活用。定期的に役立つ情報や特典を届けることで、お客様の日常の中で「そういえば、あのサービスがあったな」と思い出してもらえる状態を維持。

3.    アプリで「自分専用の利便性」を感じてもらう
個々の行動データに基づいたパーソナライズができるアプリへ誘導。「自分のためのサービスだ」と感じてもらうことで、利用の習慣化とロイヤル化を促す。

この鉄板パターンをベースに、検証と改善のサイクルを回すことで、より自社の勝ち筋を見つけやすくなります。

チャネルごとの得意・不得意を知ってマルチチャネルを成果につなげる

チャネルを目的に応じて使い分けることで、マルチチャネルははじめて効果を発揮します。チャネルを増やす前に、まずはチャネルごとの得意・不得意を理解したうえで全体の戦略を設計し、各チャネルの強みを活かすかたちで施策を考えていきましょう。

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