アプリ事業者がモバイル決済を導入する前に押さえておきたいこと

Repro Journal編集部
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2020.06.01
アプリ事業者がモバイル決済を導入する前に押さえておきたいこと

目次

Android Payのイギリスでの利用開始に続いて、2015年7月、AppleのApple Payはイギリスで利用を開始しました。こういった状況はモバイル決済がどのタイミングで一般にも普及することになるのだろうかと考えるきっかけになります。

この件に関しては多くの見解や洞察がなされています。TSYSの2016年のイギリスにおけるモバイル決済市場調査が明らかにしたのは、回答者の29%は前月にスマートフォンで店頭モバイル決済を行っており、モバイル決済そのものを知らなかった人は回答者のたった3%だったということです。

今月初め、The Next Webに勤めるヨーロッパ出身の編集者であるBen WoodsはTransport for Londonの出した数値を引用し、モバイル決済に関して懐疑的な見解を述べています。非接触型決済のうち通信ネットワークは25%以上にまで上り詰めてるが、依然としてカード決済が大半を占めており、スマートフォンからの決済は少ないからというのが彼の主張でした。実際に彼は「モバイル決済がメインストームになるまでにはまだ時間がかかりそうだ」と述べており、モバイル企業や小売業者もこの技術が「メインストリーム」になることに確信を持てずにいるのです。

二つの主張が対立しています。モバイル決済は急成長中であるという主張と、いまだメインストリームにはなり得ないという主張です。表面的には、どちらの主張も正しいです。

生活をより便利に、日常のタスクを楽に、スピーディーに、安く、楽しくしたいと思うのは、人間の性です。寒く、湿ったロンドンの朝、混雑したプラットフォームからぎゅうぎゅう詰めの車両に乗車する際、携帯電話のロックを解除し、決済アプリを開くのは最終手段です。もっと言うと、 手袋の内側に非接触型決済カードやオイスターカード((オイスターカード:日本のPASMO、Suicaのような交通機関に使うプリペイドICカード))をきちんと差し込む。そうすれば、ハンズフリーな非接触型決済が可能になります。つまり、モバイル決済は、それ自体の浸透が遅いのではなく、顧客のハードルをクリアにするほどの付加価値をまだ提供できていないのです。

地下鉄での決済にポイントカード、リワードカードがないことは、モバイル決済をいかに短期間でクリティカルマスに到達するかを考える上で、考慮すべき事項と言えます。 -モバイルウォレットにしかない価値が重要なのです。

消費者にとって、モバイルウォレットサービスにおけるモバイル決済はそこまで重要視されていないのかもしれません。しかし誤解しないでください。より多くの消費者にモバイル決済を採用してもらうことで、ユーザー体験を合理的にし、膨大な量の取引情報を提供し、手数料の削減を可能にします。これはまさに戦略的です。スターバックスをイメージしてみてください。

世界的に見たとき、モバイル決済の効力とそれを採用するかどうかは、人々が従来の決済方法から抜け出せるかどうかにかかっています。現時点でのイギリスのモバイルウォレットアプリは、すべてのAndroidとiOS端末(この2つのOSでイギリスのスマートフォン市場の93%)にプリインストールされています。Android PayとApple Walletによって消費者はクーポンやポイントカード、チケットなどをとっておくことができるのです。さらに、ウォレットカードの契約内容変更、有効期限が近づいた際の通知、会員プログラムの更新、カードを起点とした特定の場所への入場許可、ジオフェンス機能、ビーコン機能などの動的な機能をアプリに独自に実装しなくても使うことができます。

自社アプリを持っていない企業はAndroid PayやApple Walletを通じたサービス提供によってユーザーにモバイルウォレットを簡単にダウンロードさせることができ、アンインストールされにくいという利点があります。動的にコンテンツの更新ができ、使いやすいアプリがユーザーと築くエンゲージメントと同じような関係を作ることができるようになります。

消費者がモバイルウォレットに期待すること

Forrester Research, Inc.の2015年2月のレポート「The Future of Mobile Wallets Lies Beyond Payments」によると、アメリカとEUの消費者がモバイルウォレットに期待することとしてトップに挙げたのはポイントやリワードとクーポンや特別オファーであり、決済への信頼性はそれよりも低い結果でした。

うり二つな モバイルウォレットとモバイル決済

ショッピング時にスマートフォンを利用することはすでに一般的です。買い物前の下調べから店頭での製品情報や価格のチェック、クーポンの検索、会員制プログラムの利用まで多岐にわたります。世界的には、消費者の85%が店内でスマートフォンを利用しているのです。-前年度は72%でした (DigitasLBi社 2015調査「Connected Commerce study」より)

ショッピング体験の合理化を促す幅広いモバイルウォレットサービスは会員制プログラムといった価値を提供します。また、消費者は能動的にモバイルウォレットサービスを採用し、ワンタップ決済をするようになります。これらによって消費者の生活はより便利になるのです。決済方法といった基本的な行為に求められる変化に広範囲に対応し、雪だるま式にそれを変えていくという循環的な価値を提供します。

クレジットカードをスワイプしたりかざしたりするのは難しくありませんが、携帯電話で同様のことをするとなると容易なことではありません。Apple Wallet とAndroid Payは、顧客を重視したサービス提供と決済とをうまく結びつけることで、ショッピング体験のハブになろうとしています。そして、ブランドアプリと統合するか、単独でいくかどうかという観点でバランスを保っているのです。

まだ始まったばかり

今は日常生活やビジネスにおけるモバイルデバイスの利用方法が変化してきている真っただ中です。マーケティング担当者は、消費者の物理的な決済をモバイルウォレットに置き換えてもらうタイミングに合わせて、消費者に気づかせ、その導入を促し、準備を整えてもらえるようなモバイルにおけるカスタマーエクスペリエンスについて言及するべきタイミングを狙っています。モバイル決済の導入は急成長中ですが、成長のカギはトランザクションに焦点を当てるのではなく、顧客重視のアプローチをとることにあるのです。

この記事は、 CIM のブログ “ Question for mobile payments isn’t when, but how ” をサイト元の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on CIM in English under the permission from the author.

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