生産性や収益から、顧客の行動へのより深い理解まで、企業の生死はCRMデータによって決まります。
CRMデータの必要性はどんどん増しており、2017年末の時点で、CRM業界は400億ドル以上の市場に成長するといわれていました。また、CRMをうまく活用することで、1ドルの支出に対して5.60ドルから8.71ドルの間、またはそれ以上のROIになるという結果が出ています。
ところがCRMデータの量は莫大なため、企業が陥りやすい落とし穴が2つあります。
- データは日々更新され続いているため管理しきれず、データの数字が実際に何を意味するのかがわからない。
- CRMを重要視するあまり、企業の方針を疎かにしてしまい、データドリブンに偏りすぎた決断をしてしまう。
こういった問題は、特にマーケターを悩ませる要素です。
「Econsultancy」によると、CRMデータを活用できていると感じているマーケターは、全体の33%のみだと言われています。CRMが進化すればするほど、データが複雑になり、マーケターにとって数字を理解することが難しくなっていくのです。
企業のCRMデータへの依存度が高くなるにつれ、データそのものの価値もますます上がります。しかし、CRMデータを誤った方法で活用してしまうと、効率が悪くなり収益も減少し、最終的にはビジネスの成長を止めてしまうことがあります。
CRMデータは複雑である上に、かけられる時間や資金はかぎられています。そのなかで、方向性を見失わずにCRMデータを最大限に活用するには、何を優先するか、どんな失敗を避けるべきかを知ることが重要です。
本記事では、マーケターがCRMデータを最大限に活用したい場合、必ず避けるべき6つの誤った使い方をご紹介します。
古いデータ、不完全なデータ、偽のデータの使用
まず始めに、CRMデータは集められたデータでしかありません。
新しくCRMデータを集める場合や既存のCRMデータを使用する場合、どちらにも言えることですが、顧客情報の重複や不要な項目、無効な入力などが原因で、データそのものが不完全である可能性が十分にあります。貴重な時間を、存在しないアカウントやbotを追うのに使ってしまっていても、収益を上げることはできません。
「Experian」によると、企業は、部門別予算の平均12%を、偽のデータに浪費していると指摘しています。CRMデータ内の重複した情報や無効となった入力は、方向性を失ってしまったり、顧客に送るメッセージの内容や時間を誤ってしまったりすることに繋がります。結果、顧客を混乱させてしまい、最悪の場合はチャーンにも繋がります。
データに問題があると思われる場合、まずはデータベースを精査して不要なアイテムを削除することが、CRMを使って安定したマーケティング活動を行うための大きな一歩になります。
不要な項目か、必要な項目か
現代のCRMシステムは、顧客について深く知ることができます。一方、マーケターは、より多くのことを知ろうと追及するあまり、情報が増えすぎてしまい、全てのデータを把握しきれなくなっています。
マーケターは、CRMの中でどの項目が最も重要なのかを考え直す必要があります。
どのような人口統計や顧客行動が、リードを決定することにつながるのか明確にしておきましょう。
また、項目が多すぎると、混乱してリードを失ってしまうことがあります。
不要な項目を除外することで、必要なデータだけを得ることができるようになります。前述したように、質の良いリードを獲得することは、膨大なデータを得ることよりも、価値のあることなのです。
自動化の失敗
CRMの導入によって、マーケティングのプロセスは効率化されるべきです。CRMシステムの一部を自動化して、効率化に取り組みましょう。
以下5つのマーケティング要素は、CRMシステムで自動化した方が良いとされる、主要な候補です。
- リードの管理:最もCVが期待できるリードを見つけ、数値化する。
- リードの行動履歴の追跡:分析ツールを統合することで、リードがいつコンテンツページを閲覧したり、SNS上の投稿に返信したりしているのかを追跡する。
- リードナーチャリング:企業は顧客の期待値の高さに関わらず、全てのリードを自分たちで追跡しようとする必要はない。
- カスタマーリテンション:既存の顧客を満足させることに、大量の時間を費やす必要はない。
- 組織と計画:CRM内の現在のマーケティングにおけるROIを算定し、将来的に何を重視すべきかを正確に把握する。
現在のCRMは、時間の節約ができるという点が一番の魅力です。
事実、「Hubspot」社の『Free CRM』は、顧客との関係を強化することを優先しながら、より多くのCVを獲得するための自動化を重視しています。パイプラインとセールスの概要を自動的に表示することで、マーケターはスプレッドシート相手に四苦八苦するのではなく、時間を有効的に使うことができるようになるのです。
社会的統合の欠如
SNSが主流の時代となった今、マーケターは、SNSの情報もCRMデータとして収集していくべきです。
SNSを通じた顧客との交流は、今や欠かすことができないものとなっています。顧客サービスはCRMの基礎であり、TwitterやFacebookの「いいね!」を通して顧客との接点を増やして行くことが可能になります。
SNSで苦情を訴える顧客の60%が、1時間以内に対応してもらうことを期待しているというデータからも、マーケターは、CRMとSNSを密接に関係させる必要があると言えます。
「Salesforce」社は、SNSの情報を取り込んだCRMを使用している場合、顧客ロイヤリティの増加 (55%) と、販売収益の増加 (54%) が見られたと指摘しています。
社会的統合が当たり前となった現代社会では、単に顧客を観察するだけでは不十分なのです。
KPIの誤った設定
マーケターは、自社のCRMがKGIに直接関係しているということに確信を持つ必要があります。
組織によって多少異なるかもしれませんが、KPIの焦点はおそらく、収益とリードの2つだと言えるでしょう。
例えば、「IMPACT」社が指摘する上位5つのKPIは以下の通りです:
- 販売収益(Sales Revenue)
- リード1人あたりのコスト(Cost Per Lead)
- 顧客価値(Customer Value)
- インバウンドマーケティングのROI
- データ量とリードの比率(Traffic-to-Lead Ratio)
上記のKPIを設定することにより、マーケターは、何が最終的なKGIの達成に効果的かを知ることができます。そしてこれらのデータは、CRMの中核部分であると同様に、成長部分でもあります。
繰り返しになりますが、CRMを正しく活用することで、ROIを向上させることができるのです。KPIを順番に達成させていくことで、収益につながるはずです。
データを活用していない
最後は、数字は目の前にあるのに、何も行動を起こしていないという問題です。明らかな問題点ですが、実際多くの企業がこの状況に陥っているのです。
マーケターがCRMデータで失敗する原因はいくつかあります。
機能が難しく、扱いにくいCRMシステムに頼っていたり、もしくはそもそもデータを信用していないのかもしれません。
CRMにおいて企業が重視する機能は、使いやすさ (55%) と、データの出力をわかりやすく表示する機能 (18%) です。
これらの数字から、マーケターは、ひと目でわかりやすいデータを必要としていることがわかります。このようなデータを使うことで初めて、実際にCRMを活用することができるようになるのです。 これからCRMを有効活用していくためには、一からCRMシステムを見直すことも考える必要があるとも言えるでしょう。
まとめ
上記で紹介した6つの落とし穴は、マーケターがそもそもなぜCRMに苦戦しているのかを、表面的に説明しているだけに過ぎません。より効果的なマーケティングを追及するためには、CRMデータの項目に優先順位をつける必要があります。
新しいCRMを導入するのか、現在のCRMを見直すのか、どちらにしても、マーケターは目の前にあるデータの数字が何を意味するのかを理解できて初めて、安定した戦略を練ることができるようになるのです。
この記事は、Smart Insights社のブログ"6 ways marketers are misusing CRM data and how to improve it "を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on Smart Insights in English under the permission from the author.