2021.03.26

アプリマーケティングを軸としたDXの成功方程式【App Marketing Conference 2021】

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2020年ほど「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉がもてはやされたことはないでしょう。しかし、日本国内の企業から聞こえてくるのは、「DXは進まない、課題が山積」「組織に阻まれる」などといった悲観的な声が多いようです。

本記事では、アプリマーケティングカンファレンス 2021で行われた、「アプリマーケティングを軸としたDXの成功方程式」の模様をレポート。株式会社アイリッジの小田健太郎氏、BCG Digital Venturesの緒方賢太郎氏がDXを成功させるための秘訣について語っています。

※本記事は、2021年3月16日、17日の2日間にわたって開催された「アプリマーケティングカンファレンス 2021」のセッションをダイジェストでレポートするものです。

この記事で分かること

消費者主権時代がDXを求めている

「緒方さんはDX(デジタルトランスフォーメーション)というものをどう見ていらっしゃいますか」という、アイリッジの小田氏の大きな問いかけからセッションはスタート。

緒方氏は、DXが注目を浴びる背景として、「ここ5年、10年の間に、デジタルを軸として、ユーザーに大きな環境変化が起きたこと」を取り上げます。

以前は、マーケティングのチャネルがテレビや雑誌に限定されていたため、企業が人々のニーズや流行を作ることが容易でした。しかし、バブル崩壊とデジタルの進展により状況は一変しています。

日本の消費者は一億総中流ではなく、多様な価値観やライフスタイルが生まれました。そして、デジタルの進展は情報の民主化をもたらしています。もはや、情報優位はユーザーにあり、消費者主権の時代ともいえると、緒方氏は述べます。

つまり、デジタルを活用して、消費者主権の時代に対応していく方法がDXだといえるでしょう。

DXを成功させるために大企業はどのように行動すべきなのか

アプリマーケティングや業務効率化など幅広いDXがあるなか、企業はどこから着手するべきなのか。カギとなるのは、今回のテーマでもあるアプリにあると緒方氏はいいます。さらに消費者の変化のスピードに対応している業態として、ベンチャー企業を挙げました。ベンチャー企業の特徴と対比することで、大企業がDXを成功させる秘訣が見えてくるといいます。

緒方氏は、人材や資金などのリソースがない状態であることを前提に、ベンチャー企業の特徴として以下の3つを挙げました。

  • 「一点突破」でビジネスを成立させる必要があること
  • ビジネスの「グロースにデジタル」を徹底的に活用していること
  • MVP(Minimum Viable Product)発想であること

こういった特徴があるベンチャー企業に対して、既存企業はどう変革していくべきなのか。緒方氏は「ベンチャーの逆を行くこと」だと説いていきます。

大企業は「一点突破」ではなく「全面展開」で攻める

ベンチャー企業が「一点突破」であるのに対して、大企業は「全面展開」を重視するのがポイント。ベンチャー企業は、リソースの観点から、さまざまなサービスやプロダクトを一度に作ることが難しいため、特定の課題を解決するサービスで一点突破の勝負をするのが通常です。

「大企業はベンチャーよりもリソースも資金もあります。やれることは全部やりましょう」。緒方氏は、これこそが大企業だからこそできるDX推進法だと提案しました。まさにベンチャー企業の真逆の思考です。

また緒方氏は、現状のビジネスプロセスにおいて、最も顧客接点が多いプロセスからアプリ化することを推奨しています。支払いがカギになるのであれば支払いを中心に、請求がカギになるのであれば請求を中心にアプリ化を推進するのが良いとのこと。

なかでも、消費者と企業、両方の課題を解決するアプリを作るのが最も上手くいくケースだといいます。

これに対して小田氏も、「アプリを効果的に活用している企業は、アプリの機能も全面展開しているケースが多い。顧客接点において必要な機能をどんどんアプリに搭載していって、より多くの顧客とのコミュニケーションをアプリでフォローできるようになっている」と同意しました。

大企業のDXに欠かせないのは「OMO」と「データ基盤」

ベンチャー企業のグロースの主役がデジタルであることに対して、大企業のDXでカギになるのは「OMO」。緒方氏は、店舗や電話といったリアルなチャネルを保有することは大企業の圧倒的な強みになると強調しました。

「アプリを活用したDXに成功している会社は、デジタルとリアルの連携をうまくやっています」と述べた一方で、OMOの実現には一定の課題も。デジタルで管理している顧客データとリアルな店舗で管理している顧客データがつなげられないケースが少なくないのです。

ECやアプリに限定すると、データドリブンなビジネスを遂行できている企業でも、いざリアルな店舗に目を移すと、データを正確に管理・蓄積するという文化が皆無な場合もあります。

「DXを実践してビジネスを変えていこうとするとき、最初に考えるべきなのはデータを使ってどのように経営を変えていくかという点です。オンライン、オフラインの間で、どのようにデータを連携し、活用していくかを検討することがそのベースとなるでしょう」と安易なアプリ活用に警鐘も。データ基盤があってはじめてアプリの導入が活きてくるといえそうです。

ベンチャー企業の「MVP発想」は取り入れるべき

ベンチャー企業の3つ目の特徴である「MVP発想」に関しては、大企業も取り入れるべきだと緒方氏は説明します。「完璧に考えてから開発するという段階を踏むと、どうしても期間がかかってしまいます。そうすると、その間にお客さんが変化してしまう」と、慎重に検討し、最初から完璧を目指す姿勢がリスクをはらんでいることを指摘。

「我々、BCG Digital Venturesでも、エンジニアやデザイナー、ビジネスディベロップメントといった、6職種の人間を採用して、アジャイルでユーザーに当てながらサービスを作っていける形を採用しています」と、自社の実践状況についても触れました。

小田氏も自身の経験から、「大企業ではウォーターフォール型の開発が通常でしたが、最近はアジャイル型の開発も増えてきています。決済や会員管理、基幹システムとの連携といった大規模な開発が必要なケースでも、ウォーターフォールとアジャイルのハイブリッドで成果を出している企業も増えています」と、その有効性について賛意を示しています。

アプリマーケティングを軸としたDXの3つトレンド

セッションの終盤では、小田氏からアプリを活用したDXに関して3つのキーワードが紹介されました。

1つ目は、「高機能化、高付加価値化の追求」。前述されている「大企業は『一点突破』ではなく『全面展開』」で触れられているように、アプリそのものにも高機能化や高付加価値化が求められているといいます。

2つ目は「アプリ活用の裾野の広がり」。ビジネス、企業のDXにあたり、大企業、中小企業、ベンチャーといった企業の規模や業種を問わず、アプリの活用はますます進んでいるようです。

最後に挙がったのは「店頭スタッフ等業務活用への展開」というもの。OMOと関連する要素でもありますが、リアルな店舗にデジタルを浸透させるには想像以上の時間と手間がかかるのが通常でした。しかし、DXの進展により、消費者だけでなく、店舗で働くスタッフが幸せになるアプリ活用が増えてきているのです。

DXの波は今後、停滞することはあっても停止することはないでしょう。そのなかで、アプリをどのように位置づけるのか、どのような視点で開発・運用していくのか。既存の企業がDXを成功させ、激しい競争を勝ち抜くためのカギになることは間違いありません。ぜひ、本セッションで紹介した「アプリマーケティングを軸としたDXの成功方程式」を実践していってください。

登壇者プロフィール

  • 小田 健太郎(株式会社アイリッジ 代表取締役社長)

    小田 健太郎(株式会社アイリッジ 代表取締役社長)

    1975年東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、NTTデータを経て、ボストン・コンサルティング・グループ入社。モバイル業界を中心に、事業戦略、新規サービス立ち上げコンサルティングを多数実施。2008年にアイリッジを創業し、2015年東証マザーズ上場。アプリを活用した企業のO2O/OMO支援を行う。リテール・鉄道・金融業界を中心とした300以上のアプリに導入されるファン育成プラットフォーム・FANSHIPのユーザーは2億を突破している。

  • 緒方 賢太郎(BCG Digital Ventures Partner & Director,Venture Architect)

    緒方 賢太郎(BCG Digital Ventures Partner & Director,Venture Architect)

    BCGデジタルベンチャーズ(BCGDV)にてVenture Architect部門を統括。それ以前は、ジェーシービー、BCGにおいてB2C中心にテクノロジー、テレコム、金融領域での多数の戦略構築、サービス開発、M&A案件などに従事。前職トランスコスモス社では上席常務執行役員として、主にデジタルマーケティング・Eコマース・コンタクトセンター部門におけるオムニチャネル戦略構築、AI等の新規事業立ち上げ、投資先ベンチャー複数社の運営や他企業とのJVの設立などをリード。

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