これからグロースハックを始める人から「ダッシュボードで見るべき指標はなんでしょう?」という質問をしばしば受けることがあります。以前我々のテックブログ”Pinterestはどうやって持続的なグロースを行っているか”でどんな指標を重要視しているかというお話をしましたが、今回はその指標を決めた背景と、Pinterestのグロースチームがダッシュボードで日々どんな指標を見ているのかお話します。
ダッシュボードは我々が定めたユーザーのグロースモデルを元に作られています。最初にMAU((Monthly Active Userの略。月間アクティブユーザー数のこと))を見て、そのあとはユーザーライフサイクルのファネルに従って見ます。最初に獲得に関する指標、次にアプリの利用開始に関する指標、その次にエンゲージメントに関する指標、最後に休眠ユーザーの復活に関する指標といった具合です。
MAUに関する指標
現状のMAUと、四半期ごとに目標としているMAUにどれくらい近づいているかを見ています。
前年度の同期間の成長率から将来的なMAUを推定しています。成長率が季節変動によるものなのかを確かめるために見ている指標です。
- プラットフォームごとのMAU (iOS版/Android版など)
- 性別ごとのMAU
- 国別のMAU
国ごとのMAUの合計を一つの図で見るのは大変なので、いくつかの国をまとめて表示しています。表示分類は「アメリカ」「グループ1」「グループ2」「グループ3」「それ以外の国」としており、グループはインターネット人口やネット広告の市場規模などによって分けています。
MAUに関わる指標の変化を見ることで、MAUの成長に最も寄与しているのはどの要素かを知ることができます。新規サインアップしたユーザー数、休眠状態から復活したユーザー数、離脱した既存のユーザー数、新規で入ってきたものの当月中に離脱したユーザー数に分けてみます。
獲得に関する指標
- 総サインアップ数
- ラットフォームごとのサインアップ数(iOS版/Android版など)
- 入元ごとのサインアップ数
- 招待メール数
- 待メールを送ったユーザ数
- 待メール経由のサインアップ数
アクティブユーザーになるまでの指標
サインアップ後、1週間以内に1回以上アプリを使ったユーザー数を「1d7s」という指標で表します。これを利用して初期のアクティブ率を「1d7s ÷ 新規サインアップ数」として測っています。これはつまり、新規サインアップ後1週間以内に再びPinterestを使っているユーザーの割合ということです。
- プラットフォームごとのアクティブ率(iOS版/Android版など)
13の指標をプラットフォームごとに見たものです。実際プラットフォームごとに初期のアクティブ率が全く違ったりします。
- 流入元ごとの初期のアクティブ率
- 性別ごとの初期のアクティブ率
この指標は「1d7s ÷ 新規サインアップ数」と似ていますが、新規サインアップをしてから1週間以内にrepin(リピン)かpin(ピン) ((repin(リピン) 、pin(ピン)はPinterestの機能。))を行ったユーザーの割合です。この指標をどれくらい多くのユーザーが高くエンゲージメントするようにアクティベートできたかを測る、先行指標として使っています。
- プラットフォームごとの「1rc7」ユーザーの数(iOS版/Android版など)
- プラットフォームごとの「1rc7」ユーザーの割合(iOS版/Android版など)
- プラットフォームごとの「エンゲージメントファネル」通過ユーザーの数
この指標でアプリのコア機能を使い続けているユーザーの割合を新規サインアップから1週間ごと、28~35日間後まで計測し続けているのです。特に我々はサインアップから35日後のユーザーに注目しています。サインアップから1ヶ月間で何割がMAUに入るか、WARC ((weekly active reppinner or clicker:週1回はrepinかpinしているアクティブユーザー))、WAC ((weekly active clicker:週1回はpinしているアクティブユーザー)) 、WAR ((weekly active repinner:週1回はrepinしているアクティブユーザー))かをチェックしています。
- 性別ごとの「エンゲージメントファネル」通過ユーザーの数
- 新規サインアップから35日後のWAU ((weekly active user))
初期のアクティブ率を測る指標として特に注目している指標です。サインアップから1ヶ月後もまだWAUとして残っているユーザーの割合を追っています。特に新規サインアップから28~35日後のユーザー割合を見ています。
エンゲージメントに関する指標
DAUをMAUで割った数、WAUをMAUで割った数、DAUをWAUで割った数を見ています。期間の違うUUで比率をとるのはエンゲージメントしているユーザーがどれくらいいるかを測るときによく使われる指標です。
メールを送った合計数、開封率、CTRをメールの種類ごとに見ています。
プッシュ通知を送った合計数とプッシュの開封率をiOS版とAndroid版でそれぞれ見ています。
復活ユーザーに関する指標
28日間以上使っていなかったけれど、Pinterestに戻ってきたユーザーの合計数をプラットフォームごとに見ています。
まとめ
要するに、我々がアクティベーション、つまり新規ユーザーを毎月のアクティブなユーザーに誘導するプロセスを重視しているのがおわかりいただけたでしょうか。これはアクティベーションがアプリの長期的・持続的なグロースに重要であると我々が考えているからです。アプリを何百万ものユーザー数にまでスケールさせるには高いアクティブ率が不可欠です。性別、国、流入元ごとの分析も重視しており、この分析によってセグメントごとにどうPinterestが使われているかを深く知ることや、どのセグメントがパフォーマンスを下回っているか把握することができます。
この記事は、PinterestのグロースハッカーJohn Eganのブログ記事”The 27 Metrics in Pinterest’s Internal Growth Dashboard”を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on John Egan’s blog in English under the permission from him.