CRMからCXM(顧客体験マネジメント)へ。エンゲージメントを高めるためのデータとの付き合い方は?【CEC next #3】

Repro Journal編集部
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2020.09.23
CRMからCXM(顧客体験マネジメント)へ。エンゲージメントを高めるためのデータとの付き合い方は?【CEC next #3】

目次

2020年8月5日(水)、オンラインセミナーで開催された「CEC next(Customer Engagement Conference next)」。

メールアドレスを収集して購買オファーを送るだけの時代は終わり、これからのアフターデジタル時代にはデータ取得・顧客理解・施策に至るまで、体験価値の向上が大きなテーマとなります。Session2では、先進企業各社が顧客データの取り扱いをどのように変化させてきたのか、これからの顧客理解のためのアクションについて、最前線で活躍するマーケティング責任者に語っていただきました。


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それぞれの取り組み紹介

園部:エンゲージメントを高めていくことで、口コミや紹介といった購買以外の副次的な効果も期待できます。そのエンゲージメントを生み出すには、顧客一人ひとりに合わせたブランド体験と、さらにデータ活用が重要になります。今回はビジネスモデルや顧客との関係性も全く違う3人のマーケティングご担当者に 、DX時代の顧客体験やデータ活用のあり方について深掘りしていきます。

まず簡単に自己紹介を。私はEC・通販業界で10年間ほどマーケティング業務に従事してきました。その後、オプトに入社して、エンゲージメントを高めるためのコミュニケーション戦略に関するコンサルティングをしております。

志賀:ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)は日本最大級のゴルフポータルサイトです。ゴルフ情報の発信だけでなく、ゴルフ用品の販売やゴルフ場予約など、ゴルフに関する様々なサービスを展開しています。

私は2008年にIT戦略室にジョインしまして、データベースマーケティングやSalesforce活用、UXとデータを活用したマーケティングを推進してきました。

神谷:前職の人材派遣業界でデジタルマーケティングを約16年ほどやっておりまして、約2年前の2018年に丸亀製麺に入社しました。入社当時はデジタルマーケティング領域を担当していましたが、2020年7月にCX推進部を立ち上げました。そこでは顧客体験をデジタル化するだけでなく、リアルも含めた一連の流れで見ていこうとしています。

佐々木:私は新卒プロパー入社で、カード会社一筋です。2012年からデジタルマーケティングに関わりはじめ、2017年からはマーケティング部で顧客コミュニケーションを含めた一貫性のあるマーケティングの実現に取り組んでいます。

サービス・プロダクトの人格を言語化し、一貫したコミュニケーションを設計する

園部:この数年で、多くの企業のマーケティングにおいて顧客体験をマネジメントしようという流れが出てきました。3社のマーケティングでは過去からどのように変化してきたか、お伺いしていきます。まずはGDOの事例をお聞かせください。

志賀:一例として、顧客へのメールマーケティングの話をします。GDOではCRM(顧客関係のマネジメント)に着手する以前、「これを買ってください」「予約してください」といった、顧客が求めているかも分からないメールを各サービス担当者からとにかく送りまくっていたのです。ひとりの顧客につき多いと年間で1,200通、1日に6,・7通届くことも。企業側の都合で顧客体験を設計しており、顧客の唯一の選択肢はオプトアウト(購読解除/受信拒否)でした。


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「これは本当に良い顧客体験なのだろうか?」という疑問から、顧客体験を強く意識したCRMやUX、顧客とのエンゲージメントを考えはじめたのです。そこでまず、企業である私たちの立ち位置を明確化し、全てのサービス・プロダクトに一貫した人格を持たせ、全てのチャネルで統一的なコミュニケーションが取れるように挑戦することになりました

まず始めに取り組んだのが、「人格の言語化」です。統一感のあるコミュニケーションを取るために、顧客に対する接し方の方針を決めました。そこで選ばれたのが、お客様に寄り添ってゴルフを楽しむ「ベストキャディ」という言葉です。そこから、こちら都合のスケジュールで送っていたメールを、どちらかというとイベントドリブン型で顧客の行動に合わせて送るようになりました。


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また、コミュニケーションの顔も設定しました。言語化された人格に合わせて、顧客コミュニケーションを行う担当者をつけています。その他の変化として、会員登録後すぐにチラシを送るのではなく、ウェルカムメールで「会員登録ありがとうございます」というメッセージを送付しています。また、会員登録から1カ月間は販促メールを送らないというルールも設定し、徐々に顧客との距離を近づけるようにしています。

まずはアプリから顧客データを取得していく

神谷:私たちは顧客のデータを持っていないという、大きな課題を抱えています。では店舗に来ていただいたお客様を何で理解するのかというと、現状アプリからの情報しかないのです。購入時に使われるアプリのクーポンをQRコードでかざしていただく際に、購買データとお客様の情報を結びつけています。


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そしてアプリでも任意でお住まいの都道府県といったレベル感の個人情報を入れていただくのですが、必ずしもすべてのお客様に入力いただいている状態でもありません。現在の公式アプリがリリースされたのが2017年12月であり、まだまだ改善を進めていくところでして、CRMの変化もこれから追っていきます。

ただ、アプリをインストールしていただく前からのデータも少しずつ見える化しています。ウェブ媒体にアプリインストールの広告を出向するなかで、媒体とクリエイティブの掛け合わせで複数パターンを検証することで、少しずつ顧客イメージがデータで見えるようになりました。

顧客にとって意味のあるモーメントをどう捉えるか?

佐々木:CRMから顧客体験重視型のマーケティングへどう変化したかについてお話します。これまでのCRMのやり方では、どうしても企業目線で我々の買ってほしいもの、使ってほしいサービスを重視しがちで、弊社ではカードの保有する属性データにあわせてターゲティングするというやり方でした。


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CRMからCXM(顧客体験のマネジメント)に舵を切ったのは、顧客離反がデータでも顕著に見られたからです。メール配信のオプトアウトが非常に増えていたり、目先の打席重視のマーケティングで顧客離れが発生していました。「お客様にとって何が価値あることなのか?」を考えて、マーケティングを1から組み替えようと考えました。また、社内では各事業の横軸に入って、マーケティング視点でコントロールするという役割を任せられるようになりました

最近特に重視しているのは、モーメントです。つまり、顧客にとって意味のある瞬間をどう捉えるか?ということです。興味・関心のないタイミングで何かコミュニケーションしても、全く反応をもらえませんし、最悪の場合、離反されることもあります。

瞬間的なモーメントを捉え、より良い決済という体験をしてもらうためにどう突き詰めるか。そのために、マーケティングの手法や社内のマーケティング系ツールの整備の組み替えに着手しています。MA(マーケティングオートメーション)やAIあたりのテクノロジーを活用し、顧客をリアルタイムに捉えるというマーケティング活動をやっています。

マーケターと事業部が協力し、理想の顧客体験の仮説を立てるところから

園部:今取れているデータから顧客体験を想像することはすごくクリエイティブなイメージです。顧客体験におけるボトルネックを見つけていくために、どのような取り組みをされているのでしょうか。

佐々木:マーケティング部門だけでは限界があるので、顧客について詳しい事業部門やオペレーション部門に入ってもらっています。対象の分野に詳しい社員をアサインしてプロジェクト化し、一気にシナリオの洗い出しを行います。


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そこから先はマーケティング部門の腕の見せ所です。そのシナリオからどういった施策を、どのように実現するかを考え、実行していきます。

志賀:弊社ではログのデータを参照したり、顧客分析を行なっていますが、データドリブンですべて積み上げるのではなく、まずはマーケターと事業部の担当で「どのような顧客体験が良いのだろうか」と仮説を立てるところから始めています

そこで顧客セグメントをBIツールで抽出し、顧客リストを作り、クリエイティブ作成して速攻で検証します。そこで筋の良いシナリオだと分かれば、MAに乗せていきます。そうしたトライ&エラーにとにかく取り組んで改善していくことが初期では重要だと思います。

求められる以上の感動体験を提供し、データ発生前の顧客体験を改善する

園部:各社でどのように顧客体験価値を向上していくか、将来のビジョンについてお聞きしていきます。

志賀:まずは顧客接点を強化するところです。予約・購買以外でも、メディアやメルマガなどでより広範囲な顧客接点を作ってデータを取得していきます。ちなみに一番力を入れているのはゴルフのスコア管理ができるアプリサービスでして、これまでになかった顧客接点を活用しています。


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神谷:「丸亀製麺の顧客体験ってどんなものか?」について考えていかなければならないと考えています。価格や美味しさといった合理的な「頭の満足」と、接客や雰囲気といった感情的な「心の満足」を切り離して考えてしまうと、デジタルを入れていくときにうまくいきません。ON/OFFの一連の体験を、ブランドが表現できる形で実施していくことがとても大事になってきますし、お客様が求めている以上の感動体験を提供しないと、そもそもデータをお客様からご提供いただけません


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そこでお客様主語のデータを取っていくためにNPS(ネットプロモータースコア)をアプリを使いながら可視化し、その結果をお店に戻してリアルでの体験を向上させていく、この一連の施策を進めています。

佐々木:データの発生をトリガーに顧客体験を改善する、というのがこれまでの取り組みでした。これからは、データ発生前の状態でも顧客体験を向上させる取り組みを強めていかなければと思っています。


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ひとつの事例ですが、クレジットカードを使ううえで一番の阻害要因になる「不安」を取り除くため、「海外のネットショップ利用」をオフにできる機能や不正利用を防ぐ通知をアプリサービスに実装しました。まずは日々、安心して使っていただくことで、データ発生前のマイナス体験を回避しています。今後はAIをうまく組み合わせて事前予測し、より顧客体験の向上につなげていきたいと考えています。ただ、こうした機能の実装にも開発リソースがかかりますので、マーケティング部門だけでなく、IT部門と連携してプロジェクトを進めていくところです。

社内に理想の顧客体験を浸透させるため、「共通言語化」を進めるべき


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園部:顧客体験を改善していくプロジェクトは、CRMが流行っていた頃よりもずっと組織横断の要素が強いかなと思います。そこで、社内ではどのような取り組みをされていますか。

志賀:ITツールはオートメーション化して分析するには非常に便利ですが、そこに胡坐をかいてはいけないと、社内の組織をつくるときに重視しています。データを見るだけでなく、そこから顧客のことを想像したり、妄想する力がないと、やはり顧客体験は向上しないでしょう。

神谷:顧客体験を考えていくうえで、共通言語の存在が想像以上に大きいなと思っています。「私たちのサービスは、何が顧客にとって良い体験なんだっけ?」というポイントを言語化していくことは大事であり、そしてそれを社内と顧客にも伝えていくべきです

佐々木:外向けのメッセージでは良いことを言っていても、社内では意外と浸透していないことはよくありますよね。弊社では「Have a good Cashless.」という言葉を社外向けだけでなく、社内の各事業部で問いかけています。それが共通言語となり、最終的に顧客体験の価値向上が全社で優先されていると感じます。

あとは「体験価値が向上するとどんないいことあるんだ?」ということを、しっかりデータで可視化して社内に共有することも大事ですね。

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